« 南北問題に自由主義の視点:グローバル化やテロにどう対処するか? | トップページ | 日米同盟こそ冷戦後の日本の国体である! »

2005年7月25日

インドとアメリカの戦略的パートナーシップ

今日のアメリカ外交において核兵器の不拡散とテロとの戦いはきわめて重要な課題である。どちらの問題においてもインドは重要な国である。また、アメリカの覇権を脅かすことなく世界の大国になろうというインドの望みを受け入れることも重要である。先週の718日から19日にかけて、インドのマンモハン・シン首相がブッシュ米大統領との会談のためワシントンを訪問した。核不拡散と南アジアの安全保障が話し合われたこの会談は、アメリカ外交と世界の安全保障の転機とも言えるものであった。このニュースにはもっと全世界からの注目が集まってもよさそうに思える。この問題について核不拡散、テロとの戦い、世界のパワーゲームの観点から述べてみたい。

その前にアメリカとインドの関係を少しふり返りたい。冷戦期のアメリカは、中東とインド亜大陸へのソ連勢力の拡大を防ぐためにパキスタンを支援していた。そのため、アメリカとインドの関係はややよそよそしいものであった。事態が一変したのは911テロからである。今や両国ともアフガニスタンの安定とイスラム・テロの打倒が切実な問題となっている。

先の米印首脳会談でブッシュ政権はインドの民間核利用への技術支援を行なう決定をした。インドは核保有国でありながら核不拡散条約に加盟していないので、この決定は議論を呼んでいる。クリントン政権下で国務副長官を務め、現在はブルッキングス研究所所長となっているストローブ・タルボット氏は、イェール・グローバル・オンラインに投稿したGood Day for India, Bad for Nonproliferation”という論文でこの取り決めを批判している。ブッシュ政権は大した見返りもなしにインドの核兵器保有を認めてしまったという理由からである。そのような取り決めがなされれば、NPT体制の空洞化につながるとの懸念を示している。一方で国際原子力機関(IAEA)のモハメド・エルバラダイ事務局長は、この合意に歓迎の意を示している

上院で批准されなければ、この取り決めには効力はない。ところでこれはインドへの宥和なのか、それとも現実的な解決策なのだろうか?英エコノミスト719日号の“Together at Last”という記事によると、アメリカはこれまでインドの望みを拒否し続けたという。

「アメリカはインドと国境を挟んで対立する核保有国のパキスタンと強固な同盟関係を維持してきた。インド外交の悲願とも言える国連安全保障理事会の常任理事国入りにも反対した。インドがイランからパキスタン経由で天然ガスのパイプラインを建設しようとした際にも反対した。軍事技術と原子力技術についても、インドが1998年に核実験を再開したうえに国際的な核不拡散体制にも参加していないという理由から協力を拒否した。」

そうした事情を考慮すれば、インドとの戦略的パートナーシップを築き上げるうえで何らかの取り決めは必要である。だがカーネギー国際平和財団のジョセフ・シリンシオーネ上級研究員は「民間利用の核施設をいくら査察しても、インドが核兵器に使うプルトニウムを査察できなければ核不拡散には有効とはいえない」と指摘している。ジョージ・W・ブッシュ大統領が言うように、インドが責任を全うする核保有国となれるかどうかは予断を許さない。

テロとの戦いではインドは最前線である。ここ数年はアフガニスタンで反タリバンの北部同盟を支援してきた。カシミールではシーア派のテロとも対決している。こうしたイスラム・テロの脅威に対処するためにも、インドにとってアメリカとの戦略的パートナーシップは必要不可欠である。またアメリカもインド亜大陸での不測の事態に備えておかねばならない。現在、パキスタンではペルベズ・ムシャラフ大統領の下で全国規模のテロ掃討作戦を推し進めている。だが911テロ以前のムシャラフ政権がタリバンを支援していた事情もあり、政府上層部にも親タリバン派はいなくなったわけではない。そうしたパキスタンへの過剰な依存関係はリスクがあり、この観点からも米印戦略提携関係の強化が望ましい。

パワーゲームに関してはインドの対中国あるいは対パキスタン関係がよく話題になる。インドによって中国の力を相殺できるのは確かである。またアメリカがパキスタンに肩入れし過ぎると、パキスタンの軍事政権に自国の民主化など進まなくても対米関係には支障はないと思われかねない。よってアメリカにとってはインドとパキスタンのバランスを取る必要がある。

