« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »

2006年6月30日

北朝鮮ミサイル危機

Ph2006062200585

北朝鮮がテポドンⅡミサイルを発射する可能性が高まる昨今、極東諸国は脅威にさらされている。このミサイル実験によって六ヵ国協議に支障をきたすことを中国もロシアも懸念している。これまでのものと違って、今回のミサイルはアメリカ本土まで射程範囲に収めているのは、上記の地図に示されている通りである。

クリントン政権期より金正日はミサイル危機を利用してアメリカの注意を引き付け、二国間交渉にこぎつけてきた。現在、北朝鮮の経済は極めて悪い状況にある。COMECONが崩壊してから、北朝鮮は世界経済から孤立してきた。現体制の維持のためにも、北朝鮮の指導者達は西側からの経済支援を切実に必要としている。これは金正日がアメリカとの交渉を望む理由の一つでもある。

コリア・タイムズによると、北朝鮮がテポドンⅡを発射しようとする理由は「AFPの安全保障専門の記者は、北朝鮮がミサイル危機を煽るのはイランの核問題に向かうアメリカの注意を自国に向けたいからだという」。さらにこの記事では「テポドンはアラスカまで届くと言われているが、実際にどこまで遠くに正確に発射できるかは疑問の余地がある」と記されている。 North Korean Missile Test not Imminent, June 13

しかし金正日はミサイル実験がどのような結果をもたらすかについて判断を誤ったようである。今や事態は全く違う。ブッシュ政権はクリントン政権の北朝鮮政策から教訓を学んでいる。先のミサイル実験でも見られたように、北朝鮮は相手に嘘をつき騙すことに長けている。核不拡散合意を破りながら、核燃料は平気で受け取るほどである。アメリカの現政権は六ヵ国協議を重視し、二国間交渉には乗り気でない。ヘンリー・A・キッシンジャー元国務長官はワシントン・ポストの以下のように述べている。

北朝鮮が画策していることはアメリカを六ヵ国協議の枠組みから切り離そうというものだが、ブッシュ政権は賢明にもそれを拒んでいる。そんなことをすれば六ヵ国協議に参加している他の国が責任の分担をしなくなるだろう。二国間協議に応じてしまえば、他の参加国はアメリカに対して義務を負わなくなり、結局はアメリカが孤立してしまう。A Nuclear Test for Diplomacy, May 16

今回のミサイルはアメリカ本土を射程距離に収めているので、これまで以上に重大な脅威となっている。現在はアメリカン・エンタープライズ研究所の上級研究員となっているニュート・ギングリッチ元下院議長は「アメリカは有効な行動をとらねばならない。我が国は暴虐な全体主義の独裁政権の脅威にさらされているが、その実態については殆どわかっていない。もはや話し合いの時期ではない。彼らがミサイルを放棄するか、さもなければアメリカが彼らのミサイルを廃棄するかであると述べている。

クリントン政権期のウィリアム・J・ペリー元国防長官とアシュトン・B・カーター元国防次官補は、これ以上に強硬な意見を述べている。

外交交渉は失敗した以上、事態を座視して脅威が高まるままにはしておけない。アメリカと同盟国の大した反対にもあわずにテポドンの打ち上げに成功してしまえば、北朝鮮はもっと大胆な行動に出るようになる。そうなると北朝鮮は今以上の核弾頭とミサイルを保有するようになる。“If Necessary, Strike and Destroy” Washington Post, June 22

北朝鮮の脅威の高まりを受けて、日米の協力は益々強くなった。迎撃ミサイルの実験が成功した今、日米同盟は北朝鮮に心理的圧力をかけられる。ウィリアム・ペリー元国防長官は先制攻撃を主張しているが、ブッシュ政権は六ヵ国協議の継続に意欲的である。迎撃ミサイル実験の成功は現在の外交交渉にも良い影響をもたらすであろう。

韓国の立場は依然として微妙である。この国は北朝鮮に対して「太陽政策」をとり続けてきた。だが北に対する世論は厳しくなってきている。北朝鮮の同盟国である中国とロシアも今回のミサイル実験を懸念している。Seoul, Beijing Seek Dissuade NK from Missile Test, The Korea Times, June 27

北朝鮮の独裁政権はミサイル外交の危険性を理解すべきである。もはやかつてのように、このやり方は有効ではない。日米同盟はならず者の核拡散国家には、これまで以上に厳しい態度で臨んでいる。韓国民も徐々に本当の脅威が誰なのかわかってきている。北は誠実に行動すべきで、さもなければ最終的に敗北を喫するだけである。

| | コメント (4) | トラックバック (3)

2006年6月25日

民主党、イラクで分裂

以前、当ブログの「米国リベラル派の巻き返しなるか?:新興シンクタンクを検証という記事で、民主党が政権を獲れるかどうかを検証した。現時点でリベラル派はイラク問題で実現可能な代替案を出してはいない。メディアはブッシュ政権のイラク政策に批判的である。だが民主党はイラク撤退をめぐって意見が分裂しているので、こうした動きを味方につけることができない。

