« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »

2006年5月27日

書評:日米永久同盟

これまで当ブログではアメリカ人やヨーロッパ人による英文の論文を元に議論をしてきたが、この度は日本人による日本語の文献をとりあげたい。それは「日米永久同盟:アメリカの『属国』でなにが悪い!」(光文社)と題されたもので、著者は在日アメリカ海軍司令部の長尾秀美渉外報道専門官である。この本の魅力は何と言っても主張が明快なことである。

長尾渉外報道専門官は日米同盟と今後の世界について以下のように問題を問うている。

アメリカと本気で同盟を続ける気はあるのか?

もし、アメリカの方から「日米同盟」の破棄を言ってきたら、日本はどうするのだろうか?その対策がないまま、なぜ、小泉首相はアメリカから逃げ回ってばかりいるのだろうか?なぜ「ブッシュのポチ公」と言われながら、じつはその実態がなにもない外交を続けているのだろうか?

そうした中で米軍再編成を機に軍事的な一体化の進む日本を「アメリカの属国」と批判する声に対し、長尾氏は属国なら属国なりに日米同盟をどのようにしてゆくべきかを日本国民が真剣に考える必要性を説いている。また日米同盟の強化に代わる日本外交の指針をバッサリと切り捨てており、その論旨は明快で気持ち良い。

まず序章では日本国民一般に信じられている「ブッシュ政権と小泉政権の良好な関係」というフィクションを徹底的に否定している。日米間では米軍再編に伴って沖縄駐留部隊の移動などの問題が浮上してきたが、小泉純一郎首相の関心は普天間基地の返還によって沖縄県民の歓心をかうことだけだと厳しく批判している。アメリカ側が兵力再編の理念を議論しようとしているのに、日本側はそんなことにはお構いなしだったという。

驚くべきことに小泉首相は昨年の9月に予定されていた日米首脳会談を突然キャンセルしたのは、米軍再編ばかりか牛肉輸入問題といった両国間に山積する難題に対処する自信がなくで逃げ回っていたからだという。仮にもアメリカ側が国賓待遇で小泉首相を迎えようとしていただけに、首相が日米同盟をどのように考えているのか疑問である。日本のメディアでこれをとりあげたのは「週刊文春」だけだという。その他にも第二次大戦終結60周年記念式典についても日本は敗戦国だと言って参加を渋ったりもした。こうした意識には私は怒りを感じた。何よりもアメリカのお墨付きで歴史認識問題の苦しみから解放されるというのに。

第一章では米軍の事故は何かと誇大報道をしたがるメディアの体質を厳しく批判している。また日米地位協定に関する日本国民の誤解にも触れている。この章で重要なことは、在日米軍の存在がいかに東アジアからインド洋にかけての平和と安定に寄与しているかを力説している。そして注目すべきは「属国なら属国らしく、せめて信頼関係だけは築くべき」という主張である。どういうことかと言うと、日本は自らの世界戦略も意志も持てないのなら日米同盟という基軸が揺るいではならないという。これはアメリカに盲従せよという意味ではなく、日本が主体的な行動などできない現実を直視したうえで。自由と民主主義という共通の普遍的価値観に基づく信頼関係を築くべきだと長尾氏は述べている。

二章から五章までは歴史考察で、日米関係と日英同盟について述べている。歴史をふり返って学ぶものは多いが、中でも同盟の意義が何たるかを説いている。すなわち同盟とは片務的ではなく双務的でなくてはならないと説いており、日英同盟の廃止もこのためだという。同盟の保護がなくなった日本が大東亜共栄圏などという狂気の構想で自滅したのは言うまでもない。私が気になるのは、日本の政治家は口をそろえて「アメリカに守ってもらうため」の日米同盟の必要性ばかり訴えることである。イギリスであればもっと双務的な同盟関係を口にするのだが。

