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2008年1月29日

パキスタンの混乱とアメリカの政策

ニュー・リパブリック誌の編集員で外交問題評議会のフェローでもあるピーター・バイナート氏は元旦に出演したNPRラジオ番組で、パキスタンはブッシュ政権が民主化に本気で取り組むかどうかの試金石になると述べた。バーナート氏はアメリカが親米派の独裁者を支持し続けるかどうかでジレンマに直面していると言う。バイナート氏は対応を誤ればパキスタンが第二のイランとなってしまうと警告する。

パキスタンは対テロ戦争と核不拡散の最前線である。この国が崩壊してしまえば、アメリカの戦略に大きな痛手となる。ベネジール・ブット氏の暗殺の前に、ダニエル・マーキー氏とフサイン・ハッカニ氏がアメリカのパキスタン政策についてフォーリン・ポリシー誌11月号の”The FP Debate: Should the US Abandon Pervez Musharraf?” という特集で議論を行なっている。マーキー氏はムシャラフ政権を支援し続けるように主張しているが、ハッカニ氏は手を切るようにと訴えている。

ダニエル・マーキー氏は外交問題評議会の上級フェローで元国務省政策スタッフであり、ムシャラフ大統領が1999年に政権の座に就いてからグラスルーツの支持を受けた政党の形成に至らなかったものの、今の時点で退陣したからと言ってジェファーソン的な民主主義に向かう保障はどこにもないと言う。退陣によって軍事、テロ対策、諜報でのアメリカとパキスタンの協力関係が損なわれかねず、アメリカの安全保障にも良からぬ影響を及ぼす。さらにブット氏に率いられた改革派もムシャラフ政権との協調なしには政権は担えなかったと言う。

他方、ボストン大学教授でパキスタンのナワズ・シャリフ首相とベネジール・ブット首相の政策顧問も務めたフサイン・ハッカニ氏は、権威主義の政治ばかりかテロ対策の誤りもあって、ムシャラフ氏がパキスタンをタリバン化していると主張する。パキスタン国内のアル・カイダとは戦う一方で、ペルベズ・ムシャラフ氏はアフガニスタンのタリバンとの戦いには消極的である。その結果、パキスタンとアフガニスタンの国境地域でテロリストがのさばっているとハッカニ氏は指摘する。

ペルベズ・ムシャラフ氏は現在のパキスタンの将軍の一人に過ぎないことに留意する必要がある。カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員は、アメリカがムシャラフ氏を見捨ててもパキスタンの崩壊につながるわけではないと述べている。パーレビ王政下のイランではこうはゆかなかった。イランではシャーの失脚はアメリカの同盟国の喪失を意味したが、パキスタンでムシャラフ氏が失脚したからといって必ずしも同盟国の喪失となるわけではない(“Musharraf and the Con Game”; Washington Post; November 22, 2007)。

上記の三人はそうした論評をしているが、ムシャラフ氏にとって代わる指導者はいるのだろうか?ベネジール・ブット氏は殺害され、ナワズ・シャリフ氏は強い支持があるように見えない。ムシャラフ氏を支持するかしないかはさておき、重要な問題はパキスタンが今後も対テロ戦争の同盟国であり続けることである。

この問題を議論するためには、パキスタンが対テロ戦争をどのように戦おうとしているのか理解することが重要である。カーネギー国際平和財団のアシュリー・テリス上級研究員はアメリカがパキスタンに対して辛抱強く接する必要があると指摘する(“Pakistan ―― Conflicted Ally in the War on Terror”; Carnegie Policy Brief; December 2007)。 テリス氏によると、パキスタンはアル・カイダには厳しく、タリバンには柔軟にというダブル・スタンダードをとっているのは、パキスタンの指導者達がタリバン崩壊によってパシュトゥン人の感情を刺激し、それによって連邦直轄少数部族保護区での部族と軍の強調に支障をきたすと懸念している。また三軍統合情報部の工作員も古くからのタリバンとの関係断絶には消極的である。パキスタンの複雑な政治情勢の他に、テリス氏はアフガニスタンのカルザイ政権が腐敗撲滅と経済再建に成果を挙げていないことも問題をさらに複雑にしていると指摘する。

