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2006年11月30日

NATO首脳会議と日本メディアへの失望

リガ首脳会議は終了し、ブッシュ大統領はイラクのヌーリ・アル・マリキ首相との会談のためヨルダンに向かった。NATO首脳会議の結末については後の記事で触れる。

残念なことに日本の政治家とメディアはこの首脳会議に余り大きな関心を寄せていなかったようだ。先の「NATOリガ首脳会議を前に」という記事でも触れたようにこれは日本にとっても重要な会議である。NATOは大西洋圏外の自由な民主主義国とも提携を強めようとしているからである。現在、日本は国連常任理事国入りを目指していることからもわかるように、国際政治で強い役割を担おうとしている。NATOは急速にグローバル化している。日本とNATOの間には重要な共通の利益がある。

だが日本の指導者達はこの首脳会議に余り関心がないようだ。日本の政治家は西側民主主義国の重要な一員として指導力を発揮する用意ができているのだろうか?この記事を閲覧した方々には、東京の政治家とオピニオン・リーダーに対して私がどれほど失望しているかわかってもらえるだろう。

それにもかかわらず、来る1月にはヨーロッパ歴訪の際に安倍晋三首相がNATOを訪問する。首相が言うように日本を本当に「美しい国」にしたいのなら、NATOへの積極関与は重要である。政治的に見れば、日本には二つの中核がある。すなわち明治の脱亜入欧と第二次大戦後のレジーム・チェンジである。安倍首相がヨーロッパを訪問する時には、大西洋の同盟諸国との関係強化が日本の国民的関心事となることを望んでいる。

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NPO法人化、一時足踏み

以前の記事「都庁へ」で述べたようにNPO法人設立に向けて準備のつもりでしたが、10月から11月にかけて私事で思わぬ混乱がありました。そのため11月2日に都庁のNPO法人係に相談に出向く予定でしたが、日時変更を余儀なくされました。

NPO法人の設立には設立総会が必要ですが、現在の賛同者リストに掲載を同意していただいた方々には海外も含めて東京以外に在住が多いです。また、首都圏在住でも忙しい方もいます。そうした事情から、首都圏の方でこちらの活動理念に関心のある方には一人でも多く連絡いただければ何よりです。

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2006年11月22日

NATOリガ首脳会議を前に

Summit2006_logo

以前の記事「NATO、世界の安全保障に積極関与:ブリュッセル国防相会議からリガ首脳会議へ」で述べたように、1128日と29日にラトビアの首都リガで首脳会議が開かれる。この首脳会議は以下の点で歴史的なものである。今回の首脳会議では西側民主主義国の首脳が旧ソ連の共和国の首都で世界の安全保障について重要な問題を話し合う。より重要なことに、NATOは大量破壊兵器拡散やテロなど21世紀につきつけられた難題に取り組みために世界的な関与を強めようとしている。イラク戦争をめぐる対立にもかかわらず、アメリカとヨーロッパは政界の平和と安定に向けて協調関係を発展させている。メディアは中間選挙が米欧関係に与える影響についてばかり話題にするが、あまり意味はない。

リガ首脳会議ではアフガニスタン、イラク、ダルフール、テロ、世界規模での作戦活動、非加盟国とのパートナーシップ、加盟国の拡大といった問題が話し合われる。これらの問題にも劣らず重要な議題がミサイル防衛システムである。このシステムは日本のように北朝鮮の脅威に直面している非加盟国にとっても重要な問題である。またNATOは世界規模でより大きな役割を担おうとしている。NATOのリガ首脳会議は大西洋地域での安全保障を議論する会議にとどまらぬほど重要なものである。

NATOのポジティブな変化について述べるうえで、フォーリン・アフェアーズに掲載された二つの論文について言及したい。一つはクリントン政権の国務副長官で現在はブルッキングス研究所のストローブ・タルボット所長が20021112月号に投稿した“From Prague to Baghdad: NATO at Risk” という論文である。もう一つはブルッキングス研究所のイボ・ダードラー上級研究員とジョージ・ワシントン大学教授で外交政策審議会のジェームス・ゴールドガイガー準上級研究員が2006910月号に投稿した “Global NATO”という論文である。タルボット元国務副長官が米欧同盟に悲観的であったのに対し、ダードラー上級研究員とゴールドガイガイー教授は米欧の同盟にポジティブで肯定的である。大西洋同盟が再び強化される要因となった変化について述べたい。