六章では国連がいかに頼りにならないかを述べている。実際に長尾氏が言うように、国連の平和維持機能など、まともに働いたためしがない。どうして国連が頼りにならないかを分析したうえで、何と日本の国連脱退まで提案している。実際に国連への分担金に見合った発言力を持てないなら、日本は国連を脱退してその資金を二国間援助や中小企業の救済にでも使う方が有効だと言う。さらに日本より分担金が少なく、しかも日本のODAまで受け取りながら、国連の場で拒否権を行使して自国の国益をゴリ押しする中国を強く批判している。

さて国連を脱退したら日本はどうすべきか?七章では中華帝国やロシアの脅威に対抗するために日米同盟を100年に延長し、イギリス、オーストラリアを加えた極東民主主義平和連合艦隊の構想まで述べている。

最終章の構想はともかく、長尾氏の論点はとにかくアメリカの力なしに日本外交は成り立たないという現実直視の姿勢である。そして国連への妄信や念仏平和主義を徹底的に否定する議論には共感が持てる。最後に日米永久同盟の基盤が共通の普遍的価値観だと、筆者が再三にわたって強調していることは見逃せない。さもなければ、日本国民は中華帝国の傘下で共産党支配下の平和と安寧の下に過ごすことになると記している。特に普遍的価値観の共有ということは見逃してはならない。ネトウヨは中国の脅威にヒステリックになるばかりで、これを念頭に置かないからである。

| | コメント (15) | トラックバック (1)

2006年5月19日

パックス・アメリカーナの三銃士?:英国、日本、インド

アメリカン・エンタープライズ研究所の“National Security Outlook December 2005”で興味深い論文を見かけた。AEIのトマス・ドネリー常任研究員が書いたThe Big Four Alliance: The New Bush Strategy”というもので、以下のような主張をしている。

ここ半年の間でブッシュ政権は日本とインドとの「戦略的パートナーシップ」を強化した。従来からの対英「特別関係」に加えて、冷戦後の世界では真の同盟とまではゆかなくてもグローバルな戦略提携が見られるようになっている。そうした戦略提携で重要になるのは政治的な利害関係と価値観の共通する国同士での軍事協力である。パックス・アメリカーナを支援するパートナーがこれまでより多く出てくることは、大いに期待できる。

冷戦後の新たな脅威に対処するためにアメリカは主要同盟国と新たな戦略パートナーシップを再構築する必要がある。私は基本的にドネリー氏の考え方に賛成だが、論文が発行されてから事態がどのように推移したか検証する必要がある。イギリスとの特別関係はこれからも強固であろうが、日本とインドとの同盟関係にはいくつかの問題点もある。

まずドネリー氏の論文を見てみたい。それによるとブッシュ政権への批判が高まったのはイラク攻撃のためではなく一国中心主義のためだという。冷戦後の世界で自由主義的世界秩序を強化してゆくためには、アメリカ、イギリス、日本、インドのビッグ4を中心とした新しい同盟関係を築く必要があると述べている。ドネリー氏はビッグ4には以下のような戦略的な原則があると言う

(1)拡大中東地域における過激派、独裁者、核拡散の脅威に対処する

(2)中国の脅威に対抗する

(3)民主主義の拡大により平和を築く

(4)軍事力の行使の必要性を認める(日本について、これは疑わしいが)

こうした共通の戦略目的だけでなく、三ヶ国にはユーラシア大陸周辺に位置し、勢力均衡を担う要衝となっている。イギリスはヨーロッパに、日本はアジアに、インドは中東と中国に対してである。ドネリー氏はビッグ4の中心はアメリカであるべきだと主張する。冷戦のしがらみから解き放たれた今、アメリカはブッシュ・ドクトリンで述べたように世界の自由と民主化のために邁進できる。この目的を達するために、ドネリー氏はドナルド・ラムズフェルド国防長官が言う臨機応変の「有志連合」に代わってより恒久的な提携関係が必要になると主張している。この議論には私も賛成で、それぞれの国ごとに検証したい。.

