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2006年7月18日

ロシアと欧米:サンクト・ペテルスブルグ首脳会議をめぐって

以前、当ブログでカーネギー国際平和財団のアンダース・アスランド上級研究員の論文を取り上げた。スウェーデンの外交官出身であるアスランド上級研究員は、サンクト・ペテルスブルグでのサミットを好機に西側はロシアの民主化をもっと推し進めるよう要求すべきだと主張していた。ロシアが欧米先進民主主義国の会議で議長国を務めるからである。事態はそのように進展しただろうか?西側は、イランや北朝鮮の問題で見過ごせないロシアの政治的あるいは経済的な変化を理解する必要がある。

その後、アスランド氏は国際経済研究所(IIE)に移籍して上級研究員となっている。そこで発表した論文では、ロシアがサミットの参加国に相応しいか疑問を投げかけている。昨年、共和党のジョン・マッケイン上院議員と民主党のジョセフ・リーバーマン上院議員がジョージ・W・ブッシュ大統領に対し、「G8加盟国に共通する自由で民主的な規範」を受け容れない限りロシアの参加資格を延期するよう要請した。アスランド氏はG8の議長国を務めることによってプーチン政権の権威主義政治が正統化されるのではと懸念している。さらにロシアの経済規模はブラジルやメキシコと変わらない。こうしたことから、先進民主主義国の会議にロシアが参加することが相応しいかどうか疑問である。さらにロシアの参加がサミットのさらなる拡大を招く懸念もある。中国、インド、ブラジル、南アフリカまで受け容れてしまえば、主要先進民主主義国の会議は本来の姿とはかけ離れたものになってしまう。

欧米はロシアにどう対処すべきだろうか?インターナショナル・ヘラルド・トリビューン713日号の論説では正反対の議論が投稿されていた。

民主党のジョン・エドワーズ氏と共和党のジャック・ケンプ氏の両元副大統領候補は、欧米はロシアに対して強い態度で臨むべきだと主張している。テロ、大量破壊兵器拡散、気候変動、疫病などの問題で欧米とロシアの関係強化の必要性は認めてはいるが、ロシアとの間には大きな見解の不一致があると懸念している。ロシアの権威主義体制が続けば、中東や中央アジアでのアメリカの安全保障政策にも障害となる。両元大統領候補はロシアをより民主的で開放的で透明性の高い社会にするように欧米が力を注ぐべきだと主張している。

他方でイギリスのサー・ロデリック・ライン元駐ロシア大使はロシアと我慢強く接するよう主張している。ライン元大使によると現在のロシアはソビエト帝国崩壊からの移行期の真っ只中にある。安全保障では、ロシアは旧ソ連での自国の影響力低下を食い止めようとしているが、西側との対決は望んでいない。つい最近、ロシアはウクライナに圧力をかけようとしてガス供給を止めた。だがライン元大使は「エネルギー超大国」という語はスローガンと脅し文句に過ぎず、ロシアの指導者も自国の発展に外国資本と提携相手が必要なことを理解していると述べている。

ロシアが移行期の真っ只中にあることは確かである。だがクレムリンはなぜ権威主義的な内外政策をとり続けるのだろうか? 外交ではロシアは中国との戦略協調を強化し、あたかも西側と対抗するかのような態度である。KGB的な権威主義の復活はロシアと欧米の関係改善には障害となる。こうしたことは「新しいヨーロッパ」の国々では起きていない。これらの国がどれほど親欧米で民主的か、国際社会によく知られている。

サンクト・ペテルスブルグ首脳会議は冷戦後の国際政治の分岐点である。ロシアが初めてG8の議長国を務めた。パレスチナと北朝鮮の危機によって、ロシアの改革推進や旧ソ連諸国の安全保障といった問題が脇に追いやられてしまった。こうしたことはロシアと欧米の関係を決定づけるうえで重要である。北朝鮮危機でも見られたように、ロシアは権威主義的な中国と手を組んでしまう。北方の巨人は西側の対立相手なのかパートナーなのか?今回のサミットではこのことが明らかにならなかった。

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