2012年1月21日

オバマ政権の「アジア回帰」戦略はアメリカの国際関与を低下させるだけである

オバマ政権は、軍事力の規模を削減する一方でアメリカの国防政策の重点を中東からアジアに移すと表明した。これは全く馬鹿げている。確かに中国の脅威は急速に増大している。しかし中国の拡張主義は東方ばかりでなく西方にも向かっている。アメリカがイラクとアフガニスタンから撤退してしまえば、中国はイランとパキスタンを通じて中東での力の真空を埋めかねない。アジア諸国が高い経済成長を続けてゆくためにも中東の安定が不可欠なことを忘れてはならない。アジアの国々は中東から石油を輸入している。また、中国は上海協力機構を通じて中央アジアにも影響力を拡大させている。よって、アジア諸国民がオバマ氏のアジア回帰なるものを称賛するのは全くナイーブというしかない。さらに以前の記事で述べたように、国防費の削減はF35統合打撃戦闘機の開発計画に深刻な制約となっている。オバマ政権のF35をめぐる混乱が、同盟国にも悪影響を与えている。こうした観点から、オバマ政権の国際安全保障政策を批判的に論評したい。

この問題の全体像をつかむために、昨年12月に外交政策イニシアチブでロバート・ケーガン氏が司会を務めた『財政制約の時代に世界の中でのアメリカの責務をいかに維持するか』というフォーラムについて言及したい。会場に招かれたゲスト・スピーカーの中で、ジョン・マケイン上院議員が世界の中でのアメリカの国防と予算に関する主要課題を述べた。上記のビデオでマケイン上院議員は、政治指導者達がアメリカの有権者に空母やステルス戦闘機のような最新鋭兵器への支出が必要なことを説得しなければならないと明言する。マケイン氏は他方で、軍事産業の競争不足によって研究開発費が高騰したと指摘する。また、軍部の人件費削減によって無駄な出費を抑えるとともにアメリカの軍事力を維持すべきだとも述べた。東アジアの安全保障で最重要課題となっている南シナ海での中国の拡張主義に関しては、マケイン氏は海洋の自由航行の侵害だと非難した。中東に関しては、アラブの春は中国、ロシア、その他専制国家ばかりか、ウォール・ストリート占拠運動に見られるようにアメリカにさえも広がってゆくと述べている。マケイン氏はアメリカがそうした政治変動を支援すべきだと断言する。アメリカは世界各地で安全保障の挑戦を突きつけられている中で、マケイン氏は有権者が国内経済にばかり目を奪われがちな大統領選挙での孤立主義の台頭に懸念を抱いている。マケイン上院議員は、大統領のリーダーシップこそが有権者の間でアメリカの外交政策に科される課題と国際関与の必要性に関する理解を普及させられると明言する。現在の問題は、ヨーロッパの同盟諸国の国際関与が低下し、イギリスさえも2010年の『戦略防衛見直し』に見られるように国防力を削減していることである。他方で新興諸国はナショナリスト色を強め、欧米に対して力の競合を主張するようになっている。最後に、マケイン氏は大統領候補者達にもっと外交政策の議論をすべきだと提言し、アメリカのように国際公共財を提供できる国は他にないとも述べている。

アメリカは中東での新しい政治的変化に直面する一方で、アジアでのプレゼンスを強化しなければならない。カート・キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官は、上記のビデオでそうした国際環境の下でのアジア戦略を語った。問題は急激な国防力削減を行なうアメリカがこの地域での軍事的プレゼンスを持続できるかである。キャンベル氏はアメリカの国防の重点をテロリスト相手の地上作戦から、アジア太平洋地域での海空軍の力の競合に移すべきだと言う。対中関係で相手の脅威に対処するにせよ良好な経済関係を模索するにせよ、アジア太平洋諸国としてはアメリカとの強固な関係あってこそ対応できる。キャンベル氏は米中の相互依存を強調する一方で、人権と政治的自由といった問題も南シナ海での地政学的競合に劣らず両国の利害が衝突する重要課題だとも述べている。

二つのビデオを観たうえで、まず国防予算について述べたい。昨年の8月に通過した予算管理法案と11月の超党派拡大委員会での合意形成の不首尾によって、レオン・パネッタ国防長官には政策的に大きな制約が科されることになった。アメリカは全世界で中国、ロシア、イラン、北朝鮮、イスラム過激派テロなどの多様な脅威に直面している。また、国防支出の急激な削減によってステルス戦闘機をはじめとしたハイテク兵器の計画も縮小に追い込まれるだろう。共和党側では、オバマ氏が提案する軍部の人員と兵器の削減にミット・ロムニー氏が深刻な懸念を示している(“Defense Secretary Panetta faces tough choices on national security in 2012”; Washington Post; January 3, 2012)。国防をめぐるそうした議論を背景に、バラク・オバマ大統領は今年頭に新国防戦略を公表した。パネッタ氏がアメリカは伝統的に太平洋国家であると述べたように、その中では中国の台頭が最重要課題である。しかし核拡散とホルムズ海峡の緊張という事態を前に、現在はイランが最も差し迫った脅威である。専門家達は核軍縮によって国防の無駄を削減し、通常兵器をこれ以上削減しなくても済むと主張する(“Obama unveiling strategy for slimmed-down military”; Boston Globe; January 5, 2012)。議会ではオバマ氏の新国防戦略によってイラク戦争以来の両党の対立が深刻化している。国防と予算のような重要課題には国家運営のうえでの共通の認識が必要である。共和党は議会でホワイトハウスに戦略の修正を要求し、アメリカと全世界の同盟国の国益を守らねばならない(“Obama military strategy: Is it bipartisan enough?”; Christian Science Monitor; January 5, 2012)。

