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2006年10月31日

アメリカ外交史の新刊:ケーガン氏対フリードマン氏討論会

ネオコンの論客として著名なカーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員が今月に入ってアメリカ外交史の新著を出版した。ケーガン氏は10月18日にカーネギー国際平和財団にてニューヨーク・タイムズのトマス・フリードマン編集長とのパネル・ディスカッションに参加するため、ブリュッセルからワシントンに戻った。

新刊の“Dangerous Nation: America's Place in the World from Its Earliest Days to the Dawn of the 20th Century”ではケーガン氏はアメリカの孤立主義的伝統を否定し、植民地時代からすでにアメリカ外交は拡張主義であったと主張している。現在、ケーガン氏はドイツ・マーシャル基金のプロジェクトでブリュッセルに滞在中である。同書ではヨーロッパ人の視点からアメリカをとらえており、アメリカと他の国々との認識の違いを克明に述べている。ディスカッションの内容を見てみよう(ウィンドウズ・メディアリアル・プレーヤーのビデオはこちら)。

討論会のはじめに、ケーガン氏は外交政策には世界の動向よりもその国の政府や社会の性質の方が大きな影響を及ぼすと述べた。アメリカ外交は独立宣言に基づいており、普遍的な人権を擁護している。ここでは人道的で自由主義的な理念の普及が重要な点である。アメリカの指導者達はジョン・アダムス、セオドア・ローズベルト、ウッドロー・ウィルソンにいたるまでこの目的を追求してきている。

アメリカ国民は自国の外交政策を利他的で、最も崇高な動機に動かされていると考えているが、他国民から見ればそうした外交政策は危険と脅威に満ちた不安定化の要因となっている。ケーガン氏は1898年の米西戦争を典型的な例として取り上げている。ヨーロッパ諸国はアメリカのキューバ介入を非難したが、アメリカはスペイン植民地政府の暴政からキューバを解放するための人道的かつ道徳的な介入であると主張した。アメリカ外交の根本的な性質は革命的な性格に基づいた拡張主義的で好戦的な態度である。だがアメリカ国民はそうしたことを意識していないうえに、自国を帝国だとは見なしていない。アメリカ国民は自国の外交の野心と好戦性を認めていない。これがアメリカと他の国との認識の違いである。

トマス・フリードマン氏は他にも「危険な国」が存在するかどうか尋ねた。ケーガン氏はアメリカほど革命理念を掲げる国は他にないと述べた。中国は普遍的な価値観を主張していない。大英帝国は現代のアメリカときわめて似ているが、民族性に基づくナショナリズムを基盤としていた。他方でアメリカのナショナリズムはイデオロギー的なもので、独立宣言に基づいている。ケーガン氏は宗教が合衆国を統合しているわけではないので、アメリカをキリスト教国家とかプロテスタント国家と見なすことは全くの見当違いであると主張している。

アメリカと他の国々との認識の違いを示す興味深い例として、モンロー・ドクトリンを取り上げている。ドクトリン自体は一般には孤立主義の象徴と受け止められている。実際にモンロー・ドクトリンはアメリカ外交の積極姿勢を示すものである。そこではアメリカが西半球で支配的な地位を確立し、世界の場でイデオロギー的な優位性を主張した。

イデオロギー的なナショナリズムと利他的な拡張主義に加えて、ケーガン氏は南北戦争がアメリカ外交に与えた影響に焦点を当てている。南北戦争以前のアメリカは奴隷の反乱を防ぐために多大な精力を注いだ。南部は第二のハイチを恐れていた。そこでは奴隷の指導者が白人のプランテーション所有者にとって代わった。イデオロギーからすれば、自由と奴隷制は相反するものである。南北戦争の結果は自由民主主義を世界に広めるというイデオロギーをアメリカのアイデンティティとして決定づけた。

ロバート・ケーガン上級研究員によると、ブッシュ政権は世界の中でアメリカが特別な場所であり、その国力は世界の進歩のために利用されるべきだという基本的な価値観を明確に打ち出しているという。こうした傾向は911によって顕著になっている。通常のアメリカの視点からすると、911のテロリスト、日本、ソ連がアメリカと敵対したのは民主的でないからである。そのため、アメリカの政策形成者達はこうした国々の体制を変革する必要があり、究極の真実である自由民主主義が普遍的であることを理解させるべきだと信じている。

