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2006年2月17日

ブッシュ大統領2006年一般教書演説

去る1月31日に行なわれた一般教書演説の場で、ブッシュ大統領は内政と外交の両面で重要な問題を提起した。まずアメリカが対外関与に消極的であってはならないと断言した。反戦派のリベラルから激しい批判にさらされているとは言え、大統領が孤立主義をはっきりと拒否したことは多いに評価されるべきである。また、ブッシュ大統領は9・11のようなテロ攻撃を二度と起こさぬように、世界の自由と民主化へのあくなき追求の姿勢を示した。

ブルッキングス研究所のイボ・ダードラー上級研究員によると、ブッシュ大統領のこうした姿勢はイラクから撤退しないという政治的なメッセージである。早期撤退論者はネビル・チェンバレンのような敗北主義者というレッテルが貼られてしまった。ダードラー上級研究員はアメリカの対外関与には賛成ながら、一国中心主義でゆくのか多国間主義でゆくのか明らかでないという問題点を指摘している。(“Analyzing State of the Union”p9p11を参照 

さらにブッシュ大統領がイラクでの勝利を目指していることを強く打ち出したことは注目に値する。イラク平定を中途半端なままで撤退してしまえば、テロリストが勢いづくばかりか開戦以来の多国籍軍の努力が無駄になってしまうのは明らかである。問題は大統領がイラク人同士の武力衝突を乗り切る戦略を持っているかどうかである。今や武装勢力の標的は外国軍から国内の勢力争いの相手になりつつある。 

今年の一般教書では、危険な圧政国家としてシリア、ミャンマー、ジンバブエ、北朝鮮、イランが挙げられた。中でもイランは重要な課題となった。ブッシュ大統領は、イラクのシーア派蜂起への支援、レバノンとパレスチナでのテロ活動への援助、核兵器の開発といった問題でイランを厳しく非難した。現段階ではアメリカ軍の戦争準備が行なわれているからといって、開戦が迫っているわけではない。イラン問題は国連安全保障理事会に付託されることになる。実際に「悪の枢軸」や「最悪の独裁者あるいは最悪の人物が核兵器を保有する事態を見過ごさない」といった強い文言は使われていない。

最後に、メディアの注目が最も高かった「アメリカは石油依存症に陥っている」という問題について述べたい。ブッシュ政権は石油業界と緊密な関係があると見られているため、この文言には驚きを感じた者も多い。さらに、環境保護運動からは京都議定書の批准拒否や石油浪費経済といった観点からアメリカを非難する声が強かった。しかしアメリカの外交や安全保障政策を注意深く検証すれば、今年の一般教書でこのような問題をとりあげても何ら不思議でないことがわかる。.

アメリカは国家安全保障の観点から、環境汚染の少ない代替エネルギーの開発に取り組んできた。1991年より始まったナン・ルーガー・イニシアチブによってロシアの大量破壊兵器削減とともに、核開発の技術や科学者をきれいなエネルギーの開発に転用をはかった。去る11月に私が参加したカーネギー国際平和財団の大量破壊兵器不拡散国際会議では、サムエル・ボドマン、エネルギー長官が核兵器の削減によって核技術の平和利用への転用が進み、二酸化炭素の排出量が削減されると述べていた。 

ロシアと旧ソ連諸国だけがアメリカの援助を仰ぐわけではない。インドに対してはイランからの天然ガス・パイプライン計画を停止させるために、ブッシュ政権は核の平和利用への技術援助を申し出た。

アトランチック・レビューでは、アメリカよりもヨーロッパの方が中東からの石油に依存しているという興味深い事実を指摘している。ブッシュ政権と石油業界との緊密な関係を批判する者は自分達の主張を再検討すべきである。誰が大統領であれ、一度選出されてしまえばアメリカ合衆国の大統領として行動するようになるものだ。けちな陰謀理論など無意味である。

ともかく、反米的な論客によるピンポイント攻撃を盲目的に信用してはならない。アメリカの内政と外交に対する長期的な観測、包括的な理解、そして注意深い分析が必要である。

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アメリカのリーダーシップ/世界秩序」カテゴリの記事

コメント

一言で言ってしまえば、米国の世界戦略は今後もネオウィルソニアンとして振舞っていくことだ、という宣言ですね。
石油業界との癒着云々という説にころっと騙されるのは、地政学的観点の欠如と覇権国家の立場に対する無理解から来るところが大きいのでしょう。エネルギー政策や核不拡散と絡めた環境政策というのは、覇権国家としての「責務」を果たしているように、私には見えます。

投稿: 猫研究員。 | 2006年2月18日 22:38

結局、どこかの石油会社の社長やCEOではなく、合衆国の大統領として行動するという単純な事実がなぜか歪曲されています。

京都議定書の批准拒否はアメリカのイメージを落としましたが、それでも内政および外交政策を総合的に見れば一部の環境運動のプロパガンダに惑わされることはないと思います。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年2月19日 00:37

トラックバックどうも!!

京都議定書の内容をきちんと読んでいただければ、温暖化が全く定かでは無い事が書かれていることがわかります。序文だけ読むと、政治的に書き換えられた文章ですから、温暖化対策を行う必要性のみかかれています。元々序文にも、温暖化の科学的根拠は確立されていないと書かれていたのですが、排除されたそうです。

MikeRossTky

投稿: MikeRossTky | 2006年4月 2日 13:21

温暖化と二酸化炭素排出との関係は定かではないかも知れませんが、実際に温暖化を疑わせる現象は起きています。ブッシュ政権も今年の一般教書演説にある通り、石油資源と温暖化の問題に取り組んでいることをもっと全世界にわからせる必要はあります。さもないと国際政治でのアメリカのリーダーシップに支障をきたすのは由々しきことです。

私も別に海面が60mも上昇するなど信じているわけではありませんが、サンゴ礁の島国(モルジブやポリネシア諸国など)なら海水の温度が2、3度上昇しただけでもサンゴの死滅によって水没の恐れはあります。

ディエゴ・ガルシア島が水没してしまえばアメリカ軍のインド洋地域での作戦行動も進めにくくなります。

京都議定書が政治的な文書だというのは間違いありません。特にドイツのように旧東独の旧式工場を西側の最新技術のものに代えてしまえば、二酸化炭素の排出量を大幅に削減できます。こうした国では、議定書を守っても経済的な負担は殆どないわけです。

地球が人類がと言いながら、各国の国益がぶつかり合うのは宿命のようです。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年4月 9日 23:35

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