こうした問題から、アシュリー・テリス氏はペルベズ・ムシャラフ氏を政権から放逐してもパキスタンの対テロ作戦での士気と成果が急に向上することを保証するわけではないと主張する。むしろアメリカは対テロ作戦でパキスタンが充分な成果を挙げていないことへの不満を率直に言い、一方でパキスタンとアフガニスタンに組織改革、技術、資金面での支援を行なうよう提言している。また、テリス氏はNATOの軍事活動をアフガニスタン南部と東部にも拡大するよう助言している。

アシュリー・テリス氏の提言は理に適っているように思われる。イスラム過激派は南西アジアで重大な問題なので、私はインドの関与も必要ではないかと思っている。マンモハン・シン首相は9・11を機にジャム・カシミールでのイスラム過激派の脅威への対処のためもあって、アメリカとの戦略協調を深めている。

核兵器も重要な問題である。12月28日にNPRラジオ番組の「デイ・トゥ・デイ」に出演したカーネギー平和財団のジョージ・パーコビッチ副所長は、核兵器はパキスタン軍が厳重に管理していると述べている。アメリカと同盟国は、この国の政治的混乱の方にもっと注意を払うべきだと言う。

ベネジール・ブット氏の暗殺はどのような影響を与えるだろうか?CNNの「ルー・ドッブス・トゥナイト」の12月27日放送で。ランド研究所のクリスティン・フェアー上級政治アナリストは、ブット氏が選挙に勝てる可能性は低かったと言う。フェアー氏はムシャラフ氏にはある程度公正で自由な選挙によって自らの正当性を示せれば良いと述べている。番組に出演したクリスティン・フェアー氏とアシュリー・テリス氏は選挙の早期開催が必要だとの認識で一致しているのは、ムシャラフ氏がこの危機を利用して独裁体制を強化することはアメリカにとって好ましくないからである。両氏はアメリカが支援すべきはパキスタンの民主的制度であって、ムシャラフ大統領個人ではないと結論づけている。

さらに詳しい情報を得るには下院の中東・南アジア小委員会の証言ビデオを参照されたい(Windows ;Quick Time ;Podcast )。テリス氏とフェアー氏の他にヘリテージ財団のリサ・カーティス研究フェローがアメリカ・パキスタン関係に関する公聴会に出席した。

最後にハーバード大学ケネディ行政学院のハッサン・アッバース研究フェローが発行しているブログが多いに参考になるので言及したい。Watandost と題されたこのブログは、パキスタンと近隣諸国の情勢について記している。アッバース氏はパキスタン政府の元官僚でもある。1月16日付けの“An Indian Perspective on What Went Wrong with Pakistan”という記事で、アッバース氏はネルーの伝統を受け継ぐインドの民主主義と冷戦の論理によって根付いたパキスタンの権威主義を比較している。確かにアメリカは赤化の脅威ばかり注意を払い、パキスタンの独裁者達も自分達の地位の強化に利用してきた。

問題はペルベズ・ムシャラフ大統領自身にあるのではない。パキスタンの政治構造と独立以来の歴史が問題なのである。アメリカ、イギリス、ヨーロッパの同盟諸国はパキスタンにさらなる改革を要求できる。しかし、アシュリー・テリス氏が下院公聴会で述べているように、単に公正で自由な改革ではなくパキスタン国民に受け入れられる改革でなければならない。

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2008年1月22日

アメリカ次期大統領が直面する外交政策での課題

現在、アメリカ大統領選挙は日に日に激しさを増している。ともすれば個々の候補者の浮き沈みに注目が集まりがちである。しかし重要なことは最も有能な最高司令官が選出され、合衆国の本土を守ってアメリカの覇権による世界秩序を強固なものにしてゆくことである。候補者の性別や「血と肌の色」など最重要項目ではない。

合衆国の次期大統領は対テロ戦争、核不拡散、中国やロシアのような新興経済への対処といった、かつてない課題に直面することになる。ジョージ・W・ブッシュ大統領がやり残したイラク、イラン、アフガニスタン、パキスタン、パレスチナといった中東の諸問題は、次期政権に引き継がれることになる。

