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2007年4月20日

ヨーロッパの熱い夏を語るブログ

今回は英国エコノミスト誌が運営する“Certain Ideas of Europe”というブログを紹介したい。昨今は中東のテロとアジアの大国の台頭が注目されがちであるが、ヨーロッパは国際政治で重要な役割を担っている。アメリカ人とヨーロッパ人は世界規模での自由民主化と知的能力の進歩で指導的な立場にある。日本が世界の一流国家を自負できるのも欧米大国のトップ・プレーヤー・クラブの仲間入りをしているからである。

今、ヨーロッパは世界の注目を集めるようになってきているが、それはフランスとイギリスで行政の最高責任者の選挙が行なわれるからである。メディアは国内問題に注目しているが、両国の選挙は国際政治にも大きな影響を及ぼす。特に米欧関係への影響に私は注目している。

フランスでは中道右派のニコラ・サルコジ氏が最有力候補であるが、圧倒的多数の支持を得られるほど強固な基盤を築いてはいない。私はWhat's there to the Franco-American relationship anyway?という記事に以下のコメントをしている。 

米仏関係については、私は安全保障の問題に注目している。フランスの次期大統領は米欧間の亀裂を修復できるのだろうか?これを問いかけるのは、アメリカの対ロシア・ミサイル防衛計画にフランスとドイツが反対しているのに対して、イギリスと新しいヨーロッパ諸国がこの計画を受け入れているからである。ここでもイラク戦争をめぐって起きたような新しいヨーロッパと古いヨーロッパの亀裂が浮き彫りになっているように思える。

ニコラ・サルコジ氏が大統領に選出されれば、安全保障をめぐる認識のずれは修正できるのだろうか?

きわめて興味深いことにサルコジ氏にはドイツのアンジェラ・メルケル首相との共通点がある。サルコジ氏はギリシア人とハンガリー人の両親を持ち、メルケル氏は旧東ドイツの出身である。両氏とも親米的な新しいヨーロッパをルーツとしている。

メルケル首相には米欧間の認識のずれは埋められないままだが、サルコジ氏ならこれができるのだろうか?

経済政策についてはWhat kind of socialism?という記事を読めば、この選挙の争点がわかる。

イギリスに関しては、保守主義が復活するかどうかに注目したい。次期首相にはゴードン・ブラウン蔵相が最有力候補であった。しかし最近の世論調査では野党のデイビッド・キャメロン党首に遅れをとっているらしい。さらにイラク戦争をめぐって労働党は分裂してしまった。先のトライデント・ミサイルの使用延長をめぐる議会での論争では、イギリスの核兵器放棄を主張する労働党左派を抑えるためにトニー・ブレア首相は保守党の力を借りたほどである。

キャメロン氏はこの夏の選挙で勝てるかも知れないが、アメリカン・エンタープライズ研究所のデービッド・フラム常任研究員はBritain's Empty Conservatism” National Post, October 7, 2006という論文でキャメロン氏の政策は保守主義の本道を大きく逸脱していると批判している。ブラウン蔵相が勝つにせよキャメロン保守党党首が勝つにせよ、英米特別関係に選挙の結果が及ぼす影響は、ヨーロッパと世界に重要なものとなる。

“Certain Ideas of Europe”では広い範囲にわたる問題が議論されている。このブログでは東西ヨーロッパはもちろん、ロシアと中央アジアも取り上げている。この拡大ヨーロッパを早くやさしく理解しようと思うなら、このブログを推薦する。

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英米特別関係&大西洋同盟」カテゴリの記事

コメント

英国保守党のキャメロン党首への批判論文読んでみました。ブレア首相に保守党本来の政策の多くをさらわれてしまったので、批判は少し酷かもしれないとも思いました。
これは、保守党政権であれ労働党政権であれ変わらないことですが、英米関係を大きく変えてしまったら、英国のパワーの源泉を大きく損なうことになるでしょう。そういう政策はとらない(というか、とれない)のではないかと、今のところは見ています。楽観的過ぎるかもしれませんが…。

投稿: 猫研究員。 | 2007年4月21日 01:56

舎さん

私なりには、トニー・ブレア首相の外交面に限って言うならば、非常に評価しております。フォーリン・アフェアーズに載せた論文にもあるように、極めて、理念的でありながら、現実的な路線をとり、淡々とやるべきことをこなした印象です。

一方、フランスですが、これはまだ、現時点では、サルコジ候補になるか決まっていませんが、経済的な彼の公約をみれば、エンジンとなるドイツつまりは、クルドを抱えるトルコの問題、ロシアとの協調は、必要不可欠です。

ただ、EUにも消極的ですし、トルコ加盟は反対してますね。

これだけ見ると、多分にジレンマに陥りそうですが、アメリカとの認識ギャップを埋めるのは、むしろ、悲観的になってしまいます。

むしろ、ロワイヤル候補の方が、EUにも積極的で、こちらの方が可能性はあるのかもしれませんが、公約は、公約ですし、フランスの基本外交路線が大幅に変更されるとは、思いませんが。

