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2006年2月 5日

シャランスキー、注目の発言!:パレスチナの選挙を振り返る

べストセラーにもなった「なぜ民主主義を世界に広めるのか」(原題:The Case for Democracy)の著者として有名なナタン・シャランスキー氏がパレスチナの選挙結果について注目すべき発言をしている。現在、シャランスキー氏はイスラエルの次期選挙で保守政党のリクードから立候補予定である。氏の著書はアメリカのブッシュ政権が目指す世界の民主化という外交政策の指針となっていることはよく知られている。実際にアフガニスタンとイラクの民主化によってテロの脅威を絶とうとしたのは、シャランスキー氏の著書に負うところが大きい。

そのシャランスキー氏が2月2日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに寄稿した”The Price of Ignoring Palestinians’ needs”(パレスチナ人の声を無視した代償)という論文で次のように述べている。

先の選挙でハマスが勝利したのは、イスラエルをはじめ世界の民主主義陣営がパレスチナ人の声に耳を傾けなかったことから当然の結末である。

イスラエルも国際社会もヤセル・アラファトやマフムード・アッバースといったパレスチナの穏健派に対して巨額の支援を行なったものの、ハマスのような過激派は排除してきた。アメリカもイスラエルもEUもパレスチナ自治政府に改革を強く要求すれば、政府が弱体化してハマスを躍進させることを恐れていたようだ。だが、そうした態度がパレスチナ住民からの不信感をかってしまった。

外から見ればパレスチナ住民は平和共存よりテロ闘争の政党を選んだように思えるであろうが、ハマスとファタハのイスラエルに対する姿勢がどれほど違っていてもパレスチナ人にとって余り意味を持たない。実際にはタンジムやアル・アクサ旅団とったファタハの下部組織もイスラエルに対するテロ活動を行なっている。中にはマルワン・バルグーティのようにイスラエルで終身刑を言いわたされたテロリストまでいる。

ファタハかハマスかという選択は、自分達の利益だけを考える腐敗したテロ集団か住民の利益をも考える誠実なテロ集団化の選択に過ぎない。ハマスを選んだパレスチナ住民が期待しているのは、腐敗の追放、法と秩序の回復、そして真の改革の推進である。実際に選挙でのハマスのスローガンは「ユダヤ人の追放」ではなく「変化と改革」であった。

ハマスが国際社会から支持を得るには次の二つの条件を満たす必要がある。第一はイスラエルの根絶という目標を放棄し、テロに反対の立場を明確にすることである。第二にはパレスチナに自由と民主主義をもたらすことである。パレスチナの新政権がこれらの要件を満たさないなら、イスラエルをはじめ自由世界はハマスとの対立を余儀なくさせられる。だが、パレスチナで上記の二条件を実現しようと努力する個々人や組織への支援は惜しんではならない。

今回の選挙で中東の民主化について懐疑的な見方が広まることが懸念される。

今回は公正な選挙が行なわれたが、これで民主主義が保証されるわけではない。法と秩序が徹底せず、民主的な制度も整わない中で行なわれた選挙は最悪の結果をもたらしかねない。

中東の民主化政策は挫折したわけではない。パレスチナ住民が希望ある将来を築きたいなら、自由世界も手を差しのべるべきである。そうしなければ、結局は自由世界も安全を脅かされることになる

シャランスキー氏は以上のように述べている。ことはパレスチナにとどまらない。冷戦期には共産主義の脅威を封じ込めるために、アメリカをはじめ西側諸国は独裁政権とも妥協してきた。テロとの戦いでは全く違う対応が迫られている。ともかく、ハマスの今後の動向は注意深く見守る必要がある。

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