外交政策での転機を視野に入れながら、クリントン政権期の国務副長官でもあるブルッキングス研究所のストローブ・タルボット所長は、ファイナンシャル・タイムズ・マガジン1月4日号に“Trouble Ahead for the Next U.S. President”という論文を寄稿した。

タルボット氏はビル・クリントン前大統領とはローズ奨学生としてオックスフォード大学で学んだルーム・メートであった。そのため、この論文はクリントン色の強い議論となっている。しかしそうしたバイアスを除いてみると、この論文はアメリカと諸外国の指導者と市民に重要な政策提言を行なっている。

この論文について手短に述べたい。ストローブ・タルボット氏はアメリカと国連の亀裂は修復されるべきだと言う。アメリカと同盟国の関係も同様だと主張する。タルボット氏はブッシュ政権のイラクでの「単独行動主義」と国際機関への軽視に批判的である。

タルボット氏は次期大統領が共和党であれ民主党であれ、捕虜虐待に関するジュネーブ条約と国連条約の徹底遵守を宣言するよう促している。また国際刑事裁判所条約に再署名してブッシュ政権との違いを明確にするよう訴えるべきだとしている。

この論文でタルボット氏は一貫してネオコンが主張するホッブス的な力の論理による外交政策を排し、カント的な法に基づいた外交政策を主張している。次期大統領が早急な行動を起こすべき分野としては、核不拡散と気候変動を挙げている。他方でブッシュ政権以後も重要課題となる民主化促進と対テロ戦争については述べられていない。このことに私は失望している。

しかし私はアメリカが多国間外交によってグローバル問題に対処し、現存する危険分子を打破すべきだというタルボット氏の主張には同意する。タルボット氏はブッシュ外交に批判的であるが、私はNATOのグローバル化が現政権で始まったことに注意する必要があると考えている。NATOは日本とオーストラリアとも戦略提携を模索している。アフガニスタンでの成功は将来への第一歩である。日本がNATO支援のためにインド洋に戻ってくることは多いに歓迎すべきである。

核不拡散に関して、ストローブ・タルボット氏はNPTの遵守を主張する。実際にタルボット氏はジョージ・W・ブッシュ大統領とマンモハン・シン首相の間で結ばれた米印核協定を声高に批判している。また、次期大統領には包括的核実験禁止条約と弾道弾迎撃ミサイル禁止条約を尊重するよう要求している。私はアメリカがインドのような新しいパートナーを必要とするという事情もあるので、徹頭徹尾の法によるアプローチに必ずしも賛成しない。日本とオーストラリアのようなアジア太平洋圏の同盟国もこの国との戦略的な結びつきを模索している。私はアメリカの政策上の選択肢はもっと柔軟であるべきだと信じる。しかし私は核不拡散がこれまで以上に重要な問題であるというタルボット氏の見解には同意する。

もう一つの問題は気候変動である。これは重要な問題で国際社会はアメリカの指導力を必要としている。ストローブ・タルボット氏はアメリカが直ちに京都議定書に署名するよう主張している。私はもっと現実的な方法が必要だと思う。正しかろうが誤っていようが、京都議定書は上院で否決されている。アルバート・ゴア氏の映画でそのような雰囲気が変わるとは思えない。次期政権はアメリカの国益を損なわない代替案を示せるのだろうか?ブッシュ政権にはこれができなかったことは間違いない。

賛成か反対かはともかく、ストローブ・タルボット氏が次期大統領にとって重要な課題を指摘していることは間違いない。アメリカは転機を迎えており、世界も転機を迎えている。最も望ましい候補者は、最も有能な最高司令官としての資格があってNATOのような多国間の取り組みを推進できる人物である。

指導者の選出は党利党略を超えたものである。ヒラリー・ロッダム・クリントン上院議員が涙と同情戦術を用い、女性票に訴えかけたことには怒りを感じる。イギリスのマーガレット・サッチャー元首相ならそのようなことはしなかったろう。サッチャー氏は首相になったのは自分が女性だからでなく、政策が正しいからだと言った。本気で最高司令官になろうというなら、ヒラリー・クリントン氏はサッチャー・フィンチュリー卿を見習うべきである。

中東問題、核不拡散、その他グローバル問題でブッシュ政権がやり残した問題を引き継ぐのは誰だろうか?多国間の取り組みに向けて最も優秀な最高司令官が求められている。

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2008年1月13日

中国経済は本当に強いのか?

