アメリカとヨーロッパの東欧への関与の隔たり
ホッブスのアメリカはカントのヨーロッパ連合よりも本当に東欧諸国を気にかけているのだろうか?英国エコノミスト誌は1月24日号に論争を巻き起こしそうな記事を掲載した(Pipe Dreams: Eastern Europe, America, and Russia)。これによると、アメリカは東欧でロシアとの地政学的な勢力争いを気にかけているのに対し、EUは組織改革と二酸化炭素排出量の方が気がかりな様子だとのことである。
昨年、ヨーロッパ連合はルーマニアとブルガリアにまで拡大した。EUはさらなる拡大と共通の政策枠組を模索している。共通の憲法はフランス(“France and the Referendum on the EU Constitution” by Markus Wagner; European Policy Brief by The Federal Trust; March 2005)とオランダ(“EU Referendum Tests the Dutch Political Establishment” by Ben Crum; Centre for European Policy Studies; 19 February 2007)の国民投票で2005年に否決されたものの、EUはリスボン条約(BBCとエコノミストを参照)を代わりに加盟国に批准させようとしている。これを考慮すれば、ワシントンではなくブリュッセルが東欧情勢にもっと責任を負うべきである。
英エコノミスト誌は次のように記している。
ヨーロッパ人は必ずしも気に入りはしないだろうが、依然として安全保障でアメリカに頼るところが大きい。コソボは独立に向かい、NATOはさらなる拡大を検討しており、ロシアはヨーロッパの陳腐なエネルギー政策を圧迫しているとあっては、アメリカが何事にも関わらないわけにはゆかない。そして雰囲気はあまり愉快でない。
コソボではアメリカはアルバニア系住民の独立を支持しているが、ヨーロッパはロシアとの対立を避けるために慎重な態度を崩していない。現在、欧米とロシアは、EU加盟国のラトビアとブルガリアを含む東欧一帯の「流動国家」への影響力の拡大を競い合っている。NATO拡大はロシアの影響力浸透に対抗するうえで重要である。拡大積極派のアメリカと慎重派のヨーロッパはこの4月にブカレストで開催されるNATO首脳会議でこの問題を話し合う。
石油と天然ガスのパイプラインに関しては、アメリカはロシアのエネルギー供給に対して西側が脆弱になることを懸念し、カフカス山脈とバルカン半島を経由する供給路を支持している。ここを通れば、中央アジアとカスピ海地域の石油と天然ガスをロシア領内を通過せずに西ヨーロッパへ輸送できる。地図中の Nabucco とTrans-Caspian ラインを参照して欲しい。
クリントン政権の国務次官補でドイツ・マーシャル基金のロナルド・アスムス理事はEUが東欧の安全保障に沈黙を守り、彼の地での欧米の影響力が低下することを懸念している。
ロバート・ゲーツ国防長官も第44回ミュンヘン安全保障政策会議でアフガニスタンでのNATOの任務について演説した際に同様のことを述べた( “US Presses Allies More Afghan Troops”; Washington Post; February 11, 2008)。ゲーツ長官はこの作戦でのヨーロッパの役割増大を求めた。
アメリカ外交について、メディアもブロガーも中東での対テロ戦争、そして中国とロシアに代表される権威主義的資本主義経済の挑戦について話題にしてきた。しかし、私はブッシュ政権期の外交政策で最も危機的の重要な問題は大西洋同盟の変化だと考えている。ブッシュ大統領は4月のブカレストで将来に向けたパートナーシップを築きあげられるだろうか?この問題提起に対する鍵を見つけるために、ヨーロッパでの政治的変化について別の機会に述べたい。
出典: "Pipe Dreams: Eastern Europe, America, and Russia";The Economist; January 24, 2008
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