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2007年3月 7日

中国の軍拡とアメリカの対策

中国は今週の日曜日に17.8%もの国防費の増額を発表した。これは最近5年間では最大の国防予算の増額で、アメリカの政策形成者の間では深刻な懸念の声が挙がっている。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン3月4日号の“Beijing Increases Defense Spending”という記事によると、中国当局は「国家安全保障のために軍事予算の増額は重要であり、中国軍は近代化されねばならない。我が国の国防は全体的に脆弱である。」と述べている。防衛問題の専門家はこのメッセージを額面通りに受けとめていない。専門家達は中国が台湾海峡の支配権を確立しようとしており、中台紛争へのアメリカの介入を抑止しようと模索していると見ている。海外の専門家の中には中国の実際の国防費は公式統計の3倍にもなると推定する者もいる。

アメリカ政府高官は中国の野心的な力の追求路線に警戒感を強めている。ディック・チーニー副大統領は中国が行なった対衛星ミサイル実験について、中国自身が標榜している平和的な大国化路線と矛盾するとして非難している。ジョン・ネグロポンテ国務副長官は中国に対して軍備増強の内容をもっと世界に公開するよう要求している。

中国の国防費増額公表に先立ち、カーネギー国際平和財団では2月6日に「第3回対中政策討論会:中国軍の近代化が意味するものは何か」と題されたイベントを開催し、中国の軍拡と世界の安全保障に及ぼす影響について討論を行なった。以下の論客達がパネル・ディスカッションに参加した。

ラリー・M・ウォルツェル米中経済安全保障委員会委員長

デイビッド・M・フィンケルスタイン:CNAコーポレーション中国研究センター及び「プロジェクト・アジア」所長

J・ステープルトン・ロイ:元駐中国大使

議事進行役は

マイケル・D・スウェインカーネギー国際平和財団上級研究員

このイベントの冒頭でステープルトン・ロイ元大使は中国の軍事力増強と経済成長が並行していることに言及している。また米中関係が協力的なものであれば、世界の平和と安定に経済成長を促進しようというアメリカの政策に中国の台頭は有益なものとなる。他方で米中関係が対決的になれば、中国の台頭はアメリカの国益を脅かすものとなる。中国で生まれ育った元北京駐在大使のロイ氏は、中国には日本、アメリカ、朝鮮半島、インド、そしてソ連との軍事対決を繰り返してきた歴史的背景があり、アメリカ国民は中国の行動を評価するうえでこうした背景を理解する必要があると指摘している。

こうした点を踏まえて、ステープルトン・ロイ氏は中国の国防費増額と軍拡に関して以下の問題を問いかけている。

(1)   アメリカでは中国の国防支出が過大だと言われるが、どれほどなら充分なのか?

(2)   アメリカでは中国の軍事支出が過大だと言われるが、その額はイギリス、ドイツ、フランス、イタリアの50%に過ぎない。

(3)   アメリカでは中国が対米対決姿勢であると思われているが、自国の経済開発を犠牲にしてまでそうした政策をとるだろうか?

上記の問題を問いかけたうえで、ロイ氏はこのイベントで議論されるべき問題を次のように設定した。「中国はアメリカとの軍事的対決の可能性を真剣に考えて対策を練っているが、その実情を知る必要がある。これが本日の議題である」。

中国軍の近代化がアメリカとアジア諸国にとって脅威であるかどうか判断を下すために、ラリー・ウォルツェル氏とデービッド・フィンケルスタイン氏はPLA(People’s Liberation Army:人民解放軍)の能力と意図について議論した。まず両氏が自らの見解を述べた。

ラリー・ウォルツェル氏は中国が権威主義的な体制化にあってアメリカと衝突することが多いからと言って敵だというわけではないと主張している。米中双方とも経済と平和では共通の利益を有していると言う。だが中国とアメリカは人権や世界の安全保障をめぐって意見が食い違っている。

中国の軍事的意図は明確ではないが、ウォルツェル氏は台湾海峡と西太平洋の支配権の確立を狙っていると見ている。中国にその能力はあるとも述べている。戦略ミサイル、対衛星ミサイルなど中国の最新技術の標的はアメリカの軍事力である。ウォルツェル氏は中国の野心を挫くためにアメリカは準備を怠ってはならないと主張している。