アメリカは自国を帝国だとは見なさず、イラクとアフガニスタンでも占領者としては振る舞わない。19世紀のイギリス首相パーマストン卿とは違い、アメリカの指導者達は支配的な地位を担おうという野心を認めていない。イギリスの歴史学者でハーバード大学のニール・ファーガソン教授はこうした態度を批判し、アメリカは19世紀のイギリスのように世界最強国として振る舞うべきだと主張している。しかしアメリカ国民は自国の利他主義が示す暗黙の意味について意識していない。それは他国民に対して「我が国と同じようになれ」と言っているということである。

ケーガン氏はアメリカ外交の重要な側面を指摘している。アメリカ以外の国の国民はアメリカ特有の道徳的拡張主義を危険と見ている。このことは世界各地の反米主義を理解するうえでも重要である。イギリスもアメリカも自由主義の理念を世界に普及させようとしている。イギリスが自国の勢力圏に自分達の思考様式を押し付けようととしたのに対し、アメリカは他国に対して自らが文化的優位にあるとは考えていない。共和党であれ民主党であれ、アメリカと他国との基本的な認識の違いは避けて通れない。他の文明の国々は独立宣言に基づく最も崇高な理念の実現を掲げた政策と共存できるだろうか?これは今世紀の世界安全保障の重要な問題である。

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2006年10月24日

北朝鮮核危機への対処

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出典 The Nightmare Comes to Pass, The Economist, October 12

コンドリーザ・ライス国務長官が北朝鮮の核実験問題について話し合うために極東を訪問した。今回の訪問を前に、国際経済研究所のマーカス・ノーランド上級研究員がフォーリン・ポリシー誌秋季号のインタビューで7つの問題点について答えている。インタビューの内容を見てみよう。

問1:北朝鮮は核実験から何を得ようとしているのか?

ノーランド氏は北朝鮮の指導者の間に核保有によって現体制が維持できるという考えが広まっていると述べている。今回の実験は核兵器開発への第一歩である。

問2:実験のタイミングについてはどう見るか?

次のことが考えられる。キム・ジョンイル氏の朝鮮労働党書記長就任10周年記念、韓国のバン・ギムン外相の国連事務総長選出に向かう関心を北朝鮮に向けさせる、日本の安倍晋三首相の中国訪問への当てつけといったところである。

問3:北朝鮮の核実験によって他の国への核拡散の懸念は高まったか?

ノーランド上級研究員は、この実験によって極東地域の核拡散の危険は高まり、日本、韓国、台湾が要注意だと述べている。フォーリン・ポリシー誌秋季号の“The List: The Next Nuclear States”では3ヶ国への核拡散の可能性について評価を下している。核開発の能力と動機については以下の通りである。

日本

能力:「核兵器に転用できるプルトニウムの貯蔵量は23tに達し、兵器レベルのウラン濃縮の技術もある。日本は世界でも最大で最先端の民間核利用技術を持っている。」

動機:「北朝鮮の急速な核開発によって日本の世論も変わってきており、核保有の是非について国民的な議論が必要だと主張する政治家も現れている。」

韓国

能力:韓国には兵器レベルの核燃料濃縮技術はないと見られるが、民間核利用の技術は高い。しかし1970年代から遅くとも2000年まで、秘密の核開発を進めていた。海外から核兵器開発技術を輸入することはできる。

動機:北朝鮮の軍事的脅威は深刻になっている。米韓関係の悪化もあり、自主国防能力の強化を真剣に考えている。他方、北朝鮮の崩壊に伴う祖国統一によって核兵器を引き継ぐことも有り得る。

台湾

能力:1980年代末までに台湾は数年で核兵器が保有できるほど研究を進めてきた。アメリカなどの圧力もあり、ウラン濃縮技術もプルトニウム生産施設も破棄した。兵器レベルの核燃料の貯蔵量は多くない。だが研究から得た知識は残っていると思われる。

動機:中国の軍事的脅威は高まっており、核保有の決断を下す可能性はある。北朝鮮のように大国の脅威に直面していると主張することは有り得る。

東アジア諸国の指導者達は充分に注意しなければならない。アメリカの政策形成者達は極東諸国をイランやシリア並みに厳しく見るようになっている。閲覧者の皆さんには日本の麻生太郎外相と中川昭一自民党政調会長の発言が向こう見ずだとわかるであろう。二人とも日本の核武装について公然と口にした。核不拡散は世界的な政策課題で、狭い国益を超えたものである。英エコノミスト誌は以下のように記している。

「大量破壊兵器は世界の平和と安全保障に対する明らかな脅威である。大国が国益むき出しの勢力争いを差し置いてもこうした兵器の拡散問題に対して取り組むかどうかは予断を許さない。」(“Going Critical, Defying the World”, October 19参照)

問4:アル・カイダのような組織が核分裂物質を手にする可能性は?