フランスもむしろ、今、岐路に立っていて、’大国フランス’としてのアイデンティティを再構成したい時期なんでしょうね。

投稿: forrestal | 2007年4月21日 19:50

猫研究員さん、

AEIのデイビッド・フラムの論文ですが、もう少しアメリカとヨーロッパの違いにも配慮して欲しいです。京都議定書にNoではいかに保守と言えどもヨーロッパでは支持を得られません。福祉国家にしても同様です。もちろん、フラムはそうしたことは百も承知で書いていることは間違いないのですが。

英米関係については、選挙の結果よりもその後の首相としてのリーダーシップが問題です。ブラウン蔵相が首相になった場合、労働党左派を抑えられるのかという疑問がわいてきます。イラク戦争をめぐる党内分裂や長期政権による気の緩みか汚職事件が相次ぎ、ブレア首相の指導力は低下しました。ブラウン政権が誕生しても、左派の突き上げをどのようにかわすのか?これはトライデント・ミサイル論争で、核放棄を主張する左派を保守党の力で抑え込んだ例からも見て取れる通りです。

ちなみに、メディアは意地悪くブラウン蔵相がかつては英軍の一方的核廃絶を訴えていたことを取り上げました。労働党の政治家としてキャリアを駆け上がるためには、当時の党の方針に従ったまでなのは明白ですが、こうしたことから一貫性のなさを突かれるわけです。

かと言ってキャメロン保守党党首にはどこまで明確な政策があるのか?これは夏の選挙まで時間があるので、今後の記事で分析してゆくつもりです。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年4月21日 23:23

forrestalさん、

イギリスについては、猫研究員さんへの返答にある通りです。

アメリカ型の自由競争経済を主張するサルコジ内相が親米だという期待の声はアメリカ国民の間であるようですが、メルケル独首相で裏切られているだけに。安全保障に関する認識のギャップは、確かにforrestalさんの指摘にあるような資源外交をめぐる国益も重要です。それに加えて、やはりロバート・ケーガンが「ネオコンの論理」(原題Of Paradise and Power)で述べたような今日の認識と対応に関する米欧間の違いが無視できません。

欧露関係についてはFT4月13日のThe Putin Strategy Is to Divide Europe over Missile Defenceが参考になります。

>>フランスもむしろ、今、岐路に立っていて、’大国フランス’としてのアイデンティティを再構成したい時期なんでしょうね。

まさに、今のフランスは本当に存在感が希薄になっています。かつては盟主を自負していたEUの憲法まで拒否する有様です。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年4月21日 23:52

>舎さま

フラム論文で一番違和感を覚えたのは、ご指摘の温暖化対策の部分です。米国自身が必ずしも温暖化対策完全拒否ではなくなっているのは、昨年と今年の大統領一般教書演説が象徴している通りです。温暖化対策推進=左派という構図はとうに昔のものになっているというべきでしょう。
ブラウン蔵相への懸念、キャメロン党首の未知数。これらはよく観察する必要がありますね。今後とも分析に期待しています。

ps 私信ですが、「提携ブログ」に載せて下さっている私のブログのURLを、時間があるときに新しいものに書き換えておいてくださるとありがたいです。

投稿: 猫研究員。 | 2007年4月22日 03:16

ブッシュ政権は企業の自由な営業を阻害するという共和党保守派の声から京都議定書の批准をするつもりはありません。CO2排出削減は別の方法でやろうと主張しています。国務省など外向きの意見ばかりでは、保守派(あるいはリベラル派でも)の本音はわかりません。

このブログにリンクしている「保守思想」と「苺畑より」で、そうした保守派の生々しい声が記されています。

猫さんのブログへのリンク先と題名は新しいものに変えておきました。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年4月22日 21:50

ブッシュ政権が京都議定書を批准しないというのは、その通りでしょう。「CO2排出削減は別の方法で」というのは、いわゆる「グループ別」とか「原単位規制方式」とかのことだと思いますが、これは京都議定書の理念とは相容れないのは事実です。しかし、ポスト・ブッシュ政権が共和党であれ民主党であれ、ポスト京都議定書の交渉に戻ってくる可能性ないかというとそうとも言い切れないのです。例えば、CCS(CO2地中埋設)による削減が認められれば、ありえる話です。新しいビジネスチャンスがうまれるとなれば、経済界から圧力がかかります。
ご指摘の「保守派の論理」は一言で言ってしまえば「規制はノーだ」ということだと認識しているのですが、政治は理論だけで動くものでもありません。ただ、米国が強硬な態度をとることは、マイナス面ばかりではなくて、EUペースで物事が進んでいくことを防いでくれるという面があります。まあ、ポスト京都議定書の行方は五里霧中であることは間違いないでしょう。

そうそう、早速リンク先変更していただきありがとうございました。

投稿: 猫研究員。 | 2007年4月23日 06:02

温暖化の議論では、最近は人間が輩出するCO2の影響を疑問視する声もあるようですが、現時点では新しい燃料の開発でもした法がビジネス・チャンスもありますし。

イラクやミサイル防衛とは直接の関係はないとは言え、温暖化も米欧関係にすれ違いをもたらしています。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年4月25日 20:21

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