次にデービッド。フィンケルスタイン氏がPLAの再編成に関する分析を述べた。それによると陸上兵力中心で人海戦術に頼った中国軍は海空軍力も重視したハイテク装備に変貌しつつあるという。フィンケルスタイン氏は中国当局が1991年の湾岸戦争でアメリカが圧倒的な勝利を収めたことに衝撃を受けたことを指摘している。PLAが情報化時代に向けて近代化を始めたのは、これがきっかけである。

中国はもはや陸上でのソ連の脅威に脅える必要はなくなり、石油輸入のためのシーレーン防衛に精力を注ぐ必要が高まっている。ウォルツェル氏と同様にフィンケルスタイン氏も中国がアメリカとの対決を望んでいるわけではなく、東アジアでの軍事的優位と日本やインドへの対抗が念頭にあると述べている

中国の軍事支出が過剰かどうかという問題に関しては、両氏とも中国の軍事技術の急速な進歩について言及し、アメリカの空母機動部隊を攻撃できるまで成長していると述べた。議事進行役が中国は西太平洋よりのアメリカ勢力の一掃を望んでいるかという問題を投げかけた。両氏とも中国はアメリカとの対決を望んではいないものの、近隣の地上と海上で自国の勢力圏を確立しようとしていると述べた。さらに、中露軍事協力がアメリカの優位を脅かすことにも触れた。ロシアの軍事援助によってPLAの近代化はさらに進む。

結論として、中国の軍拡の意図が不明確なことがワシントンの政策形成者の間で深刻な疑念を抱かせている。

このイベントについて詳細はビデオ(ウィンドウズリアル・プレーヤー)とオーディオ(i-Pod)で視聴できる。

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中国・朝鮮半島&アジア太平洋」カテゴリの記事

コメント

  舎さんは、六カ国協議や米国下院の従軍慰安婦非難決議については取り上げないのですか?これらの事象をどうお考えか非常に興味深いです。

投稿: ろろ | 2007年3月11日 22:11

取り上げたい問題は本当に多いです。ブログ記事のテーマ選択で悩むのは長期的な視野で書くか、それともホットな話題となっているニュースを書くかです。政治ブログである以上、その時の差し迫った問題を無視できませんが、かと言って長期的な視野から自らの理念を述べれないなら政治ブログを標榜する意味がありません。これは常に抱えているジレンマです。

六ヵ国協議と従軍慰安婦問題ですが、どうも気になるのは北朝鮮との合意に合わせたかのような慰安婦決議のタイミングです。いくらイラクとアフガニスタンを抱えているからといって、アメリカの軍事負担は冷戦期に比べれば軽いので、これが北朝鮮との妥協の理由だという報道には疑問があります。

非常に気がかりなのは、経済成長を周りの大国に誇りたがる韓国の危険なナショナリズムです。日本のメディアとブロガーは歴史認識での日本との対立にとらわれて「中韓」と一括りにしがちですが、朝鮮半島の将来により大きな影響を持とうとする韓国と中国の間には火種があります。あの慰安婦決議と対北朝鮮妥協の裏に韓国の強力なロビー活動があったのではとの疑念は晴れません。

しかし、これは全て私の勝手な憶測です。それでは、まだ記事は書けません。そもそも、慰安婦について何がどこまで真実か私にはよくわかりません。慰安婦問題がどのように展開するにせよ、周辺の大国に自らの力を認めさせたいという韓国のナショナリズム感情の高まりは、これからアメリカにも中国にも扱い難いものになると思います。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月12日 20:49

中国のような独裁国家が強大な軍備を持ってることが自由世界にとって脅威です。
天安門事件以来、かの国の政治体制に変化はありません。
あのように簡単に自国の市民に発砲できる軍隊は他国の市民に対してはもっと簡単に銃をむけるこことができるのではないでしょうか?