ノーランド氏はその可能性は低いと言う。非国家アクターへの核兵器技術の移転は難しい。固定した場所と設備が必要になるとの答えである。しかしテロ集団への核拡散の危険性は否定していない。

問5:中国は北朝鮮に有効な制裁を科すだろうか?

ノーランド上級研究員の指摘では、アメリカとインドに対抗してゆくために北朝鮮をつなぎとめておく必要があるので中国の立場は微妙だという。

英エコノミスト1019日号の“The Nightmare Comes to Pass”によると、清華(Tsinghua)大学の閻学通(Yan Xuetong)教授 は際限ない制裁の強化には中国は乗り気でないと述べている。閻教授は制裁強化によって北朝鮮がさらに核実験を行なうと主張している。また朝鮮半島での影響力を維持し、台湾海峡からアメリカの注意をそらすためにも中国にとって北朝鮮は必要だと述べている。「閻教授の見解では、北朝鮮の核実験に対する中国の怒りは2003年のアメリカのイラク侵攻にたいするフランスとドイツの怒りと似たところがあるという。」

中国が北朝鮮に対して意味のある制裁をするかどうかは不透明である。同じく英エコノミスト1019日号に掲載された“Sanctions: History Lessons”では重要な以下の点を挙げている。

制裁が効果を挙げるにはできるだけ多くの国が参加しなければならない。特に中国の動向が鍵を握る。制裁は一般国民を苦しめないようにスマートに行なうべきである。キム・ジョンイル主席は海外での悪評など気にしないうえに、イエスマンに取り囲まれている。そのため「これまで以上に孤立させるのは危険を伴う可能性がある。」

それは正しい。世界からの孤立、これが北朝鮮問題を難しくしている。

問6:制裁が適切でないなら、国際社会はどのように対応すべきか?

ノーランド氏は「制裁カード」によって北朝鮮に再実験をやめるよう圧力をかけるべきだと主張する。しかし北朝鮮が事態を把握できずに危険な一線を踏み越え、韓国がどう思おうともアメリカが軍事行動に出ざるを得なくなることを懸念している。ノーランド氏は宥和政策をとれば北朝鮮が冒険主義に出てくると警告している。

問7:今後の北朝鮮はどうなるか?

中国と韓国は核の脅威よりも北朝鮮の混乱を懸念している。しかし北朝鮮の真意は核保有を認めさせたうえでの体制維持だとノーランド上級研究員は述べている。北朝鮮への対応で中韓は結束しているのだろうか?

英エコノミスト1012日号の“The Nightmare Comes to Pass”という記事では中韓関係について興味深い分析をしている。中国は統一朝鮮によって半島全域でナショナリズムと反中感情が高揚するのではと懸念している。韓国民の多くは中国が日本への防壁として朝鮮支配の野心を抱いているのではと疑っている。歴史をふり返れば、朝鮮は中国に服属していた。中国と韓国の亀裂は注目の必要がある。

ここまで7つの問題を見てきた。今、北朝鮮は再実験をしないと公約した。しかし独裁者がいつまで沈黙を守るか定かではない。実験がイランに与える影響も無視できない。最終的には北朝鮮の現体制は国内の反体制運動への支援で崩壊させるべきだと私は信じている。.

