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2006年9月27日

安倍新政権、核兵器開発に着手??

昨日、安倍晋三氏が日本の新しい首相に選ばれた。海外メディアには安倍氏をナショナリストと警戒するものもあるようだ。

今回はそのナショナリズムに関連して興味深い新聞記事をとりあげたい。これは中韓との対立や靖国神社参拝とは比較にならないほど深刻なものである。

シリコン・バレー地域の有力紙マーキュリー・ニュースの2006918日号に掲載されたAnxiety Chipping away at Japan's Nuclear Taboo”によると、日本が核兵器を保有する可能性があるという。これが本当なら、アメリカにとって由々しき事態である。現在、核不拡散はアメリカ外交の最重要課題の一つである。冷戦後の国際核不拡散体制は揺らいでいる。NPT加盟国の中にもイランや北朝鮮のように核開発疑惑が抱かれている国もある。悪の枢軸とその他のテロ支援国家は自国の核施設への国際査察に協力的とは言えないことが事態を一層深刻にしている。

日本が核保有に踏み切ろうものならアメリカにとって歓迎されざる事態である。そうなると日米同盟にひびが入り、スエズからパールハーバーに至るアメリカの戦略に支障をきたす。オーソドックスな理解からすれば、日本が核兵器開発に踏み切る可能性は低い。それではマーキュリー・ニュースはなぜそのような記事を載せたのか?

その記事によると中曽根康弘元首相が日本は核保有を検討する必要があると述べたという。日本は近隣諸国、特に北朝鮮の核ミサイルと中国の軍事的圧力という脅威に直面している。また日本は戦後の平和主義を脱して「普通の国」になろうとしている。

新任の安倍晋三首相は日本の伝統的価値観の復活と平和憲法の改正を唱えている。これによって中国、韓国との関係で緊張が深まる可能性がある。さらに安倍新首相は北朝鮮の核ミサイル発射に対する先制攻撃を主張している。

日本が核兵器を保有する可能性はどれほどだろうか?

オーストラリアの王立メルボルン工科大学の日本問題専門家、リチャード・タンター氏は「日本には実質的な抑止力がある。周辺諸国は日本なら半年もあれば高度な核兵器を造れることをわかっている」と述べている。

イギリスの原子物理学者で日本の原子力エネルギー産業にも精通している核不拡散活動家のフランク・バーナビー氏は「日本には充分なプルトニウムがある。技術もある。ないのは政治的な意志だけだ」と述べている。

平和主義感情が日本の核保有を阻むであろう。だが原子力資料情報室という反核団体の伴英幸共同代表は「日本では反核活動がそれほど盛んなわけではない」と言う。

日本が核兵器保有を決断すれば、東アジアでの核軍拡競争が激化する。それに刺激されて韓国も核開発に乗り出し、北朝鮮と中国も核軍拡に走るようになるであろう。インドと違って日本はNPT加盟国である。核保有にはNPTを脱退しなければならない。そのような核不拡散体制の空洞化をアメリカが許すとは到底思えない。核不拡散のためのアメリカの努力は全て水の泡となってしまう。インドとの特別協定は特例中の特例である。

もちろん、私も日本が核開発に乗り出すという記事を信じ込むほどナイーブではない。タカ派のナショナリストと報道される安倍氏であるが、親米派で日米同盟の強化によるアジア太平洋地域の安定を模索している。予見し得る将来に日本が核保有に踏み切るとは考えにくい。だが注意を怠ってはならない!極東地域の緊張は高まっている。核拡散を防ぐためにもアメリカは日本の安全保障に関わらねばならない。これはアメリカ外交の死活的課題である。.

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日米同盟と国際的リーダーシップ」カテゴリの記事

コメント

  核武装するのは主権国家として、禁止されるものではないでしょうが、今やるのはどう考えても得策ではありません。核を持たなくても、日本を守ることは可能です(ex. 敵基地先制攻撃ドクトリンの導入)。海洋国家として親和性がある以上、アメリカに対する配慮は必要です。
  まずは、北や支那からテロリストに流れている武器をなんとかしなくてはと思います。あとは、トルコが中ロイランの方へ流れていかないような引き留め策が必要です。そうすれば、イスラエルを救うことにもなります。

