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2006年5月 7日

米国こそ頼れる巨人 (The Colossus in Need)

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「北朝鮮拉致被害者家族の会」の横田早紀江さんらと面会するジョージ・W・ブッシュ大統領。4月28日金曜日。於ホワイトハウス大統領執務室

撮影:ポール・モース(ホワイトハウス専属カメラマン)

アメリカの外交政策に批判的な者は、最後に頼れる巨人がアメリカであるという事実を銘記すべきである。イラク戦争以来、世界各地の左翼勢力がアメリカのリーダーシップに対してネガティブ・キャンペーンを繰り広げ、アメリカこそが世界平和に対する最大の脅威であると言いふらしている。これは明らかに間違いである。本当の脅威はテロリストとならず者国家である。アメリカなき世界がどのようなものか考えてみて欲しい。国際政治のオーソドックスな理論によれば、アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている。

ここで最近の二つの事件について触れたい。上の写真を見て欲しい。ブッシュ大統領が北朝鮮の拉致被害者の母親である横田早紀江さんと4月28日に面会した。早紀江さんの娘は30年近く前に北朝鮮の工作員に拉致された。数百人の日本人が拉致されたと推定されている。さらに多くの韓国人が北朝鮮に拉致されたと推定されている。北朝鮮は拉致した日本人と韓国人を自国のスパイ養成に利用している。ブッシュ大統領は日本と韓国の指導者達よりも明確に北朝鮮への厳しい姿勢を示した。これは拉致被害者の家族を勇気づけた。(ビデオはこちら

もう一つの事件は4月30日にホワイトハウス前で行なわれたダルフール救済集会である。ダルフールでのアラブ系住民によるアフリカ系住民への襲撃を受けて、NGOやブロガーらによる地球市民ネットワークがこの地域でのジェノサイドを止めるためにブッシュ大統領に働きかけた。スーダンはアラブ連盟の加盟国であり、本来ならアラブ諸国が問題解決に乗り出すべきである。またアラブ系とアフリカ系の間に平和協定を結ばせるうえで、国連が重要な役割を担うものと思われている。だがこうした機関は平和を築き上げるだけの充分な役割を果たせないでいる。だからこそ、ブロガーもNGOも合衆国政府への請願を最後の手段と見ているのである。

二つの例から、国際社会で人道上の問題が起きた時にはアメリカの関与が必要不可欠なことがわかる。国際機関も地域機関も効果的な介入を行うことができないが、それはハードパワーも平和を築き上げる意志も充分でないからである。

世界の平和と安定にアメリカの関与が欠かせぬ理由を理解するために、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員による“Still the Colossus” という論文を参照したい(ワシントン・ポスト2006年1月15日)。ヨーロッパとはイラクをめぐって対立したが、中央及び東ヨーロッパ、アフガニスタン、イランでの米欧協調は深まっている。 日本は中国の脅威に対処するためにアメリカの力を必要としている。どうして世界はこうもアメリカを必要とするのか?

まずアメリカ自体の強さが挙げられる。

実は国際政治でのアメリカの力は依然として強大である。世界の民主化が進展すればするほど、アメリカの自由と民主主義のイデオロギーは一層魅力あるものとなる。アメリカの経済力は世界経済の牽引車である。他の強国と比較しても、アメリカの外交政策に対する近年の批判的な雰囲気は表面的なものだと思われる。実際に冷戦期の1960年代後半から70年代初頭にかけてアメリカに対する国際世論の支持率は著しく下がったが、後に回復している。

さらに国際政治での勢力均衡にも触れる必要がある。

ここ数年の反米気運の高まりにもかかわらず、アメリカなしでは世界が成り立たない構造的な理由がある。政治学者のウィリアム・ウォルフォース氏は10年前にアメリカ一極時代が今後も続く理由として、国際社会でのアメリカの人気ではなく国際政治システムの基本的な構造を挙げている。アメリカとの勢力均衡を築き上げようという国が現れようものなら、そうした目的を達成しようとする以前にその国の周辺諸国が脅威を感じるようになる。ヨーロッパならアメリカとの勢力均衡を目指してもこうした警戒はされないだろうが、現実にそのような政策がとられることはない。ロシアや中国が自国の伝統的な勢力圏に強い影響力を及ぼそうとすれば、周辺諸国とアメリカの警戒を呼び起こしてしまう。

バグダッド陥落からほどなくして、リベリアとミャンマーに対するアメリカの介入を呼びかける国際市民運動が高まった。この内のかなりの者がアメリカ主導のイラク戦争を非難していた。中には911テロに対する直接の反撃であるアフガニスタン攻撃を批判した者もいた。彼らは反米なのか親米なのか理解に苦しむ。世界全体でアメリカの力に対して愛憎入り混じった感覚があるように思われる。では、反米と親米の分かれ目はどこにあるのだろうか?