またシン首相が720日の記事でワシントン・ポストとのインタビューで述べたことにも注目すべきである。首相はインドがイランとの関係で何らかの役割を担えると述べている。インタビュー記事にもあるように、人種、文化、宗教、歴史のうえからもインドとイランとは深い関係にある。インドの野心を国際社会は受け入れられるだろうか?ともかく世界の将来を見通そうというなら、インドの動向は見逃せない。

インドは中国とは違う。パックス・アメリカーナに風穴を開けようとはしないだろう。インドは英語圏の民主主義国で、アメリカにとってもインドとの戦略的パートナーシップの発展は望まれるところである。だがインドが独立してからというもの、この誇り高い国が西側の全面的な同盟国であったことはないので過剰な信頼は禁物である。インドとの戦略提携を深めてゆくにはこのことに留意すべきである。

インドにはもっと注意を向けるべきである。欧米人はイスラム過激派に、日本人は中国の脅威に目が向いている。インドはどちらの問題にも影響を及ぼす国だということを忘れてはならない。

人気のブログ・ランキング:応援クリックを宜しく

|

« 南北問題に自由主義の視点:グローバル化やテロにどう対処するか? | トップページ | 日米同盟こそ冷戦後の日本の国体である! »

中東&インド」カテゴリの記事

コメント

本の出版 フリーペーパー チラシ制作&ポスティングのススメ
核、拉致問題を解決させるには日本国民が団結してテロと戦わなくてはいけません
パチンコ、暴力団宗教、消費者金融、朝鮮銀行の在日テロ支援企業撲滅! 
アサリなどの海産物の数百倍を送金 借金苦による自殺者年一万人以上に朝鮮企業の関与
中国・韓国人観光ビザ免除恒久化、テロリスト参政権、人権擁護{言論弾圧}
法案断固反対! テロリストによる日本侵略計画阻止!
工作船/万景峰、偽札、麻薬/覚せい剤、入港禁止!
売国政治家、不法送金、歴史捏造、売春二重取り、地上の楽園デマ、日本人拉致、
在日空騒ぎブーム、竹島/対馬侵略、不法入国{密入国}不法滞在、
ニセ日本人 {通名/偽名/帰化}、凶悪犯罪、在日の右翼/サヨク、産業スパイ、
サイバーテロ、悪の枢軸朝鮮総連・創価学会公明党、朝日新聞、差別主義者! 
韓国宗教→在日信者ヤラセ、パチプロ→在日しこみ、在日無職→生活保護特権、
朝鮮戦争時→国を裏切り逃げた密入国の在日犯罪者! 
政府・マスコミは、在日団体に買収、圧力を受けて真実を報道していない。 
不買運動・断交運動をしよう! テロリスト、支援者、暴力団関係を駆逐/資産没収
キャンペーン! 
学生は学校で、社会人は会社で、無職の人は近所から配り始めよう。
仲間を一人でも多く集めよう。
いきなり政治の話をしてもウザがられるのでこう言う。
好きな芸能人は?{相手が答えたら} その人これ見ているんだって。
ビラのHP パクリ大国南朝鮮 韓国製品不買運動のサイトをみせよう! 
コピペして世界中の人々に真実を知らせよう。 サイドビジネスを考えましょう 
①友達、仲間を集める。出来れば5人以上{学校、会社などで募る}無理なら一人から。
②チラシ制作{ビラのHP、パクリ大国南朝鮮、韓国製品不買運動などからコピー}
③チラシをポスティングする一日300枚 10人だと3000枚
④ホームページなどに反響が出てきたらフリーペーパー、本を作り、チラシで宣伝
⑤広告{アフィリエイト}などで収入があり、永続出来るように カンタンです。
今すぐコピペしまくってください。

投稿: 出版社の社員 | 2005年7月28日 03:32

出版社の社員様、

コメントありがとうございます。ただ、何かの活動に勧誘したいのであれば、自身のサイトやメールアドレスにリンクできるようになっていなかったのが残念です。どこの誰かわからないのに、コピーして流す人は余りいないでしょう。

それと、コメント内容は掲載記事に関係あるものの方が良いです。ネット荒らしではないのでメッセージは残します。しかしこれらのことには気をつけて下さい。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年7月28日 21:53

> インドにはもっと注意を向けるべきである。
>欧米人はイスラム過激派に、日本人は中国の脅威に目が向いている。
>インドはどちらの問題にも影響を及ぼす国だということを忘れてはならない。

 全く同感です。
年7~8%の高い経済成長の続くインド、これはアジアにおいて中国に次いで高い成長率、また10億を擁する人口の点でも中国に匹敵する大国です。
 また、民間企業が発展してきた長い歴史を持つ点、経営状態が健全な金融システム、インターナショナルな人材が豊富な点など注目に値する点が多々あります。
 特に、日本と交戦した歴史が無い点は「反日」を国是にしているような近隣の国々とは大きく異なり、お互いに信頼関係を築きやすい環境にあるのではないでしょうか。
(個人的には、東京裁判で唯一公正な判断を下したパール判事の祖国である点でも親近感を覚えます)