ジョン・F・ケリー上院議員はイラクの米軍は12ヶ月以内に撤退すべきだと主張している。民主党の多数派は、イラクでの作戦については微妙なバランスを考慮しなければいけないので、ケリー議員の提案には困惑している(“Kerry upsets his party with Iraq pullout plan”および“Kerry's Iraq plan troubles his party” New York Times/International Herald Tribune6月21日を参照)。 ワシントン・ポスト6月20日号のFor Democrats, a Delicate Balance on Iraq”という記事によれば、民主党は「イラクからの撤退に積極的になり過ぎても良くないが、反戦気運に燃え上がり米兵の帰還を願う支持者を引き付けておくためにもこの問題を議論せざるを得ない」状況だという。

こうした目的のために。ジャック・リード上院議員とカール・M・レビン上院議員がイラク政府と警察が自力で治安に当る能力を強化しようという案を出した。だが党内リベラル派や反戦活動家にはケリー上院議員の案を支持する声が根強い。他方で共和党はブッシュ政権の方針で団結している。

充分な注意も払わずにイラクの「泥沼化」を口にする者が多い。この問題は民主党にとっても両刃の剣である。世間一般に思われているように、民主党が現政権のイラク政策を攻撃して有利な立場にあるわけではない。党内の分裂を前に、ハリー・M・リード上院議員は「民主党はこの戦争について以下のことで党を挙げて一致団結すべきである。この戦争は余りにも長く、余りにも戦費がかかり過ぎ、余りにも多くの死傷者を出している」と述べている。またジョセフ・バイデン上院議員は、アメリカがイラク政府に対して他の宗派や民族に武力行使をするような兵士は軍から排除し、もっと多くのスンニ派を政権内の要職に登用するように働きかけるべきだと主張しているDemocrats Divided on Withdrawal Of Troops”, Washington Post、6月21

いずれにせよ、中間選挙の行方はわからない。ブッシュ政権への批判だけでは民主党の躍進にはつながらない。民主党は実現可能な代替案を示し、党の結束を固める必要がある。さもないと、中間選挙も大統領選挙も乗りきれない。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2006年6月18日

ブッシュ政権のインド政策:国務省高官の講演

R・ニコラス・バーンズ国務次官がカーネギー国際平和財団で米印関係についての講演を行なった。今年3月にブッシュ大統領とライス国務長官がインドを訪問した際に、バーンズ氏は随行している。以前にも述べたように、アメリカとインドの戦略提携を進めるうえでの最大の障害は核拡散問題である。カーネギー財団のジョージ・パーコビッチ副所長は核不拡散の専門家とグランド・ストラテジーの戦略家との間で見解の違いが見られると指摘している。専門家の方は今回の対インド核協定によって現行の核不拡散体制が空洞化するのではと懸念している。一方で戦略家の方はインドとの関係強化によって中国・ロシア枢軸を封じ込められると考えている。

バーンズ国務次官は講演の中でこうした問題への鍵となる事柄を述べている(ビデオはこちら。Windows Media PlayerReal Player)。インドとの戦略的パートナーシップが模索されたのはクリントン政権の頃からで、アメリカは冷戦後の脅威に対処するために同盟関係の再編成に迫られていた。バーンズ次官は対インド外交について、核交渉ばかりでなくグランド・ストラテジーの観点から考える必要があると主張している。アメリカとインドは安全保障、経済、民主主義の普及、エイズなど疫病の防止といった共通の国益がある。

安全保障についてバーンズ次官はアメリカとインドはお互いに必要な国であると述べている。アメリカは世界規模で、インドは地域でのリーダーシップをとろうとしている。インドは南アジアの平和と安定に役立つ影響力を行使している。ネパール国王には民主化のために権力の委譲をするよう説得した。スリランカではEUや日本とともに政府とタミル解放戦線の虎との間の和平交渉を支援した。

経済分野も安全保障に劣らず重要である。講演でも述べているように、インドは世界でも最も成長の著しい市場である。フォーリン・ポリシー誌2006年1・2月号の“India outsmarts China”という記事によると、インド経済は頭脳集約的なので労働集約的な中国よりも期待が持てるという。アメリカにとってインドは最も魅力ある市場になっている。ハイテク企業はインドに投資を行なっている。ボーイング社は航空機を輸出している。政府、企業、市民社会といったあらゆる部門で、アメリカとインドの二国間関係は拡大している。