反米感情が高まるのは、アメリカの圧倒的な力が文化、政治、経済から安全保障に至るまで及び、自分達の存在基盤が脅かされると思われるようになる時である。イスラム世界では典型的に見られる傾向である。また、アメリカの外交政策が力に頼り過ぎて傲慢だと感じる世論が高まると、反米気運が広まるようになる。イラク戦争がそうした例である。さらに、アメリカのイメージが非民主的体制と重なると反米化が進む。韓国では冷戦期にアメリカが軍事政権を支援してきた。韓国で反米気運が広まっているのは、このことも一つの原因である。

他方で親米気運が高まるのは差し迫った人道的な危機に直面し、アメリカに訴えることだけが最後の手段となった場合である。この記事で述べたような事例がそれに当たる。また圧政下にある場合は親米気運が高まる。イランの学生運動やウクライナのオレンジ革命がそうした例に当たる。

こうした傾向を踏まえ、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、国際政治でのアメリカのリーダーシップの試金石となるのは次の事柄だと言う。まずアメリカの優位を国際社会がコンセンサスとして受け入れるか、そしてアメリカの規範が普遍的に広まるかである。ローマ帝国も大英帝国もこのことに成功した(“Our Nearsighted World Vision”、ワシントン・ポスト2000年110日)。

こうした指摘もさながら、ケーガン氏は以下のように述べている。

世界の中でのアメリカの立場は一般に思われているほど悪くなってはいない。クリントン前大統領が1997年に控えめに語ったように、アメリカは依然として「唯一の世界に必要不可欠な国」である。ほどなく世界はアメリカのリーダーシップを必要とするようになるであろう。それは現政権の任期中かも知れないし、2008年の大統領選挙後かも知れない。どちらの党が勝ってもリーダーシップを発揮するであろう。世界の脅威が高まる現状を考慮すれば、これは歓迎されるべきである。世界平和のためにアメリカのヘゲモニーを知的かつ効果的に活用することはこれまでになく重要になる。

左翼も国際市民社会もこのことをよく理解すべきである。

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アメリカのリーダーシップ/世界秩序」カテゴリの記事

コメント

「覇権安定論」ってやつですね。実際のところ、第0近似では、「アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている」というのが、どう考えても正確な認識でしょう。
アメリカが孤立主義に陥った時こそ、世界は真の脅威に直面すると思いますよ。米国の関与を絶やさないよう努力するべきであって、「アメリカこそが世界平和に対する最大の脅威」などという妄言に付き合っていたら、大変なことになります。

投稿: 猫研究員。 | 2006年5月 8日 00:59

舎さん、

偶然にも舎さんの「拉致問題の解決」についてのお考えをリクエストしようと思っていました。

舎さんの当記事は「米国の力」にポイントが置かれていらっしゃるようですが、私は拉致問題の早期(遅くとも親御さんがご存命中)の解決は、米欧を巻き込むのが着実な道、と考えているので、仰る事には納得します。

しかし、やはりこれは「日本国」が主人公の問題であります。自発的に「米欧を巻き込」もうとするのであって、決して「米(欧)頼み一辺倒」な戦略ではリスクが高過ぎるし、うまく行かなかった場合の「逆恨み」につながってしまう危険もあります。

「拉致問題早期解決=被害者の奪還」の為に、「自発的に米欧を更に巻き込む」にはどうすべきか…舎さんにもう一歩踏み込んでお話いただければ、と期待しています!!!

