自由の格付け:フリーダム・ハウスの指標
現在のアメリカ外交の重要な課題の一つが自由と民主主義の拡大である。この目的を達成しようというなら、政治プロセスや市民の権利を査定する必要がある。この問題について書こうと思ったのは、真魚さんとマイク・ロスさんのブログ討論を読んでからである。
二人とも私にとってブログ上の友人である。真魚さんはJ・F・ケネディ大統領のリベラル政治を信奉する日本人である。一方でマイクさんはユニークなバックグラウンドの持ち主である。神戸育ちのアメリカ人で、徹頭徹尾のアメリカ保守主義者でありながら数年前に日本国籍を取得している。
二人の論争に参加した私は、自由と民主主義について客観的なデータを参照する必要があると感じるようになった。そこでフリーダム・ハウスのホームページを閲覧してみた。
フリーダム・ハウスは影響力のあるアドボカシー(市民政策提言)団体で、アメリカのリーダーシップによって自由を広める目的でエレノア・ローズベルト大統領夫人らによって設立された。ウクライナのオレンジ革命では、学生の反体制運動への支援で中心的な役割を果たした。フリーダム・ハウスの委員会には元政府高官、財界や労組の指導者、学界、文壇、メディアといった各界の人物が名を連ねている。フリーダム・ハウスが提起する人権問題は、世界の民主化というアメリカ外交の中核課題で重要なものになっている。フリーダム・ハウスの評価がどのようなものか、一見の価値がある。
フリーダム・ハウスは現状を1から7の7段階に分けている。数字が小さいほど良い評価となっている。その結果については「各国の現状2005年」に示されている。最高の評価は1-1、すなわち政治的権利(PR)と市民の自由(CL)の両方で1ランクをマークすることである。当然のことながら、以下の欧米民主主義国がこの評価となった。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、オランダ、ベルギー、等
注目すべきは「新しいヨーロッパ」に1-1という評価になった国が目立つことである。こうした国々は民主主義になってから日が浅く、旧共産体制下にあった国がこれほど急速に自由な社会になれるのかは疑問の余地がある。ともかく、「新しいヨーロッパ」では以下の国が1-1となっている。
ポーランド、エストニア、チェコ、スロバキア、スロベニア、ハンガリー
日本は本当に自由な国なのだろうか?フリーダム・ハウスの指標では政治的権利で1、市民の自由では2という評価になっている。韓国は1-2、台湾は2-1なので、日本が両国より悪いということはない。大西支局長が言うほど事態は悪くない。だがこれらの国の民主主義は欧米の水準には達していないので、フリーダム・ハウスの評価は甘過ぎるのではないかと思える。日本の専門家として名高いカレル・バン・ウォルフレン氏は日本社会のシステムがアカウンタビリティ(説明責任)に欠けることを”The Enigma of Japanese Power”や“Keeping the People Ignorant”といった有名な著書で述べている。こうした視点に立てば、フリーダム・ハウスは日本に甘過ぎる評価を下していることになる。韓国は権威主義的な警察、反日あるいは反米の感情を煽り立てる政治を考慮すれば、日本以上に評価を下げねばならないと思われる。
フリーダム・ハウスの評価はどのように行なわれるのだろうか?方法については以下のように記されている。
「フリーダム・ハウスでは自由のあり方について各国の文化を尊重している。私達の方法は国連人権宣言に基づいて行なわれた調査によって評価を下している。この基準は地理的位置、民族宗教構成、経済開発水準を問わず、全ての国と地域に当てはまる。」
途上国の中にも1-1の評価を得た国があることは注目すべきである。確かにフリーダム・ハウスの評価は公平で、欧米あるいはアングロ・サクソン中心主義ではない。以下の途上国が1-1の評定であった。
バルバドス、カポベルデ、チリ、コスタリカ、キプロス、ドミニカ連邦、キリバス、マーシャル諸島、マルタ、モーリシャス、ナウル、ツバル、ウルグアイ
最後に、何かと話題になる国、すなわちイラク、アフガニスタン、イラン、北朝鮮、中国、インドはどのような評価となっているか見てみたい。アメリカ主導の介入が行なわれたイラクとアフガニスタンであるが、現状はまだ自由な国というには程遠い。イラン、北朝鮮、中国については当然ながら悪い評定である。ブッシュ政権が信頼にたる民主主義国であるとして核協定を結んだインドであるが、フリーダム・ハウスは2-3の評価しか与えていない。悪い評価ではないが、インドに過大な信頼を置いてはならないようだ。
フリーダム・ハウスの指標は完全ではないかも知れないが、文化的なバイアスがないことだけは明らかである。さらに重要なことには、この指標がアメリカの政策形成に重要な影響を与えるということである。共和党政権であろうと民主党政権であろうと、民主主義の拡大によるテロ集団とならず者国家の打倒はアメリカ外交の重要課題となる。だからこそ、このNGOから目が離せない。


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