問題は、アメリカが国防上の重点地域を簡単な都合で選べるかである。アメリカは全世界で様々な脅威に直面している。重要地域の中でも、最も問題視すべきはオバマ政権の中東戦略である。テロとの戦いは完了していないうえに、アラブ諸国はこれまで以上にアメリカの関与を必要としている。まず、外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ事務局長の論評に言及したい。オバマ大統領はイラクとアフガニスタンの安定を脅かす過激派の無力化を成し遂げないうちに慮言う刻からの撤退を表明したために、昨年5月のオサマ・ビン・ラディン殺害という成果を無にしてしまった。アラブ諸国が政治変動の最中にあってこの地域でのアメリカのプレゼンスの必要性が高まっている時期に、中東撤退を模索するオバマ氏はあまりに軽率である(“Did the leader of the free world actually lead?”; Shadow Government; December 30, 2011)。2011年はアメリカが中東で指導力を発揮できる機会を失った年になるのだろうか?中国と北朝鮮の脅威を考慮すれば東アジアの安全保障の重要性は軽視できないが、共和党のバック・マケオン下院議員は「大統領が現在の財政事情を理由に、我が国がなすべき中東での作戦任務も完了しないうちにアジア回帰を打ち出したことは当惑すべき事態である」と評している。またマケオン下院議員は、小規模な軍隊がリビアから日本に至るまでの世界の危機に対して柔軟で迅速に行動できるという保証はないと指摘する “America’s new defense strategy: a Q&A with House Armed Services Committee Chairman Buck McKeon”; AEI Interview; January 5, 2012)。さらにロシアも核戦力強化に乗り出している。ドミトリー・メドベージェフ大統領は昨年末に、長い開発期間を経たブラバーSLBMを実戦配備すると表明した(“Bulava missile ready to deploy”; RIA Novosti; December 27, 2011)。ロシアはそのうえに、今年は11回のICBM実験を行なう計画である(“Russia Schedules 11 ICBM Tests for 2012”; Global Security Newswire; January 5, 2012)。新STARTは米露関係をリセットしなかったのである。今やロシアはアメリカの覇権に公然と挑戦しているのに対し、オバマ政権はアメリカの軍事力の規模を削減しているのである。

オバマ氏が下した決断で最も議論の的となるのは、イラクとアフガニスタンからの撤退である。ジョン・マケイン上院議員はアメリカが一方的にイラクから撤退したと述べている。マケイン氏は、オバマ政権は米軍の存在によってイラクの治安と政治安定への保証をもたらすことを拒絶したと批判する。またアフガニスタンからの米軍撤退によって一層混乱が深まると指摘する。アメリカの安全保障の傘が保証されないとなると、アフガにスタンの指導者達は反米的な近隣諸国やテロリストとの宥和への誘惑にかられるかも知れない。これが究極的にはこの地域でアメリカの敵を勢いづけてしまいかねない(“John McCain on Iraq: Losing the peace”; AEI Interview; December 22, 2011)。中東でのアメリカの役割を語るうえでイランを忘れてはならない。カナダのスティーブン・ハーパー首相はホルムズ海峡での緊張をめぐって、世界への最大の脅威となったイランにはロシアと中国をも含めた国際社会が断固とした対応をすべきだと訴えた(“Iran is the ‘world’s most serious threat to international peace’: Stephen Harper”; National Post; January 5, 2012)。イランの脅威に対処するには、アラブ首長国連邦にバンカーバスター弾を供給するだけではとても充分とは言えない。米軍撤退後の力の真空を中国が埋めかねない。さらに重要なことに、アジア同盟諸国の経済は中東からの石油輸入に依存している。よってアジア回帰はアジア太平洋地域の平和と繁栄を保証しないのである。

オバマ戦略への国際的な反応にも言及したい。オバマ氏が中東とヨーロッパから兵力を削減したことで両地域に懸念が広がっているが、オーストラリアはアジア回帰を歓迎している。費用対効果が高く、小規模で迅速で柔軟な軍事力という考えは特に目新しいものではない。ドナルド・ラムズフェルド元国防長官が主導したように、米軍の構造改革は冷戦後の重要政策課題である。問題は、オバマ政権の軍備削減があまりに急激なことである “World reacts to Obama's new military focus on Asia”; Christian Science Monitor; January 6, 2012)。ロバート・ゲーツ前国防長官が退任演説で明言したように、全世界での作戦要求を満たすためには軍事力の規模は維持されねばならない。オバマ氏によるアジア回帰は、中国の政策形成者達の間で警戒感を強め、南シナ海が米中の地政学的競合の最重要地域となっている(“China stays cool as new US defense strategy targets Asia”; Christian Science Monitor; January 6, 2012)。

中国の拡張主義への警戒を強めることは間違いではない。しかし中国の野心を食い止めるのはアジアへの相対的な重視ではなく、アメリカの総合的な軍事力である。確かにオバマ氏が言う通り、同盟国も自らの国防力を強化せねばならない。しかしF35戦闘機をめぐる現在の混乱が示すように、オバマ政権の国防政策は支離滅裂になっている。新型ステルス戦闘機が入手できないとあっては、同盟国はどのように自助努力すべきなのだろうか? さらに重要なことに、オバマ大統領は世界政治の基本構造とアメリカの役割について理解していないように思われる。ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、政策形成者達がグローバル化、アジアの台頭、欧米の衰退、イデオロギー競合の終焉などの新しい傾向に目を奪われ過ぎだと指摘する。しかし国際社会が現在かかえる課題の殆どは、長年にわたって関わってきたものであると言う。民主国家と専制国家の衝突は強まり、中東、北朝鮮、ミャンマーへの民主主義の拡大は今年の重要課題となろう。イラクとアフガニスタンでの長年にわたる戦争によってアメリカ外交に「非軍事化」の心理が働くようになったかも知れないが、ケーガン氏はハードパワーの保護なくしてソフトパワーは働かないと主張する。リビア紛争では西側多国籍軍が民間人の安全を守った。またBRICSにトルコを加えたどの国も、アメリカとヨーロッパのように国際公共財を提供できないとも論評している(“New Year, old problems”; Washington Post; January 6, 2011)。ケーガン氏が述べている点は重要である。現在のヨーロッパ金融危機で問題解決の提言ができる新興諸国は皆無で、自分達の輸出市場の喪失を懸念しているだけの有様である。今年頭に公表されたオバマ戦略は一般に考えられている国際政治の変化にあまりに受動的に対応するのみで、F35のケースに見られるように支離滅裂なものになっている。マケイン上院議員が述べるように、必要な軍事力を削減する前に無駄な支出は見直されねばならない。オバマ氏の『アジア回帰』はアジアでのアメリカのプレゼンスの強化につながらないばかりか、国際安全保障でのアメリカの影響力を低下させるだけである。共和党は議会でこの戦略を修正できるのだろうか?オバマ氏の対立候補達は、新国防戦略を大統領選挙でどのように議論してゆくのだろうか?