タルボット元国務副長官が投稿した時期はプラハ首脳会議とイラク戦争の前であった。その論文ではヨーロッパ同盟国の間に広がる対米感情の悪化が懸念されていた。冷戦は終結し、イラク戦争は数ヶ月後には始まろうという時勢であった。タルボット氏は米欧関係の亀裂について以下のように記している。

プラハ首脳会議は次のような矛盾を浮き彫りにするだろう。NATOは長期的には無限の可能性を秘めているが、現在は統一性が保たれるかどうか危うい状況にある。それはもう一つの矛盾が原因である。アメリカの力とリーダーシップによって強固な同盟関係が保たれてきたが、今やどちらもかつてないほど強力で独断的になっている。だが同盟国の多くはアメリカの高圧的な態度に不快感を感じており、アメリカが力の行使に踏み切るほど自国の安全保障が脅かされると同盟国は憤慨するようになり、米欧関係に深刻な影を投げかけている。

また今日の西側諸国の指導者達は違い、タルボット氏はNATOのグローバル化には懐疑的であった。当時のNATOは日本、オーストラリア、ニュージーランドなどとの提携関係を築きつつあった。ヨーロッパ圏外での作戦活動にも手をつけ始めていた。しかし「それは紛争地域で軍事作戦能力のある者が他になく、そのような地域を協調と統合に導くような政治的に敬意を払われている防衛条約も存在しないからである。」と述べている。さらに続けて「だからと言ってNATOがグローバル化し、アフガニスタンからジンバブエに至る世界200ヶ国 の代表がブリュッセルかどこかに集結すべきだとは思わない。そうなってしまえばNATOは国連総会とでも合併した方が良い。」とまで主張していた。

今や事態は変わってきている。NATOはイラク戦争をめぐる米欧対立を克服し、世界規模での介入能力を強化しようとしている。“Global NATO”の中でダードラー上級研究員とゴールドガイガー教授は次のような変化を指摘している。対テロ戦争でNATOは遠方の敵を相手の根拠地で叩くことが必要だと認識するようになった。さらにアメリカ軍がイラク投入で手薄になったため、ヨーロッパ同盟国がそれを埋め合わせるようになっている。2003年8月にはNATOは国際治安支援部隊(ISAF)のアフガニスタンへの派遣を決定した。それ以来、NATOはカシミール、インドネシア、ルイジアナといったヨーロッパ圏外で活動するようになっている。NATOがグローバル化するに及んで、日本、オーストラリア、ニュージーランドといった自由と民主主義という共通の理念を有する国との戦略提携を模索するようになった。ストローブ・タルボット元国務副長官とは違い、両人ともヤープ・デ・フープ・シェファー事務局長によるNATOはヨーロッパを域外の国とも同盟関係を持つべきだという提案を歓迎している。ダードラー氏とゴールドガイガー氏は「加盟国の拡大の方がその度ごとに形成される連合関係より好ましい。」と主張している。その理由は「まずヨーロッパ同盟国の軍事力はアフガニスタンからスーダン、コンゴ、アフリカのその他の地域まで拡散している」うえに「正式の加盟国になればヨーロッパ域外の国もNATOとの共同軍事作戦に従事する能力を向上させることができる」ということである。

最後にNATOのジョン・コルストン防衛政策立案担当事務局次長とのインタビューを取り上げたい。ホームページ上で紹介されている通り、コルストン事務局次長はブリストル大学とオックスフォード大学で学位を取得し、イギリス国防省で長年にわたる経歴を積み上げてきた。インタビューではNATOの将来に関わる重要な問題について答えている。大西洋圏外の国とNATOの提携について以下の注目すべきコメントをしている。

域外の国との協調を進める理由は軍事システムの改革で協力するためである。提携国とNATOはテロ、核拡散、その他21世紀の問題がつきつける脅威といった共通の課題を抱えている。域外の国もそうした新しい脅威に対処するために軍の近代化という共通の政策課題がある。

そして私が述べたように防衛協力が重要になってくる。NATOとしては域外の国との提携において、加盟国と提携国が協力してテロや21世紀の脅威に対処する能力を高めるために最善の方法を模索している。

国際政治に強い問題意識を持つ者にとって28日から29日のリガ首脳会議は見逃せない。最後Latvia Online Guideというサイトを紹介したい。これはラトビアのサイトで、現地情報を得るには有益だと思われる。

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2006年11月16日

バーレーンとエジプトのブロガーを救え!