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2006年10月16日

イスラムと民主主義

去る9月25日にアメリカに亡命中のイラン人グループが運営するレジーム・チェンジ・イランというブログからIranian Clerics' Angling Stirs Worry on Absolute Rule”というEメールニュースが届いた。それによると、ニューヨーク・タイムズは保守派の長老聖職者でマフムード・アフマディネジャド大統領の顧問もつとめるムハマド・タキ・メスバー・ヤズディ師が民主主義とイスラムは相容れないと言ったと報じていた。これはアメリカ外交に対する挑戦である。ヤズディ師のイスラム政治理論は以下の通りである。

ヤズディ師は1998年7月に「民主主義とは、国民が神の意志に反することを望むなら、紙も宗教も忘れ去られてしまうということである。」と発言している。さらに「騙されてはならない。イスラム教と民主主義は相容れないものである。」とまで言っている。

2002年11月にはアフタブ・エ・ヤズド紙で「投票者の多数派などろくなものではない。ウォッカで酔っ払ったフーリガンや金をもらって投票所に足を運ぶような連中ばかりだ。こんな者達の言うことが国家やイスラムの法になってはならない。」と述べている。

アフメディネジャド大統領の当選を機にヤズディ師の民主主義批判は慎重になったが、今年のマシュハドでの演説を聞けば宗教専門家会議の選挙手続など認めていないことは明らかである。ISNA通信によると、ヤズディ師は選挙など「無知な大衆に学識,者を評価させる」 ようなものだとまで吐き捨てた。

現在、最高指導者ハメネイ師とメスバー・ヤスディ師は最高視聴者の権力の拡大を目指しており、モハマド・ハタミ、アリ・ラフサンジャニ両元大統領と対立している。

歴史的にイランの政治はサファビー朝(15011722年)からカジャール朝(17951925年)に至るまでシャーとイマームの二元体制であった。シャーとイマームの関係には皇帝と教皇の関係と似たところがあった。シャーが政治的な正統性を主張するためにはイマームに認められる必要があった。スンニ派アラブ世界では、ワッハーブ派がサウジアラビアや湾岸諸国の近代化の妨げとなった。どちらの場合も宗教的権威によって政治の指導力に制約がかかった。1979年のイスラム革命を契機に、イランは中世に逆戻りした。イスラム原理主義者達はこの傾向をさらに推し進めようとしている。

実際にイスラム諸国の大多数は非民主的である。ミドルイースト・インフォというイスラエルのアドボカシー団体は、警察国家、神権政治、圧政の下にあるアラブ諸国とイランの合わせて23ヶ国がイスラエルを取り囲んでいると主張している。確かにアラブ世界とイランには民主国家は存在しない。より理解を深めるために、フリーダム・ハウスの指標を参照したい。フリーダム・ハウスは故エレノア・ローズベルト大統領夫人が設立した超党派のNGOであることは周知である。目的はアメリカのリーダーシップによって民主主義を広めるためである。ウクライナの民主化で学生運動を支援したことは余りに有名である。

イスラムと民主主義は本当に相反するものなのだろうか?注意深く事態を見守れば、そのようなことはないことがわかる。フリーダム・ハウス指標2006年によれば、マリの点数は2.0でインドの2.5より良い。この評価方法については当ブログの以前の記事「自由の格付け:フリーダム・ハウスの指標」を参照していただきたい。ブッシュ政権がインドを戦略的パートナーと認めたのは、インドが充分に自由で民主的だと見なしたからである。この事実はイスラム世界でも自らの文化的伝統を損なわずに自由と民主主義を追求できるという証しである。この点から、アメリカ外交の重要アジェンダである中東の民主化は正しいのである。イラクの民主化計画が超党派であったのは何の不思議もない。クリントン政権がこれに着手し、ブッシュ政権が引き継いだまでのことである。

民主化と近代化のために、アメリカン・エンタープライズ研究所のルエル・マルク・ジェレクト常任研究員の論文を参照したい。ウィークリー・スタンダード誌の2月20日号に掲載された“Selling Out Moderate Islam”という論文の中で、ジェレクト氏はイスラム世界の文化改革を主張している。中でも欧米で教育を受けた穏健派のイスラム教徒に期待を寄せている。他方で「欧米が乱暴な脅迫を振りかざすイスラム教徒に宥和してしまえば、アメリカやヨーロッパ在住の自由主義で進歩的なイスラム教徒に対する冒涜になってしまう。祖国でイエスやマリアやモーゼについて言えたことと同じことが預言者ムハマドについても言えるアメリカやヨーロッパは、進歩的なイスラム教徒にとってもはや離れられない土地である」さらに「イスラム文明はエドワード・ギボンのように厚い信仰心を持ちながらもそれに懐疑的で批判的、そして時には極端に非宗教的な視点から自らの文明の土台を見つめ直した人物を輩出していない。」とまで述べている。

