ジョン・マケイン!戦いに勝つための大統領!!
2006年10月6日の記事でグローバル・アメリカン政論では、“Straight Talk America”という題を掲げたジョン・マケイン上院議員の選挙運動ホームページについて言及した。マケイン氏はイラク戦争と世界規模の対テロ戦争を積極的に支持している。同氏は第二次ブッシュ政権の発足以来、次期大統領選挙での共和党の指名の最有力候補であった。実際に2000年にジョージ・W・ブッシュ氏が共和党の指名を勝ち取るまで、ウィリアム・クリストル氏とロバート・ケーガン氏に代表されるネオコンの指導者達はマケイン氏を支持してきた。
マケイン氏は昨年秋頃には資金不足で選挙運動の継続が危ぶまれていたが、共和党の指名競争の首位に返り咲いた。選挙運動のホームページの題名通り、マケイン氏は自分の政策を率直に語る。同氏は党派を超えた一匹狼とまで呼ばれている。2005年にマケイン氏はブッシュ大統領に捕虜虐待問題を解決してアメリカのイメージ改善をするよう強く要求した。そのため、最近のイラク戦争での成功に同氏が果たした貢献は、アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン常任研究員とジャック・キーン退役陸軍大将による兵員増派の政策提言にも劣らぬものである。
まず、マケイン氏がフォーリン・アフェアーズ2007年11・12月号に寄稿した“An Enduring Peace Built on Freedom”という論文に言及したい。以前の記事で私はミット・ロムニー氏とバラク・オバマ氏に言及した。ヒラリー・ロッダム・クリントン氏もフォーリン・アフェアーズの同号に“Security and Opportunity for the Twenty-first Century”という論文を寄稿している。どの候補者もジョン・マケイン氏ほど対テロ戦争と主要民主主義国の同盟再構築について明確な議論をしていない。マケイン氏はアメリカ主導の多国籍軍がイラクで戦闘を続けるべき理由を明確に主張している。同氏はイラクでの戦争とアフガニスタンとパキスタンでの作戦の相互関係を説明している。マケイン氏が述べているように、性急な撤退は全世界でアメリカと関連のある目標へのテロ攻撃を誘発しかねない。ニール・ファーガソン氏も著書の“Colossus”で同様に述べている。さらにマケイン氏は台湾海峡をめぐる中国の脅威をしっかり認識している。中国に関しては、ヒラリー・クリントン氏が不注意にも「米中関係は今世紀で最も重要な二国間関係である」と述べて日本の論客達の怒りをかったことを思い出して欲しい。
オバマ氏がアメリカ軍のイラク撤退には責任ある事後処理が必要だと主張している一方で、ヒラリー・クリントン氏はそうした事後処理に触れずにイラクからの早期撤退を主張しているだけである。読めば読むほど、マケイン氏の外交政策ビジョンが他のどの候補よりも説得力に富んでいることがわかる。それぞれの論文を読んで比べてみればよい。
さらに、国際世論がイラクの泥沼化を叫んでいた2005年11月10日にマケイン氏がアメリカン・エンタープライズ研究所で行なった“Winning the War in Iraq”という演説にも言及したい。このイベントでマケイン氏はブッシュ政権のイラク政策の失敗を批判し、中でも捕虜虐待問題を取り上げた。このイベントについて詳細はビデオとAEIニュースレター(November 18, 2005)に掲載されたマケイン氏の投稿を参照されたい。このビデオの質疑応答の場面は是非とも観るよう薦めたい。マケイン上院議員は世界各国から押しかけたメディアを相手に、自らのイラク政策を明快で落ち着いて、そして自身を持って答えている。このイベントからほどなくして、スレート・マガジンがマケイン氏の率直さとイラク戦争に対するポジティブな批判精神を高く評価している(“Take the Blame, Mr. President”; November 11, 2005)。マケイン氏は大統領に対する不満分子とは違うのである。マケイン氏はイラク政策の改善に必要な進言を行なったのである。
注目すべきはヘンリー・キッシンジャー元国務長官と湾岸戦争司令官のノーマン・シュウォルツコフ陸軍大将がマケイン氏への支持を表明したことである(“Norman Schwartzkopf Endorses McCain”; FOX News; January 23, 2008)。両氏ともこの戦争と性質とアメリカの勝利に何が必要かを理解している最高峰の戦略家の一人である。さらに重要なのは、両氏とも勝ちにこだわっている点である。戦争においてどれほど有能でも勝つ気のない者は無用である。よって、キッシンジャー氏とシュウォルツコフ氏の支持は次期大統領としてのマケイン氏の信頼性を高めるものになる。
ジョン・マケイン氏にとって彼らの頭脳だけが役立つわけではない。ドイツのシュピーゲル誌はヘンリー・キッシンジャー氏ならファンド・レイザーを招いて多額の資金を調達できると記している(“With Enemies like McCain’s, Who Needs Friends?”; February 12, 2008)。マケイン氏は昨年終盤には資金不足で選挙運動の継続が危ぶまれたが、今や資金に恵まれるようになった。