投稿: kaku | 2006年5月 8日 21:18

いえいえ、アメリカが帝国であることについて、アメリカの国益の観点から批判している識者は数多くいます。保守のPatrick J. Buchananは、アメリカは共和国であって帝国ではないと主張しています。

元々、保守主義はこうした考え方をしています。外国に軍隊を派遣するのは、もうやめよう。他人の国は、他人の国。それぞれの国はそれぞれの国の国民が決めるべきであって、アメリカが介入することではない。我々は自分の家族の生活を守って静かに暮らしていけばいいのであって、外国のことに余計な口出しをしないほうがいいという考え方です。アイソレーションニズムは、アメリカの民衆に古くからある伝統的な草の根の個人主義の思想であるとも言えます。ロバート・タフト上院議員もこうした考え方を持っていました。必要以上に他国に介入しないというのが共和党保守の本来の思想です。ちなみに、アイソレーションニズムとは、いわゆる「孤立主義」や「モンロー主義」とは違います。基本的に、超大国アメリカが孤立するわけがありません。

しかしながら、そうではなく、積極的に外国に介入しよう。アメリカは世界の警察になるべきであると考えるのが、今のネオコンです。上記のコメントの自民党の研究員の方が言われる「アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている」というのは「正確な認識」ではなく「ネオコン派の見方」です。ヘンリー・キッシンジャーやジョン・ミアシャイマーらのリアリズム派はネオコンを批判しています。パックス・アメリカーナであって欲しいのは、日本を含めた周辺国の希望ではありますが、当のアメリカ内部の言論界では様々な意見があります。

アメリカの帝国化については、元UCバークレー教授で、現日本政策研究所所長のチャルマーズ・ジョンソンが批判しています。このことについては、以前、私のブログで書きましたのでTBします。ちなみに「テロとの戦いは戦争ではない」その3は、そういえばまだ書いていませんでした。最新作"The Sorrows of Empire"の紹介もまだしていませんでした。近々に書こうと思います。

投稿: 真魚 | 2006年5月 9日 02:16

真魚さまに名指し(?)されてしまったので、長くなりますが書かせていただきます。
私が「アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている」という舎亜歴さんの表現に賛意を示したのは「第0近似として」というささやかな留保つきです。ささやかな留保をつけた理由は、純粋なネオコンの論理では世界の民主化が米国の国益に全くイコールということになり、それは米国が追求する国益の多様性を捨象していて理想的に過ぎるからです。しかしながら、仮定の話として米国の覇権を取り除いてみると、果たしてそれで世界の秩序が保たれるだろうか、それは困難だろうと思うわけです。これが、第0近似と位置づけた所以です。(人さまのブログで長々とコメントするのも気が引けると思って、前のコメントでは簡潔に表現したのですが、かえって長々と真意を説明する羽目に…。コメントするというのも難しいものです)
米国の伝統保守派に「他国の余計なことには関わりたくない」という傾向が多かれ少なかれあることは事実ですが、所謂ネオコンに対抗する理念と具体策を打ち出すことはできていません。キッシンジャーは、ネオコン批判をしながらも彼自身の主張はネオコンの論調にかなり近い面もあります。現実主義派とされる論者の中ではかなりネオコン的なスタンスじゃないかと思いますよ。典型的な現実主義派といえば故ジョージ・ケナンあたりでしょうけど、現状に合わせてスタンスを微妙に変えてくるキッシンジャーの方が現実主義の面目躍如たるものがあります。
結論としては、保守主義にネオコン(というよりネオウィルソニアン)の味付けをしたのが現在の米国の潮流だろうというのが、私の現状認識です。

投稿: 猫研究員。 | 2006年5月 9日 05:06

舎さん、こんにちわ。
いま読ませていただいたのですが、偶然私も昨日同じ趣旨の記事を書きました。
私は専門的な文献を調べたりしてその影響下にあるわけでもなんでもなく、平凡な58年の人生を過ごしてきた人間としての素朴な思いを訴えているだけなのですが、それが、専門的な知識、国際感覚を備えた人と似た考えであることに、やはり、大事なことというのは案外単純なものだ、と改めて思いました。

同じ主旨と言ってもほんとに単純なおばちゃんの記事ですから舎さんの緻密な分析とは比べようもありませんが、一応TBさせていただきます。

投稿: robita | 2006年5月 9日 14:01

猫研究員さん、唐突に話に持ち出してしまい、たいへん失礼致しました。「アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている」という世界観がワシントンでは主流であるというのは事実だと私も思います。アメリカは世界覇権国であることは誰でも認めることです。私が主張したいことは、いかなる手段によってアメリカはヘゲモニーを確立し維持していくのかということです。ネオコンの主張する積極的軍事介入が、合衆国の国益上「正しいこと」なのかどうかという論議がアメリカ国内では最近大きくなってきています。特に泥沼化しているイラク占領の現状について、ネオコンの政策への疑問が高まっていることは無視できないと思います。つまり、現状、ウィルソニアン的な(というよりも、ウィルソニアンをより過激にした)ネオコンが潮流であることが確かですが、それがぐらつき始めているというのが私の考えです。