投稿: アラメイン伯 | 2007年3月12日 23:27

舎さん

冷戦終結後、改革開放路線を指揮してきた、鄧小平氏が亡くなったあと、欧米研究者の間では、今後の中国をめぐって、およそ、3つのグループにわかれてますね。
その、中長期的なシナリオとして
1.今後も権威主義体制(CCP支配)が継続する。(アンドリュー・ネイサンなど)
2.民主化へ向かう(ブルース・ジリーなど)
3.崩壊、内戦(権力闘争)状態に至る(ゴードン・チャンなど)

私も、今後の中国を予測することは難しいですが、意外と中国共産党(CCP)は、上手くやるのではないかと思っています。

現在、行われている全人代などを見ても、かなり、法整備に取り組んでいますし、当面、2010年代までは、順調な経済成長を続けるでしょう。

そこで、中国の軍拡、近代化ですが、この目的は、極めて不透明です。
ただ、上記に書いた、CCPのコントロールと経済成長を支えに、この2要因が安定している限り、当面は、シーレーンの防衛と台湾問題でしょうね。
(この内容は、アーミテージ・ナイ・レポート2007にもあります。)

ただ、パワープロジェクションを高めて、エネルギーや食糧などの資源確保の外交に軍事力を背景にする可能性は、高まると考えています。

日本は言うまでもなく、アメリカをはじめ、オーストラリア、特にインドですね、この辺りとの連携強化は、必要ですし、MDの機能向上と早急な設置も必須です。

又、法的・制度的な枠組みも整えておかなければいけません。いくつものシナリオを想定して、その備えに取り組まないといけないでしょう。

尚、慰安婦問題に関して、政治的に言うならば、日本で、語られる文脈と国際的に語られる文脈に差異があります。

米国下院での慰安婦決議案に関しては、ここ、5年連続で出されています。
これまでは、共和党議会でしたから、葬り去ってくれていたのですね、ただ、今年はというと、民主党議会になっています。また、安倍総理の発言もうまくなかった。もちろん、現在、アメリカにおける、コリア系と日系とでは、コリア系の方が多くなっています。それを見込んでか。(これは、推測ですが。)あと、ロビー活動など、いろいろな団体がやっているでしょう。


投稿: forrestal | 2007年3月13日 08:32

>日本のメディアとブロガーは歴史認識での日本との対立にとらわれて
>「中韓」と一括りにしがちですが、朝鮮半島の将来により大きな影響
>を持とうとする韓国と中国の間には火種があります。

  さすがですね。これを見逃しているようでは東アジア情勢を「本気で」論じていることにはなりませんよね。

  トラックバックしたブログ記事でも書きましたが、この二カ国、というか、「朝鮮」と中国は、高句麗・渤海・白頭山などの歴史に対する認識でにわかに対立を深めています。
  発端は中国の歴史研究プロジェクト(プロパガンダ?)「東北工程」です。このプロジェクトで、中国政府は高句麗と渤海を中国の地方政権だと位置づけるに至りました。1997年から始められていたということは、満州の経済開発を進めるためには、朝鮮(キムジョンイル)が邪魔であるという認識を中共が持っていたということを推測させます。
  アメリカはこの対立を利用したのではないでしょうか。通化のミサイル基地にプレッシャーをかけるには、朝鮮北部にMDの基地を置けばいい。その金は日本に出させよう。そういう背景が「従軍慰安婦謝罪要求決議」なる怪論となって表れているように思います。

投稿: ろろ | 2007年3月13日 15:14

アラメイン伯さん、

確かに中国のような国が強大な軍備を持つことは危険ですが、相手が外国となれば自分より強力な武装集団(すなわち米軍や兵員は少なくともよりハイテク装備された日本自衛隊など)との直接対決となります。武力のない自国民のように簡単には発砲はできません。ただ、いつも中国の武力には警戒しておく必要があるのは当然です。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月18日 15:26

forrestalさん、

中国が今後どのような途をたどるにせよ、数千年にもわたって東アジアに独自の勢力圏を保ってきた歴史の重みは良くも悪くも大きいです。まさかウェストファリア体制を否定してかつての冊封体制を復活させようと試みるとは思えませんが、欧米が掲げる自由と民主主義に対抗するような理念を訴えてくることは予想されます。

それにしても気がかりなのは、ウォルツェル、フィンケルスタイン両氏とも中国は旧ソ連とは違うと言いながら、どこがどのように違うのか言及していないことです。まさか、アメリカの政策研究者達の間で両者の違いがしっかりと分析されないままにこのことが常識として定着しているとは思えませんが、両者の共通点と相違点は明らかにして欲しいものです。