中国経済は最近、急成長を遂げている。今世紀中にもアメリカの覇権を脅かす存在になるという者もいる。中国が国際政治と経済の場でこれまで以上に大きな力を振るおうとしているのは疑いの余地がない。グローバル・アメリカン政論では中国の軍事的野望に関してこれまでに以下の記事を投稿してきた。

中国の軍拡とアメリカの対策

111ショック:中華帝国の宇宙への野望をレーガン外交で挫け

さらに中国の指導者達は今年の北京オリンピックを踏み台にこれまで以上の大国への途を歩もうとしている。中国は1964年の東京オリンピックで日本が、そして1988年のソウル・オリンピックで韓国が歩んだ途を同じように進もうとしている。

グローバルでも地域レベルでもそのように熾烈な力のせめぎ合いの真っ只中で、世界銀行は昨年1218日に中国経済が過大評価されており、実際には40%も小さな経済力であったとの声明を出した。世銀は購買力平価(PPP:purchasing power parity )という個人の購買力に着目した指標を用いて146ヶ国の経済力を評価している。この調査によると、一人当たりのPPPで最も豊かな国はルクセンブルグ、アメリカ、アイスランド、イギリス、ノルウェーである。にもかかわらず、中国は世界銀行の統計ではアメリカに次ぐ世界第二位の経済力である。

世界銀行がメディアに情報を公開するより前に、カーネギー国際平和財団のアルバート・カイデル上級研究員は、ファイナンシャル・タイムズの昨年1114日号に“Limits of a Smaller and Poorer China”という論文を投稿した。以前の「中国の経済成長と農村社会に関する注目の研究報告」という記事で述べたように、アルバート・カイデル氏は中国の国家開発改革委員会の国際協力センターの劉建興氏と共にフィールド調査を行なった経験がある。また、中国人助手の助力で研究を仕上げている。そのため、欧米中心の視点ではなく中国人の見方もよく反映した分析を行なっている。

その論文の要約と論評をしてみたい。カイデル氏によると、アジア開発銀行と世界銀行がそれぞれ行なった調査から「中国で一日あたりの収入が世界銀行の定める最低生活水準以下の人口は3億人に達し、これは従来の3倍にもなる」ということである。これは驚くべき数字で、中国の全人口のおよそ1/4に当たる。

中国は国際的な価格調査に参加したことがなかったので、PPPを正確にドル表示することは難しい。中国、インド、ブラジルといった新興経済諸国が世界の低所得市民の人口で大きな割合を占めることから、世界銀行のロバート・ゼーリック総裁はこれらの国々への世銀による融資を継続すべきだと主張している。カイデル氏は、一部の論客が主張するように中国がアメリカの優位を今にも脅かすほど強大になることはないと言う。中国の軍事的脅威に注目するよりも、カイデル氏はアメリカと同盟諸国に中国の経済開発を支援して政治改革に向けて方向づけるように提言している。

アルバート・カイデル氏の経済分析は合理的で説得力がある。それなら中国共産党の指導者達がアメリカによる世界秩序に不満を漏らすのはなぜだろうか?中国は急速な軍拡を行なっている。宇宙への野心も明らかに抱いている。

中国が欧米に激しい対抗意識を抱いているのは安全保障だけではない。中国政府は記者会見の場で中国語の質問以外は受け付けない。言語に加えて、中国当局は啓蒙、人権、自由といった普遍的な理念を否定し続けている

明らかに中国はアメリカ、もっと広くは欧米に対抗してゆこうと必死である。なぜだろうか?中国は北朝鮮のように貧弱な経済を犠牲にしてまで欧米に挑戦しようとでもいうのだろうか?実に不可解である。アメリカとヨーロッパと日本はこれまで以上に中国を観測する必要がある。