典型的な現実主義派といえばジョージ・ケナンというよりも、やはりここはハンス・モーゲンソーではないでしょうか(典型的なというより、徹底的な、ですが)。そういえば、ケナンもモーゲンソーも軍事力による介入には一貫して反対していました(リアリストはバランス・オブ・パワーの観点から他国への軍事介入を否定します)が、キッシンジャーだけは違いました。イラク戦争についても、そうでした。キッシンジャーというのは、そういう人なんですねえ。

投稿: 真魚 | 2006年5月10日 01:56

robitaさん、

私の「専門知識」などまだまだ知れたものです。ただ、どれほどアメリカ批判をしても、アメリカなしで世界の問題が解決できないことをもっと多くの人に自覚して欲しいです。誰が大統領になろうとも、アメリカという国の存立基盤になっている理念によって政治的な信頼があるものと思います。

とてもではありませんが、中国やロシアにここまでの信頼を託せません。

他の皆さん、返答が遅れて申し訳ありません。次の記事を投稿次第、返答します。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月10日 21:54

>誰が大統領になろうとも、アメリカという国の存立基盤になっている理念によって政治的な信頼があるものと思います。

全く同感です。
私は間違いなく「親米派」ですが、世界の安定とか覇権とか専門知識云々以前に、単純に肌身で知った米国がスキ、それが理由の殆どです。

で、何でそう思うのかと言うと、「アメリカという国の存立基盤になっている理念」が、アメリカ社会で大切にされて今なお息づいているのを目撃しているからであります。この辺りは中国社会と全く異なります。

ただし、私が好きなUSと言う国に覇権を握らせておけば世界は安定するんだから皆さん…と言うことについては、それは別の話として語らなくちゃいかん、と思います。だから真魚さんの仰ることにも理解を示せます。

投稿: kaku | 2006年5月10日 22:13

>真魚さま
いえいえ、お気になさらずに。
アメリカの覇権を維持していくためには、米国の軍事力が世界の安全保障や自由・民主・人権にとって公共財であるという認識を多くの人にもってもらうことが要でしょう。そうすることで、ハードパワーの典型である軍事力に大きなソフトパワー(他国をひきつける力)を付け加えることができるように思います。単独主義的行動をとることを留保しつつも、国際協調主義を基調とする方向になるのでしょう。イラクの戦を通じて、米国だけでなく米国に反対した西側の国々も、そういう方向がベストだと学んだようです。
典型的な現実主義派といえば、仰るとおり、モーゲンソーですが、イラク開戦時まで存命で精力的に反対を唱えていたケナンを挙げた次第です。

>舎亜歴さま
「アメリカという国の存立基盤になっている理念」にまさる理念を掲げることに成功した国はないし、予見しうる将来にわたってそういう可能性はちょっと想定しがたいですよね。
大統領によっては理念を侵食しかねない行動をとる者もいますが、その後にそれを回復するように正反対の政策の大統領が選ばれるところが、アメリカ民主主義の妙味だと感じています。

投稿: 猫研究員。 | 2006年5月10日 23:31

真魚さん、

>(リアリストはバランス・オブ・パワーの観点から他国への軍事介入を否定します)が、キッシンジャーだけは違いました。イラク戦争についても、そうでした。キッシンジャーというのは、そういう人なんですねえ。


ライス現国務長官もリアリストですが、積極介入主義です。中東の民主化についてはリベラルも重要視しています。

アメリカの帝国化についてはまたの機会に返信します。リベラル派シンクタンクの訳文をこちらに投稿してからです。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月11日 22:06

舎さん、

”帝国”の定義をお願いしますね。この定義をちゃんと行うと、リベラルの方々の解釈がなぜか成り立たないという事になります。

MikeRossTky

投稿: マイク | 2006年5月12日 22:32

猫研究員さん、

アメリカの覇権について語る際に、これを受け入れる同盟国との関係も見逃せません。私が疑問を感じているのは、イラクでのブッシュ政権の強引な手法への批判の超えは挙がるのに、自国の力を過信してアメリカを止めようとして失敗したシラクやド・ビルパンを批判的に振り返ろうとする者が少ないことです。もはや、独仏枢軸でヨーロッパの主張を代弁できる時代ではありません。彼らは明らかに失敗した政治家なのですが、なぜかこうした人物をヒーローに祭り上げるメディアもありました。

