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2007年4月30日

日米同盟の新たな一歩と小さな嵐

日本の安倍晋三首相は両国関係の強化のために4月26日から28日にかけてジョージ・W・ブッシュ大統領との会談を行なうため、アメリカを訪問した。安倍氏が首相に就任してから初の訪米である。日本はアメリカの同盟国としてより重要な役割を担おうとしており、両国の戦略提携はより世界規模なものに進化しようとしている。北朝鮮に代表される地域の安全保障も重要な議題であった。キャンプ・デービッドでは日米協力関係の進展が話し合われたが、メディアは安倍首相が朝鮮人従軍慰安婦問題を否定したことを批判した。今回の首脳会談について簡単に述べたい。

日本のメディアは安倍晋三首相による従軍慰安婦問題での歴史修正主義の発言がもたらす悪影響を懸念していたが、キャンプ・デービッドでの日米首脳会談は両国のグローバルな協力関係作りに向けた雰囲気を高めるうえで有意義であった。

極東の問題に加えて、ブッシュ大統領と安倍首相はイランやイラクといった世界全体の問題も話し合った。アクセス・ニュースの“Bush and Abe Enforce Allies Position”という記事によると、安倍氏はアメリカの対イラン政策への支持を表明した。ブッシュ大統領はイラクとアフガニスタンでの日本の貢献に感謝の意を示した。現在、日本の援助額は対イラクで世界2位、対アフガニスタンで世界3位となっている。アクセス・ニュースの別の記事“Abe Visits US in Move to Reshape Japan’s Foreign Policy Image”では、国家安全保障審議会のデニス・ワイルダー東アジア部長が25日に「両首脳は北朝鮮核問題での協力を議論し、在日米軍の再編成による防衛協力の強化を話し合うだろう」と記者団に語ったという。 

全体的に言えば、今回の首脳会談に対するメディアの報道は肯定的である。ワシントン・ポストは3月24日の論説で従軍慰安婦問題に関して安倍首相を批判していた。しかし427日の“Japanese Leader Aims to Rebuild Ties with Bush”“Bush, Abe Warn of Tougher Stance on North Korea”という同紙の記事では日米同盟の将来と北朝鮮の脅威といった問題により大きな比重が置かれていた。他のメディアも概ね同じような調子である。ボストン・グローブ4月27日号の“Bush: Patience with N. Korea not Unlimited”という記事によれば、両首脳は北朝鮮の核問題で断固よした姿勢をとることで一致した。インターナショナル・ヘラルド・トリビューンでは4月27日の“Bush and Abe End US-Japanese Summit with Show of Cooperation, on North Korea”という記事では他のメディアでも取り上げられていたように、日本が北朝鮮に対するアメリカの軟化を懸念していたと報じた。共同声明では日米両国がこの共通の脅威に一致団結して対抗することを印象づけた。

日本と韓国のメディアはやや異なる視点から報道している。日本で有力な保守派メディアの一つである産経新聞は、今回の首脳会談を日米同盟のさらなる発展のための一歩だと評価している。産経新聞もアメリカのメディアと同様に、アメリカ、日本、インド、オーストラリアによるアジア太平洋地域の民主主義国同盟を設立しようという安倍首相の構想を支持している。しかし産経新聞はマイク・ホンダ下院議員による旧日本への非難決議が日米関係に与える悪影響を懸念している。産経新聞によると、ホンダ議員はアジア人に対して日本軍が第二次大戦中に行なった行為を非難するためにさらなる決議案を通過させようと考えている。(日米首脳会談「戦後レジーム脱却」へ成果、4月29

韓国の中央日報は今回の首脳会談が日米関係の強化となるのか、それとも同盟関係に悪影響をもたらすのか問いかけている。韓国の新聞である中央日報は、慰安婦問題によって日米関係がどれほど良からぬ影響を受けたかを強調している。しかし同紙は北朝鮮の核問題と拉致問題により大きな比重を置いて報道している。韓国民は私が思っていたよりも「未来志向」のようだ(「日米蜜月時代」を新たに開くか終焉させるか、427日、日本語版)。

アメリカのメディアの中にも慰安婦問題を大きく取り上げたものもある。ニューヨーク・タイムズの左翼記者、オオニシ・ノリミツ氏はこの問題を大々的に書いている。オオニシ氏はジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授を引用し、過去の日本軍の行為に遺憾の意を表明したとは言え安倍首相が従軍慰安婦は強制だったことを認めていないと記している(Sex Slave Dispute Follows Abe Even as He Bonds with Bush, April 29)。フォーリン・ポリシー誌のブログではマイク・ホンダ下院議員が安倍晋三首相にさらに明確な謝罪を要求していると言及している(Japan’s Abe Threads the Needle)

アメリカン・エンタープライズ研究所のダン・ブルメンソール常任研究員はロサンゼルズ・タイムズ426日号に投稿し、日米間の小さな食い違いを指摘している。安倍氏が靖国参拝と従軍慰安婦問題で曖昧な態度を取っていることは、アメリカの政策形成者たちを当惑させている。他方で日本は北朝鮮に対するアメリカの軟化に困惑している。こうした困難もあるが、ブルメンソール氏は北朝鮮に対しては日米両国が緊密に協力するととに、安倍首相が提案するアメリカ、日本、オーストラリア、インドによるアジア民主主義国同盟をブッシュ大統領が後押しするよう主張している。ブルメンソール氏はこの論文を以下のように締め括っている。

日本をアジア民主主義同盟に組み込むことで(戦後の西ドイツがNATOの中核をなしたように)、軍国主義の再来を恐れる近隣諸国の懸念を拭い去ることができる。北京が日本の孤立化と弱体化を目論んでいるのではなく、軍国主義の再興を本当に懸念しているなら、これは歓迎されてしかるべきである。

北朝鮮に対する現在の政策が効果を挙げていないように思われるため、今年の3月に辞任したばかりのロバート・ジョセフ元軍縮及び安全保障担当国務次官は現行の協定ではキム・ジョンイル体制を延命させるばかりで核不拡散には役立たないとまで警告している。ジョセフ元国務次官が4月24日にAEIで行なった講演については、別の機会に述べる。これによって日本とアメリカの認識の違いが解消されるかも知れない。

ともかく、日米同盟のステップ・アップが優先されるべきである。中東でのテロとならず者国家の打倒、中国への対処、北朝鮮の脅威への対応、インドとオーストラリアとの協調関係の構築などがなされねばならない。安倍首相は強制がなかったと言って、第二次大戦時の問題を不必要に大きなものにしてしまった。アジアのナショナリストは対日ネガティブ・キャンペーンを繰り広げ続けるかも知れないが、日本の指導者達は自国の政策優先順位に留意するべきである。こうした運動に過剰反応してしまえば日本にとって事態が悪くなるだけである。大戦中の行為に関するアジア人の異議申し立てにそれほど激しく反論するよりも、戦後のレジーム・チェンジを肯定する方が日本の国益にかなう。挑発的な発言によってそのような問題に不必要な注目を集めさせるべきではない。

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