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2012年1月 1日

謹賀新年!

Tyrannosaurus_rex

T・レックス、現世のドラゴン

新年がやって来ました。昨年、ニュー・グローバル・アメリカとグローバル・アメリカン政論は注目に値する成果を挙げました。市民政治活動家達とのコンタクトを広げ、組織もブログもより広く知られるようになりました。

今年は国際介入アドボカシーが、ティラノサウルス・レックスの咆哮の如くさらに発展することを願っています。今年は辰年です。皆様、明けましておめでとうございます。

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2011年12月31日

オバマ政権の混乱したF35戦闘機開発政策は同盟国にも悪影響を与えるか

統合打撃戦闘機(JSF)F35の開発は、研究費の高騰と国防予算の縮小で大幅に遅れている。また、これが多国籍プロジェクトのために、国際パートナーの多様な要求にも応えねばならない。F35はしかるべき時期に配備されるのだろうか?『ワシントン・ポスト』紙のウォルター・ピンカス記者はF35開発計画を進めるうえで直面するいくつかの困難について論じている(“F-35 production a troubling example of Pentagon spending”; Washington Post, December 27, 2011)。ピンカス氏が最近投稿した論説をふり返りたい。

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現時点では、この多目的戦闘機のテストは20%までしか進んでいない。この戦闘機には最先端のステルス技術が使われているが、機体を制御するソフトウェアの開発が開発チームにとって最も厄介な課題である。それによって研究費は初期の予測よりはるかに高くなった。その結果、ロバート・ゲーツ前国防長官は、F35戦闘機の生産を減らした。12月15日にはジョン・マケイン上院議員が、国防総省は技術的な問題への理解もなしにF35は費用対効果の高い第5世代戦闘機だと宣伝したと批判した。マケイン氏はそのような杜撰な計画は「災難の元凶」だとまで言った。

開発費の予期せぬ高騰とともに、国防費の削減が統合打撃戦闘機の開発計画に大きな障害となっている。計画当初は3,000機のF35戦闘機が生産され、アメリカの三軍と同盟国の軍の戦闘爆撃機と世代交代することになっていた。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は各軍や国ごとのそうした多様な要求を満たすよりも、統合打撃戦闘機の総数を削減して空軍版のF35Aに集中するとともに、海兵隊用のV/STOL版F35Bと海軍版のF35Cは計画破棄せよと提言している。シンプソン・バウエルズ債務削減委員会も同様な提言をしている。オハンロン氏はF35戦闘機の経過右派機および削減分は無人機を発注するようにと提案している。

問題は、中国の急速な軍拡とロシアの依然として侮りがたい空軍力を前にアメリカが空軍軍力の優位を持続できるかである。両国とも現在、ステルス戦闘機を開発中で、やがては反欧米の専制国家にそれらの戦闘機を輸出するだろう。ウォルター・ピンカス氏が、ソ連はかなり前に崩壊したというだけで、これらの脅威を軽く見るのはあまりに楽観的である。さらに多国間プロジェクトの性質上、上記のような計画破棄が実施されれば同盟国に自国の子君傍系核の変更を強要することにもなりかねない。V/STOL版が破棄されれば、イタリアとスペインは現在のハリアーに代わる空母艦載機を失ってしまう。この計画で第二位の出資国であるイギリスも、F35Cが入手できないとなるとCVF(次期空母)計画を練り直さねばならなくなる。日本は次期戦闘機にF35を選定したが、甚だしい遅延によってイギリスの政策形成者達が現行案を再検討する可能性もあるので、クイーン・エリザベス級空母の計画から目を離すべきではない。F35をめぐる現在の不首尾によって、大西洋と太平洋でのアメリカの最重要同盟国の国防に支障をきたすことになる。

確かに、ぺンタゴンの計画は杜撰で、それが新型ステルス戦闘機の価格を予想外に押し上げたと言える。しかしオバマ政権がアメリカと同盟国の防衛に確固たる関与をするのかも問わねばならない。アメリカの国益に適うのは、アジア回帰よりも世界秩序を維持するだけの充分な軍事力の維持である。中国への備えを強化することは正しいが、この国の拡張主義は東アジアだけでなく西方にも向いている。中国は中央アジアと中東でも影響力の拡大を望んでいる。アジア回帰などは、イランが好戦性を強めアラブ諸国がかつてない政治変動の最中にある地域に力の真空を作り出すだけである。アメリカは多様な事態に対処できるだけの装備を備えねばならない。この問題はアメリカの主力兵器に関わるので、共和党の大統領候補達は来る選挙でバラク・オバマ大統領に挑戦するうえでも、この重要政策課題を多いに語って欲しい。

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2011年12月22日

ウイグル活動家の忘年会に参加

去る12月17日、ウイグル独立活動家のトゥール・ムハメット氏が主催する忘年会に呼ばれました。ムハメット氏は中国共産党が新疆すなわち東トルキスタンで少数民族を弾圧したために、日本で亡命生活を送っています。同氏は日本でもトップ・レベルに入る九州大学で農業技術の博士号を取得しています。現在は、中央アジア研究所の代表を務め、『中国民族問題研究』をはじめとした日本のジャーナルの他、プラウド・ジャパン・ネットワークにも投稿しています。ムハメット氏はしばしば、中国の脅威の増大に多いに危機感を抱く日本の保守派とともに街頭活動にも参加しています。

私がムハメット氏と知り合ったのは、ツイッターフェイスブックを通じてです。特に、当ブログで中国の程永華駐日大使の講演に関する記事を掲載してから、ムハメット氏と私の間柄は近くなってゆきました。その記事ではムハメット氏のウイグル解放活動に言及し、その内容を日本国際フォーラム『百花斉放』およびプラウド・ジャパン・ネットワークにも寄稿しました。そうした投稿が、我ら日本国民の間で東トルキスタンでの中国の抑圧に関する意識を高めるうえで、幾分でも役立てばと願っています。