その後のド・ビルパンが当時は自分を支持したであろう学生達のデモで雇用法案を断念したのは何とも皮肉です。

イラン問題ではあのような失敗を繰り返さぬことを望むばかりです。ともかく、アメリカからだけでなく、同盟国を中心に世界から見てどうなのかも検証できればと思います。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月12日 23:05

kakuさん、

まず誤解なきように言うと、この記事はアメリカと世界の関係が主題で、その中で拉致問題にも触れただけです。もちろん、拉致問題は日本が当事者となっている問題です。ただ、今や独裁政権による人権の抑圧というのは一国を超えた国際社会全体の問題です。

>「拉致問題早期解決=被害者の奪還」の為に、「自発的に米欧を更に巻き込む」ためには

やはり人権団体や宗教界を通じて国際世論に訴えるということになります。欧米とも直接に国益が重なる麻薬などの密輸の阻止で協調し、北朝鮮の資金源を断つこともできます。

日本と同じように北朝鮮の拉致の被害を受けているのが韓国ですが、ここでも国際人権団体や宗教界を通じて北に圧力をかけたいところです。とはいうものの、この国は何かと些細な「過ち」によって反日気運が高まりやすいという難点はありmす。しかし、今の北朝鮮にとって韓国は命綱なので、何とか拉致問題に対する関心を高めたいところです。何と言っても日本人よりはるかに多くの自国民が拉致されている国なので。

この国の宗教界では福音派が期待大です。韓国内もさることながら、アメリカでは大きな勢力があるので。

ところで
>誰が大統領になろうとも、アメリカという国の存立基盤になっている理念によって政治的な信頼があるものと思います。

これはクリントン前大統領に少し皮肉を込めています。ジョー・ディマジオは彼の行状を品位に欠けるとして嫌っていたようです。大統領個人に少し良からぬことがあっても、アメリカという国の土台となる理念が政治的信用を生んでいます。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月13日 01:16

I wonder how robust this statistic is? And does this one only tell half of its own story?

投稿: hyzaar | 2006年5月13日 14:49

>イラクでのブッシュ政権の強引な手法への批判の超えは挙がるのに、自国の力を過信してアメリカを止めようとして失敗したシラクやド・ビルパンを批判的に振り返ろうとする者が少ないことです。

ひとつには、米国の存在の大きさゆえにこうなるのでしょう。しかも自由を標榜するbenignな覇権国ですから安心して批判できますから。
最近、フランスとドイツの識者が自国の失敗について論評している小さな論評は目にしましが、専門家レベルでとどまっているかもしれません。
米国の国力を、世界の安定にいかにして効果的に使えるかという視点を、同盟国の側もよく考えるべきです。「同盟国を中心に世界から見てどうなのか検証」する作業は是非とも必要ですよね。

投稿: 猫研究員。 | 2006年5月14日 01:43

真魚さん、

二つのTB記事とこの記事へのコメントを読みました。これだけの分量には返信するほうも骨が折れます。

>「アメリカのヘゲモニーによって自由な世界秩序と民主主義という世界の公共財が提供されている」というのは「正確な認識」ではなく「ネオコン派の見方」です。<

これは元々、チャールズ・キンドルバーガーやロバート・ギルピンらによって発展した理論です。両者ともネオコンとは見なされていません。この理論の背景にあるのは、戦間期に大英帝国の覇権による自由主義の世界秩序が崩れる中でこの役割を補完あるいは代替するような国が現れなかったことへの反省です。そのために大恐慌や第二次世界大戦に突入してしまいました。

そもそも、厳密な意味でのネオコンとはレオ・ストラウスやアービング・クリストルらの系譜ですが、後にはそうでない人もこのグループに含まれるようになりました。最近のWポストのコラムではロバート・ケーガンは自分はストラウス主義者ではないよ述べていますし、ラムズフェルド現国防長官は特にネオコンの知的影響下にはありません。イラク危機が高まるにつれて、対イラク強硬派がバックグラウンドの如何を問わず、ネオコンとされるようになりました。

このようにストラウス主義者でもトロツキー主義転向組でもない人達までネオコン的な思考をするようになったのは、それだけネオコンの考え方がオーソドックスな国際政治・経済の理論と合致する部分が多いからではないでしょうか。リチャード・パールもこのような趣旨のことを日本の新聞(どの社の何月何日号か覚えていませんが)とのインタビューで応えていました。