ジェレクト常任研究員は「自由世界の基準が崩壊して恐怖に屈してしまえば、長期的にはイスラム教徒達にとっても不利益となる。欧米の反帝国主義左派はイスラム世界に被害者意識を植え付けたが、欧米人がそうやってイスラム教徒たちを対等な競争もできず自分達の宗教も守れない子供扱いしてしまえば事態は悪化の一途をたどるであろう。」とまで述べている。

中世キリスト教世界にも言及しながら、ルエル・マルク・ジェレクト常任研究員は以下のように結論づけている。

キリスト教世界がそうであったように中東のイスラム世界も近代化のあり方を考えねばならなくなるだろう。民主主義の定着が早ければ早いほど、神と人間の関係についての本格的な議論の開始も早まる。それはイスラム側にとっても西側にとっても辛辣なものとなろう。だが権威主義体制が続けば過激派のメッセージが強い影響力を持つようになり、イランのような血みどろの革命が起きるだけなので、他に道はない。ハマスが選挙で勝利を収めたからといって民主化を後退させてはならない。それも西側にとって希望をあたえるものであり、アメリカの国益から最も重要となるエジプトとイランでの本物の選挙が開催されるための強力な後押しとなるべきである。またキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒を問わず、彼らの言論が程度の高いものであれ低いものであれしっかり守られねばならない。選挙と言論の自由はイスラム社会の近代化の基盤を成す。

近代化と民主主義の成功は、アメリカそして西側全体の外交的勝利である。過激派に対してチェンバレン的な優柔不断は問題解決とならない。もちろん、チャーチル的な断固とした力の政策はイスラム社会の啓蒙化を促すようなソフトな政策と併用されねばならない。

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2006年10月10日

北朝鮮核実験と米国極東外交:イランも視野に!

今回、グローバル・アメリカン政論ではスケジュールを変更して北朝鮮の核実験について緊急の記事を掲載する。カーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副所長の緊急コメントを引用しながら、事態を理解したい。

パーコビッチ氏は極東の軍拡競争とイランの核保有への野望を防ぐためにもアメリカは早急に行動すべきだと主張している。そのためにも日本、韓国、中国にも呼びかけてこの地域での核軍拡を防止すべく外交努力でリーダーシップをとるべきだという。パーコビッチ氏が北朝鮮の脅威に直面する日本の潜在的核保有願望を懸念していることは理解できる。安倍晋三首相は過去に核保有を主張したことがある。私もパーコビッチ氏が言うようにアメリカのリーダーシップの下で日本、韓国、中国がお互いの意図と政策を明確にし、核軍拡をさけることはきわめて重要であると思っている。 

中国の動向は重要でアメリカはこの国との協調を進めて共通の問題意識を持つようにしなければならないだろうとパーコビッチ副所長は言う。それはその通りである。中国も核拡散防止を重要と受け止めていることに疑いの余地はない。問題は、中国が誠実に外交交渉に向き合ってくれるかどうかである。この国は常にアジア太平洋地域での戦略的優位を勝ち取ろうと考えている。

核実験がたとえ失敗であったとしても、国連は次の実験をやめさせるべく行動をとらねばならないとパーコビッチ氏が主張していることには注目すべきである。金正日はアメリカから何かを得たいのだろうか。中国と韓国は核実験によって面子を失った。北朝鮮はパトロンとも言える両国を軽視しているのではなかろうか。そして世界を戸惑わせることによって、アメリカと話し合いたいのであろう。それならよろしい。しかしこの国は相手を騙す習慣が身に着いているので、国連安保理ではこのことをしっかり考慮して欲しい。中国もロシアもそうしたやり方が通用しないと北朝鮮にわからせるためにもっと強い態度で臨んで欲しい。

さらにイランへの影響も無視できない。ジョージ・パーコビッチ氏が言うにはイランの強硬派は国連安保理常任理事国の間での交渉の行方を見守っているという。さらに私が強調したいのは、イランの関係者が7月の発射実験の際に北朝鮮のミサイル発射基地に招かれていたことである。悪の枢軸は一層深刻な脅威となっている。

