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2005年9月28日

EU・ロシア財界円卓会議

来る10月3日にロンドンで開催されるEU・ロシア首脳会議に合わせて財界の円卓会議(IRT:Industrialists’ Round Table)も開かれる。ところでこのEU・ロシア財界円卓会議とはどのような会合なのか?

円卓会議が設立されたのは1997年7月のEU・ロシア首脳会議においてである。円卓会議はEU委員会とロシア政府に対して企業活動と投資に関する助言を行なうとともに、EUとロシア双方の財界の共同事業を推進するという役割を担っている。

この円卓会議を取り上げた訳は、先の「ロシアの民主化後退に要注意!:元スウェーデン外交官の分析」という記事で、プーチン政権の権威主義化を警戒しながらも天然資源開発や核不拡散といった西側とロシアの共通利益となる分野での協調は進めるべきだと述べていたからである。幸いにも、冷戦の重荷となっている核削減に向けて西側と協調関係を進める必要のあるロシアはイランのように石油収入で核兵力を増強する心配はない。

そうした趣旨からも、EUとロシアの経済界が協調を深めてゆくことはアメリカ主導によるロシアの民主化推進にも有益である。ところでEUとロシアの経済協力と言えば、何を置いても石油や天然ガスに代表される天然資源開発が挙げられる。また、双方の貿易と投資を盛んにしてゆくためにも金融分野での協調も進めようとしている。さらに述べておくべきは、ロシアはハイテクやITの分野でもかなりの水準にある。旧ソ連時代より培われた航空宇宙産業や軍事産業の生み出した技術は世界有数の水準である。このように、エネルギー資源の供給先、市場、そして技術提携のパートナーとしてのロシアの魅力は大きい。

今回のEU・ロシア財界円卓会議の事務を取り仕切るのはイベンチカという民間企業である。この会社はこれまでにもEUとロシアの間で財界人やその他民間人の会合や意見交換の場を提供してきた。会議のサポート役にとどまらず、ロシアでの企業活動を支援するための情報的異郷のために定期刊行物も出版している。その内、「ロシアン・インベストメント・レビュー」は四半期ごとに出版され、西側の財界人にロシアの市場についての情報を提供している。また毎年発行される「ロシアン・インデックス」ではロシア政財界の主要人物50人が紹介されている。

今年のEU議長国となったイギリスのブレア首相とロシアのプーチン大統領の間でどのような話し合いがなされるか―――こうした政府間の動きばかりでなく、民間の動向も注目に値する。先の記事で述べたようにロシアでの権威主義の台頭をけん制しながら西側との共通利益は追求してゆくには、民間のリーダーシップも不可欠である。

ところで極東ロシアでは石油開発で中国との協調関係が進んでいるという。日本としては座視できぬ事態である。中露接近を食い止めるためにも、日本も欧米に遅れをとってはならない。北方領土問題を解決したければ、ロシアの民主化と経済開発で日本が重要な存在にならねばならない。

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2005年9月16日

お知らせ

当ブログを閲覧していただいた皆様、嬉しいお知らせがあります。本日発売の学研ムック「人気のブログ・ランキング200」(p.60)で当ブログが取り上げられました。これまで、「グローバル・アメリカン政論」をご支援いただいた皆様、ありがとうございます。

当ブログはいたずらに巷の話題となるような政治問題を追いかけず、時には世間の注目が低くても重要だと思われる問題を敢えて論じたりもしました。日々のニュースを忙しなく伝えるよりも、時代の流れをどのように論ずるかに重点を置きました。

こうした姿勢が皆様より支持されたことを感謝いたします。今後とも、一層の内容の充実をはかってゆきたいと思っています。

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2005年9月12日

イラク再建:リベラルが見ても成果は挙がっている

9月9日のニューヨーク・タイムズと翌日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに”The State of Iraq”という興味深い論文があった。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員とニーナ・カンプ上級助手の投稿だが、そこに掲示してある表に注目したい。ウェブ上では論文は読めても表は見られないので、注目すべき項目の数字を挙げてみる。

まず改善された項目

国内総生産(億ドル):

184(開戦前)―>12120038月)―>21120048月)―>25020058月)

石油生産を除く国内総生産(億ドル):

2020038月)―>8320048月)―>10920058月)

電話台数:

830 (開戦前)―>800 (20038)―>1,460 (20048)―>4,180 (20058)

そして占領開始時期には訓練を受けた裁判官は皆無であったが、現在では400人にのぼっている。特に注目すべきは石油生産を除く国内総生産の上昇である。現在は石油生産が開戦前の水準に達していないので、石油施設が整備されてしまえばどれだけ経済が好調になるだろうか?一度、憲法が制定されて新体制が本格的に始動すれば、後世ではレジーム・チェンジは成功だと評価されるであろう。

もちろん、テロ活動は依然として活発であり、電力生産が需要に追いつかないといった問題もある。そうした悪い面ばかりをとりあげて、メディアはイラクの再建で治安が改善しないと言い立てている。そして多国籍軍のイラク政策の失敗をあげつらっている。だが数字は正直である。イラクの現状は良くなっている。

この論文を寄稿したマイケル・オハンロン上級研究員はイラク開戦には反対していた。またブルッキングス研究所といえば、どちらかというと民主党色が強い(保守派のスタッフがいないというわけではない)。いずれにせよ、有力なシンクタンクだがブッシュ政権とは必ずしも緊密というわけではない。そうしたリベラルな観点からの分析でも、イラクの現状に改善の兆候が見られる部分があることをしっかり銘記すべきである。

