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2006年11月22日

NATOリガ首脳会議を前に

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以前の記事「NATO、世界の安全保障に積極関与:ブリュッセル国防相会議からリガ首脳会議へ」で述べたように、1128日と29日にラトビアの首都リガで首脳会議が開かれる。この首脳会議は以下の点で歴史的なものである。今回の首脳会議では西側民主主義国の首脳が旧ソ連の共和国の首都で世界の安全保障について重要な問題を話し合う。より重要なことに、NATOは大量破壊兵器拡散やテロなど21世紀につきつけられた難題に取り組みために世界的な関与を強めようとしている。イラク戦争をめぐる対立にもかかわらず、アメリカとヨーロッパは政界の平和と安定に向けて協調関係を発展させている。メディアは中間選挙が米欧関係に与える影響についてばかり話題にするが、あまり意味はない。

リガ首脳会議ではアフガニスタン、イラク、ダルフール、テロ、世界規模での作戦活動、非加盟国とのパートナーシップ、加盟国の拡大といった問題が話し合われる。これらの問題にも劣らず重要な議題がミサイル防衛システムである。このシステムは日本のように北朝鮮の脅威に直面している非加盟国にとっても重要な問題である。またNATOは世界規模でより大きな役割を担おうとしている。NATOのリガ首脳会議は大西洋地域での安全保障を議論する会議にとどまらぬほど重要なものである。

NATOのポジティブな変化について述べるうえで、フォーリン・アフェアーズに掲載された二つの論文について言及したい。一つはクリントン政権の国務副長官で現在はブルッキングス研究所のストローブ・タルボット所長が20021112月号に投稿した“From Prague to Baghdad: NATO at Risk” という論文である。もう一つはブルッキングス研究所のイボ・ダードラー上級研究員とジョージ・ワシントン大学教授で外交政策審議会のジェームス・ゴールドガイガー準上級研究員が2006910月号に投稿した “Global NATO”という論文である。タルボット元国務副長官が米欧同盟に悲観的であったのに対し、ダードラー上級研究員とゴールドガイガイー教授は米欧の同盟にポジティブで肯定的である。大西洋同盟が再び強化される要因となった変化について述べたい。

タルボット元国務副長官が投稿した時期はプラハ首脳会議とイラク戦争の前であった。その論文ではヨーロッパ同盟国の間に広がる対米感情の悪化が懸念されていた。冷戦は終結し、イラク戦争は数ヶ月後には始まろうという時勢であった。タルボット氏は米欧関係の亀裂について以下のように記している。

プラハ首脳会議は次のような矛盾を浮き彫りにするだろう。NATOは長期的には無限の可能性を秘めているが、現在は統一性が保たれるかどうか危うい状況にある。それはもう一つの矛盾が原因である。アメリカの力とリーダーシップによって強固な同盟関係が保たれてきたが、今やどちらもかつてないほど強力で独断的になっている。だが同盟国の多くはアメリカの高圧的な態度に不快感を感じており、アメリカが力の行使に踏み切るほど自国の安全保障が脅かされると同盟国は憤慨するようになり、米欧関係に深刻な影を投げかけている。

また今日の西側諸国の指導者達は違い、タルボット氏はNATOのグローバル化には懐疑的であった。当時のNATOは日本、オーストラリア、ニュージーランドなどとの提携関係を築きつつあった。ヨーロッパ圏外での作戦活動にも手をつけ始めていた。しかし「それは紛争地域で軍事作戦能力のある者が他になく、そのような地域を協調と統合に導くような政治的に敬意を払われている防衛条約も存在しないからである。」と述べている。さらに続けて「だからと言ってNATOがグローバル化し、アフガニスタンからジンバブエに至る世界200ヶ国 の代表がブリュッセルかどこかに集結すべきだとは思わない。そうなってしまえばNATOは国連総会とでも合併した方が良い。」とまで主張していた。

今や事態は変わってきている。NATOはイラク戦争をめぐる米欧対立を克服し、世界規模での介入能力を強化しようとしている。“Global NATO”の中でダードラー上級研究員とゴールドガイガー教授は次のような変化を指摘している。対テロ戦争でNATOは遠方の敵を相手の根拠地で叩くことが必要だと認識するようになった。さらにアメリカ軍がイラク投入で手薄になったため、ヨーロッパ同盟国がそれを埋め合わせるようになっている。2003年8月にはNATOは国際治安支援部隊(ISAF)のアフガニスタンへの派遣を決定した。それ以来、NATOはカシミール、インドネシア、ルイジアナといったヨーロッパ圏外で活動するようになっている。NATOがグローバル化するに及んで、日本、オーストラリア、ニュージーランドといった自由と民主主義という共通の理念を有する国との戦略提携を模索するようになった。ストローブ・タルボット元国務副長官とは違い、両人ともヤープ・デ・フープ・シェファー事務局長によるNATOはヨーロッパを域外の国とも同盟関係を持つべきだという提案を歓迎している。ダードラー氏とゴールドガイガー氏は「加盟国の拡大の方がその度ごとに形成される連合関係より好ましい。」と主張している。その理由は「まずヨーロッパ同盟国の軍事力はアフガニスタンからスーダン、コンゴ、アフリカのその他の地域まで拡散している」うえに「正式の加盟国になればヨーロッパ域外の国もNATOとの共同軍事作戦に従事する能力を向上させることができる」ということである。

最後にNATOのジョン・コルストン防衛政策立案担当事務局次長とのインタビューを取り上げたい。ホームページ上で紹介されている通り、コルストン事務局次長はブリストル大学とオックスフォード大学で学位を取得し、イギリス国防省で長年にわたる経歴を積み上げてきた。インタビューではNATOの将来に関わる重要な問題について答えている。大西洋圏外の国とNATOの提携について以下の注目すべきコメントをしている。

域外の国との協調を進める理由は軍事システムの改革で協力するためである。提携国とNATOはテロ、核拡散、その他21世紀の問題がつきつける脅威といった共通の課題を抱えている。域外の国もそうした新しい脅威に対処するために軍の近代化という共通の政策課題がある。

そして私が述べたように防衛協力が重要になってくる。NATOとしては域外の国との提携において、加盟国と提携国が協力してテロや21世紀の脅威に対処する能力を高めるために最善の方法を模索している。

国際政治に強い問題意識を持つ者にとって28日から29日のリガ首脳会議は見逃せない。最後Latvia Online Guideというサイトを紹介したい。これはラトビアのサイトで、現地情報を得るには有益だと思われる。

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コメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

投稿: 投資の入門 | 2014年7月 6日 11:22

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