 勿論、インドも中国同様発展途上の国で、様々な問題点や懸念材料は存在しています。
連立政権の不安定感、インフラの整備が遅れている点、特に電力事情はかなり悪いということです。
また、長年の階級制度のため貧富の差が激しい点も挙げられます。
経済発展の牽引役はIT産業を中心とするサービス産業ですが、逆に製造業など既存の産業は伸び悩んでおります。
これは、伝統的なシステムや政府の規制が発展の阻害要因となっているためであるとも言われております。
更に、欧米や日本とは全く違った文化という点も挙げられるでしょう。

 以上の他にも様々な問題点を抱えてはおりますが、アジアで唯一、中国に対するカウンターウェイトに為り得る国として、もっと注目するべき国であることは間違い無いと思います。

※トラックバック頂いたのにもかかわらず7月10日の記事に対するコメントで、メールアドレスとURSを記載しなかった失礼、遅まきながらお詫びいたします。

投稿: Aturam | 2005年7月30日 14:49

そういえば、6月あたりに「露中印」で外相会談がありましたよね。英米軍がイラクから兵力削減するような話が持ち上がってきてます。アフガンからも撤退していき兵力削減をして経済負担を減少させ対テロに備えるのか、それとも兵力をアフガンに振り分け、イランを「イラク、アフガン」両側から圧力をかけたりするのでしょうか。それか「イラク、アフガン、インド」ラインを狙っているのか・・・。予測ができないですね。
インドが強くなればミャンマーやその周辺国へも影響力を持つとおもわれるので、喜ばしいことかもしれませんが、もしも、「印中露+東南アジア諸国のどこか」で
強力な提携を組まれると非常に困りますね。そうそうと、そんな事起こらないでしょうけれども。

(そういえば、コピーコメント、僕のブログにも似たようなものがついてました。)

投稿: tir | 2005年7月31日 02:54

Aturamさん、

この前は少し粗忽な応対で申し訳ありません。以前、自分の掲示板にネット荒らしがやってきたことがあったので、メルアドとURLへのリンクができなかったことに悪いイメージがよみがえってしまいました。

ご指摘の通り、外交や安全保障のみならず経済の分野でもインドは大きな魅力を備えています。ただ、現在のところ、インド人も日本より欧米に目が向いているので日系企業が市場開拓をしけれてはいません。反日感情の薄さは逆にこれまでの日本との関係の弱さをも反映しています。しかしどこかの国を憎むような教育がされていないだけ、中国よりも期待はできるでしょう。

インドは中東との歴史的なつながりも深く、特にイランやアフガニスタンへの足場にもなります。文句ばかり言う隣人と無理に仲良しになろうとするよりも、新しい友人になれる国とどんどん親しくしていった方が日本のためです。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年7月31日 15:04

冷戦期には非同盟諸国の盟主を自負していたインドは、多方面のバランスを取りながら自国の立場を固めてゆきました。パキスタンがアメリカの支援を受けたゆきさつからインドはソ連製の兵器を主力としてきましたが、決して親ソ路線はとりませんでした。そうした経緯からすると、中露ともバンランスをとろうという意図があるのではないでしょうか?

中国とインドはチベットをめぐって対立しているので、親密になるにも歯止めがあります。どちらも冷戦後のアジアそして途上国の盟主意識が強いので、お互いには譲らないでしょう。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年7月31日 15:19

TBありがとうございました。

全く彼方の仰るとおりですね。
隣国だから仲良くしなければならないという、うぶな知識人が日本に多すぎます。隣国は何処でも仲が悪いものなのに。
もちろん、インドもしたたかで複雑な国ですから、日本としても情報を集めるのが大事です。

投稿: mugi | 2005年9月23日 22:52

インドについて言えば、イランとのパイプライン建設をめぐってアメリカから中止の要求がありました。核不拡散を重要な外交課題とするアメリカにとって、パイプラインを通じてイランが核開発の資金を得るのは由々しき事態です。

日本の経済産業省がイランとの石油開発を進めるのも、日米間の問題となるかも知れません。

一方でインドとパキスタンの関係改善の動きにも注目したいところです。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年9月24日 15:28