最も安定して信頼のできるパートナーはイギリスである。ブレア政権になってから英米特別関係は一層強化された。トニー・ブレア首相はビル・クリントン大統領(当時)に対して国連決議なしでもバルカン紛争に介入するよう要請した。ジョージ・W・ブッシュ大統領になってもイラクとアフガニスタンでの政策を支持している。

ブレア政権以後も英米特別関係は強固であり続けるだろうが、問題はいかに優秀とはいえイギリス軍の規模が小さいことである。海外での作戦をこれからも積極的に行なおうとするうえで、これは問題である。そうした事情にもかかわらず、特に日本のようにアメリカとの緊密な戦略提携を模索する国にとって英米特別関係は目標となるべき基準と言っても過言ではないとドネリー氏は言う。

アーミテージ・レポートの出版を機に、日本は対米同盟を英米同盟に準ずるものにしようとしている。同レポートでは日本の平和憲法の再考を促している。現在、日本は中国と北朝鮮の脅威に直面している。そのため日本にとってアメリカの存在は不可欠であり、ミサイル防衛のような日米協調関係を深めている。さらにイラクとアフガニスタンでのアメリカ軍の作戦行動を支援するために自衛隊を派遣している。

だが日本の自衛隊には作戦行動経験がない。さらに憲法と政治的な制約もあって防衛費はGDPの1%にとどまっている。そのため、日本の現在の能力は潜在力を大きく下回るとドネリー氏は述べている。

9・11以降のインドはアメリカにとって新たな戦略的パートナーとなった。インド軍はカシミールでのイスラム過激派テロとの戦いの経験も豊富である。また、アメリカの政策形成に関わる者の中にもインドを中国封じ込めに役立つ存在と見る向きもある。だがインド軍の装備が依然として冷戦期のソ連製で占められているのは問題であるとドネリー氏は指摘する。アメリカと緊密な作戦行動をとるうえで、これは障害となる。

ドネリー氏はビッグ4同盟をまだ構想の域を出ないものだと言う。ブッシュ政権は戦略的協調関係を推し進めてはいるが、共通の国益と価値観があるからと言ってビッグ4のパートナーシップがパックス・アメリカーナの礎となるかどうかは予断を許さない。

私は基本的にドネリー氏に賛成だが、この論文ではそれぞれの国が抱える問題点について述べていない。その後の情勢がどう変化したか、国別に論じてみたい。

まずイギリスだが、次期首相の最有力候補であるゴードン・ブラウン蔵相はニュー・レイバーの政策を継承するであろう。だが労働党左派は現政権の政策が党のイデオロギー的基盤であるフェビアン主義からかけ離れているとして巻き返しをはかることもあり得る。先の選挙では労働党が敗北を喫したので、その後の政治的推移を見守る必要がある。

日本については、若干の懸念材料が見られる。数年前に沖縄でアメリカ兵が地元の小学生をレイプした事件があった。これは沖縄県民の怒りに火をつけ、米軍基地の沖縄への過剰な集中によって沖縄が負担に耐え続けていると訴えるようになった。以後、日本のメディアには米軍基地を厄介者のように報道する会社もある。また最近の日米協定で沖縄の基地をアメリカ領内のグアムに移転する際に日本が経費を負担することになった。こうしたことから反米感情が噴き出している。

さらに中国、韓国との緊張関係によってナショナリズム感情が刺激され、第二次大戦中の日本の行動を正当化する世論も台頭している。これは明らかに自由と民主主義というビッグ4の共通の価値観とは相容れない。

インドとの関係で最も重大な事項は米印核協定である。オピニオン・リーダーの中にはこの協定によって現行の核不拡散体制が崩壊すると警告する者も多い。ヘンリー・キッシンジャー氏はインドとの戦略提携には肯定的だが、インドを中国封じ込めに利用することには反対している。インドは自国の国益に沿って行動するからである。また、アメリカはインドとパキスタンの間のバランスをうまくとらねばならない。

インドはアメリカと共通の価値観を有しているのだろうか?フリーダム・ハウスの指標では、インドは「自由な国」に分類されているが、それがトップクラスという訳ではない。ブッシュ政権はインドを信頼の置ける民主主義国と見ているが、この国には注意深く接する必要がありそうである。

