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2008年7月12日

問い:サミットでは確固たる行動計画をまとめる義務があるのか?

洞爺湖サミットが7月7から9日にかけて北海道の洞爺湖半で開催された。亜寒帯林リゾートの麗しき夏の日々は喧騒に満ちたものとなった。反グローバル活動家はサミットを厳しく批判するが、私は以下の問いかけを発するとともに、それらに答えてゆきたい。

1・サミットでは何が何でも確固とした行動計画を出さねばならないのか?

まずサミットの歴史を振り返りたい。1970年代のニクソン・ショックと石油危機を背景に、フランスのバレリー・ジスカールデスタン大統領(当時)が主要国の指導者達による会議を開催して世界経済の運営を話し合おうと提唱したことで、1975年11月にパリ郊外のランブイエ城で初のサミットが開催された。

サミットの本来の目的は主要先進民主主義国同士のアットホームな雰囲気でグローバルな政策を率直に議論することである。よって、世界のトップを集めているこの会議は結果志向ではない。この点ではサミットは英連邦首脳会議に似ている。

ソ連のアフガニスタン侵攻の直後にイギリスのマーガレット・サッチャー首相(当時)とインドのインディラ・ガンジー首相(当時)はソ連の脅威について互いに真っ向から異なる見解を述べたが、議論は友好的に行なわれた。

反グローバル運動家や環境活動家達は最終宣言が大国間の妥協の産物だと批判する。しかし私は結果にこだわり過ぎると率直な議論を鈍らせてしまうと言いたい。むしろ、異なる意見をぶつけ合いながらも友好的に行なわれたマーガレット・サッチャー氏とインディラ・ガンジー氏の議論を思い出して欲しい。

サミットは率直な議論の場であり、条約を「生産」するための会議ではない。このことはこちらのリンクを参照すればよくわかる。

2・参加国の拡大は必要か?

絶対に不要である!サミットの基本理念は主要国の首脳が官僚機構の介入と日々の喧騒を離れて率直な議論を行なうことである。これはほとんどのサミットが首都や大都市を離れて小さな村で行なわれている理由の一つである。

問い1でも述べたように、アット・ホームな雰囲気での率直な話し合いは共通の理念や立場の国々の間で行なわれるべきである。

また多くの場合、人里離れたリゾート地では全世界から膨大な人数の客を収容しきれない。さらに参加国が拡大すれば、会議にかける準備も膨大なものとなる。こうなるともはや率直でアット・ホームな話し合いの場ではなくなる。

3・反グローバル派が言うようにサミットとは陰謀のクラブなのだろうか?

問い1と2をしっかりと検証すれば、こんなことは明らかに間違いである。彼らの執拗な主張とは異なり、サミットは意思決定の場ではなく理念と立場を共有する参加国の率直な話し合いの場である。実際に反グローバル派は政府間の会議なら何でも非難したがる。1999年のWTOシアトル会議を思い出して欲しい。反グローバル派の左翼達はシアトル会議が先進国と多国籍企業による「陰謀」の会議だとして街を破壊した。

しかし左翼連中よ忘れてはならない!サミットではいかなる条約も「生産」されてはいない。全ての宣言に拘束力があるわけではない。

結論として、サミットは理念と立場を共有する国々の会議であるべきである。この考え方で間違いはない。結果への固執と参加国の拡大は開催地に負担を強いるとともに、官僚機構の大幅な介入を招きかねない。

ともかく、サミットの真の開催目的を再確認することは重要である。それは先進民主主義国が世界の問題を議論し合う小規模で建設的な話し合いの場であるべきである。必要なら世界の指導者達は不定期で途上国を含めた会議を開催できる。本来の目的を逸脱すればサミットは荒廃してしまう。

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コメント

確かに、結果にこだわれば、事前に官僚によるお膳立てが必要となり、官僚主義に陥りますね。うっかり見逃していた観点です。逆に「無理して妥協しない会議」において、幸いにして、もし首脳同士の会談で結論が出たならば、その結論は、それだけ強固なものだと言えそうです。

このようなことを書いたのも、何と言っても反グローバル派の主張に乗せられたとしか思えない間ディアの報道への反論です。

気候変動にしても具体的な対策ならもっと専門的な国際交渉に委ねるのは間違っていません。

もちろん、この首脳会議で一致団結した結論が出ることは大歓迎です。

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