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2008年7月19日

イランのミサイル挑発にアメリカとイスラエルはどう対応すべきか

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イランは7月9日にシャハブⅢミサイルを発射した。地図で示されているように、このミサイルの射程距離2,000kmで、ギリシアやエジプトまでカバーしている。まるでイランがアケメネス朝の領土への影響力を誇示しているかのようである。何がイランの挑発政策を動機づけているのだろうか?アメリカとイスラエルはイランを攻撃するのだろうか?

英米安全保障審議会のスティーブン・ハーゾグ氏はイランのミサイル危機について今年の7月11日付けのイラン・アップデートで全体像を記している。ミサイル実験はイスラエル空軍がギリシアと東地中海の上空で、アメリカ海軍がペルシア湾で大規模な演習を行なった直後であった。また、アメリカ国務省は核拡散に関わったイランの企業と市民への金融制裁を発表していた。

緊張の高まりにも関わらず、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領は、アメリカとイスラエルによる攻撃はないと述べている。コンドリーザ・ライス国務長官は、アメリカは同盟国をイランの脅威から守ると断言した。一方でEUのハビエル・ソラーナ外交安全保障上級代表は、7月19日にイラン側と交渉を行なう。 

国際社会はイランにどう対処すべきだろうか?カーネギー国際平和財団のカリム・サドジャプール研究員はフォーリン・ポリシー誌とのインタビューでイランの意図について答えている(“Seven Questions: What Iran wants”; July 2008)。サドジャプール氏はイラン政治に関して第一線の専門家で、欧米メディアに定期的に寄稿している。イラン人という立場から、サドジャプール氏はイランの政府高官、宗教関係者、知識人、反体制派、学生からグラスルーツにいたる幅広い人的交流がある。

サドジャプール氏はイランが強硬なのは、最高指導者アリ・ハメネイ師が外圧に屈するとさらなる外圧を招くと信じているうえに、マフムード・アフマディネジャド大統領が2006年の中間選挙の結果からアメリカの開戦意志が弱いと踏んでいるためであると述べている。また、アメリカはイランへの攻撃も外交上の擦り寄りも、どちらもすべきでないと提言している。アフマディネジャド氏が国内での政治的指導力を高めるだけになるからというのが理由である。

イスラエルの攻撃について、サドジャプール氏は可能性が低いと見ている。イラクとシリアには奇襲攻撃を仕掛けたことがあるイスラエルだが、今回は沈黙を守っているわけではない。 

きわめて重要なことに、サドジャプール氏はイラン国民の80%が政府の統制下にあるメディアから情報を得ており、リベラルなエリートは国民全体から乖離していると指摘する。よって、アメリカかイスラエルが攻撃を行なえばアフマディネジャド氏の国内政治での基盤が強化されるだけであると主張する。

他方で同氏はアメリカとイランはイラクの統一安定を望むという点で共通の利害があると言及している。アル・カイダが跋扈するイラクは両国にとって深刻な脅威となるとサドジャプール氏は言う。

ジョン・ボルトン元国連大使(現アメリカン・エンタープライズ研究所上級フェロー)は、イランとの交渉継続を批判し、イスラエルとの強調を深めるよう主張している(”Israel, Iran and the Bomb”; Wall Street Journal; July 15, 2008)。ボルトン氏はミサイル実験を5年にわたる交渉の失敗を象徴するものと述べている。同氏は交渉が進展しない間にイランが核攻撃能力をさらに発展させたと警告する。

ボルトン氏は死活的に重要な点を述べている。しかしサドジャプール氏が述べているようにアメリカとイスラエルは攻撃に慎重である必要がある。アフマディネジャド氏を政治的に利するべきではない。ジョン・マケイン上院議員は北朝鮮やイランに代表されるならず者国家に対するミサイル防衛システムの信頼性を高める必要性が差し迫っていると強調する。私はマケイン氏の意見に賛成である。ジョン・ボルトン氏はさらに踏み込んで、アメリカはイスラエルがイランの脅威に対処するために必要な行動に出るなら何であれ妨害すべきでないと主張する。ボルトン氏は行動をためらうコストは行動から生ずるリスクよりはるかに大きいと見ている。

イランへの攻撃に関してワシントン近東政策研究所のパトリック・クローソン次長とマイケル・アイゼンスタッド上級フェローはミサイル実験より前に“The Last Resort: Consequences of Preventive Military Action against Iran”というレポートを出している。 

両氏とも外交交渉のカードとして先制攻撃は保っておくべきだと主張する。最も重要なことにクローソン氏とアイゼンスタッド氏はイランが本当に核兵器関連施設の再建を決定したのか正確に検証する必要があると強調している。今回、イランはミサイルを発射したが爆弾の実験は行なっていない。これはイランが核兵器保有の野心があるかないかを決めるボーダーライン上だと私は考える。

イランが核兵器を持てば他の中東諸国にも核保有の動きが広まることは認めながら、アイゼンスタッド氏は先制攻撃によってイランの核計画を遅らせることはできても中断させることはできないと主張する。これはアメリカがイランに擦り寄れということではない。以前の記事ではパトリック・クローソン氏がイランに対して軍事的な威嚇を活用するよう主張したことを述べた。クローソン氏は先制攻撃を行なうなら出所不明の情報よりもIAEAの査察に基づいて行なうべきだと主張している。

イラン攻撃に対する賛否に関わらず、アメリカのアプローチは転換しつつある。ガーディアン紙は、アメリカが1979年から途絶えていたテヘランの外交代表部を復活させるという議論の的になりかねない報道をしている(“Report: U.S. to Establish First Diplomatic Presence in Iran Since 1979”; FOX News; July 17, 2008)。

数週間前にはブッシュ政権は北朝鮮のテロ支援国家指定解除に踏み切った。EUのハビエル・ソラーナ外交最高責任者がイランの核交渉最高責任者のサイード・ジャリリ氏と会談を行なうに及んで、現政権はウィリアム・バーンス政務担当国務次官を会談の場に送っている(“Policy Shift Seen in U.S. Decision on Iran Talks”; New York Times; July 17, 2008)。

私は交渉そのものには反対しない。しかしイランと北朝鮮に対する最近の政策転換は誤ったメッセージを国際社会に送るのではと私は懸念している。ブッシュ大統領はならず者を相手に棍棒も持たずに穏やかに話しかけているのである。同盟国でも日本のようにこうしたチェンバレン的外交を懸念するところもある。アメリカは覇権国家の責務に基づいて行動すべきである。危険な独裁者達との対話に気安く応じることに眉をひそめるのはイスラエルだけではない。

地図:”Real or not, Iranian missile fire must stop: US”; AFP; July 10, 2008

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