  しかし、昔はネオコンの一派が「日本に核武装させてはどうか」と唱えたことがあったような気がします。孫子に、「奪わんと欲すればまず与えよ」という一節がありますので、バックパッシングの一方法として、日本の核武装指向の高まり→叩く材料にする、というオプションなのかな、と思ったのですが・・・。
  もし、核開発を今後一切放棄するなら、アメリカが方針転換して、支那と組むという方向性を指向しないことを約束してもらわないと困りますね。クリントン政権時代のイヤーな雰囲気には戻りたくないので。

投稿: ろろ | 2006年9月27日 23:00

舎さん、こんにちは

う~ん随分とスゴイ記事ですね。

僕は安倍新首相は「戦後生まれの日本の”ナショナリスト”」とはどういうことなのか?を
しっかり広報しないと駄目だと思いますけどね。

阿倍さんは「愛国者」だとは思いますが、いわゆる戦前みたいな覇権的なナショナリズムを持っているようにはどうも思えない。

核武装にしても国産ロケットH-IISがあれだけ失敗するのも(・・・)軍事転用の意思がないことの現われと見ることも可能な訳で。
(なぜ、独自開発せざる得なかったかを考えても米国も日本に核武装してほしいなんて思っちゃいないですよ)

日米同盟の重要性というのは、アメリカが唯一大丈夫だろうと思われていた
軍事力行使の信頼度が瓦解した(イラクの現状)結果、役割分担という意味で日本がどれだけ非軍事分野を含めて米国を補完する気があるのか?を明確にする上でも重要だという意味じゃないですか・・
(集団的自衛権の行使を可能にするも一緒に戦争しよう!という意味とは若干ニュアンスが違うようですし、安倍さんも責務の分担とか言ってたと思いますが)

ラムズフェルドが固執する米軍のEBOドクトリンからしても大艦巨砲的な認識の核兵器は割りに合わないのも確かだと思いますし・・・
Small,Smart,Speedy but Stongな軍事組織によるEBOでは核兵器自体が邪魔になってしまいます。
(通常兵器と核兵器ではピンポイントの意味が全く違ってしまいますし
現在米国が盛んにやっている臨界前実験の結果、ハンドキャリー可能な戦術核が出来る可能性は否定しませんが、効果だけを考えると
通常兵器で十分間に合うという矛盾が出てくる)

何かナショナリストという言葉だけが勝手に独り歩きしているような気がしますけど

投稿: asean | 2006年9月28日 15:22

初めて書き込みさせていただきます。

核保有=アメリカによる「核の傘」体制への挑戦=対米自立・反米保守の動き、とは必ずしも思いません。「ナショナリスト」といわれる安倍首相ですが、彼はアメリカと比肩する覇権を目指しているのではなく、あくまで「ミドルパワー」「アジアの英国」としての日本を目指しているのだと思います。核保有にしても、可能性があるのは、アメリカが東アジアの安全保障に関する負担を軽減したいと願う時、アメリカの同意の下での核保有(それもアメリカを射程圏内に含まない小型戦術核のみ)でしょう。

靖国神社問題はあくまでレアケースです。私自身は首相による参拝には問題ではない(もちろん参拝しなくとも自由)と考えますが、「遊就館」の展示内容に関しては、岡崎久彦氏らの提言により、「反米主義」的部分が修正されることが既に固まっています。あとは東京裁判の正当性を云々するよりも、「A級戦犯」(正しくは「A項戦犯」だと思いますが)はその赦免は連合国の同意によって行われ、彼らの名誉は国内的のみならず国際的にも回復されている(外務大臣として日本国を代表して国連総会で加盟演説を行い万雷の拍手を受けた重光葵の例など)ことを強調して、合祀された刑死・獄死者も同様であるという点を周知し、参拝自体は諸外国での戦没者追悼同様にごく自然なものであることをアピールしていけば良いのでしょう。

「東京裁判史観」を否定し、その効力だけをしぶしぶ受け入れた、というのが反米ナショナリストの主張ですが、私は東京裁判のトータルでの正統性を認めた上で、刑死・獄死者を含む戦没者への追悼も認める、という立場です。前に挙げた重光葵の他にも池田内閣の法務大臣となった賀屋興宣の例、さらに不起訴となったものの「A級戦犯」指定を受けた岸信介(首相在任時に日米安保条約改定を行う)などの例もあります。政府主催の「全国戦没者追悼式」にも、追悼対象に「A級戦犯」が含まれ、その遺族に招待状が送付されています。これらを全て、戦後の「戦犯政治」と片付けるのなら一貫した論旨としてそれはそれで結構ですが、それは同時に日米安保体制の否定です。現に主張しているのは日本共産党くらいなものです。

