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2006年7月16日

北朝鮮ミサイルと「悪の枢軸」

ついに北朝鮮が7月4日に弾道ミサイルを発射した。重要なことは北朝鮮のミサイル外交を止めさせ、イランやテロ集団のような「悪の枢軸」への核拡散を防ぐことである。7月15日には国連安全保障理事会での決議案が採択されたが、国際社会が一致団結して行動できるかどうかは予断を許さない。

朝鮮半島の専門家は、これまでのブッシュ政権の関与が不充分であったと批判している。ブルッキングス研究所のリム・ウォンヒュク訪問研究員のようなハト派は北朝鮮との対話を拒んで敵対的な態度をとるよりも、二国間協議に応じるべきだと主張している。こうした考え方はクリストファー・ドッド上院議員やバーバラ・ボクサー上院議員のようなリベラル派の間では広く支持されている。タカ派からも批判の声が挙がっている。アメリカン・エンタープライズ研究所のヘンリー・ウェンド記念研究員であるニコラス・エバースタッド氏はブッシュ政権が朝鮮半島に真剣に関わることなく中味のない言葉だけで対処してきたと述べている。

ハト派の間では二国間協議を推す声が挙がっているが、アメリカにとってこれは危険である。北朝鮮が合意を不誠実に反故にしてしまうからである。ニコラス・エバースタッド氏は金正日の強奪的な安全保障政策を以下のように説明している。

北朝鮮の指導者達は、危機の演出と軍事的脅迫によって国家生存の資金を調達することが最も安全な政策だと考えるようになった。そうなると彼らは国際的な緊張を高めて国際社会にとってできるだけ重大な脅威となるようにし、海外からできるだけ多くの物資を引き出して平壌政府の言う「主体思想」による社会主義を維持している。

ヘンリー・キッシンジャー氏がワシントン・ポストに投稿した論文に記しているように、不正行為を防ぐためには北朝鮮との合意は中国とロシアにも拘束力が及ぶものでなければならない。国連決議案は北朝鮮を六ヵ国協議に戻す圧力となるであろう。対米二国間協議とは違い、中国とロシアという二大支援国が関与しているとあってはさしもの独裁者も不正行為はできない。

多国間交渉では、各国の認識の違いが問題である。中国とロシアは朝鮮半島の非核化を望んではいるが、アメリカと日本ほどには北朝鮮のミサイル実験を切実な脅威とは感じていない。拡散防止研究センターのダニエル・ピンクストン氏とアンドリュー・ダイアモンド氏はこれを説明している。

中国が朝鮮半島の非核化を望んでいるのは確かであるが、石油や食料の支援を絶って金正日体制が崩壊するという危険を犯そうとは思っていない。そのような体制崩壊はアメリカにとっては望ましいであろうが、中国と韓国にとっては望ましくない。北朝鮮が崩壊してしまえば難民の大量流入によって中国の経済が圧迫され、政情不安に陥ることを北京政府は恐れている。

さらに以下のように続けている。

体制崩壊や不安定化によって北朝鮮の大量破壊兵器の管理が行き届かなくなって、中国領内を通過したり、非国家アクターの手に渡って中国や近隣諸国が攻撃されるようになる。アメリカが北朝鮮の大量破壊兵器関連施設を攻撃すれば中国にも被害が及び、韓国の首都ソウルも北朝鮮の反撃にさらされることになる。

韓国は宥和政策をとり続けているが、コリア・タイムズは盧武鉉大統領の太陽政策を批判している。これは良い傾向である。

中国とロシアについて共和党のジョン・マッケイン上院議員は以下のように述べている。

中国が北朝鮮をどう扱うかが米中関係を「決定づける問題」である。・・・もし中国が国連安全保障理事会を骨抜きにし続けるなら、「米中関係に深刻な影響を及ぼすであろう」と言う。

北朝鮮がイランやアル・カイダのようなならず者と組むようになれば、世界全体への脅威である。有名な “Regime Change Iran” というブログではミサイル外交でイランと北朝鮮が緊密な関係にあると報じている。

国連決議は採択された。だが金正日がどのような行動に出るかは予測できない。アメリカと国際社会は北朝鮮に対してミサイル外交で得るものがないことをわからせねばならない。これは北朝鮮だけでなく、全ての核拡散国とならず者に向けたメッセージである。

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コメント

>「悪の枢軸」への核拡散

  この言葉でふと思ったことがあります。近頃軍拡に走っている国は、実は北やイランだけではないんですよね。

http://www.sankei.co.jp/news/060709/kok036.htm

軍拡ベネズエラ、北ミサイル獲得か 大統領訪朝へ

 【ワシントン=山本秀也】反米姿勢を強める南米ベネズエラが、北朝鮮製弾道ミサイルの獲得に動く懸念が強まっている。同国のチャベス大統領が今月下旬に訪朝し、同国産の石油とミサイルのバーター取引を図る可能性が浮上したためだ。米政府は「(訪朝により)孤立を深めるか否かは大統領の選択次第だ」(マコーマック米国務省報道官)として、事態を注視する構えだ(以下略)


  どうやら、原油高で調子に乗っているのはロシアだけではないようですね。ベネズエラならテポドンを核弾頭付で買うのもそれほど難しいとは思いません。
  冷戦時代とは違い、思わぬ所から脅威が現れる、まるでモグラ叩きのような時代だと呆れてしまいます。しかし、そういう現実に日米英豪といった海洋国家連合はきちんと対処しなくてはならないと思います。

投稿: ろろ | 2006年7月17日 00:02

実際にベネズエラが弾道ミサイルを配備して周辺国の警戒をかうリスクを犯す可能性は低いとは思いますが、北との関係は要注意です。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年7月19日 12:50

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 国連安保理で制裁を含む決議が取りざたされているのは、現在日本国民の耳目を釘付けにしている北朝鮮ミサイル発射実験問題のほかに、忘れてならないのがイランによる核開発に対処する件である。この問題について、国連安保理常任理事国5カ国及びドイツの6カ国は、12日にパリで開いた外相会議で、イランによる核開発問題に関する安保理での協議を再開させ、ウラン濃縮・再処理関連活動の全面停止を義務づける決議を採択することで合意した。会議終了後に発表... [続きを読む]

受信: 2006年7月23日 02:31

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