TBいただき有難うございました!
丁度この頃、「あれ、米国はパにF16売却とか・・・・で、米印首脳会談?」と何だかこんがらがっていたことを思い出しました。
この記事は「宿題」とさせていただきたく存じますが、猫研究員様も仰っていたように、日本がここでいい具合に仲立ちになれれば同盟相手国としてのプレゼンスを示すことができるかもしれませんし、それでこそ同盟というのが単なる二国間関係から重層的になるのだろうかと思います。

投稿: tsubamerailstar | 2005年11月28日 00:14

日本もインドやオーストラリア、NATO諸国ととも集団安全保障体制に入るべきだと思っています。台湾については大陸政府とどちらを承認するかという問題があるので、正規の条約は無理としても普段からの信頼関係は築いておくべきです。河野洋平のように飛行機から降りないなど、中国に気を使いすぎです。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年11月28日 23:59

舎 亜歴様がおっしゃるような<環太平洋NATO>(PATO?)が理想系だと私も思います。
まずは百年来の夢の<日米英三国同盟>でしょうか。太平洋の南端の豪州も加えたシーパワーカルテットが今日的でしょうが。
台湾に関しては、実は私はかなり怪しいと見ています。グアムシフトや日米豪対話の加速(連休中に大野長官がP3Cの共同訓練の話まとめてきたのは快挙でした!)辺りはその辺を睨んでのことではないかという気もします。
台湾の選挙の動向と大統領の京都演説絡みの記事をTBしておきます。(礼)

投稿: tsubamerailstar | 2005年12月 3日 17:18

TB記事は興味深いです。どうもメディアは近隣諸国重視と言っては中国や韓国を過大に取り上げますが、台湾にももっと注目してもよいところです。

投稿: 舎 亜歴 | 2005年12月 7日 01:13

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/109615/5150406

この記事へのトラックバック一覧です: インドとアメリカの戦略的パートナーシップ:

» ブレトン・ウッズ体制は現存している [理想郷建設計画]
度々読んで勉強させていただいています。私はブログの内容から反米と勘違いされることがありますが、親米のためのアメリカ分析をしています。 [続きを読む]

受信: 2005年7月25日 23:22

» ブレトン・ウッズ体制は現存している [理想郷建設計画]
度々読んで勉強させていただいています。私はブログの内容から反米と勘違いされることがありますが、親米のためのアメリカ分析をしています。 [続きを読む]

受信: 2005年7月25日 23:24

» 平和五原則−中国にしてヤラレたインド [トーキング・マイノリティ]
 1954年6月、周恩来とインド初代首相ネルーとの会談が行われ、平和五原則が締結された。 この協定の内容は①領土主権の尊重②相互不侵略③内政不干渉④平等互恵⑤平和共存、 の五つの精神からなっている。まことに御立派な原則だが、その後の中共のチベット侵攻や中印国境紛争の実態を見れば、アジア外交史のブラックジョークとし か思えない。 実はインドの将軍に中国軍の脅威を再三に亘り警告する者がいたが、それをネルー... [続きを読む]

受信: 2005年9月24日 00:10

» 国際的な混乱の元 [手前ら、日本人をなめんじゃあねぇ]
韓国大統領、金大中が北朝鮮を訪問し、金正日総書記との間での緊張感解消を謳い、経済支援を約束したことにより、両首脳はノ−ベル、平和賞を受けた。 もっとも、今頃はノ−ベル財団とやらは北朝鮮の核疑惑に対するやり方や拉致問題を見て頭を抱えていることだろう。 一応、ノ−ベル賞というものは世界的に権威のある賞だったと思うが、どうも最近のノ−ベル財団の考えは一般民衆とは乖離しているのではないのか。 パレスチナ解放機構のアラファト議長とラビン首相の受賞にしても、両者とも勝手に中東を混乱させている現況であり、一応は話... [続きを読む]

受信: 2005年10月 6日 17:58

» 台湾、「国共合作」路線へ加速か?〜ブッシュ大統領演説の背景 [私の「認識台湾」]
議題が多すぎたせいか、米中首脳会談は総花的な印象を残すに止まりましたが、ダライ・ラマ十四世との訪中直前の会見や北京での協会訪問等はブッシュ大統領らしいアクセントの付け方だったかと思います。 「自由と民主主義を」テーマにした京都での演説(記事)において、大統領はアジアにおける成功した民主主義国として日本・韓国・台湾を例に引き、合衆国の新アジア政策を披露すると同時に、台湾の民主化モデルを手本にするよう中国の指導者に促しました。とりわけ「一つ... [続きを読む]

受信: 2005年12月 3日 17:20

« 南北問題に自由主義の視点:グローバル化やテロにどう対処するか? | トップページ | 日米同盟こそ冷戦後の日本の国体である! »