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2008年7月 1日

イスラム穏健派宗教勢力の政治参加と真の中東民主化

中東の民主化はアメリカ外交の主要課題の一つである。ヨーロッパの指導者達もこの問題に取り組んでいる。しかし真の民主化はアメリカとヨーロッパの関与だけで達成できるものではない。イラクでもそうであったように、現地の市民が安定した民主国家の建設に果たす役割りはきわめて大きい。よって、アラブの視点を理解することが中東の民主化の成功につながる。

今回はカーネギー国際平和財団のアムル・ハムザウィ上級研究員がイスラム穏健派宗教勢力の役割について述べた論文に言及したい。ハムザウィ氏はアメリカに来る前はカイロ大学とベルリン自由大学で教鞭を執っていたエジプトの政治学者である。研究対象はアラブ世界の政治参加とイスラム宗教勢力の運動である。

そこでエジプトのアル・アーラム・ウィークリーへのハザウィ氏の寄稿を検証したい(“Where are now for Islamists?”; 5-11 June, 2008 中東で真の政治改革を進めるために、ハザウィ氏はイスラム宗教勢力の穏健派にもっと政治参加が認められるべきだと主張している。そうした穏健派としてモロッコ正義開発党エジプトとヨルダンのムスリム同胞団クウェート・イスラム憲政運動バーレーン・ウェルファク国民イスラム協会の名を挙げている。

ハムザウィ氏は穏健派宗教勢力の政治参加によって政治的な多元性がもたらされ、体制派と反体制派の間で政治的な力の再分配ができると主張する。ハムザウィ氏は上記のイスラム宗教勢力の穏健派はグラスルーツから広範な支持を受けていると指摘する。

思い出して欲しいのは、アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン上級研究員がイラクの兵員増派計画を草案した際に、グラスルーツの自立支援(エンパワーメント)の重要性に言及していたことである。このことは、対テロ戦争に勝つための真の政治改革には軍事介入と並行して政治参加の拡大も必要なことを示している。ハムザウィ氏の指摘は欧米でのイデオロギー的立場がどうあれ非常に重要である。

他方でハムザウィ氏はイスラム宗教界穏健派が自分達の影響力を高めようとあまりに多くの変化を要求していることを批判する。宗教勢力は公共政策での宗教の影響力拡大を望み、社会のイスラム化と政治参加を関連づけようとしている。ハムザウィ氏はそのような要求によって穏健派が非宗教的な反体制派と柔軟な協力関係を築けずにいると言う。

そこでアムル・ハムザウィ氏は以下の提言を行なっている。

1・イスラム宗教勢力は自分達の支持基盤である大衆に対して政府と何らかの妥協をしてでも政治参加の実現を優先すべきだと説得しなければならない。穏健派を支持するグラスルーツは、自分達の社会経済的な要求は一歩一歩で達成されることを理解するべきである。

2・イスラム宗教勢力は政治参加と宗教教義の間で適性かつ現実的なバランスをとるべきである。言わば、現実主義とイデオロギーのバランスが必要である。

3・イスラム宗教勢力は宗教勧誘と政治活動を区別すべきである。政治的要求を組織化するために政党や団体を設立するなら、これは重要である。

提言3に関して、私はイスラム宗教勢力の穏健派はヨーロッパのキリスト教民主主義政党(ドイツのキリスト教民主連合イタリアのキリスト教中道民主連合など)や日本の公明党から多くを学べると考えている。

ハムザウィ氏の提言はアラブ世界を超えて通用する。例えばトルコでは近年になってイスラム復古勢力が台頭している。これはトルコ国民がEU加盟をブリュッセルから拒まれ続けること幻滅を感じているのも一因である。ケマル主義体制は何としても守られるべきだが、イスラム派を力で抑えつけることはトルコの国益に反する。

イスラム過激派を孤立させて対テロ戦争に勝つためにも、宗教勢力穏健派との対話の成功は必要不可欠である。国際社会はアラブ・イスラム世界の論客の見解にもっと注目すべきである。アムル・ハムザウィ氏は中東諸国の政府と欧米の指導者達に貴重な提言を行なっている。

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