忘年会そのものは政治色など全くありませんでした。会が開かれたのは、パムッカレ新宿というトルコ料理店です。参加者はトルコ料理、ベリー・ダンス・ショー、そして会話を楽しみました。出された料理とショーは素晴らしく、何かのイベントを行なうには、このレストランはお薦めです。

参加者はウイグル人、日本人、トルコ人でした。参加者の中には、はじめは私をウイグル人だと思った人もいたようです。ウイグル語とトルコ語は厳密には別の言語なので、私はウイグル人とトルコ人が何の不自由もなくお互いの母国語で会話をする様子には驚きました。私がこれまで何度も述べてきたように、中国の脅威はアジア太平洋地域にとどまらず、西方への拡張主義にも注意が必要です。ユーラシアの東西の安全保障は相互に深く関わり合っているものだと実感しました。

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2011年12月20日

キム・ジョンイル後の北朝鮮

北朝鮮の最高指導者キム・ジョンイルは12月17日に突然死去し、三男のキム・ジョンウンが後継者となる見通しである。世界の専門家の殆どが、ジョンウンでは国家の統治にはあまりにも若く経験不足なので、権力基盤の確立に時間がかかると見ている。 

しかしブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ北東アジア政策研究センター所長は、「可能性が低いとは言え、ジョンウンを支える集団指導体制がキム・ジョンイル政権の失敗を見直し、真の改革に乗り出すことを頭から否定してはならない」と論評している(“Kim Jong-un’s Shaky Hold on Power in North Korea”; Daily Beast; December 19, 2011)。 さらにアメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・マッツァ上級研究員は、オバマ政権は北朝鮮の非核化で大きな進展を遂げるためにも、この機を逃してはならないと主張する(“President Obama’s ‘wait-and-see approach’ to North Korea?”; Enterprise Blog; December 19, 2011)。

現在、ピョンヤンのウラン濃縮計画の凍結が急務である。北朝鮮は4から8個の核爆弾を製造できるだけのプルトニウムを保有している。北朝鮮核開発の第二段階は、今週の核交渉で止めねばならない(“Exploiting Kim's death”; Chicago Tribune; December 20, 2011)。

アメリカが「背後から主導する」など言語道断で、北朝鮮の予測不能な変化に対処するためにも日本と韓国との緊密な関係の必要性はこれまでになく高まるであろう。さらに、中国がピョンヤンに決定的な影響力を行使できるという考えは改めねばならない。北朝鮮の政治過程は国際社会から見て非常に不透明で孤立しているからである。

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2011年12月16日

接近拒否ミサイルのグローバルな拡散に対処せよ!

中国の海軍力と接近拒否能力の急激な拡大は、近年になって西側の政策形成者達の間で多いに注目されている。接近拒否能力は一見すると防衛的だが、一般に思われているよりも攻撃的である。それは西側の艦隊を破壊するミサイルを配備するという無言のモンロー・ドクトリンである。専門家達は中国にばかり目を向けているが、ディプロマット・マガジンは最近の記事で「接近拒否能力を強化する専制国家が次々に現れ、自国近海での西側海軍の優位に挑戦するともに自分達が勢力範囲と見なす海域での支配権の確立を目指している」と述べている。よって西側の政策形成者達は対艦巡航ミサイルの拡散を阻止し、こうした国々の接近拒否能力を無力化する戦略を模索しなければならない(“Anti-Access Goes Global”; Diplomat Magazine; December 2, 2011)。

中国の接近拒否能力に関しては、アメリカ海軍大学のアンドリュー・エリクソン準教授が2011年9月8日に海軍大学博物館で「中国の航空宇宙戦力:海洋での役割の進化」と題する講演を行なった際に「それらのミサイルによってアメリカ軍は物理的に不利な立場になってしまう」と論じている。以下のビデオを参照して欲しい。

中国の他には、イラン、シリア、北朝鮮といった専制国家が接近拒否ミサイルの配備に熱心である。その中では、北朝鮮のミサイルは旧ソ連製のものを転用したものなので、さほどの脅威にはならない。イランとシリアの脅威はより重大である。両国ともロシアと中国から接近拒否ミサイルを輸入している。イランは核開発とテロ支援で国際社会に致命的な脅威を突きつけているにもかかわらず、中国は先端技術の対艦巡航ミサイルをイランに輸出し、そうしたミサイルを製造する工場を現地に建設までしている(“Inside the Ring --- China-Iran Missile Sales”; Washington Times; November 2, 2011)。今年の夏に、イランは戦略要衝のホルムズ海峡付近でトンダー地対艦ミサイルの実験を行なった。イスラム革命防衛隊は、このミサイルの速度はマッハ3、射程距離は300kmになると宣伝している(“Iran Fires Anti-Ship Missiles near Key Gulf Strait”; Defense News; 6 July, 2011)。こうしたミサイルの製造には、中国がイランに先端技術を供与した可能性が高い。だからこそ中国の脅威がアジア太平洋地域にとどまらないと、これまでに何度も述べてきた。さらにロバート・ゲーツ前国防長官は退任を目前にした5月24日のアメリカン・エンタープライズ研究所での講演で、非国家アクターの中にはヒズボラのように主権国家より高性能の対艦ミサイルを保有する組織もあると述べた。

ミサイル技術に関して、ディプロマット・マガジンのハリー・カジアニス編集助手は「そのように技術は目新しいものではないが、それらの兵器の有効射程距離は飛躍的に伸び、命中度、飛行速度、運用性も向上している。そうした兵器からいかにして艦船を守るかが軍事戦略家にとって大きな課題となっている」と論評している。中国は現在、射程距離射程距離が1,500から2,700kmになる対艦ミサイルを保有していると見られており、それは西側の空母艦載戦闘機の作戦行動半径を上回っている。技術的に言えば、西側海軍はフォークランド戦争から実戦の教訓を学べるかも知れない。イギリス海軍はアルゼンチンが発射するフランス製のエグゾセ対艦ミサイルの射程内で戦った。問題は戦争遂行の能力だけでなく心理的な側面もある。海軍艦艇がよりハイテク装備になるにおよんで、戦闘による艦艇損失のコストは跳ね上がった。そのために西側海軍はより慎重にならざるを得ない。よって専制国家による無言のモンロー・ドクトリンの脅威はきわめて大きい。

ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、自らの著書”Dangerous Nation”でモンロー・ドクトリンは防御より攻勢の性質が強いと何度も述べ、西半球におけるアメリカの拡張を正当化するものだとしている。京都大学の中西輝政教授は自らの著書「大英帝国衰亡史」でさらに辛辣に論評している。19世紀末まで、イギリスの指導者層にとってモンロー・ドクトリンはあまりにヤンキー的でとても受け入れようがないほど珍奇なものであったと中西氏は記す。ドイツの台頭がイギリスの覇権を脅かすようになって初めて、ソールズベリ侯爵はそれを受け入れるにいたった。ソールズベリ卿はあの有名な日英同盟を成立させた首相であり、ビクトリア朝時代以後の国際的な力のバランスの変化に対応していった。歴史は専制諸国家が好き放題に無言のモンロー・ドクトリンを振りかざすようになることがどれほど危険かを示唆している。よって、こうした国々の接近拒否能力を無力化する戦略を模索することが差し迫った重要性を持つようになり、そうして世界中の我々のシーレーンを守らねばならない。原子力潜水艦から対艦ミサイル基地へのトマホーク・ミサイル攻撃も、そうした戦略の一つである。中国とその他の専制諸国が「海洋を占拠する」ような事態を許してはならない。

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2011年12月10日

アクト・フォー・イスラエルよりのメール:反ユダヤ主義に抗議を

アクト・フォー・イスラエルというアメリカのユダヤ系市民団体が、12月7日にメーリング・リストよりアメリカのハワード・ガットマン駐ベルギー大使の問題発言を伝えてきました。ガットマン大使はイスラム教徒の間で反ユダヤ主義が広まるのはイスラエルの過剰防衛によるものだと述べ、ヨーロッパには「古い」反ユダヤ主義はもはや存在しないと主張しました。

こうした侮辱と人種差別に満ちた発言への抗議として、以下のメッセージをこちらのリンク先に添付し、ヒラリー・クリントン国務長官に送信して下さい。皆様のご協力を宜しくお願いいたします。

Dear Secretary Clinton,

I am writing to you today to express my dismay at Ambassador Gutman’s recent remarks legitimizing Muslim anti-Semitism and minimizing all other forms of anti-Semitism. It is wholly unbefitting of a representative of the US government to express such ill-conceived and erroneous views in an official setting.

Racism, including anti-Semitism, is never the fault of the person being discriminated against and always an indication of the immorality of those who are discriminating. It is troubling that Amb. Gutman, as an official representative of the US Government and your prestigious and good intentioned State Department, fails to understand this basic truth and uses his position to promote his misguided views.

In order to maintain the prestige of the State Department which you have successfully lead and to maintain American principles of tolerance and goodwill it is essential that you work to ensure that Amb. Gutman’s can no longer make use of the State Department’s good name to espouse hurtful messages. It is not in America’s interests to have an ambassador with such premature notions of racism and demand that you immediately remove Amb. Gutman from his post.

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2011年11月30日

イラン核開発の阻止へ先制攻撃の是非

イラン核開発危機ではイラク戦争で未解決だった問題が問われている。米英連合軍が核保有の確固とした証拠もなしにイラク侵攻に踏み切ったとして当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が批判された。しかし、これよりはるかに重要な核拡散阻止のために先制攻撃が必要かという問題について議論した専門家は殆ど皆無と言ってよい。実はブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、2003年に日本の政治誌SAPIOからインタビューを受けた際に北朝鮮の核保有を阻止するために攻撃すべきだと主張した。その後、北朝鮮は2006年10月に核実験を行ない、何らかの核爆発を起こすことに成功している。国際社会はピョンヤン独裁体制への核拡散を阻止できなかった。

今回の危機について概観を述べたい。緊張が高まったのは、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領が高濃縮ウランを抽出するための遠心分離機の導入を表明してからである(“Iran's Nuclear Experiments Raise Alarm at U.N. Agency”; Wall Street Journal; September 3, 2011)。核拡散の疑惑が高まる中で、イラン初のブシェール原子力発電所で電力供給事業が開始された(“Iran’s First Nuclear Power Plant Goes Into Operation”; New York Times; September 4, 2011)。国際原子力機関がイランの核開発は核兵器の製造の手前まで来ていると警告すると、アフマディネジャド大統領はIAEAの天野之弥事務局長を非難した(“Iran Escalates Anti-U.S. Rhetoric Over Nuclear Report”; New York Times; November 9, 2011)。湾岸地域への脅威が増大している状況下で、オバマ政権はアラブ首長国連邦へのバンカー・バスター弾の供給を提案し、地域支配を目論むイランの野望を抑止しようとしている(“U.S. prepares to send ‘bunker-busting’ bombs to U.A.E. to help contain Iran”; National Post; November 12, 2011)。イランへの圧力が高まっているものの、イスラエルの専門家達は国際社会による制裁の効果を疑問視している。テルアビブ大学国家安全保障研究所のエフライム・カム副所長は、「イランは核兵器を欲している、少なくとも核兵器の製造能力を欲しているので、いかなる代価も気にかけていない」のでIAEAの最新報告書が充分な圧力となるか疑問視している。カム氏はイスラエルには「3ないし4」のイランの核施設を単独で攻撃する能力があるが、アメリカが中東で別の戦争を始めることに消極的なことはオバマ政権がイラクとアフガニスタンから撤退しようとしていることから明らかだとも認めている(“Analysis: Israelis doubt world will stop Iran's nuclear quest”; Reuters; November 15, 2011)。