さらにジョン・ボルトン元国連大使とその他のネオコンの論客達もマケイン氏を支持していると“LobeLog”は記している(“Neo-Cons and Bolton Flock to McCain Standard”; February 10, 2008)。LobeLogはIPS通信ワシントン支局のジム・ローブ支局長 が運営している。ローブ氏はアメリカ外交、中でもワシントン政界でのネオコンの影響力を中心に取材している。同氏はジョン・ボルトン氏とロバート・マクファーレン氏がといったタカ派の外交政策専門家が2月9日の保守政治活動会議(CAPC)でマケイン氏を称賛したと記している。さらにウィリアム・クリストル氏が共和党の保守派の反マケイン感情をメディアは大袈裟に書き立てていると言ったことを引用している。
実際に共和党保守派はマケイン氏の減税、社会規範、気候変動に対する政策に批判的である。ロムニー氏が指名競争から撤退した後も、保守派の中にはマケイン氏の下での結束に消極的な者もいる。こうした状況を踏まえ、ブッシュ大統領はFOXニュースとのインタビューでマケイン氏を真の保守主義者だと断言した(“McCain a ‘True Conservative’”; Breitbart.com; February 10, 2008)。
マケイン氏は強力な国防を主張している。緊縮財政を支持している。減税は恒久的に行なうべきだという信念の持ち主である。妊娠中絶に反対している。私が知る限り、マケイン氏は正真正銘の保守主義者である。
ラッシュ・リンボー氏とアン・コールター氏に代表される保守派コメンテーターからのマケイン氏への批判に関してブッシュ氏は「ジョンが指名された場合、正真正銘の保守派であることを納得させる言動が必要になる。その時、私は喜んでジョンを後押しする」と述べている。
選挙での勝利を確実にするためには副大統領の選択も重要な問題となる。民主党を離党し、現在は無所属となっているジョセフ・リーバーマン上院議員は長年にわたってマケイン氏と共に立法活動を行なってきた。民主党に流れるかも知れない中道派の支持を集めるうえでリーバーマン氏は心強い。世界でのアメリカの積極関与を先頭に立って主張しているロバート・ケーガン氏とウィリアム・クリストル氏はマケイン・リーバーマン政権こそアメリカにとって最も望ましい政権だと主張し続けている。しかしマケイン氏は共和党右派を宥めるためにも保守派の副大統領も選択肢に入れているであろう。今年の共和党予備選に出馬したフレッド・トンプソン元上院議員はそうした保守派の一人である。2000年の共和党指名選挙でトンプソン氏は、自らが撤退するとほどなくしてマケイン氏を支持した。
好むと好まざるとに関わらず、アメリカはこの戦争に勝てる大統領を必要としている。世界はアメリカの勝利を必要としている。ジョン・マケイン上院議員はまさに必要とされる人物なのである。日本のメディアが単に「スター性」があるというだけでバラク・オバマ氏とヒラリー・ロッダム・クリントン氏にばかり注目することは嘆かわしい
アメリカは戦時にある。テレビ・タレントなど不要である。合衆国大統領として望まれるのは、最も有能な最高司令官である。今回の選挙に関して、グローバル・アメリカン政論ではジョン・マケイン氏を中心に述べたい。これは愚かな日本のメディアへの抗議である。
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マケインは頼もしいですね。ヒラリーも「あの時」に離婚してたら立派だったと思うけど自分の栄達のために大統領夫人の地位にしがみついたって印象があってどうにも好きになれません。オバマはヒラリーよりかマシのようにも思えるけどなんか中身がなさそう。
そこいくとマケインは立派ですね。
ただやはり高齢なのが気になります
同志社大学の村田晃嗣教授によるとマケインさんは当選しても一期でおわる可能性が高い(一期目がおわる時には75歳)。そうなると副大統領候補に誰を指名するかが重要になると指摘してます。副大統領になる人が次の共和党の大統領候補になるわけですし。
投稿: アラメイン伯 | 2008年2月19日 22:09
今後のマケインの動向注目しています。オバマ旋風に対抗できるのか。
投稿: 星の王子様 | 2008年2月20日 06:20
アラメイン伯さん
その副大統領選出の話は少し早いのですが、例の「でっち上げ」事件によって逆にこれまではマケインを批判してきた共和党保守派のラッシュ・リンボーがマケイン擁護に回り始めたとか。
民主党の動向もrunning mate選びに影響ありそうです。ただ、リーバーマンなら彼も高齢です。
最近は高齢者でもかなり元気で体力ありますから、どうでしょうか?海軍士官学校ではボクシングで鳴らしたというマケインだけに、並みの30代よりむしろ強健なのでは?
投稿: 舎 亜歴 | 2008年2月24日 01:06
星の王子様さん
オバマはJFK気取りか単純なメッセージを流し続けていますが、中味がないとも。ブログ・リンクにある「保守思想」でそれがとりあげられています。
投稿: 舎 亜歴 | 2008年2月24日 01:09