慰安婦問題ですが、当時は日本でも貧しい農村の娘などは不況時には否応なく遊郭に差し出されていました。朝鮮でも同じ感覚で日本軍当局がやったのでしょうが、植民地の住民は本国の権力をいつも恐れています。そこが配慮されていなかったというのが真相ではないのでしょうか?いずれにせよ、日本側がこれを大きく騒ぎ立てることは一利もありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月19日 13:03

舎さん

ご存知の通り、冷戦期は、旧ソ連に対する研究が非常に熱心でしたね。中国研究が本格化(より重要度が増すのは)するのは、冷戦終結後です。

ですから、比較検討というアプローチは、まだまだ、少ないのが現状ですね。これは、当然のことですが、ポリシーメーカーそれぞれの見解も違うでしょう。つまり、まだ一元化されていないということです。
アーミテージ・ナイ・レポート2007の分析も必要ですが、あれをそのまま読むと、中国は、政治は、共産主義だが、市場経済に参入している。北朝鮮のような衛星国を持っている。(よって、ウクライナの核危機は、ソ連邦崩壊によって解決と北朝鮮の核問題が同列で語られています)。あと、誰でもわかるのは、両国ともランドパワーであるとか。この辺りからいくつかの共通点と相違点がみて取れるのですが、この程度なら、正直、誰でもわかります。

旧ソ連(ロシアでもいいのですが)と中国研究を同時に比較研究するのは、大変ですから、それぞれの研究者間のアーギュメントが必要なのですが、恐らく、もっと、精緻にやっていると思います。が、仰る通り、どこがどのように、共通で、あるいは異なるということは、クリアにしておかないといけないですね。それによって、取るべき政策が、異なってきます。

慰安婦問題ですが、一番の懸念は、言うまでもなく、日米関係です。小泉政権時は、環境構造上、日米関係は、マクロ・マネージメントさえ、間違えなければ、強化される構造になってましたが、安倍政権では、その構造は、もう存在しません。マイクロ・マネージメントまで、気をくばらねければいけないのです。

まあ、人権も、アメリカが掲げる(アメリカを束ねる)理念の一つですから、特に、民主党は、これを掲げますし、(中国系・韓国系ロビーが云々という話もありますが)、総理は、仰る通り、日本の貧しさを、スタインベックの『怒りの葡萄』をひきながら、説明し、それを表しているのが、世界的に有名なドラマ『おしん』であり、1982年に、レーガン元大統領も絶賛している。そして、戦後、遊郭を廃止したのは、GHQである。とアメリカを引き込み、当時においては、政府は、極力、責務を果たしたつもりだが、至らぬ点があったのだろう。このことは、河野談話で、謝罪している。というぐらいのことを言っておくしかないでしょう。

国際法の規定では、ある意味、慣習法としてあるのですが、強者の責務ですね。このことに対して、日本人は、概ね不慣れだったんでしょう。
仰る通り、その配慮が、欠けていたと思います。ただ、朝鮮併合は、貧しい、朝鮮半島のインフラを整備し、搾取とよく言われますが、実質的な面を見れば、かなりの経済発展に貢献してますし、その後の経済の基盤となっています。が、心理的な側面は、やはり、恐怖であったのだと思います。

過去の歴史にある程度の評価を下さなければいけないのですが、シロ・クロではないでしょう。良いところもあれば、悪いところもある。が、今の慰安婦問題は、もう冷静に何かというレベルではないですね。

投稿: forrestal | 2007年3月19日 16:53

ろろさん、

中韓の歴史論争ですが、どう見ても満州よりさらに東の異民族が中国の地方政権というのは奇妙です。そんなことがまかり通ってしまえば、邪馬台国まで中国の地方政権だったと言われかねません。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月19日 20:53

舎さん、

>中韓の歴史論争ですが、どう見ても満州よりさらに東の異民族が
>中国の地方政権というのは奇妙です。
>そんなことがまかり通ってしまえば、邪馬台国まで中国の
>地方政権だったと言われかねません

  それが中華思想というものでしょう。支那からすれば、化外の地にいるおまえたち禽獣を、文明世界に入れてやるのだ、有り難く思え、というメンタリティなのです。

  だから、支那以外に「皇」の字を用い、冊封を受け容れてこなかった皇統の存在が重要なのです。ここが壊されたら、日本は支那の軍門に下ってしまいます。
  親米だろうと左翼だろうと、皇室の存在が日本を日本たらしめてきたという事実は認めてもらわなければこまります。