イギリス人の歴史学者であるニール・ファーガソン、ハーバード大学教授はアメリカがレジーム・チェンジよりさらに深く世界に関わるだけ持続的な意志を有しているかという問題提起を行なっている。ユーラシア大陸周辺の要衝国との有効なパートナーシップ築けるかどうかが、この問題の鍵になると私は信じている。今後の記事で、国別の戦略的パートナーシップについて述べたい。

| | コメント (2) | トラックバック (3)

2006年5月10日

米国リベラル派の巻き返しなるか?:新興シンクタンクを検証

今年は中間選挙の年である。重要な問題の一つは、リベラル派が巻き返すかどうかである。CBSとニューヨーク・タイムズが行なった世論調査によれば、ブッシュ大統領の支持率は就任以来で最低の31%まで落ち込んだ。現時点では44%の有権者が民主党に、33%が共和党に投票すると答えている。

世論調査の結果は移ろいやすい。リベラル派が真剣に政権を取ろうというなら、国民から本当の信頼を得るための政策ビジョンを示さねばならない。さもなければ、現政権への批判だけに終わってしまう。

2003年にビル・クリントン政権のジョン・ポデスタ大統領首席補佐官が「アメリカ進歩的政策センター」(CAP:Center for American Progress)というリベラル派のシンクタンクを設立し、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)やヘリテージ財団といった保守派のシンクタンクに対抗しようとしている。現在のところ、リベラル派の有力シンクタンクは皆無と言っても良い。ブルッキングス研究所は民主党との関係が深いとはいえ、イデオロギー色が濃厚というわけではない。さらに規制の問題ではAEIと共同プロジェクトを立ち上げている。その他にも政治的な影響力の強いシンクタンクは多いが、外交問題評議会、カーネギー国際平和財団なども不偏不党ないし中道派である。「新世紀アメリカのプロジェクト」はネオコンであり、ケイトー研究所はリバータリアン(自由市場経済至上主義)である。

ここまで読めばわかるであろうが、政策立案に関して言えばリベラルはまだまだなのである。実際に、テロとの戦いに限ってみると共和党が40%の支持を得ているのに対して民主党は35%に過ぎない。そうした事情から、合衆国と世界が直面する現在の危機をリベラルが本当にうまく対処できるのか検証することが重要である。

まず、このシンクタンクの設立目的を見てみたい。CAPのモットーは「強く、公正で自由なアメリカのための進歩的な構想」である。この目的のために、「アメリカ進歩的政策センター」は内政、経済から安全保障にいたる広い範囲にわたる政策研究を行なっている。

外交問題では以下のような目的を述べている。

当センターは強力で有効な軍事組織を作るべきだと主張している。そしてアメリカの本土防衛に全力を尽くすとともにテロと戦い、ボーダーレスな脅威への対処能力を高めるべきだと訴えてゆく。またアメリカの国益を守るためにも同盟国との関係を強化し、法の支配を徹底させるためにも多国間機関とも連携を強めるべきだと信じている。

従来のシンクタンクは違い、反ブッシュ政権の方針を明確に打ち出している。また、広い範囲にわたる政策について一般市民への啓蒙活動にも力を注いでいる。CAPには実現できるだけの政策があるのだろうか?昨年10月にCOMBATING CATASTROPHIC TERROR: A SECURITY STRATEGY FOR THE NATION”というレポートを出版したが、これはクリントン政権下のマデレーン・K・オルブライト元国務長官をはじめとする専門家が執筆している。このレポートではイラクからの撤退が主張されているが、その後をどうするかについては述べられていない。興味深いことにはリベラルの識者であっても現政権と同様に中東の民主化をアメリカ外交の重要課題と位置づけていることである。

アメリカと世界がどうなるかを見通すためには、選挙の結果だけに注目するような近視眼的思考は良くない。共和党であれ民主党であれ、選挙での勝利は目的でなく手段に過ぎない。リベラル派は現在の危機にもっとうまく対処できるのだと国民を納得させる必要がある。テロとの戦いについては共和党の方が民主党より支持率が高いという事実を忘れてはならない。