実験の成否を問わず、北朝鮮に対するクリントン外交を再考するべきだと強く思っている。北朝鮮はクリントン政権のジミー・カーター特使を騙した。不誠実極まりない指導者達は核燃料と施設を得たのに約束は守らなかった。先日、フォックス・ニュースがビル・クリントン前大統領のテロ対策を問い詰めた。北朝鮮についてもまた前大統領に答えてもらう必要があるのではないかと私は思う。さもないと悪魔の独裁者は我々を欺き続けるであろう。

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2006年10月 6日

共和党有力大統領候補のサイトに注目

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今回はジョン・マケイン上院議員の“Straight Talk America”という興味深いサイトを紹介したい。マケイン上院議員が2008年の大統領選挙で共和党の有力候補の一人であることはよく知られている。そうしたことから、このサイトが2006年と2008年の選挙を理解するうえで役立つことは確かである。

ジョン・マケイン氏はネオコンの間で評判が高いことで知られている。ウィリアム・クリストル氏とロバート・ケーガン氏はジョン・マケイン大統領とジョセフ・リーバーマン副大統領のコンビが合衆国にとって最善であると事あるごとに述べている。またアメリカン・エンタープライズ研究所や「新世紀アメリカのプロジェクト」といった保守派のリーダーとも言えるシンクタンクとも緊密な関係にある。

このように保守派でも知識人からは受けの良いマケイン上院議員であるが、グラスルーツ保守や超保守派からの受けは今一つで、彼らからはRINO(Republican In Name Only)と見なされている。イラク戦争は積極的に支持したものの、内政面では保守の「原理主義者」という訳ではない。マケイン氏は地球温暖化対策の法案を民主党のジョセフ・リーバーマン上院議員と共同で提出している。エドワード・ケネディ民主党上院議員とも親しい間柄である。そうしたことから、共和党右派にはマケイン氏が保守主義の価値観に忠実かどうかを疑う向きもある。彼らにとってジョン・マケインとは「民主党、特にヒラリー・クリントンよりましな候補」に過ぎない。

では“Straight Talk America”のサイトを見てみよう。このタイトルは素晴しい。積極的で前向きなイメージそのものである。興味深い情報も多い。その内のいくつかについて言及したい。マケイン上院議員は次期選挙を視野にすえた運動を拡大している。ジョージ・H・W・ブッシュ図書館での演説では、まるで次の大統領は自分だと印象づけるかのように元大統領と握手した。こちらのビデオを参照していただきたい。またこのサイトのニュースによれば、上下両院で13人の議員がストレート・トーク・アメリカに参加したという。

政治問題とは別に、マケイン氏はアメリカの青少年向けに“Character Is Destiny”という人生訓話を出版している。ワシントン・ポストではこの本を以下のように評している。

この本の総括でマケイン氏はそこで書かれた内容から読者が「人生の選択に関わるような」教訓を引き出すであろうと述べている。マケイン氏は次のように語っている。「人間は生まれた時は皆同じ性質である。欲しいものが欲しい。それも今すぐに。ところが成長するに従って第二の性質、すなわち人間の性格が備わるようになる」。たとえそれが古臭いと思われても、子供達がそうした人生を歩めるなら結構ではないか。

マケイン氏の著書は34人の偉人を題材に34の徳目を説いている。特に以下の徳目、すなわち正直、勇気、忠誠、責任感、寛容、寛大、謙遜について語っている。またそれほどはっきりとは語っていないが、ユーモア、好奇心、精力、情熱、信頼についても述べている。

マケイン氏が大統領選挙への出馬を視野に入れていることは、著書に挙げられた英雄を見れば明らかである。政治家をとりあげることならマケイン氏には何の雑作も要らないだろう。ウィンストン・チャーチルの勤勉、ジョージ・ワシントンの自制心、エイブラハム・リンカーンの精力、ネルソン・マンデラの寛容、ドワイト・D・アイゼンハワーの謙遜、そしてセオドア・ローズベルトの情熱を記している。

共和党右派からの支持を得るため、マケイン上院議員は保守主義の価値観への忠実性を強調している。当ブログ英語版がリンクしている“Political Yen/Yang”ではボストン・グローブの記事を引用している。このブログはボストン・グローブの記事に記してある「マケイン氏に宗教右派が必要なように、宗教右派もマケイン氏を必要としている」という内容に批判的である。では、5月13日号に掲載された“Analysts say McCain wooing religious right” という記事を見てみよう。