ハンス・モーゲンソーやジョージ・ケナンの時代と違い、現在のアメリカは圧倒的なハード・パワーを有しています。少なくとも旧ソ連のようにアメリカに対抗できる勢力は出てこないと思われます。特にモーゲンソーは戦間期の人で、大英帝国の覇権が揺らいで多極化する世界が不安定さを増す中で育ちました。現代に生まれていれば、違った考え方で世界を見つめていたはずです。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月14日 13:52

真魚さん、

アメリカ帝国の発展については、四期に分けて考えるのが良いのではないでしょうか。確かにTB記事にもある通り、建国の父たちは経済・通商以外で海外のことには関わらず、巨大な軍備も持たないようにしてきました。第一期はこのように東海岸の小さな民主主義国、ある意味ではスイスのような存在でした。

それが変わってくるのは第二期、西部への領土拡大とともに南北アメリカ大陸の盟主という意識が芽生える頃です。ルイジアナ購入(1804)が契機になるでしょう。その後、西部開拓が進んでくるにつれて、あのフレデリック・ジャクソン・ターナーがフロンティアの消滅についての論文を書いたのは周知の通り。「マニフェスト・デスティニー」によって海外にフロンティアを求めるようになり、日本近海にもアメリカ船が出没するようになりました。

ラテン・アメリカに対しては有名なモンロー宣言の他に、ナポレオン3世によるメキシコ皇帝マクシミリアンの擁立を退けました。

この時期で特筆すべきは史上空前とも言うべき経済力の拡大で、南北戦争であのパーマストン英首相が南部連合支援のための介入を断念したのも合衆国の巨大で迅速な物量投入です。アヘン戦争によって中華帝国を撃破したパーマストンがアメリカの実力には二の足を踏んだわけです。この時期になると、アメリカは建国の父達が思い描いた小さな民主主義国ではなく、世界帝国の仲間入りがいつでもできる程に成長していたわけです。

第三期、これは真魚さんのTB記事にもある通り、スペイン戦争を契機としてアメリカが本格的に西欧列強として植民地帝国を築き上げてからです。確かに真魚さんのTB記事にあるように、この戦争に勝利したことでアメリカは両アメリカ大陸圏外にも植民地を持つようになり、西欧列強の一員としてパワーゲームに加わるようになりました。しかも、この時期にはセオドア・ローズベルトという格好の大統領が登場します。

ただ、これもスペイン戦争で急速になったわかえではなく、それ以前のアメリカが独立期の小さな共和国ではなくなっていたということです。

第四期は第一次世界大戦参戦を機にアメリカが大英帝国の後継者を意識し始めた頃です。それまでイギリスの覇権の下で自由主義的世界秩序が維持されてきましたが、大戦によるイギリス自身の疲弊に加えてカイゼルやナチスの台頭によってそれが揺らいできました。

そうした事情を背景に、アメリカでは多くのシンクタンクが設立されました。その目的はアメリカが新時代の世界を担うためです。不幸にもカルビン・クーリッジ、ウォレン・ハーディングといった大統領は孤立主義に陥ってしまいました。

第二次大戦後のアメリカは大英帝国の後継者として世界を指導する立場になりました。これについて、イギリス人の歴史学者のニール・ファーガソン(Niall Ferguson)ハーバード大学教授は、現在のアメリカの国力は全盛期の大英帝国をも凌ぐに世界への介入にまだ及び腰だと批判しています。ファーガソンはネオコンとも親しいのですが、もっとリベラルなジョセフ・ナイにしてもアメリカが積極的に世界に介入すべきという考え方です。

保守であろうとリベラルであろうと、アメリカ帝国には世界の平和と繁栄のための特別な役割――ターナーの言うmanifest destinyと大英帝国の後継者――があるわけです。しかも世界は常に法と理性で動いているわけではありません。必要ならハードパワーの行使は当然のことです。もちろん、ソフトパワーが重要なのは言うまでもありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月14日 19:13

猫研究員さん、

イラクの失敗をイランでは繰り返さぬよう、同盟国との連携は大事にしたいところです。ラムズフェルド戦略の「小規模精鋭兵力で迅速に敵を撃破する」という考え方が、米欧の絆の軽視につながった一因ではないかと思われます。

最近になって軍からラムズフェルドへの批判が取り沙汰されていますが、実はネオコンの方がもっと兵力不足を厳しく批判していました。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年5月16日 00:47

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