イランに対する制裁と先制攻撃の影響を議論する前に、IAEAの報告書について述べたい。この報告書によるとイランは高性能爆薬実験と核兵器開発のための備品と原材料の調達の準備を完了している。また、シャハブ3弾道ミサイルに搭載する弾頭の原型も設計している。よって、イランは核兵器の開発一歩手前まで来ている“IAEA report: death knell of Iran diplomacy?”; IISS Strategic Comments; November 2011)。

そうした差し迫った危機に鑑みて、制裁と先制攻撃の有効性を議論しなければならない。現在、アメリカ、イギリス、カナダがイランとは金融と石油化学での企業活動を停止するという制裁に乗り出した。しかし専門家達は制裁の効果を疑っている(“Iran Penalties Insufficient to Curb Atomic Effort: Experts”; Global Security Newswire; November 22, 2011)。イギリスの元蔵相のノーマン・ラモント卿は、広範な制裁によってイラン企業が革命防衛隊の支配下にある国有エネルギー部門と基幹産業への依存を高めることになると警告する。さらにイギリスのジェレミー・グリーンストック元国連大使は、制裁とは言語による非難と軍事攻撃の中間手段としてしばしば用いられる政治的圧力だと述べている(“Sanctions on Iran a Failed Approach”; IISS Voices; 23 November 2011)。それに加えてオバマ政権は、アメリカが使える最も強力な経済的圧力と広く信じられているイラン中央銀行への懲罰手段をとることには消極的である。ホワイトハウスはこれによって石油価格の高騰を招き、アメリカとヨーロッパの経済回復が遅れると懸念している(“U.S. Imposes New Sanctions on Iran, but Strongest Weapon Remains Unused”; Global Security Newswire; November 22, 2011)。

経済的な側面に加えて、イランのシーア派神権体制の性質も考慮しなければならない。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・ルービン常任研究員は、イスラム共和国がイスラム世界全土への革命の輸出を追求してきたと指摘する。核開発計画は彼らにとっての革命の目的を達成するためのジハードなのである(“Iran’s Nuclear Project”; National Review Online; November 8, 2011)。イランにとって核兵器は国際舞台での力と威信の源である。ランド研究所のアリレザ・ナーデル政策アナリストは、体制の存続を至上命題とするシーア派神権体制にとって核による威信は制裁の代価を払ってでも手に入れたいものだと論評している(“Analysis - For Iran, the sanctions price may be worth paying”; Reuters; November 29, 2011)。欧米との対決を渡り抜くために、イランは今年の11月初旬には秘密裡にICBM実験まで行なっている(“Iran Conducted ICBM Experiment: Report”; Global Security Newswire; November 21, 2011)。

この他にも見逃せない重要な点は、ロシアと中国の政策的立場である。ワシントン近東研究所のマイケル・シン所長と長期的戦略グループのジャクリーン・ディール所長は、アメリカの中国の間の問題認識のギャップに言及している。アメリカはイランを孤立させるために中国を主要なパートナーと位置づけているかも知れないが、中国はイランをアメリカに対抗するうえでの潜在的なパートナーと位置づけている。さらにイランは中国海軍にとって、中東では潜在的に望ましい軍事基地だという中国の張世平陸軍少将の発言を引用している “China's Iranian Gambit”; Foreign Policy; October 31, 2011)。中国の海軍力が急速に拡大している現在、この発言は見逃せない。アメリカとの地政学的競合に加えて、カーネギー国際平和財団のマーク・ヒッブス上級研究員は、ロシアと中国が上海協力機構を通じて安全保障と経済でイランとの協調関係を必要としていると指摘する。ロシアは大型商談のために、通常兵器と原子炉のイランへの輸出増大を望んでいる。イラン国内での自国の権益を守るためにも、ロシアはウランの濃縮を低レベルにとどめるためのロード・マップを提案するかも知れないとヒッブス氏は述べている(“Waiting for Russia's Next Move on Iran”; Carnegie Endowment for International Peace Q&A; November 22, 2011)。問題は革命精神に立脚するイランの現体制の性質である。国家の威信にとらわれる現体制と渡り合うのは難しい。ワシントン近東研究所のマシュー・レビット上級研究員は、制裁がイラン経済に打撃を与えているとはいえ、イランから石油と天然ガスの輸出には中国、日本、韓国、そしてヨーロッパでもイタリア、ギリシア、スペインといった得意先がずらりと並ぶと主張する。石油価格も体制を維持するに充分な高止まりである。カーネギー国際平和財団のカリム・サドジャプール研究員は、「これまでにイラン国民の経済福祉がイスラム共和国の最優先課題だったことはなかった」と述べている(“Iran's Economy Can Take the Pressure—for Now”; Bloomberg Business Week; November 30, 2011)。よって、より強固な手段を議論する必要がある。

軍事攻撃に関しては、レオン・パネッタ国防長官はそれが紛争に伴う予期せぬ事態をもたらし、世界経済に悪影響を及ぼすと主張する。むしろパネッタ氏は6ヶ国協議を通じた外交努力によりイランに圧力をかけるべきだと訴えている(“Strike on Iran could hurt world economy, US says”; Reuters; November 17, 2011)。確かにパネッタ氏が主張するように、軍事攻撃には何らかのリスクが伴う。制裁には他の種類の圧力の併用が必要で、外交交渉もその一つである。しかしロシアと中国は、欧米とイスラエルほどイランの核保有を差し迫った脅威と感じていない。だからこそイランの核施設への先制攻撃を議論する必要がある。外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ所長は、外交努力と制裁によってイランの核計画を止められなかったので、軍事行動の必要性が高まったと主張する。またイランの核保有によって湾岸地域とアフガニスタンの不安定化とハマスやヒズボラに代表されるテロ集団への核拡散が懸念されると強調する。明らかに、今や何らかの行動が求められている(“Military action increasingly appears to be the only option that will prevent a nuclear Iran”; US News and World Report's Debate Club; November 16, 2011)。先制攻撃に関しては、外交政策イニシアチブのウイリアム・クリストル所長が11月6日のFOXニュースで「アメリカには行動の必要があるようにおもわれ、またこの脅威を止める役割をイスラエルに任せきりにしてはならない」と論評している。 