  おそらく、過去に冊封にがっちり組み込まれていた朝鮮は、孔子が韓国人だったなどと言い始めている(笑)ほどなので、支那に対して反発を始めているのでしょうね。この前の冬季アジア大会で、表彰台に登った朝鮮の選手が「白頭山は我らの領土」というパフォーマンスをしたのは、朝鮮側の示威行為に他なりません。
  水面下で、中朝は冷戦状態に陥っているというのが私の見方です。

投稿: ろろ | 2007年3月20日 11:55

forrestalさん、

共産主義国だが市場経済に参入している、衛星国がある・・・これは旧ソ連も同じではないかという疑問が沸きあがってきます。市場経済導入ならあちらもやっていました。西側との経済関係が取り沙汰されていますが、旧ソ連もシベリアの資源開発で欧米との共同プロジェクトを抱えていましたし、宇宙開発ではアメリカとのドックキングまでやりました。

こうして見ると、中国と旧ソ連の違いが何なのか不明確です。世界の共産革命を憲法で標榜していた旧ソ連と違って、中国にはそのような目標はありません。しかし中国の政策目標が不透明なのが、両者の共通点と相違点をわかりにくくしているようです。

中国が故意か無意識かわからないのですが、「平和的な台頭」そのものが他国に脅威と映る行動を伴っています。中国ならではの価値観が叫ばれていますが、これもかつて東南アジア諸国の独裁者が自己正当化に利用した「アジアの価値観」と同類ではないかという疑念を抱いてしまいます。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月20日 21:38

ろろさん、

アヘン戦争後に日本だけが西洋文明の衝撃の意味を理解できた背景には、天皇の存在も影響していると思います。中華帝国の属国にならなかったのは、皇室があったのが大きいです。

ただ、第二次大戦期の天皇に対する神格化は異例だと思われます。確かに皇室は尊敬され続けてきましたが、関白であろうが将軍であろうが、その他の天下人達があそこまで天皇を神格化してきたでしょうか?

このところ日本という国のあり方が熱心に議論されていますが、こうした歴史を冷静に見直して欲しいです。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月20日 21:47

>ただ、第二次大戦期の天皇に対する
>神格化は異例だと思われます。

  具体例の摘示がないので何とも言えませんが、あの大戦期に神格化があったとしても、それをもって皇室の存在意義を減殺する理由にはなりませんね。
  あの時期の政策立案者たる「革新官僚」たちは統制経済主義者であり、国体護持に名を借りたマルクス・レーニン主義者と言っても過言ではありませんでした。
  まさか、舎さんが「一部の、特に陸軍の軍人が天皇の名を借りて暴走した」というバイアスのかかった解釈を信じているとは思いませんが、あの時期の国家の担い手(たとえば、岸信介)は、日本の為政者の中では極めて異常な連中の集まりです。彼らの政策、たとえば満州国における五カ年計画の成功が、のちの国家総動員体制につながりました。
  この過程は、歴史の教科書には全く書かれていませんし、不毛な「あの戦争は正しかったか」的議論でも触れられていません。触れられると困る人たちがいるのでしょう。言うまでもなく、戦後も官僚機構に居残った革新官僚の残滓です。自虐史観が導入されたのは、そういう理由があったのではないかと睨んでいます。
  歴史を「冷静に見直す」というのは、こういう部分に光を当てることなのではないでしょうか。

投稿: ろろ | 2007年3月21日 02:15

>、あの大戦期に神格化があったとしても、それをもって皇室の存在意義を減殺する理由にはなりませんね。

私は天皇制否定論を主張したことはありません。そもそも、今や共産党員でさえそんなことを言わないのでは?もはや天皇制の存続の是非を議論する人は殆どいないのでは?