投稿: ムスカ | 2006年9月28日 19:22

ろろさん、

この引用記事自体は純真無垢に信じ込めるものではありませんが、実際に過去にも自衛隊の幹部が核武装論を唱えているので無視はできません。アメリカの核軍備管理専門家の間で日本の核武装が話題になるのも気にかかるところ。もっとも、その可能性については否定的ですが、なぜ話題になるのか?実は日本国民の知らぬところで自衛隊幹部が極秘計画でも立ち上げている?

ちなみにドイツの核武装の可能性の話題はまず目にしません。近くに北朝鮮のような国がないからでもありますが。

>核武装するのは主権国家として、禁止されるものではないでしょうが、今やるのはどう考えても得策ではありません。

正直なところ、現行の核不拡散体制は不平等で矛盾だらけです。五大国だけが核を保有しながら他の国には持つなとは論理のうえではおかしいです。しかし政治とは論理でなく現実の世界です。

保有国が少なければ核抑止論は成立しますが、余りに保有国が増えると核抑止論の信頼性が揺らぎます。こうした現実を受け入れなければ安全な核軍備管理はできません。

「国家の品格」の藤原正彦が言う通り、論理に偏っては駄目なのです。

アメリカが中国と組むことは考えにくいですが、時と状況によって日中のバランスが変わることは有り得ます。そうならないためにも、日本の核武装だけはさせるなということでアメリカの対日関与を強めさせることはできます。

ただし、当時の橋本首相が言った「米国債を売り飛ばす」というような恫喝的な言い方だけは間違ってもしないことです。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年9月28日 22:31

aseanさん、

私もマーキュリーの記事を無邪気に信じてはいません。ただ、このところ稀にとはいえ、アメリカの専門家の間で日本の核武装の可能性が話題にはなります。その可能性はきわめて低いとは見られているようですが、なぜそんな話題が時折出てくるのか?

ご指摘の通り、安倍首相が戦中のナショナリストと同じイデオロギーの持ち主でとは思っていません。「美しい国へ」を読むと、安倍首相は日本の保守主義と英米の保守主義を融合させた思想の持ち主のようです。また、愛国心についてもこれまでの首相たちより真剣に考えているようです。

ただし、あの本が誰かの代筆でないという前提のもとでですが。

ナショナリストという語が独り歩きするのも、国民の人気が高いのも、まだ就任間もないから。ハネムーン期間が過ぎてから真価が問われることになるのですが、そのときの評価は?

投稿: 舎 亜歴 | 2006年9月28日 23:12

ムスカさん、

返事が遅くなって申し訳ありません。

新規核保有国でもアメリカとの同盟関係にある国はあります。インド、パキスタン、イスラエル・・・。しかしながら核保有国が増えれば増えるほど軍備管理が複雑になります。5大国だけが核兵器を保有し、実質的には米ソだけで核交渉が行なわれた時代には抑止論が信頼できました。しかも他の国やテロ集団に流出する恐れは殆どありませんでした。

ところが核保有国が増えればこうした危険が増します。しかも日本が核保有すれば、それに刺激されて韓国、台湾など次々に核保有に踏み切る恐れがあります。中国、北朝鮮は当然、対抗して核戦力を強化します。そうして核保有国が増えれば、危険な国やテロ集団への流出が起こりやすくなります。

事実、北朝鮮のミサイル発射テストの際にはイランの関係者も招かれていました。このミサイル技術がイランに流出する恐れがあります。ミサイルがアメリカに届くか届かないかなど、もはや重要な問題ではなくなります。

靖国については、問題点を改善して国民の誰もがイデオロギーに関わりなく安心して参拝できる神社になるならそれでOKです。元々は明治維新の功労者を祀るための神社なので、遊就館思想がどこまで解決されたか?

日米同盟の強化は政治理念と軍事戦略の観点から考えるべきで、ファシスト体制の否定は当然のことです。これは中韓への「叩頭」でもなければ、共産党への賛同でもありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2006年10月 9日 00:29

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