国際社会は核拡散を止めるために先制攻撃が必要かというイラク戦争の重要な課題に答えを見出せなかった。それは政策形成者達が忘れた宿題である。これは左翼達が好んで吹聴する「情報の誤り」よりもはるかに重要である。1981年にイスラエルが行なったオシラク原子力発電所への空爆が、サダム・フセインの危険な計画を遅らせたことを忘れてはならない。先制攻撃が緊急で必要性を増した時、アメリカが「背後から主導する」ようではいけない。 

PS: 日本の政治家やメディアの間では、イラン核危機への注目度が低いのは残念である。この問題は彼らが必死になって取り組んでいるTPPと同等に重要な政策課題である。どうやら政治家達もメディアも国民が「飯を食っていく」ことにしか関心がないのだろうか?そのような国ならパッシングされても致し方ない。 

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2011年11月19日

中東・イスラムの歴史と現代政治に関するプレゼンテーション

去る11月17日、国際文化アナリストの目崎雅昭氏の主宰で以下のプレゼンテーションを行ないました。基礎から現代政治まで、広い話題に議論は盛り上がりました。

題名;「イスラム世界と国際社会の今後」

1.入門編

スンニ派、シーア派、ジハードなど基礎知識と背景について

2・イスラムと政教分離:歴史を振り返る

日本とイスラムの関係も注目!=明治維新とトルコ、イランの西欧化

3・イスラム世界の民主化および近代化=イスラム・テロの温床は断ち切れるか?

4・現代中東の問題

イスラエルへの批判は過剰?

イスラムの反近代化=イラン革命=イスラム復古主義の台頭

5・昨今の問題

イラン核開発をめぐる国際的緊張

イラク・アフガニスタンからの米軍撤退の是非

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2011年11月11日

アメリカはアジアも中東も守るべし

バラク・オバマ大統領によるイラクからの米軍撤退の表明(“U.S. Troops to Leave Iraq by Year’s End, Obama Says”; New York Times; October 21, 2011)と呼応するかのように、ヒラリー・クリントン国務長官はアジアでのアメリカの政治的および軍事的プレゼンス を高めるべきだと主張する論文を投稿した(“America’s Pacific Century”; Foreign Policy; November 2011)。しかしこれによってアメリカの中東への関与が弱められるようなら、イランが力の真空を埋めようとしかねない。中東への関与の低下は必ずしもアジアへの関与の強化にはならない。

まずクリントン長官が『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿した論文に言及したい。長官はアメリカがこの10年にわたってイラクとアフガニスタンにあまりにも多くの精力を傾けすぎたので、世界の中でのアメリカのリーダーシップを維持するためにも今やスマートで組織的な時間とエネルギーの利用を考えるべき時だと述べている。クリントン氏は、アメリカはアジア太平洋地域をもっと注視する必要があり、それはこの地域が国際政治で重要な位置付けを占めるようになったからだと主張する。アジア諸国は高い経済成長の中にあり、その地域には中国、インド、インドネシアといった新興諸国もある。イラクとアフガニスタンでの長きにわたる戦争に自国の経済事情も合さって孤立主義が強まる国内世論に対し、クリントン氏はアメリカには経済成長著しいアジアという新たな市場が必要だと反論する。クリントン氏はアジア太平洋諸国でも特に日本、そして韓国、オーストラリアなどとの同盟関係を再構築し、安全保障での中国の挑戦に対処することを望んでいる。他方で中国での経済活動の機会拡大を目指しながら、中国の軍拡に対してはアメリカの優位を維持しようとしている。しかし、この記事では安全保障よりもアジアでの市場参入の機会の方が多く語られ、イラクとアフガニスタンに投じた人員と資材を移転すべきだと論じている。よってオバマ政権のアジア重視が中東の安全保障を犠牲にし、それが世界の警察官としてのアメリカの役割を低下させるのではないか、という深刻な懸念を抱かせる。

現在、イラクからの撤退が中東でのアメリカの役割で最大の問題である。イランの抵抗勢力「緑の党」のカイバン・カボリ党首は、イラクからの米軍撤退というオバマ氏の決定は大統領選挙を気にした性急なもので、それによってイランのシーア派神権体制の拡張主義を勢いづけてしまうと批判している(“The Future of Iraq after US Departure”; Iranian American Forum --- Washington Insight; October 24. 2011)。アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン重大脅威プロジェクト部長、軍事問題研究所(ISW)のキンバリー・ケーガン所長、そして同じくISWのマリサ・コクレーン・サリバン副部長は連名で「オバマ大統領による米軍撤退の決断はあらゆる災難の元になる」と主張する論文を投稿した(“Defeat in Iraq”; Weekly Standard; November 7, 2011)。ベトナムとは違い、イラクはイランとアル・カイダという安全保障上の二大脅威と関連している。三者ともアメリカの撤退によってイラクで宗派間の抗争が激化し、スンニ派アラブ人がアル・カイダからに支援を求めるようになる。それに対抗してシーア派がイランの支援を模索するようになる。さらに重要なことにイランはイラクとの間の長い国境線を通じて自らの影響力を浸透させ、非合法な物資を輸入できる。よってイランの核開発計画に制裁を科すためにも両国の国境貿易への管理が重要になる。また、三人の投稿者達は現在のイラクの内政が民族宗派間のバランスに大変大きく依存しているので、政情安定の保証のためにもアメリカのプレゼンスは必要であると述べている。オバマ政権がイラクからの撤退を宣言した際に、イラン統合参謀本部長のハッサン・フィロウザバディ陸軍大将は「アメリカ兵にはイラクを去る以外に選択の余地はないので、これが中東地域からの米軍撤退の幕開けとなる」とさえ言い放った。三者とも任務を完了せずに米軍がイラクから撤退してしまえば、テロとの戦いでアメリカが成し遂げた成果が無に帰してしまうと主張する。