その記事では宗教右派のジェリー・ファルウェル師が運営する福音派系の自由大学の卒業式で、マケイン上院議員が祝辞を述べたと記されている。2000年にはマケイン氏はキリスト教右派を批判して共和党の大統領選挙指名を勝ち取れなかった。2008年の選挙に向けて宗教保守派との関係を修復できないと大統領選挙を勝ち抜くことは難しくなる。他方で宗教右派もマケイン氏を必要としているという。なぜか?彼らも共和党の最有力候補との関係を修復する必要があるからである。だがボストン・グローブは事態を以下のように分析している。

マケイン上院議員の新戦略はリスクを伴う。かつて名指しで批判した人物との和解を装うことで、マケイン氏は最大の政治的な強みを失いかねないという分析もある。利権のための口利きに徹するという政治家像とは無縁なことがマケインの強みであった。

ブルッキングス研究所のスティーブン・ヘス氏は、これでジョン・マケイン議員も鏡を眺めながら『俺は合衆国の大統領になるぞ』と自らに言い聞かせるような生身の政治家に過ないことがわかると述べている。前回の共和党指名選挙でメディアが作り上げたマケイン像は単なる政治家以上のものであった。それは党利党略に流されない理想の政治家像そのものであった。

ある意味では今の方が2000年当時よりも不偏不党の政治家としてのマケインの名声は高まっている。それ以来、政治献金の制限、テロ容疑者への虐待の禁止、そして不法移民滞在者に合法的出稼ぎ労働者の地位を許可といった法案を通してきたが、これによって共和党保守派との対立が深まった。

宗教右派への「叩頭」ばかりか、マケイン氏は10月1日のイギリス保守党の大会で演説し、英米両国の保守主義にある共通の価値観を確認した。保守党のデイビッド・キャメロン党首を応援することで、自らをジョージ・W・ブッシュ現大統領に劣らぬ保守主義者だと印象づけようとしているのであろう。これは理解できる。だがタイミングは疑問視せざるを得ない。かつてイギリスのジョン・メージャー首相はレーガン・サッチャー保守枢軸が維持されるためにもジョージ・H・W・ブッシュ大統領の再選を望むと言った。だが悪いことにビル・クリントン氏が大統領となり、トニー・ブレア首相が就任するまで英米関係が冷却化した。日本の岡田克也民主党党首も大統領選挙中のジョン・F・ケリー陣営を訪問するといった、同じような過ちを犯している。

ストレート・トーク・アメリカからは政策以外のことも多く学べる。アメリカ政治ではグラスルーツ活動が大きな役割を果たす。ヨーロッパや日本とは比べものにならないほど重要なものとなっている。ジョン・ミクルスウェイト氏とエイドリアン・ウールドリッジ氏の共著“The Right Nation”では、アメリカと違ってイギリスでは強い影響力を持つ保守派のラジオ・トーク番組も市民団体も存在しないと記されている。ヨーロッパと日本の市民活動はニュー・レフトの影響が強い。だがアメリカでは様々なチャンネルを通じて保守派の市民活動が盛んに行なわれている。アメリカの地ではアレクシス・ド・トックビルの世界が今も息づいている。

こうした市民活動はインターネットによってさらに発展しようとしている。イギリス労働党が1997年の選挙で勝てた理由の一つがインターネットの活用であった。現在、保守党はネット上のグラスルーツ社会を築いて労働党に対抗し、政権奪還を狙っている。

別に共和党支持者でなくともマケイン支持者でなくともよい。ストレート・トーク・アメリカのEメール・ニュースは中間選挙と大統領選挙の行方を見据えるうえで役立つ。また、グラスルーツ運動やネット民主主義についても多くを学ぶことができる。そうしたことから、ストレート・トーク・アメリカはお薦めのサイトである。

日本語版閲覧者の皆さんへ:当ブログがリンクしている「保守思想」のマイクさんと「苺畑より」のカカシさんはマケイン上院議員をどのように見ているだろうか?二人ともアメリカ保守派のブロガーだけに、日本語版の閲覧者にとって多いに役立つ意見を出してくれそうだが・・・。

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