リベラル派は現政権よりもアメリカと世界が抱える現在の難題にうまく対処できるのだろうか?答えは彼らの政策ビジョンにある。だからこそこの進歩派シンクタンクの動向を見過ごせないのである。

| | コメント (10) | トラックバック (1)

2006年5月 7日

米国こそ頼れる巨人 (The Colossus in Need)

200604281_p042806pm0188jpg515h

「北朝鮮拉致被害者家族の会」の横田早紀江さんらと面会するジョージ・W・ブッシュ大統領。4月28日金曜日。於ホワイトハウス大統領執務室

撮影:ポール・モース(ホワイトハウス専属カメラマン)

アメリカの外交政策に批判的な者は、最後に頼れる巨人がアメリカであるという事実を銘記すべきである。イラク戦争以来、世界各地の左翼勢力がアメリカのリーダーシップに対してネガティブ・キャンペーンを繰り広げ、アメリカこそが世界平和に対する最大の脅威であると言いふらしている。これは明らかに間違いである。本当の脅威はテロリストとならず者国家である。アメリカなき世界がどのようなものか考えてみて欲しい。国際政治のオーソドックスな理論によれば、アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている。

ここで最近の二つの事件について触れたい。上の写真を見て欲しい。ブッシュ大統領が北朝鮮の拉致被害者の母親である横田早紀江さんと4月28日に面会した。早紀江さんの娘は30年近く前に北朝鮮の工作員に拉致された。数百人の日本人が拉致されたと推定されている。さらに多くの韓国人が北朝鮮に拉致されたと推定されている。北朝鮮は拉致した日本人と韓国人を自国のスパイ養成に利用している。ブッシュ大統領は日本と韓国の指導者達よりも明確に北朝鮮への厳しい姿勢を示した。これは拉致被害者の家族を勇気づけた。(ビデオはこちら

もう一つの事件は4月30日にホワイトハウス前で行なわれたダルフール救済集会である。ダルフールでのアラブ系住民によるアフリカ系住民への襲撃を受けて、NGOやブロガーらによる地球市民ネットワークがこの地域でのジェノサイドを止めるためにブッシュ大統領に働きかけた。スーダンはアラブ連盟の加盟国であり、本来ならアラブ諸国が問題解決に乗り出すべきである。またアラブ系とアフリカ系の間に平和協定を結ばせるうえで、国連が重要な役割を担うものと思われている。だがこうした機関は平和を築き上げるだけの充分な役割を果たせないでいる。だからこそ、ブロガーもNGOも合衆国政府への請願を最後の手段と見ているのである。

二つの例から、国際社会で人道上の問題が起きた時にはアメリカの関与が必要不可欠なことがわかる。国際機関も地域機関も効果的な介入を行うことができないが、それはハードパワーも平和を築き上げる意志も充分でないからである。

世界の平和と安定にアメリカの関与が欠かせぬ理由を理解するために、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員による“Still the Colossus” という論文を参照したい(ワシントン・ポスト2006年1月15日)。ヨーロッパとはイラクをめぐって対立したが、中央及び東ヨーロッパ、アフガニスタン、イランでの米欧協調は深まっている。 日本は中国の脅威に対処するためにアメリカの力を必要としている。どうして世界はこうもアメリカを必要とするのか?

まずアメリカ自体の強さが挙げられる。

実は国際政治でのアメリカの力は依然として強大である。世界の民主化が進展すればするほど、アメリカの自由と民主主義のイデオロギーは一層魅力あるものとなる。アメリカの経済力は世界経済の牽引車である。他の強国と比較しても、アメリカの外交政策に対する近年の批判的な雰囲気は表面的なものだと思われる。実際に冷戦期の1960年代後半から70年代初頭にかけてアメリカに対する国際世論の支持率は著しく下がったが、後に回復している。