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2008年1月 8日

新年への問いかけ:西洋文明とアメリカの覇権への反発

2007年はパキスタンでのベネジール・ブット氏の暗殺という悪夢のようなテロ攻撃で幕を閉じた。イスラム世界での西洋文明への反感は今年の重要な問題になりそうである。これはアメリカの覇権に敵対するものである。NPRラジオでニュー・リパブリック誌のピーター・バイナー編集員はパキスタンが民主化の普及にブッシュ政権がどれほど本気で取り組むかの試金石になると述べた。

イスラムだけが西洋文明の優位に反発しているわけではない。以前の記事でも述べたように、中国は儒教の価値観による別の世界秩序を模索してアメリカに対抗しようとしている。またロシアはプーチン政権下での経済的成功を背景に自信満々に振る舞うようになっている。

そこで以下のことを問いたい。彼らが西欧の啓蒙主義を受け容れるのに及び腰で暗黒時代の権威主義に固執するのはなぜだろうか?そして自由主義世界秩序にはどのような悪影響をもたらすのだろうか?

私は多文化主義を否定しないが、それは一国の社会的な一体感を損なわず自由主義世界秩序の発展に寄与するという条件に適う限りである。北京にある清華大学の閻学通教授は東洋的な価値観の台頭によって世界の文明を豊かなものにできるかも知れないと言う。

しかし問題は、自分達の民族の文明の再興を主張する者がしばしばこれを利用して啓蒙主義を拒否し、暗黒時代の権威主義を擁護していることである。1990年代には東南アジア諸国の経済が急成長し、シンガポールのリー・クアンユー首相やマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相らがアジア通貨危機という惨めな経済政策の失敗にまみれるまではアジアの価値観を高らかに謳い上げた。両首脳とも今日の中国、ロシア、イスラム過激派の指導者のように西欧型啓蒙主義を声高に批判していた。

またアメリカン・エンタープライス研究所のルエル・マルク・ゲレクト常任フェローは欧米が自らの文明への自己批判を経てきたと指摘する(“Selling out Moderate Islam”; Weekly Standard; February 20, 2006)。

イスラム文明はエドワード・ギボンのように厚い信仰心を持ちながらもそれに懐疑的で批判的、そして時には極端に非宗教的な視点から自らの文明の土台を見つめ直した人物を輩出していない。

実際には中国、ロシア、その他アジア諸国民も自分達のエドワード・ギボンを輩出していない。今日、ここに挙げた諸国は急速な経済成長を謳歌している。これら諸国は国際社会の進歩に貢献するのだろうか、それとも西洋文明とアメリカの覇権に対する不満分子に終わるだけなのだろうか?彼らがギボンのような歴史学者を輩出できない限り、経済が発展しても不満分子に留まるしかないであろう。

西欧は中世には未開であった。この時代の西洋は封建秩序、教会の権威、未開の迷信に支配されていた。ギリシア・ローマ文明の再生によって西欧は暗黒時代より解き放たれた。西欧型啓蒙主義は日本とトルコで素晴らしい成功を収めた。イランでもパーレビ王政下の近代化に反対した悪名高き革命が起きるまでは成功を収めていた。

他方で、暗黒時代の教会支配が近代をもたらしたことも注目すべきである。

大学が創立され、知の探求が始まり、工業技術への信頼が生まれ、そして個人主義が生まれてきた。

個々人と神の関係を重視するプロテスタントの教義が個人主義を生んだのか、それとも個人の尊重がプロテスタントの発展に寄与したのかは定かではないが、いずれにせよ個人主義は生まれてきた。 (The Future of Capitalism, Lester Thurow, p.268)

ロシア、中国、その他アジア諸国の経済成長は著しいが、依然として暗黒時代の最中にある。中世の西欧が次の時代に向けて新しい価値観を生み出したように、彼らもそうできるのだろうか?できなければ西洋文明とアメリカの覇権への不満分子に留まるしかない。

議論を深めるために、日本と西洋文明については別の機会で述べたいが、それは日本が脱亜入欧によって西洋列強の仲間入りをしたからである。

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