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2005年9月11日

ロシアの民主化後退に要注意!:元スウェーデン外交官の分析

ロシアの民主化がうまくゆくかどうかはヨーロッパ、アジアそして中東の安全保障にも大きな影響を及ぼすが、最近はこの国に対する注目度は低くなっている。そうした中でアメリカでも有数のシンクタンク、カーネギー国際平和財団のアンダース・アスランド上級研究員が”Putin’s Decline and America’s Response”(プーチン政権の崩壊にアメリカがどう対処すべきか)と題するレポートを書いている。そのレポートによると第二期プーチン政権では中央集権化が進んだために、腐敗がはびこり政情が不安定になっているという。アメリカはロシアの民主化を推し進めるために全力を尽くすとともに、政情如何を問わず大量破壊兵器の不拡散やエネルギー資源開発といった共通の利害に関わる問題では両国の協調関係を推し進めるべきだと主張している。

アメリカには多くの有力シンクタンクがあり、そうしたシンクタンクが政治にも大きな影響力を振るっているのはよく知られている。その中でもカーネギー国際平和財団はモスクワに研究センターを設置して現地の研究スタッフを抱えているように、ロシアとの関係は深い。そうした事情からも、このレポートは非情に興味深い。

このレポートで注目すべき問題は、第一期(20002004年)には民主化と資本主義化を推し進めていったプーチン政権が第二期(20042008年)に入って権力集中化に走ったことと並行して外交政策にも良からぬ影響が出ているということである。実際に西側との関係も悪化するとともに、ウクライナの大統領選挙への干渉にも見られたように旧ソ連諸国には高圧的な態度で臨むようになってきている。アスランド上級研究員が記しているように、第一期プーチン政権の下でロシアの経済成長は年間78%と好調であった。法の支配も徹底させるなど、近代国家に向けた改革も順調であった。それでもプーチンは、エリツィン政権期に台頭した新興寡占資本家の政治的影響力を抑えるためとチェチェン紛争に対処するためには権力集中によって自分の政権を安定させねばならないと考えるようになった。このレポートに記されているように、プーチン政権は旧KGBを権力基盤としている。彼らにとって新興資本の政治的影響力の増大、イスラム系テロ活動の活発化、隣国ウクライナの民主化は座視できるものではない。まず手始めに200310月に新興財閥ユーコス石油のミハイル・コドルコフスキー社長を逮捕した。これ以後は新興財閥が政治に口出しを控えるようになってしまった。その後のロシアの内政と外交では権威主義化とナショナリスト化が進んでいったのは周知である。

こうしてプーチン大統領一人に権力が集中するようになって、政局はさらに不安定になっている。まず、議会や地方自治体の権限が弱められてしまったために中央政府の権力に歯止めをかけられる存在がなくなってしまった。KGB人脈ばかりが大統領を取り巻くようになると、腐敗も進行して政府の流す情報も信用されなくなってくる。反対勢力を一掃したプーチン政権にとって最大の脅威は、政権の権力基盤であるKGB人脈そのものであるという。政情悪化を見るに見かねてしまえば、かつてゴルバチョフに対して軍が行なったようにクーデターもあり得る。プーチンはKGBでは中佐に過ぎなかった。彼より高位にあった者がプーチンに敬意を抱くだろうか?またポーランドの「連帯」運動のように民衆が権力に対して立ち上がる可能性もある。このレポートではこのような懸念を論じているが、いずれにせよ由々しき事態である。

こうした事態にアメリカはどのように対処すべきであろうか?アスランド上級研究員は次のような提言をしている。

     アメリカからの民間選挙監視団の派遣。ロシアの民主化を阻害してきたのは不正選挙であり、この監視団を受け容れるか否かでロシア側はアメリカが行なう民主化に協力的かどうかわかる。

その他、選挙監視について諸々の提言をしているが、ここでは割愛する。そして以下の提言にも触れておきたい。

     セルビア、グルジア、ベラルーシ、ウクライナの例から見ても、旧ソ連・東欧地域では権威主義体制への民衆の抵抗で最も有効な手段は学生運動である。

ウクライナのようにプーチンが旧ソ連諸国の独裁政権を支援するようなら、アメリカは民主化抵抗運動を強力に後押しすべきであると主張している。ロシアが旧ソ連諸国を支配しようとしても、もはやそれだけの力はない相手をアメリカが恐れる必要はないと言う。確かにウクライナではフリーダム・ハウスをはじめとしたアメリカのNGOが学生運動による民主化を支援して成功したやり方はあまりにも見事であった。

その一方で、このレポートでは米露の共通利益が損なわれてはならないと主張している。大量破壊兵器の不拡散は両国にとって重要な課題である。ロシアを西側主導の国際経済体制に取り込んで、エネルギー開発でも西側とロシアの協調を進めるように主張している。

果たしてロシアに民主化を強く要求しながら両国の共通利益を追求するという離れ業は可能なのか?これについてアスランド上級研究員は、次のG8で議長国を務めるロシアは西側の要求する改革を推進してゆかざるを得ないと述べている。

注目すべきはタイトルにもあるようにアスランド上級研究員は元スウェーデンの外交官ということである。すなわちここでの主張はアメリカやイギリスの立場だけを反映しているのではない。アメリカを中心とした民主化の推進という考え方は、大陸ヨーロッパでも受け容れられていると見るべきである。日本人もこうした考え方の普及に乗り遅れてはならない。

民主化が進んだロシアからはプーチンを取り巻くKGB人脈は国営企業から一掃され、西側にとってもエネルギー開発がやりやすくなる。また最近になって問題になったように中国との軍事協力を進めてアメリカを牽制しようともしなくなるだろう。旧ソ連諸国への新帝国主義外交に見られるような、力の外交が影を潜めるからである。北方の巨人、ロシアの行方はヨーロッパにもアジアにも中東にも大きな影響を及ぼす。

そうした意味でも、このレポートには注目すべきである。

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