諸外国から見ても、これから即位する天皇が男系であろうが女系であろうが、もはや"Fascist Emperor Hirohito"(こうした見方が正しいかどうかはさて置き)と結びつけて考えることはまずないでしょう。

日本の皇室と海外の王室の交流はごく当たり前のこととして行なわれているので、それほど皇室存続擁護論を力説するほどのこともないと思います。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月22日 17:39

>これから即位する天皇が男系であろうが女系であろうが、

  これは書いちゃダメでしょwww

  女系にしたら、愛子内親王の旦那にどんな人が来るかわかりませんよ。女系にするために皇室典範改正に熱心な左翼官僚の思う壺ですよ。
  それに、男系だからローマ法王も皇居にわざわざ出向いてくるんじゃないですか(キリストの家系が男系ですから)。ヨーロッパに腐るほどある男系でも女系でもオッケーな王朝に、権威も正統性もあったもんじゃありません。

  あと、女系天皇容認論は、中国が支持しているんですよね。その証拠として、人民日報が、皇室典範改正に反対する人間を糾弾していました。連中に取ってみれば、冊封体制に入らなかった日本のシンボルですからね、お家断絶と相成れば、中華帝国に入れてやろうという算段なのでしょう。
  なにも、中国様のお望み通り、愛子内親王のために皇室典範改正をすることはないでしょう。  

  まあ、こちらのブログは「グローバル」「アメリカン」なブログですから、皇統の話などどうでもいいのかもしれませんが、男系を守ると言うだけで中国の精神的侵略には対抗できるということは知っておいても損はないかと思います。


投稿: ろろ | 2007年3月23日 12:57

あの男系でも女系でもというコメントですが、実は故意にしました。なぜか?確かに王室・皇室が続くためには伝統に対する尊敬の念が必要です。一方でこれと全く矛盾しますが、存続のためには伝統など何の未練もなく切り捨てるという変幻自在の性格も必要です。では「グローバル」でも「アメリカン」でもない「ジャパニーズ」な視点から述べます。

日本の皇室が長く続いているのは、歴代の最高権力者とうまく妥協できたからに他なりません。その中でも近代国家への脱皮に対する皇室の適応は見事でした。そもそも関東に行幸し、江戸を東京と改称したこと自体が大変なことだったと思います。歴史的に関東は皇室・公家にとって異文化の世界だったのは周知の通り。そこへ移り住んだだけでなく、最高司令官として御所の奥から都市の雑踏に繰り出す。これはもう諸外国のemperorやkingと同等の存在になったわけです。生活スタイルも洋装、洋食、室内での靴履きなど、列強の君主そのものになりましたが、当時の人にとって、これがどれほど衝撃的であったか想像してもしきれません。現代では非西欧諸国の君主もそうしているので、格別に驚くに当りませんが。

いかな伝統主義者でも、皇室に寝殿造りの屋敷で畳(あるいは板)に座って生活して欲しいとは考えないと思います。

生活スタイルだけではありません。ハワイ王国が滅亡の危機に瀕した時、王女を日本の皇室に嫁がせてアメリカに対抗させようという話しさえありました。言うならば、進取の気性に富んだ当時の指導者は大和民族の血統さえ変えても良いぐらいの積極性があったということです。もっとも政治的には、もはや統治能力のないハワイ王国のためにアメリカと対決しなかったのは賢明でした。これは民族の血統以前の問題です。

ただ伝統を墨守するだけでない。こうした変化を先頭に立って引っ張れる大胆さが日本の皇室の真骨頂だと私は考えています。

現実に近代国家として一夫一妻制度がある限り、男系男子で皇統を維持するのは難しいです。しかも結婚年齢は上がっているうえに、一人の母親から生まれる子も少なくなっています。近代以前のように側室を設ければ問題は簡単に解決するでしょうが、これは民主国家の皇室にはとてもあり得ません。

そうした観点から、女系天皇を頭ごなしに否定して良いのか疑問がわきます。これは天皇制の問題に限りませんが、このところ日本人の間で伝統を尊ぶべきという世論が高まっています。そのことは多いに結構なことです。しかし、日本人には時には伝統などかなぐり捨てて人類の普遍的な理性に基づき新しい時代に突き進むエネルギーがあります。時代に合わず合理性がなくなってきたと思えるなら、新しいやり方を検討することは悪くありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年3月27日 14:03

>舎さん

  宮家の存在に触れていないのも故意ですか?(笑)

投稿: ろろ | 2007年3月31日 00:26

宮家の方々は皇位継承よりも自由な立場で公益慈善活動に従事した方が良いと考えています。天下り官僚よりもずっと国民の信頼があるので。ただ、宮様を隠れ蓑に放漫運営とならぬよう、団体は厳しく、宮家は暖かく見守るというのが良いのではないでしょうか。

もちろん本家の血統が途絶えれば、控え選手の宮家の出番なのは言うまでもありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年4月 3日 12:47

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