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2005年11月12日

ワシントン会議の報告:全米人気ラジオ番組にも「出演」

長らくご無沙汰していました。先の記事にも記したように、去る11月7日と8日にワシントンの国際貿易センター、通称ロナルド・レーガン・ビルにてカーネギー国際平和財団の大量破壊兵器拡散防止プロジェクトが主催する定例国際会議に出席しました。この会議は18ケ月おきに開かれ、カーネギー国際平和財団でも異例の大規模なものです。先の記事にも挙げたように大物ゲストが世界の核拡散の現状について講演を行なうのですが、ここに招待される参加者の顔ぶれも凄いもので、政府、メディア、ワシントンの有力シンクタンク、在米大使館、NGOなどの人達が世界各国から集まってきました。テーマごとに開かれるパネルでは、講演者と質問者が同じレベルで議論を交わす様子はすさまじいものです。というのも、招かれた参加者の多くは講演者にも劣らぬ専門家が揃っているからです。

この会議の先頭を切って講演を行なったのは、今年のノーベル平和賞受賞者となったモハメド・エルバラダイIAEA事務局長でした。エルバラダイ事務局長の講演で印象に残ったのは核兵器の拡散防止に最も現実的な対策をとるということで、そのためにはNPT(核拡散防止条約)にはこだわらないという点でした。エルバラダイ事務局長といえばイラクをめぐってブッシュ政権と何かと対立した印象が強かったのですが、インドに対するブッシュ政権の現実的対応を好意的に評価していたのは驚きでした。

またサムエル・ボドマン現エネルギー長官はブッシュ政権の核拡散防止政策について、ロシアとの協調を中心に述べていました。特に旧ソ連諸国からロシアへの高濃縮ウランやプルトニウムの運び出しとそうした核燃料の平和利用への転換での米露協調を述べていました。プーチン政権の権威主義化でアメリカとロシアの関係は必ずしも良好とは言えません。それでも核不拡散という共通の目標に向かって国際協調の道を歩むブッシュ政権を単独行動主義と批判するのはいかがなものでしょうか?

何と言っても今回のワシントン滞在で私にとって最大の場は、NPR(National Public Radio)の人気番組のトーク・オブ・ザ・ネーションに登場してしまったことです。この番組は様々な時事問題をゲストと一般聴衆が語り合うもので、日本でもAFN(米軍放送)のラジオで聴けます。当日8日の生放送では核兵器についての現在の情勢や歴史について司会者のニール・コナン氏がゲストを交えて語り合っていました。この日はカーネギー核不拡散会議の会場からの生放送ということで、一般聴衆だけでなく会場の専門家にもゲストに質問してもらおうという企画でした。NPRのスタッフからは会場を盛り上げる拍手の他に、あまり専門的なものに走らず一般聴衆にもわかりやすい質問にして下さいとの要請がありました。NPRが用意した紙に質問内容と氏名を書き、スタッフの選考を通過した者がゲスト・スピーカーに質問できるというやり方がとられました。

そうした要請を受けて核の歴史のコーナーに私が出した質問が採用され、マイクの前に進んでゲストに質問することになりました。内容は「朝鮮戦争とベトナム戦争でアメリカが核使用に踏み切らなかったのはなぜですか?」というものです。朝鮮戦争についてはユージン・E・ハビガー退役将軍が「使用しても効果に疑問があったと答えてくれました。ベトナム戦争については、ケネディ政権に入閣していたロバート・マクナマラ元国防長官が「使用に踏み切れば中国の介入を招く恐れがあり、アメリカが大量殺戮の汚名をかぶる懸念があった」と答えてくれました。

今回のカーネギー大量破壊兵器不拡散会議、そしてウッドロー・ウィルソン・センターの会議については今後の記事でも書いてゆきたいと思います。まずは、報告まで。

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コメント

こんばんは! 訪米お疲れ様でした。
【序論】の部分を拝読しただけでもその内容の詳細が興味津々です。「講演者と質問者が同レベル」というのが凄いですね。

デタント辺りの歴史的な流れをちょっと見とこうかなと思いました。

これからも自分の論説記事と併せてカーネギーとウィルソンのイベントについて書きたいと思っています。会議前日に訪れたワシントンの面白い所についても書きたいです。

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