去る11月8日に当ブログの英語版にリンクしている“My News’n Ideas”からのEメールが届いた。それによるとHAMSA(Hands Across the Mideast Support Alliance)がバーレーンとエジプトで逮捕されたブロガーの釈放を要求する自分達の活動を支援するように要請している。メッセージは以下の通り。

思想信条がどうあれ、自由とは普遍的な人権である。だが先週に中東のブロガー2人の身の上に起きた出来事は、表現の自由は常に保証されるわけでないということである。一人は自分のブログが閲覧禁止にされ、もう一人は投獄されて助けを求めている。

マフムード・アル・ユーシフさんはバーレーンのブログ界の草分けである。実業家の彼はMahmood’s Den というブログを運営し、HAMSAのエッセイ・コンテスト審査員を務めている。

先週、バーレーンの情報省はこのブログを閲覧禁止にするよう通達した。情報省当局はこのブログがバーレーンの政治スキャンダルに触れたことに重大な懸念を抱き、バーレーン国内でのアクセスを禁止してしまった。HAMSAはバーレーン国内の活動家と一緒にマフムードさんのブログの閲覧を解禁するよう呼びかけている。200人を超える賛同者がバーレーン政府にEメールを送っている。

その数日後、マフムードさんとの交渉に臨んだ政府はブログの閲覧を解禁した。

マフムードさんを支持した中東のブロガーではアブデルカリーム・ソリマンさんが有名である。カリームというハンドルネームを使うソリマンさんは昨年、自らのブログで自分が学んでいたエジプトのアル・アズハル大学を批判して国際的な注目を集めた。

昨日、カリームさんは地元エジプトのアレクサンドリアの検察庁に召還された。アラブ人権ネットワークの弁護士がカリームさんに同行した。エジプト当局はカリームさんのブログのみならず宗教的信条ついて尋問した。(ラマダンには断食をするか?礼拝をするか?ダルフールについてどう思うか?)

カリ-ムさんは断固とした態度であった。自分のブログ記事を取り消さなかった。検察当局はカリームさんを投獄し、現在に至っている。起訴事実は「エジプト大統領への侮辱」と「エジプトの名誉を傷つける不適切な記述」である。この事件はエジプト最大の中立派英字The Daily Starの一面を飾っている。

カリームさんは穏やかな口調の青年である。HAMSAのエッセイ・コンテストに入賞し、最近カイロで開いた当会の人権セミナーに出席した。HAMSAはカリームさんを見捨てない。彼の釈放を求めて世界的な支援が高まることを望む。

釈放キャンペーンの最新記事は彼の友人によるFree Kareem blogを参照して欲しい。そしてここでエジプト当局への請願はこちら(sign an email/petition to Egyptian and America authorities urging Kareem’s immediate release)。この24時間で130人が署名している。 カリームさん釈放運動へご協力を。

自由のために

ジェシー・セージHAMSAプロジェクト部長

キャンペーンへの参加はこちらのリンクで:http://hamsaweb.com/c2/home.php?id=Kareem

ブロガーの皆さん、参加を宜しくお願いいたします。

Shah Alex

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2006年11月10日

中間選挙後のアメリカ外交政策

去る11月7日の中間選挙では民主党が上下両院で多数派となった。今回の選挙を前に選挙結果がアメリカの外交政策にどのような影響をもたらすかという分析がなされている。今後2年間、ブッシュ政権は議会対策で苦慮することもある。今回の選挙ではイラクが争点となった。ジョージ・W・ブッシュ大統領はイラク政策と外交全般で路線転換するのだろうか?また2008年の大統領選挙への影響についても触れたい。