そうした批判に鑑みて、クリントン国務長官はイランに中東でのアメリカの意図を誤解しないようにと警告した。クリントン氏はイラクでの米軍の強固なプレゼンスは維持され、イラクの軍と治安部隊に支援と訓練を提供してゆくと強調した(“Clinton warns Iran not to ‘miscalculate’ U.S. resolve as troops leave Iraq”; Washington Post; October 24, 2011)。オバマ政権はさらにイラク撤退後に湾岸地域での軍事的プレゼンスを強化すると表明した。イラクの戦闘部隊はクウェートに移転し、イランの脅威の増大に鑑みて湾岸協力機構との関係も強化される。この地域での多国間安全保障パートナーシップはさらに発展している。イラク軍は、来年にヨルダンで行なわれる「情熱のライオン12」という対ゲリラおよび対テロリスト軍事演習に初めて招待された。また湾岸協力機構加盟国の内でカタールとアラブ首長国連邦がNATO主導のリビアでの任務に作戦用航空機を派遣し、バーレーンとUAEがアフガニスタンに派兵している。そうした中でバーレーンのシェイク・カリード外相は、イラクからの米軍撤退によって力の真空が生じ、それによってイランの拡張主義的な野心が刺激されるのではないかという湾岸諸国の懸念を代弁した。米上院軍事委員会では12人の上院議員が米軍のイラク撤退はイランに自分達の戦略的勝利だと解釈されかねないという懸念を表明した(“U.S. Planning Troop Buildup in Gulf after Exit from Iraq”; New York Times; October 29, 2011)。

中東からアジアへの人員資材の移転によって中国の拡張主義が阻止されるという保証はない。中国は、アフガニスタンからの米軍撤退を機にパキスタンの関係強化を通じて力の真空を埋めようと躍起になっている(“China, US Reevaluate Asian Strategies Post Bin Laden”; Eurasia Review; May 8, 2011)。中国・パキスタン原子力協定によって、アメリカとインドへの対抗心が明白に示されている。さらに中国はイランに最先端のミサイルを提供し続けており、これは国連の制裁に違反している。中国はアメリカとの間で1997年にC802対艦巡航ミサイルをイランに輸出しないという約定を交わしながら、これを破っている。さらに中国は昨年、イラン国内にナスル対艦巡航ミサイルを製造する工場を建設している。アメリカは先端技術兵器をイランに提供する外国企業に罰則を科すために、2006年のイラン自由化支援法と2010年のCISADA(イラン包括制裁法)を適用できる“Inside the Ring --- China Iran Missile Sales”; Washington Times; November 2, 2011)。中国がイランとパキスタンとの間で築いている強固な関係は、中東をますます不安定にしている。

中国の脅威はグローバルで中東諸国はアメリカのプレゼンスを必要としているので、アメリカはアジアと中東の両面で安全保障上の脅威に対処するだけの準備がしっかりとできていなければならない。よってそうしたアメリカの国防費はそうした二重あるは多重の要求にさえ応えられるだけの水準に達することは必要不可欠である。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリン常任研究員は、現行の国防費削減がアジアの安全保障に及ぼす影響を論じている。オースリン氏は特に東シナ海、南シナ海からインド洋にかけての中国の海軍活動の拡大を注視している。中国海軍が急速に拡大してアジアのシー・レーンで高圧的な振る舞うことによって、日本、ASEAN諸国、オーストラリア、インドといった域内諸国との緊張が高まっている。その結果もたらされる不安定によってアメリカが引き続き地域安定に果たす役割が重視されるようになり、アジア太平洋諸国はアメリカとの戦略提携の深化を模索するようになっている。レオン・パネッタ国防長官は今年の10月のアジア歴訪ではアメリカの国防予算をめぐってアジア諸国抱く不安を宥めねばならなかった(“Asian Anxiety”; New York Times; October 25, 2011)。私はアジアのシー・レーンはユーラシアの両側を結ぶので、アジアと中東の安全保障は強く相互に関わりあっていることに言及したい。

ワシントンでは予算に関する超党派の特別委員会が国防費のさらなる削減を行なわないようにと要求した。ジョン・ベイナー下院議長は、今年の夏にオバマ大統領と共和党議員との間で交わされた予算合意の要求を超えて国防支出が削減されていると述べた。そうした中で民主党のアダム・スミス下院議員は、連邦議員たちは国防支出を守るためには増収か国防以外での歳出削減と言った代替案を示す必要があると述べた(“Boehner speaks out against more defense cuts”; Military Times; October 27, 2011)。ワシントン・ポスト紙のロバート・サムエルソン経済論説員は、イラクとアフガニスタンでの長きにわたる戦争にもかかわらずアメリカ軍自体は1980年代後半から2010年にかけて大幅に削減されたと指摘する。きわめて重要なことに、イラクとアフガニスタンの戦争で2001年から2011年にかけて国防費は増大したものの、この間の戦費の総額は$1.3兆で、同時期の連邦予算の総額$29.7兆の4.4%を占めるに過ぎない。国防費そのものが効果的で賢明な国力の行使を保証するわけではないが、必要以上の削減によって政策の選択肢が狭められる。サムエルソン氏は現行の国防支出削減によってアメリカの軍事的優位の土台となっている高度な科学技術と質の高い訓練が崩壊しかねない(”The dangerous debate over cutting military spending”; Washington Post; October 31, 2011)。

アジア諸国も中東諸国もアメリカのプレゼンスを必要としていることを忘れてはならない。中国のイランとパキスタンと関係に見られるように、ユーラシアの両側での安全保障の課題は独立したものではなく相互に関連がある。また北朝鮮はイランと共に悪の枢軸を形成している。オバマ政権による現行の国防力削減は、アジアと中東で懸念を増幅させている。キャメロン政権によるイギリスの「戦略防衛見直し」(SDSR)から教訓を得る必要がある。デービッド・キャメロン首相は昨年10月19日の下院でのSDSRに関する演説の際に、「この見直しでは、急速に変化する世界の中で我が国がどのように力と影響力を投影してゆくかが論じられている」と述べた。リビア紛争から見ると、イギリスの戦いぶりがこの目的を充分に果たしたとは言いがたい。アメリカは政策上の選択肢を最大限に実行できるために、国防に充分な資材を投資するべきである。アメリカ自身が自らの突出した軍事的優位がもたらす国際公共財の受益者なのである。

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