さらに国際政治での勢力均衡にも触れる必要がある。

ここ数年の反米気運の高まりにもかかわらず、アメリカなしでは世界が成り立たない構造的な理由がある。政治学者のウィリアム・ウォルフォース氏は10年前にアメリカ一極時代が今後も続く理由として、国際社会でのアメリカの人気ではなく国際政治システムの基本的な構造を挙げている。アメリカとの勢力均衡を築き上げようという国が現れようものなら、そうした目的を達成しようとする以前にその国の周辺諸国が脅威を感じるようになる。ヨーロッパならアメリカとの勢力均衡を目指してもこうした警戒はされないだろうが、現実にそのような政策がとられることはない。ロシアや中国が自国の伝統的な勢力圏に強い影響力を及ぼそうとすれば、周辺諸国とアメリカの警戒を呼び起こしてしまう。

バグダッド陥落からほどなくして、リベリアとミャンマーに対するアメリカの介入を呼びかける国際市民運動が高まった。この内のかなりの者がアメリカ主導のイラク戦争を非難していた。中には911テロに対する直接の反撃であるアフガニスタン攻撃を批判した者もいた。彼らは反米なのか親米なのか理解に苦しむ。世界全体でアメリカの力に対して愛憎入り混じった感覚があるように思われる。では、反米と親米の分かれ目はどこにあるのだろうか?

反米感情が高まるのは、アメリカの圧倒的な力が文化、政治、経済から安全保障に至るまで及び、自分達の存在基盤が脅かされると思われるようになる時である。イスラム世界では典型的に見られる傾向である。また、アメリカの外交政策が力に頼り過ぎて傲慢だと感じる世論が高まると、反米気運が広まるようになる。イラク戦争がそうした例である。さらに、アメリカのイメージが非民主的体制と重なると反米化が進む。韓国では冷戦期にアメリカが軍事政権を支援してきた。韓国で反米気運が広まっているのは、このことも一つの原因である。

他方で親米気運が高まるのは差し迫った人道的な危機に直面し、アメリカに訴えることだけが最後の手段となった場合である。この記事で述べたような事例がそれに当たる。また圧政下にある場合は親米気運が高まる。イランの学生運動やウクライナのオレンジ革命がそうした例に当たる。

こうした傾向を踏まえ、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、国際政治でのアメリカのリーダーシップの試金石となるのは次の事柄だと言う。まずアメリカの優位を国際社会がコンセンサスとして受け入れるか、そしてアメリカの規範が普遍的に広まるかである。ローマ帝国も大英帝国もこのことに成功した(“Our Nearsighted World Vision”、ワシントン・ポスト2000年110日)。

こうした指摘もさながら、ケーガン氏は以下のように述べている。

世界の中でのアメリカの立場は一般に思われているほど悪くなってはいない。クリントン前大統領が1997年に控えめに語ったように、アメリカは依然として「唯一の世界に必要不可欠な国」である。ほどなく世界はアメリカのリーダーシップを必要とするようになるであろう。それは現政権の任期中かも知れないし、2008年の大統領選挙後かも知れない。どちらの党が勝ってもリーダーシップを発揮するであろう。世界の脅威が高まる現状を考慮すれば、これは歓迎されるべきである。世界平和のためにアメリカのヘゲモニーを知的かつ効果的に活用することはこれまでになく重要になる。

左翼も国際市民社会もこのことをよく理解すべきである。

| | コメント (18) | トラックバック (8)

2006年5月 3日

ダルフールに注目!

このところ、イラク、アフガニスタン、イランが問題となっている。だがアフリカ、特にダルフールを忘れてはならない。アトランティック・レビューマイ・ニューズン・アイディアズではアメリカとヨーロッパの双方で行なわれているダルフール運動の特集を組んでいる。.

去る4月30日にはホワイトハウスの前でダルフールの虐殺阻止と住民救済のために大規模な集会が開かれた。.

“Bloggers for Darfur””Million Voices for Darfur”というサイトを通じて、誰でもダルフール救済活動に参加できる。

トニー・ブレア英国首相、ポール・ウォルフォビッツ世銀総裁、そして今や小泉純一郎総理までアフリカに取り組んでいる。これは見逃せない!

| | コメント (8) | トラックバック (3)

« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »