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2006年4月21日

英国、イラク・アフガニスタン平定と民主化の使命を主張

イギリスのトニー・ブレア首相は、世界の民主化とテロ打倒のためにもイラクとアフガニスタンの平定が是非とも望まれると明言した。

まずロンドンにある外交政策センターというニュー・レイバー系のシンクタンクでブレア首相が行なった演説の内容を見てみたい。ブレア首相は世界の民主化のためになぜ英米両国がイラクとアフガニスタンに駐留し続けなければならないかを明解に述べている。この演説の原稿はテロとの戦いを理解するうえで是非とも一読を薦めたい。(演説のビデオはこちら

西ヨーロッパ諸国では911以降のアメリカの政策は過剰反応だという意見が多数派を占めているが、ブレア首相はそうした考え方は外野席からの高みの見物で優柔不断だと一蹴している。さらに、民主化に向けた歴史的な転換期にあるイラクとアフガニスタンの両国を支援するためにも英米の駐留が必要だと訴えている。また、イラクとアフガニスタンでの英米の政策を批判する世論には次のように反論している。

「現在、ヨーロッパや日本で政権をとろうとするならば反米は格好のスローガンである。私は数週間前にスロバキア人の若い学生から米英のイラク介入に批判的な質問を受けたが、アメリカがその学生の国に自由をもたらさなければそのような質問はとてもできなかったであろうし、ましてや返答を得ることなど叶うはずもないことは明らかである。」

また、ブレア首相はアル・カイダとイランやイラク旧バース党員との関係はないという意見に対しては次のように明解な反論を述べている。

「確かにイランとアル・カイダは敵対関係にあり、彼らのテロ活動は支援していないかも知れない。だが歴史をふり返って見ると、同盟とは常に変化するものである。両者のイデオロギーから見れば、我々は敵である。」

さらに続けて、「『我々』とは欧米のことではない。・・・・・『我々』とは、宗教的な寛容、開かれた社会、民主主義、世俗的な司法に保障された自由と人権を守り抜こうとする者のことである」。ブレア首相は最も重要なメッセージを以下のように述べている。

「テロリストは、イラクやアフガニスタンは言うに及ばずレバノンでもその他の民主主義への道を歩む国々で成功を収めれば、アラブあるいはイスラム世界の民主化は頓挫してしまうことをよくわかっている。逆にこうした国々でテロリストが敗北してしまえば、民主化は進み、イラクの場合で言えば急速な発展への途を歩むであろう。そうなれば、テロリスト達の価値観は根底から正当性を失ってしまう。だがこれこそがアメリカ、西側先進国、その他の諸国についてのテロリストのプロパガンダに対する最も効果的な返答である。」

オーストラリアを訪問したブレア首相は議会で同じような内容の演説を行なった。英豪両国はイラクで緊密なパートナーとなっているので、この演説は国際社会に対してテロに対して強固な同盟がいかに重要かを再認識させるメッセージとなる。(演説のビデオはこちら

ここでもブレア首相はイラクとアフガニスタンでのイギリスの政策を以下のように主張している。

「勝利を収めるためには武力だけでなく価値観の戦いにも勝たねばならない。我々の価値観とはアメリカのものでもアングロ・サクソンのものでもなく、人類共通のもので世界市民に普遍的なものである。」

トニー・ブレア首相はアメリカとの強固な同盟関係が世界の平和と繁栄に不可欠な理由を以下のように述べている。

「アメリカ外交で懸念すべきことは、アメリカが積極介入に走ることではない。本当に危険なことはアメリカが対外関与に消極的になることである。我々にはアメリカの積極関与が必要である。現在の世界が直面している問題で、アメリカの力なしに解決できるものは何もないという現実を直視すべきである。我々がなすべきことは、問題を安全保障に留めないことである。我々の安全保障とは我々の価値観にあり、その価値観とは恐怖からの自由だけでなく正義と公正に基づくものであるなら、問題は安全保障にはとどまらず、同盟とはアメリカに限定されたものではない。」

ブレア首相のオーストラリア訪問からほどなく、ジャック・ストロー英国外相とコンドリーザ・ライス米国国務長官は4月3日にイラクを電撃訪問した。こうした抜き打ち外交はブッシュ大統領がイラクとアフガニスタンで過去に行なっている。バグダッドでの記者会見で英米外相はイラクの民主化のために、武装勢力の打倒とテロの原因の根絶に精力を注ぐ意志を示した。両外相はイラクの主権尊重と現在進行中の新政府設立に向けた動きを支持すると述べた。

ブレア内閣の外交政策をもっと理解するには、フォーリン・ポリシー誌の2005年5月号に掲載された”Think again”という論文を推薦したい。同誌のジェームス・G・フォーシス編集助手は、ブレア首相をブッシュ政権のプードルと見るのは誤りだと記している。ブレア首相はアメリカに対する協力の見返りに影響力を得たが、この政策を有効なものとするためにはそうした影響力の成果を高らかに口にすべきでない。トニー・ブレア首相による影響力の行使がなければ、ジョージ・W・ブッシュ大統領がイラク問題で国連決議を求めることはなかったであろう。また、イギリスの口添えがなければ、イラン問題でアメリカがヨーロッパを支援することもなかったであろう。

さらにフォーシス氏はトニー・ブレア首相が外交政策に関してはネオコンであると記している。ブレア首相は世界の民主化のための積極介入という大プロジェクトを支持し、必要なら武力行使も躊躇しない。米国のネオコン同様、ブレア首相もアメリカのリーダーシップなしには世界は動かないと信じている。ブレア首相は機会あるごとにアメリカの積極関与の必要性を説き、孤立主義に陥らぬように訴えている。2003年にアメリカ議会で演説を行なった際には、ブレア首相はアメリカがリーダーシップをとらねばならない理由を次のように述べている。「歴史の中での今この時にアメリカが世界のリーダーとしての使命を背負っている以上、それを全うするべきである」。ブッシュ政権のブレーンでもここまで説得力のあることを言える者はいない。

ブレア首相の演説は国際社会に対する重要なメッセージである。イラクとアフガニスタンの民主化に成功すれば、全世界に民主主義と安定を広められる。アメリカの最も緊密な戦略的パートナーとなることは隷属関係となる訳ではない。むしろアメリカを世界に関与させるべきである。ネオコンのアメリカの方が孤立主義のアメリカよりもずっと良い。 

どの同盟国の指導者もトニー・ブレア首相ほど重要な地位を占めていない。微妙なアウトサイダーだからこそ国際政治でのアメリカのリーダーシップの正当性を高められる。これはディック・チーニー副大統領からコンドリーザ・ライス国務長官、ドナルド・ラムズフェルド国防長官まで、政権内の閣僚の誰にもないポイントである。英米特別関係が世界の平和と安定の礎であり続けているのは、それなりの理由がある。ヨーロッパと日本の国民はこのことを理解する必要がある!

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コメント

いつも、楽しく拝読させております。
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貴殿のサイトと私のサイトは取り上げている内容も結構似ており、貴殿の意見、いつも勉強させていただせいています。
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こちらのサイトはリンク完了しております。(問題がある場合もご連絡ください)
吉報をお待ちしております。
よろしくご検討のほど、よろしくお願いいたします。
※ご連絡方法がわからなかったため、コメント欄でのお願いの無礼、何とぞ、お許しくださいませ。

http://spring.livedoor.biz/

投稿: spring | 2006年4月22日 19:06

どうもありがとうございます。こちらのブログも私のメールアドレスにリンクしてあります。今後も宜しくお願いいたします。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年4月23日 16:30

トラックバックありがとうございます。

 私もブレア首相が演説で述べたのとほぼ同じ考えで、合衆国が消極主義・孤立主義に陥ることの方が危険であると思います。
 イラク・アフガニスタン制作に関しては‘圧政・弾圧からの解放’が支持理由で、‘民主主義やその価値観などを広める’ということには保留しているものの、なかなかこれだけ詳しい記事に接する機会がなかったので、とても参考になりました。
 機会があればぜひ他の記事も読ませていただきます。

投稿: かば | 2006年4月26日 11:49

どうもありがとうございます。ブレア首相の演説は英米同盟だけでなく、日米同盟にも多いに参考になると思います。丁度、今はグアムへの基地移転について日本の負担が問題になっていますが、これも日本のこれまでの政策によるところが大です。

イギリスは対米同盟によって普遍的な理念の普及や影響力の行使という発想があるのに対し、日本はアメリカに守ってもらうための同盟しか考えていません。小泉首相だろうと、安倍氏、小沢氏、・・・・皆同じようなものです。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年4月26日 21:41

There are some really good web resources on sign language.

投稿: phenergan | 2006年5月14日 15:40

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