米独ブログ・カーニバルと米欧関係
Atlantic ReviewとGM’s Cornerというブログが主催する米独ブログ・カーニバルが12月11日に開催された。以前にも述べたように、このブログ・カーニバルは四半期ごとに開かれ、米欧間の対話と理解を促進している。およそ20のブログが大西洋の両側と太平洋(すなわち私)からこのイベントに参加した。参加したブログでは政治や経済ばかりでなく、ポップ・カルチャーや市民生活に関するものもある。
アトランティック・レビューから昨日受信したEメールによると、そのブログがタイム誌に「情報化時代の寵児」として「今年の注目人物」の一人に選ばれたという。ブロガーが国境を超えて知的な対話と情報交換を行なえることは喜ばしい。同カーニバルでは米独関係と大西洋同盟が主題となり、レベルの高い本格的な国際関係の議論に参加したい者にはうってつけである。
今年の秋にはラトビアのリガでNATO首脳会議が開催され、自由民主主義の拡大と世界の安定に米欧のパートナーシップがこれまで以上に大きな役割を担うことになった。全てが楽観的なわけではない。このブログの議題に関連したものをいくつか取り上げたい。
このカーニバルの主宰者であるアトランティック・レビューからは“Germany and the United States Failed to Train Afghanistan’s Police”という記事が提出され、アフガニスタンの安定化に向けて死活的な問題が述べられている。アメリカとドイツはアフガニスタンの警察と軍の訓練に充分な人員と装備を提供していない。このブログの編集者達は、アメリカがアフガニスタンでもイラクと同じ間違いを犯していると指摘している。さらに深刻な問題として、麻薬問題がアフガニスタンの警察を蝕んでいるというクリスチャン・サイエンス・モニターの記事を引用している。ドイツが戦闘激化地域への部隊の移動を拒否したことで、米独の亀裂が生じていることにも触れている。
Observing Herman …とThe Assistant Village Idiotではそれぞれが“Lame duck”と“The German American Economic Collapse.”という記事でアメリカとドイツの現政権のリーダーシップの現状を比較している。
Mitteleuropa(中央ヨーロッパ)とエネルギー問題も重要な議題である。The International Affairs Forumはエネルギー開発をめぐるドイツとロシアの協力の進展にポーランドが懸念を抱いているという。“Merkerl’s Geopolitical Menage Trois”という記事によれば、独露関係が緊密になるとポーランド自身が疎外されるのではという疑念が生じているようだ。,
予想された通り、イスラム過激派の脅威を取り上げる者もあり、Chicago Boyzが“The Future Doesn’t Belong to Islam, Thank You Very Much”という記事を寄せている。このブログの著者はイスラムの人口が若くて急増しているのに対して欧米の人口は高齢化が進み減少しているという保守派コラムニストのマーク・スタイン氏の主張を批判している。このブログでは、スタイン氏の議論は全く誤った人口資料に基づいているとしている。
私は“NATO Summit at Riga, Latvia”という記事(日本語版はこちら)を寄せ、NATOのグローバル化について述べている。 日本やオーストラリアなどにまで拡大するNATOについて議論している。また核不拡散、テロ、ならず者体制といった国際社会への共通の脅威に対するNATOの取り組みについても記している。
この他にも数多くのブログから記事が寄せられているが、ここで全てに触れられないのが残念である。このブログ・カーニバルを閲覧すれば米独あるいは米欧関係で今は何が重要か理解するうえで役立つこと請け合いである。メディアの注目が低いながらきわめて重要なものもある。
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