ブルッキングス研究所のトマス・マン上級研究員は11月1日に国務省で行なわれた公開フォーラム今回の選挙はイラク戦争への反発とブッシュ政権への国民の不信感、そして議会共和党の腐敗が大きな争点となったと述べた。だが注目すべきは民主党が国民の怒りにうまく乗り切れず、下院まで落とすようなことになればアメリカの選挙制度が民主的なものかどうかという信頼性が揺らいでしまう。そうなれば議会民主党そのものの存在意義が問われかねない。しかし今回の選挙結果が2008年の大統領選挙に直接つながる訳ではない。中間選挙の勝敗と大統領選挙の行方は関係ない。大統領選挙ではイラク問題の展開と経済動向が大きな影響を及ぼし、両党がどれだけ魅力ある候補者を立てられるかも重要であると述べていることである。言い換えれば、民主党は内政でも外交でも説得力のある代替案を出さねばならない。アメリカはテロ、核拡散、アフガニスタンなど実に多くの外交問題を抱えている。イラクはその内の一つなのだが、他の重要な問題については選挙では殆ど議論されなかった。共和党政権の成果は悪くはない。 

良かれ悪しかれ、共和党政権はそれなりの実績を挙げてきた。好調な経済、低い失業率、に加えて2001年9月11日からアメリカ本土への大規模なテロ攻撃は起きていないにもかかわらず、アメリカ国民の多くは殆ど成果が挙がっていないと考えている。(Goodbye to the permanent majority?”, The Economist, November 2)

中間選挙後の外交政策について、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員はデイリー・読売111日号に投稿した“What is a Hard Power Progressive?”という論文で民主党タカ派hard power Democratについて述べている。それは内政ではリベラルだが外交では共和党保守派のクローンといったレベルにはとどまらない。ブッシュ・シニア大統領やビル・クリントン大統領のように現政権よりもリアリストでアメリカの価値観を余りにも高らかに謳いあげる傾向は見られなくなるであろう。だからと言ってアメリカの外交政策が急激に変わるわけではない。民主党タカ派と共和党の同調者達は国家安全保障に関しては保守派とネオコンが掲げたものと同じ問題に取り組むことになる。現在、アメリカはイラク、イラン、北朝鮮の他にエネルギー政策や中国の台頭といった問題にも直面している状況である。そしてオハンロン氏は以下のように述べている。

民主党タカ派はイラク問題でブッシュ政権を厳しく批判しているが、イラクでの敗北を認めて引き下がるという訳でないなら、現状打破のために新しい解決策を打ち出さねばならない。

オハンロン上級研究員は、民主党タカ派は新しい時代と新しい課題に対してハードパワーとソフトパワーをどのようにうまく兼ね合わせるかをよく理解し、アメリカが現在抱えている脅威に対処するであろうと結論づけている。

最後に今回の選挙がアメリカ外交に及ぼす影響について保守派の意見としてアメリカン・エンタープライズ研究所の3人の専門家による見解を取り上げたい。ジョシュア・ムラブチック常任研究員は、民主党の上下両院で指導的立場にあるハリー・リード上院議員とナンシー・ペロシ下院議員は現政権を批判するだけで代替案を持たないと批判している。ノーマン・オーンスタイン常任研究員は選挙後に二つの動きがあると見ている。まず、イラク政策、虐待、情報収集能力について徹底的な調査が行なわれるであろう。そして行政部の権限の拡大に対して議会が制限を科そうとするであろう。両常任研究員の見解に加えて、ダニエル・プレトカ副所長はアメリカが弱く分裂していると見ればならず者国家やテロリストを勇気づける危険を指摘している。いずれにせよ、三人とも共和党が行政権を掌握している限りは根本的な変化はないとの見解で一致している。

外交政策について本格的な議論が始まるのはこれからである。メディアはイラク政策の「失敗」ばかりを取り上げる。だがしっかりした考えもなしに即時撤退してもイラクの安定化にはつながらない。さらにアメリカは外交と安全保障で多様な課題に直面している。どちらの党がこうした問題に対処するうえで真の解決策を示せるだろうか?2008年の大統領選挙に向けたテストは始まったばかりである。

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