バーンズ次官は米印核協定について、核不拡散ばかりでなくこの観点からも理解されるべきだと言う。経済成長著しいインドは電力需要が伸び、エネルギー供給を多角化する必要に迫られている。核拡散防止体制に入っていなかったインドは30年もグローバル経済の外にあった。だが北朝鮮とイランが拡散防止のルールを侵害してきたのに対し、インドは核拡散に手を貸さなかった。NPTが抱えるこうした矛盾から、バーンズ次官はインドの民間核利用に対してアメリカは技術支援を行なうべきだと主張している。アメリカは各関連部品を輸出できるようになる。また、二酸化炭素の排出量削減にもつながるとまで述べている。

他方で、バーンズ次官は挑発的な発言は控えている。ヘンリー・キッシンジャー氏が言うように、インドを中国封じ込めに利用することはアメリカの国益にかなわないとも主張している。バーンズ次官の考え方は、信頼できる民主主義国インドを中国と対抗させようと言うネオコンのものとは異なる。イランについては、インドもヨーロッパや日本と同様に関係を保っても良いと述べている。さらにインドとの戦略的パートナーシップの強化によって、アメリカとパキスタンの関係が損なわれることはないと強調している。

バーンズ次官が講演で述べたことは概ね妥当である。最も重要な問題は核協定である。カーネギー国際平和財団のアシュリー・G・テリス上級研究員は議会での証言で、今回の協定は現実的なものであり議会での審議によって変更を加えられるべきではないと述べている。インドはNPTを信用していないが、核不拡散のためには何らかの義務を科さねばならない。インドを核不拡散体制に組み込むには、アメリカも見返りを提供せねばならないと言う。また、議会が協定内容に変更を加えてアメリカとインド両国の政府に更なる負担を科すことは慎むよう述べている。

タイムズ・オブ・インディアの報道にもあるように交渉は現在も継続中である。アメリカ議会での通過がかなうかどうか、鍵を握るのはこの協定で査察がどこまで行なわれるかである。アメリカにとってインドは市場としても戦略提携国としても大きな可能性を秘めている。だからと言って、二国間協定が現行の核不拡散体制を弱体化するのもであってはならない。

最後にThe Real Truthの記事も参照を。

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2006年6月13日

情報充電中、しばらくお待ち下さい

最近、未読のEメールニュースがたまっています。より情報インプットを充実したうえでブログ投稿をしてゆきます。

新記事の投稿はすぐです。しばらくお待ち下さい。宜しくお願いします。.

Shah Alex

追伸:当ブログの 共同ライターであるアルビオンがアメリカに帰国しました。彼も引き続きこちらに興味深い記事を投稿するので、その際にも宜しくお願いします。 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 4日

NATO国防相会議と今後の世界

来る6月8日にブリュッセルでNATO国防相会議が開かれる。冷戦後の世界ではNATO軍はヨーロッパ域外でも行動するようになった。今回の会議で話し合われる問題はアメリカの戦略と対同盟国関係で重要なものになってくる。

ミュンヘン大学応用政策センターのジュリアン・リンドリー・フレンチ上級研究員はインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの5月30日版に“For the Crucial Alliance, a Day of Decision”という論文を投稿している。

その中で、今回の国防相会議では11月にリガで開催される首脳会議に向けて重要な案件が話し合われる。権威主義的傾向を強めて高圧的な外交を行なうようになった中国、不安定で信用に欠けるロシアを前に、NATOは世界規模での同盟に変わる必要がある。そのためにリンドリー・フレンチ氏は以下の問題点を提起している。

1・ 構造的な介入:

介入を行なう理由を明確に。NATOが介入するのは民主主義国の安全が脅かされた場合である。この目的を達成するためにも、どのような介入を行なうかという基本的概念を定める必要がある。

2・ スマートな組織

NATOが世界規模で行動するためには少数精鋭の軍事組織にする必要がある。安定と再建という作戦目的を達成するためにも、迅速な対応と現地での作戦の継続という二つの目的をともに満たせるような組織にしなければならない。

3・ スマートな配置転換

ロシア、中国、その他独裁国家という新しい脅威に対処するために、NATOは集団安全保障能力を高める必要がある。また、NATO軍自身も多様な作戦に適応できるように迅速で多国籍なものにしておくべきである。

4・ スマートなパートナーシップ

NATOは民主主義国であれば、アジア太平洋、拡大中東、ラテン・アメリカの国々とも手を携えられる。来る6月8日の会議は世界規模に展開するNATOに向けた第一歩である。

上記4点はNATO以外でもアメリカの同盟国にとって重要である。日本、オーストラリア、ニュージーランドはスエズからパール・ハーバーに至る地域でNATOと行動をともにできる。現在、在日米軍は再編の最中であり、この件は日本の安全保障にも死活的である。大西洋で起きることと太平洋でおきることの間には強い相関関係がある。また、インドのようにアメリカとの戦略的パートナーシップを望む国にとって国防相会議の行方は見逃せない。

これはアメリカの世界戦略に関わることで、大西洋同盟にとどまらぬ重要な問題である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »