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2007年7月16日

日米間に懸念すべき火種:慰安婦問題と久間前防衛相の原爆発言

現在、日本は戦後の平和主義を見直して世界の中でより大きな役割を担おうとしている。二度にわたるアーミテージ・レポートでもアメリカは日本が「普通の国」となり、力の行使と他の同盟国との集団安全保障に参加ができるようにしようという日本の望みを歓迎している。しかし最近のアメリカ議会下院での朝鮮人従軍慰安婦に関する勧告と久間章生防衛相による原爆に関する発言は、第二次大戦について日本人の秘められた感情を爆発させることになった。私はこうした傾向が日米の戦略提携に暗雲を投げかけることを懸念している。

日本が自己肯定的な外交を模索するようになると、歴史修正主義が緩やかに台頭している。一般的に日本国民は戦後の自由と民主主義を受け容れている。実は戦前の日本国民も大正デモクラシーの時期に自らの手で自由を求めてきた。だが日本人の中でも保守派は戦時の日本の行為が不公正に批判にさらされていると感じている。保守派は日本の名誉が回復されるべき時期に来ていると見ている。日本とアジア近隣諸国、中でも中国、韓国、北朝鮮との歴史認識をめぐる対立は、こうした感情を浮き彫りにしている。そして今やアジア太平洋地域で最も重要な同盟関係にある日米間で、同様な意見の食い違いが出てきている。

民主党のマイク・ホンダ下院議員によって慰安婦問題が下院外交委員会で議決された。良く知られているように安倍晋三首相と日本の保守派は日本軍が朝鮮人女性に売春を強制してはいないと主張した。アメリカ、より広くは西側の政策形成者には日本が戦時のファシズムを擁護するかのように映った。

アメリカの一般国民にネガティブな感情を起こしたという点で日本の指導者達は明らかに不注意であった。日本とドイツはアメリカ主導のレジーム・チェンジの金字塔であることを再強調する必要があり、こうした取り組みは中東で進行中である。アメリカのネオコンだけでなく、リベラルもヨーロッパ人も中東の民主化に取り組んでいる。そうした事情から、日本の指導者は国際社会に対してファシズムの信奉者だという誤解を与えぬようにすべきである。

他方でアメリカの下院が自分達の決議による国家間の関係への影響に充分な配慮を払わなかったことは遺憾である。下院議員は行政部より選挙民との関係が緊密な傾向があり、アジア系少数民族のロビー活動の影響力があったことは想像に難くない。しかし誰が何と言おうと、日米両国は第二次大戦をめぐって口論する関係ではない。両国の戦略提携は冷戦後の安全保障に集中すべきで、これが政策上の優先課題である。

広島と長崎への原爆投下に対する久間防衛相の発言への日本の一般国民の反応は、アメリカに対する隠れた感情を表面化させた。久間氏が戦争の早期終結と極東へのソ連勢力の拡大阻止のためにはアメリカの原爆投下は「しようがない」と発言した際に、日本のメディアとブロガーは激怒した。久間氏の発言は被爆者を軽視するものだということである。アジア諸国との歴史認識論争が深刻化するにつれ、日本のグラスルーツでは保守派から中道派に至るまで、日本軍の行動ばかりでなく連合国軍の戦時の行動も批判されてしかるべきだと主張し始めるようになっている。

確かに久間氏が反核世論を刺激したことは不注意であった。だが過ちを犯したからと言って、日本のメディアと国民が防衛相の辞任を求めるのは行き過ぎである。1950年代や60年代であれば、久間防衛相の辞任はなかったであろう。日本が急速な復興を遂げている時期にアメリカはロール・モデルであった。品質管理システムは戦後日本の経済的奇跡に大きく貢献したが、それはアメリカから輸入されたものであったことは良く知られている。日本人は経営技術とテクノロジーの輸入によってアメリカ人以上にアメリカ的になることを学んだのである。しかし久間発言へのヒステリックな反応から、こうした感情に変化が見られることがわかる。日米間のやり取りはこれまで以上に微妙なものになるかも知れない。

私にとって、二つの件はきわめて奇妙である。日本はどうして第二次世界大戦をめぐってアメリカと口論しなければならないのだろうか? 冷戦は去った。今や新しい脅威の時代である。アメリカの議員がアジア系少数民族のロビー活動の要求に応えるよりも国家間の戦略的利害に集中すべきなのは言うまでもない。しかし最も問題になるのは日本の歴史修正主義者達である。彼らは日本と世界の歴史がどのように進化しているか理解していない。さらに深刻なことに、彼らが戦時の歴史に口を差し挟むことで日本の国際的立場が悪くなる。ともかく、過去の問題に多大な労力を注ぐことは無益である。日本での歴史修正主義の台頭は懸念すべき事態で、これによって歴史が後戻りすることは憂慮すべきである。アメリカ側も戦時の日本の行動を余りにも詳細に取り上げて修正主義感情を刺激すべきではない。だがもっと重要なことは、日本の右派が日本の誇りとはレジーム・チェンジの模範であることだと理解することである。このことは忘れてはならない!

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日米同盟と国際的リーダーシップ」カテゴリの記事

コメント


慰安婦問題に関して歴史修正主義者とは誰か? 
米国や中国韓国のことなのか・・・
この点貴兄の論攷は非常に曖昧です。
しかし、問題はその点ではない。
日本は慰安婦問題に関してはその立場をはっきりさせている。
これに対して米国の下院が在米中国韓国人に扇動されて不当な決議を出そうというのである。ここに一部右派の言動を引き合いに出すのは不均衡だ。
今回の件に関しては、米国の委員会に明らかに非がある。
そのことをはっきりさせなければ、日米の健全な同盟関係もない、と考えるべきである。

投稿: 余り官 | 2007年7月20日 19:29

舎さん、

久間(元)防衛相は、原爆投下はしかたがないと言って世の批判を受けることになったわけですが、もし私であればどう言ったか。日本軍による真珠湾攻撃は「しかたがない」と私は言います。これはどう考えても「しかたがない」ですね。これで米国世論から非難が起こるのであれば、私はワシントンへ行って、なぜ「しかたがない」のか。その理由を延々と述べてもいいです。

日米間には、太平洋戦争及びその後の日本占領統治について議論すべきことが山のようにあります。占領統治時代、GHQ、国務省、CIAが日本でいかに数多くの「悪事」(笑)を行ってきたか。これらは未だ明らかになっていません。過去、何が行われたのか。これはこれで明確にすべきです。

そうしたことによって、日本国内に反米感情が高まるのは、それこそ「しょうがない」ことなのでしょう。アメリカは反米感情を持たれるようなことをやってきたわけですから。

重要なのは、今の時代の国際関係とは、ある国とある国の間でお互いに嫌悪感情が高まりました、よって、その両国の国際関係はなくなりましたという、ひと昔前のようなものではないということです。今の時代は、アメリカは嫌いだ!!と言いながらマクドナルドのハンバーガーを食べる、アメリカの映画、音楽を見る、アメリカ人は日本食を食べる、日本車に乗る、そういう環境であるということです。つまりは、ボーダーレス・ワールドなのです。

投稿: 真魚 | 2007年7月22日 11:24

余り官さん、

本文を読めばわかる通り、歴史修正主義者とは日本の超保守派を代表とする勢力のことですが。

>この点貴兄の論攷は非常に曖昧です。

小論文の講師の講評のようです。今後、何かとお世話になります。

アメリカ下院外交委員会の非をあげつらっても何も得るものはありません。むしろ、ペンタゴンや軍のように日米同盟を重視するグループを通じて表沙汰にならずに影響力を行使した方が得策です。アメリカの新聞に大々的に広告を載せれば逆効果です。

イギリスは目立たぬ影響力の行使が巧みです。ブリティッシュ・ロビーという単語を聞くことはまずありません。XXロビーなどと言われるようでは、駄目です。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年7月22日 21:31

真魚さん、

私が問題視しているのは、日本国民とメディアのヒステリーな反応です。このところ日本国民は愛国心という美しい名目の下に中韓だろうがアメリカだろうがロシアだろうが八つ当たりのような叩きをしています。久間発言など本来は柳沢「産む機械」発言と同レベルの失言です。あそこまでの怒りは異様です。

真珠湾攻撃について、このブログの以前の記事ゴア「大統領」、イラク問題にも発言をにリンクしたロバート・ケーガンのCスパン・インタビューでも同様なコメントがありました。FDRは日本を絶体絶命まで追い込んでいたという自覚がなかったようです。ただし、アメリカ国内の世論もあってケーガンは日本の真珠湾攻撃を支持してはいないがと、言わなくても当然のことを何度か強調していました。

真魚さん、ネオコンの論客も冷徹な歴史分析をしています。だからショッカーの特定を誤らないで下さいね。そもそも国際政治の観点からはブッシュとチェイニーはきわめてゴアと近い政治家と言えます。

グローバル化について示唆に富むコメントをするのに、どうしてショッカーの特定は誤るんでしょうね、真魚さんは?

本題とは関係ありませんが、FDRは厳しく評価しなおされる必要があると思っています。そもそも太平洋最大の米軍基地があのようにあっけなく日本軍に攻撃されたのは"Be prepared"というボーイ・スカウトの標語さえ実践できなかった不覚です。

後世のリベラルに高く評価されるケインズ経済政策も、当のケインズから「本当に私の経済学がわかっているのか?」と疑問視されていました。何かと大規模公共事業を行なった割りに第二次大戦参戦までのアメリカ経済は大して回復しなかったという事実があります。当のケインズは「病気の時に医者にかかるように、経済がうまくゆかない時に経済学者の世話になる」と言っていました。後世のリベラル派はここを間違えて、ケインズ経済政策の名の下にbig spenderとなったのは周知です。これはマイクさんが詳しいと思うのですが。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年7月22日 22:00

影響力の行使の仕方については賛成だ。
また、超保守派の行動の稚拙さについても賛同できる。
しかし、今回の件に関しては、米国や英文メディアがそのことをもって政府の非とするそのこと自体に非があるし、また、根拠もなく、また、日米関係を損ねる決議案を通そうとする、アメリカ議会に非がある。そのことははっきり言うべきだ。「しかたがない」と言ってはすますわけにはいかない。
私自身も親米ではあるが、親米であること米議会の非を非ということはまったく異なる。むしろ、日米関係に妨げになる決議に対して断じてnoということで、より強固な日米関係を築くことができるものと思う。
今回の投稿文に関しては賛成できない。

投稿: 余り官 | 2007年7月23日 15:17

確かに原爆の投下は一般市民を殺傷したという意味で戦時国際法違反です。しかしそれならば一般市民をためらいもなく戦闘に投入した日本軍も同様に戦時国際法違反です。しかも女子供まで。本来こういう場合はゲリラとみなし捕虜の扱いしなくてもいいのですが米軍は保護もしてます。

総力戦をしてたのです。戦後、非難されるかもしれないからといって手加減は難しい。
歴史認識はそれぞれの国よって違うものです。60年以上も昔のことを持ち出すのはアメリカもだけど不毛です。こんなことで論争すべきではありません。


終戦工作に奔走していた米内海軍大臣が原爆投下の報告を受けて
「原子爆弾の投下は天佑だった」と述べています。
史実として本土決戦を主張する勢力は大きかったわけだし原爆の投下が天佑だったというのは米内海相の本音でしょう。

今回の久間発言に関する報道や世論はあまりに冷静さを欠くと思います。

投稿: アラメイン伯 | 2007年7月23日 23:29

そもそも米国は歴史問題に関して議会の決議にもとづいて嘘をいっていい、日本は一部知識人さえそうした発言は控えなさい、ということ自体不均衡である。これでは、健全な日米関係が築けるわけがない。

投稿: | 2007年7月25日 19:17

確かにあの決議はケシカランけど、だからといって日本側も原爆のこと言い始めたら収拾がつかなくなります。
過去の歴史のことは言わない。それが大人の関係です。
マイク・ホンダはダメダメだけどダニエル・イノウエは解ってくれてるじゃないですか。
この原爆の問題に関してダニエル・イノウエに相当する国会議員が日本にいるでしょうか?

ドイツもドレスデンのことは言いません。
日本も原爆のことは言わない。そうでないと前に進めません。

投稿: アラメイン伯 | 2007年7月25日 22:32

ドイツにも同様な慰安施設があったが、そのための謝罪も補償もしてない。議会はドイツには決議してない。この不均衡な関係をどうとらえるか。そこれへんをちゃんと対処しないで、ただ、「じっとだまってればいいんだ」という趣旨では保守陣営は空中分解する。

投稿: こりー | 2007年7月27日 10:07

慰安婦の問題は日本国内にも煽る人達がいるでしょう。アメリカ議会ばかりは責められない。もちろんケシカランとは思うけど。
ドイツとはそのあたりが違うと思います。
戦争には残虐な行為はあります。しかし60年も昔の話を蒸し返してアメリカに謝罪を求めて何の利益があるのでしょう?
慰安婦の決議も同様だけどそれの報復というなら本来的には原爆投下も蒸し返すことではないってことですよね。

アメリカにとっては自国の兵士の犠牲を減らすということだけでも原爆投下は正当化されるでしょう。こんなことで論争してもまったく意味はありません。

投稿: アラメイン伯 | 2007年7月27日 23:10

話しがずれている。
原爆謝罪要求するというのと、米国議会の決議案がけしからん、というのは違う。
原爆謝罪要求などしなくてよい。
しかし、アメリカ議会の決議案と民間ないし、一部政治家のそれに対する反対運動をなぜ抑止せよ、というのか、全く不可解である。
なるほど、今回ワシントンポストへの投稿、及びその内容は戦略不測のそしりをまぬがれない。
しかし、米議会の不誠実な対応には声を大きくして発言していくべきと考える。
親米ポチといわれてもしかたがない発想からは脱却すべきである。

投稿: げん | 2007年7月29日 09:39

余り官さん、
米さん、
こりーさん、
げんさん、

皆、同じ意見なのでまとめて返答します。本文中にもある通り、アメリカ下院が現在の日米関係に及ぼす悪影響を考慮せずに決議したことは厳しく批判しています。またアジア系ロビーの不気味な影響力への警戒も述べています。

彼らは日本の右派を刺激して日米間に亀裂をもたらそうとしているのかも知れません。そのような挑発なら乗らぬことです。

他方で戦中は日本人が戦地や工場へ強制的に駆り出されていました。朝鮮人慰安婦について強制はなかったと言うのは困難です。むしろ大々的な広告を出して、下手にアメリカの一般国民の関心を高めるのは逆効果です。そもそも、一般市民の間で慰安婦問題はそれほど注目されてはいないので。このような騒ぎ方は日本の立場を悪くします。それよりもアジア系ロビーの人脈と資金源でも調べて、これらを断つ方がよほど有効です。

ちなみにアメリカン・エンタープライズ研究所のクリストファー・グリフィン研究員は、北朝鮮問題での日本外しと重なった悪いタイミングから、この決議が日米関係に及ぼす悪影響を批判しています。

いずれにせよ、ファシズム賛美とられる言動には何の利もありません。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年7月31日 08:51

アラメイン伯さん、

原爆に関する久間発言は厳しく非難されるべきですが、厳重注意で事態を収拾するのが大人の対応です。選挙直前に防衛大臣を更迭して、国防行政をどうするつもりだったのでしょうか?

原爆投下は今日の視点からは不必要と言えます。その後の朝鮮戦争、ベトナム戦争でもアメリカが事態の打開に核兵器を使用していないことから、これは明らかです。

ただし、当時の大統領執務室の状況を考慮する必要はあります。現在のように連合国側の戦時特派員が日本にいたわけではありません。衛星テレビで現地の状況が一般家庭でもわかるわけではありません。ガダルカナルや硫黄島のような「常識では考えられない」戦いをしたのが当時の日本軍です。限られた知識と情報から、早く戦争を終結させる手段に原爆投下を選択したのは、それなりの事情はあります。

ただし、後にトルーマンが原爆投下の決断を悔いたとも言われます。戦時下の心理がいかに特殊かということです。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年7月31日 09:07

舎さん、

日米間に懸念すべきこととは、アメリカの下院が従軍慰安婦の謝罪を要求することでもなく、日本の歴史修正主義の台頭でもありません。民主党の小沢代表がシーファー大使にテロ特措法延長への反対を表明したように、日本が自衛権を行使するのは、個別的であれ集団的であれ、日本自身が攻撃を受けた場合に限るということと、国際社会の合意に基づく国連の平和活動には積極的に参加する。という至極当然で、当たり前で、正しい観点からすれば、アメリカの言っていること、やっていることには、なんの正当性もないということです。

小沢一郎の意見はまったく正しいですね。日本国としては、アメリカを支持したい。ところが、ブッシュ政権がこれまでやってきたことは、国際社会では通用しない、アメリカの大国エゴ丸出しです。これでは、アメリカを支持することはできません。

投稿: 真魚 | 2007年8月 8日 23:54

小沢発言ですが、これは彼が今の民主党にいるという党利党略から出たものではないでしょうか?少なくとも新生党あるいは新進党にいたころの彼はかなり保守派でした。このように民主党左派に迎合して自民党との対立軸を作ろうとはしなかったはずです。そこからして真意が疑わしいものです。

日本自身の直接的脅威という概念は、対テロ戦争に見られるように非国家アクターが台頭して国家の領土だけを考えていればよい時代はとっくに過ぎ去っています。そうした発言をしていると、ヨーロッパ人と日本人がアメリカの覇権に懐疑的な深層心理は?に記しているような保安官と酒場の主人の関係になってしまいます。

それに日本人の多くが忘れていますが、日本はトルコとイランの啓蒙主義と近代化のロールモデルでした。ということは、イスラム過激派は日本の敵です。明治の脱亜入欧と戦後のレジームチェンジが日本の国家としての礎です。日本をモデルにした態勢を否定し、暗黒時代を広めようという勢力はまさに日本に対する直接の脅威です。

アフガニスタンからイラクまでの一連の政策はゴアでもやったはずです。今になって私も真魚さんの気持ちになってきました。フロリダの1件がなく、ゴア大統領下で同様な政策が進められていれば、真魚さんは一も二もなく対ゴア協調を訴えていたはずなので。

オスカー授賞式の太った姿を見ても太っていないとまでゴアを礼賛する真魚さん 、本当に大統領がブッシュで残念でしたね。ワハハ・・・。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年8月12日 11:15

舎さん、

小沢一郎は保守ですが、親米保守ではありません。アメリカ依存関係から脱却して、真に独立した国になるべきであるというのが昔からの小沢一郎の考えです。だからアメリカから反感を買い、自民党の本流から外されたのです。

イスラムは本来、日本を敵視していません。中近東諸国の対日感情は、アジアの国である日本が、日露戦争でロシアに勝利し、アメリカと戦争をし敗北したが、戦後は経済大国になったということで、むしろ好ましい感情を持っています。しかしながら、日本はアメリカに支援をしているということで、イスラム過激派の敵とされているのです。テロというのは、ただ単にテロ行為を行うというものではありません。テロを行う側には、そのテロを行う論理があり、大義名分があります。よって、テロを防ぐ方法の1つは、その大義名分を成り立たせないということです。具体的に言えば、イスラム過激派が日本を襲う理由を作らせないということです。

テロの理由なんてどうとでも作れると思われるかもしれませんが。そういうものではありません。それが大規模なテロであればあるほど、その行為について、世界が納得できる理由を提示できるのかどうかというのがテロをやる側の課題になります。日本は、その「説得力のある理由」になるようなことをしない。イスラム過激派から攻撃されるようなことはしない。これが、テロから日本を守る事前の策です。

もっとも優れた勝利とは、戦わずして勝つということです。まあ、ブッシュやチェイニーは孫子なんて知らんでしょうねえ。そして、これはすなわち、アメリカへのテロ行為は、文明の衝突でもなく、自由民主主義に対する挑戦でもない、アメリカ自身の海外での軍事活動への報復であるという、UCバークレーで国際政治学を教えていたChalmers JohnsonのいわゆるBLOWBACK理論からきています。

ちなみに、小沢一郎の言っていることは、そもそもどういうことなのかというと。

そもそも、日本はアメリカの従属構造にある、というか、日本の行う選択というのは、とにもかくもアメリカに従う、従っていればそれだけでいい、ということになっているということがポイントであって、だから国連をそれなりに重要視する民主党政権時代は(アメリカは国連重視だったので)日本も国連を重視していましたが、2000年以後、国連を無視するブッシュ政権になったので(アメリカは国連無視になったので)日本も国連の意志に反せざるえなくなったというのが真実です。

つまり、日本は国連なり、国際社会なりをどう考えるのかという、思考というか、方針というか、戦略というか、信念というか、哲学というか、そうしたグランド・デザインがないのです。その場、その場で、とにかくアメリカに従う。アメリカに従っていさえすれば良い。これが戦後日本です。

岡崎なにがしを代表とする親米ポチの人々は、このように英米に従うというのが近代日本の本来の姿である。日英同盟があった明治日本もそうであるし、日米同盟の今の戦後日本もそうである。これが日本の正しいグランド・デザインであると言っていますが、こんなものをグランド・デザインとは呼びません。英米と関係を持つというのは宜しいことなのです。用は、どのような関係を持つのかということです。アメリカという超大国であり世界覇権国である国と日本国が「対等な」関係など持つことができるわけがありません。不可能です。しかしだからといって、従属関係でいいというものでもありません。

本体、外交とは数多くの選択肢の中からの判断であるべきです。自由度の高い外交カードを持つべきであって、ある1国との関係のみを主軸とした外交では、極めて限定された範囲の中でしか選択できません。日本は、戦後のアメリカ従属の状況から脱却し、真に独立した国家としての外交のグランド・デザインに基づいて、アメリカとの同盟および中国も含めた諸外国との関係を考えることが必要なのです。その場、その場で、とにかくアメリカに従う。アメリカに従っていさえすれば良い、ではなく、時と場合によっては、英米が不利益になったとしても、日本の国益と日本人の独立自尊を保つ選択もありうる、であることが必要です。

19世紀の時代ならいざ知らず、利害関係が複雑に絡み合い、ボーダーレス経済になっている今の時代で、例えば、テロ特措法をやめても、日米関係が険悪になることはありません。原爆投下の是非をめぐる議論だって、日米間でやったっていいんです。延々とした議論になるでしょうけど、延々とやったっていいんです。(相手が違うけど)向こうが従軍慰安婦問題持ち出してくるのなら、こっちはGHQ相手の慰安婦所を設けたことを持ち出して、トコトンやったっていいんです。この程度で日本のアメリカのなにがどうなるものでもありません。

投稿: 真魚 | 2007年8月17日 01:24

真魚さんのコメントに対する答えは、実はNHKの討論会で私が発言できなかったことです。対イスラム関係で言えば、イスラム教そのものは日本の敵ではありませんし欧米の敵でもありません。しかし、イスラム過激派は国際社会の敵です。ましてや近代国家日本の基盤となるイデオロギーを真っ向から否定し、イランとトルコの歴史を逆戻りさせて他の中東諸国でも危険思想により世界を乗っ取ろうとするイスラム過激派は明らかに日本の敵です。イスラムとイスラム過激派の区別はしっかりつけるべきです。

小沢一郎ですが、かつてアメリカのどこぞの博物館で「天皇より大きな署名をした傲慢な男」と名をはせた頃には自らの権力拡大のためにアメリカと緊密な関係にありました。要は、理念より権力を目指して動いてきた人物です。それに日本の民主党は真魚さんが大好きなアメリカの民主党とは名前が同じでも似て非なるものです。同様に自民党もアメリカの共和党ともイギリスの保守党とも対応する存在ではありません。特に自民党の保守派など、米英の保守政党とは全く異質な政治理念の持ち主です。

そこを念頭に、真魚さんの日本民主党に対する支持は考え直した方が良いのでは。小沢一郎も管直人もアル・ゴアではありません。鳩山由紀夫ならゴアに近いかも知れませんが。

中東での日本の評判と日米同盟のあり方について、NHK番組の参加者でも最も発言に相応しい私にその機会が来ませんでした。そこで、二つの問題を次の記事で書きます。

投稿: 舎 亜歴 | 2007年8月19日 00:40

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