« 世界の多極化? | トップページ | ジョン・マケイン候補、大統領選出に世界へアピール »

2008年3月20日

無責任な反米主義への警鐘:ニール・ファーガソン教授出演のDVD映画

アメリカの大統領選挙とイラク戦争5周年に合わせたかのように、2007年9月に多いに注目すべきDVD映画が登場した。“The World without US”と題されたこの映画はミッチ・アンダーソン氏とジェイソン・トマリック氏の監督で製作された。この映画はリベラル派に蔓延する孤立主義に疑問を呈し、アメリカの海外からの撤退がもたらす破滅的な結末を描き出している。このDVD映画は民主党のバラク・オバマ候補とヒラリー・ロッダム・クリントン候補が掲げるイラク政策を風刺していると思われる。実際にヒラリー・クリントン氏と近い関係にある新アメリカ安全保障センターというシンクタンクはイラクからアメリカ軍を早期撤退させ、本国に帰した軍の最構築によってアメリカ軍をより優れた強いものにしようと呼びかけている。

ニール・ファーガソン氏はグローバル・アメリカン政論ではよくとりあげられるが、それは英米による「慈善的」な帝国主義を主張する論客として世界有数の存在だからである。イギリスの歴史学者であるファーガソン氏は英米両国で飛び抜けた名声を博している。現在はハーバード大学のローレンス・A・ティッシュ記念歴史学教授であるとともに、学士から博士の学位を取得した母校のオックスフォード大学でも上級フェローの座にある。2005年にはタイムから世界の賢人100人の一人に選出されている。

政治家、企業、NGO、個人活動家も自分達の理念の普及を目指して映画を作ることがある。時にそうした映画は自分達の理念を訴えることに熱心なあまり、客観性に欠けることがある。ニール・ファーガソン氏に関する限り、そうした情報の歪曲とは無縁である。このDVDでの議論の質は保証されている。

映画はドラマ、ドキュメンタリー、インタビューから構成されている。ドラマはロイ・ワーナー主演で、アメリカ軍の海外からの撤退を主張するターナーという大統領候補を演じている。これが破滅的な結果となることは容易に理解できるであろう。またトモ・カワグチ、マーク・オーフジ、マリ・ウエダといった三人の日本人俳優も映画の主要登場人物を演じている。

ドキュメンタリーの他に、ヨーロッパ、中東、アジア太平洋地域からの専門家へのインタビューも行なわれている。ニール・ファーガソン氏とアメリカのジェームズ・ライリー元中国、韓国、台湾駐在大使の他に、アメリカの介入が死活的に必要な国民を代表する専門家も登場している。元北朝鮮難民のカン・チェオルファン氏はそうした専門家の一人である。また台湾のシァオ・ビキム国会議員もアメリカが不用意に世界から手を引くことに懸念を抱いている。台湾海峡は米中衝突の可能性を秘めた重要な最前線の一つで、シャオ氏の議論は理に適っている。

ニール・ファーガソン教授は以下のように、世界の安全保障を理解するうえで重要なコメントを残している。トレーラー1でファーガソン氏は世界の市民に「世界は自然状態では平和で秩序だった場所ではない」と訴えている。その通り、世界はホッブス的であり、カント的ではない。トレーラー2の最後にファーガソン氏は無責任な反米論客に「あなた方の望みがどのような結末をもたらすか注意すべきだ」と諭している。

この印象深い映画はアメリカ、イギリス、日本という主要先進3ヶ国のコラボレーションの賜物である。世界の友人達、ニール・ファーガソン教授のメッセージに注意深く耳を傾けよう!

« 世界の多極化? | トップページ | ジョン・マケイン候補、大統領選出に世界へアピール »

アメリカのリーダーシップ/世界秩序」カテゴリの記事

コメント

中国人がなんていうのやら、あと韓国人も・・・

英米か大陸か。
なんて選択肢以外に独立覇権なんて妄想除いて
何か他の選択ないんでしょうか・・・

あと、大航海という論壇誌が今月分の特集の中に、ロシアも色目を使っている、プーチンはトヨタを欲しがっている(喩えです)というそんなこんなのロシアをもっと日本はよく知るべきだ、とロシア学者の寄稿文があったので、よろしければ見てみてはいかがでしょうか。

それは興味深い論文です。リンク先または何月号で誰が書いたものでしょうか?

ロシアの論客はこちらの最近の記事でもとりあげています。WSJへの寄稿に言及していますが、ロシアの民主化に関してアメリカのリベラル派より楽観的に感じます。ロシア人の視点だからでしょうか?

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 世界の多極化? | トップページ | ジョン・マケイン候補、大統領選出に世界へアピール »

フォト