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2008年11月23日

ゲーツ国防長官、今世紀の核兵器を語る

ロバート・ゲーツ国防長官は1028日にカーネギー国際平和財団にて「21世紀の核兵器と抑止」いうテーマで講演を行なった。ゲーツ氏は現ブッシュ政権の閣僚であるが、オバマ次期政権での国防長官の候補者の一人でもある(“Who's in the running for Obama administration jobs”; AP; November 20, 2008)。次期政権で国防長官に就任するか否かはともかく、核不拡散に関するゲーツ氏の視点は党派を超えたアメリカの立場を代表している。そうしたことから、このイベントのビデオは視聴の価値がある(リンクはこちら)。

ゲーツ長官はアメリカの核政策に突きつけられている国内課題と国際課題の絡み合いについて語った。また、長官はアメリカの核兵器関連インフラの老朽化と抑止力の信頼性の関係についても説明した。

まずゲーツ長官は冷戦後のアメリカの核戦略のあらましを述べた。B1爆撃機を始めとする時代遅れになった核兵器の廃棄・削減を行ない、クリントン政権期には核実験を一方的に停止したアメリカの核戦略はブッシュ政権の下で見直しがなされた。ゲーツ氏は核抑止力への依存を低め、通常兵器の抑止力と潜在的な脅威への対応能力を高める必要があると述べた。新たな戦略は以下の三本柱から成り立っている。

(1)       攻撃能力:核抑止力と通常兵器による攻撃能力

(2)       防衛能力:弾道ミサイル防衛も含む

(3)       上記(1)と(2)を支援するインフラ整備

9・11を契機に安全保障をめぐる環境は変わったが、再び台頭してきたロシアと中国、そしてイランと北朝鮮などのならず者国家によって重大な核の脅威が突きつけられている。

ゲーツ氏はロシアと中国の核兵力近代化とそれが自由世界の安全保障に及ぼす影響に懸念を示しながら、両国を敵国とは見なしていない。確かにアメリカとロシアは大量に保有する両国の核兵器削減で協力し合う必要がある。中国との経済関係は重要性を増している。しかし、ロシアと中国は我々の自由民主主義に対抗しており、そのような野心ある大国が核戦力を強化しているのである。私には両国に対するゲーツ氏の態度が柔和に見える。

きわめて重要なことに、ゲーツ長官はアメリカ軍の核兵器の老朽化を指摘している。メディアはこれほど死活的で避けて通れない問題に殆ど言及しない。ゲーツ氏は1980年代以降、アメリカは核兵器を設計していない。1990年代以降は製造もしていない」と言う。これはアメリカの核抑止力の信用性を維持するうえで深刻な問題である。核兵器の開発に関わる技術者は引退し始めており、現存の核兵器も寿命の延長が必要である。長官は国防総省とエネルギー省が共同で「核弾頭の総数を減らすとともに必要時に新たに核兵器を生産できる能力を向上させてリスクのバランスをとりながら、老朽化した核兵器の削減に乗り出している」と述べている。

質疑応答の時間にゲーツ長官はヨーロッパと太平洋地域にあるアメリカの同盟国を防衛することが死活的な国益だと強調した。 

質疑応答で最も注目されたのはミサイル防衛の問題である。ゲーツ長官はヨーロッパの弾道弾迎撃ミサイルがイランを念頭に置いたもので、ロシアに対するものではないと述べた。長官はアメリカがロシアと信用安全保障醸成手段の構築に努めていることを説明した。ゲーツ氏はこのイベントではアジアのミサイル防衛については言及しなかったが、おそらく念頭にあるのは北朝鮮であってロシアや中国ではないと推測できる。しかし、私はゲーツ長官が台湾海峡をめぐる紛争が起きた場合をどのように考えているのかという疑問を持っている。中国が海峡で恫喝行為に及べば、極東でアメリカの重要な同盟国である日本と韓国のシーレーンの安全保障が脅かされる。

私はゲーツ長官がロシアと中国に関して述べたことの全てに同意してはいない。また、ゲーツ氏が北朝鮮に関して充分に言及しなかったことは残念である。しかしロバート・ゲーツ国防長官が我々が世界の専制と野蛮に対して武装を解除することは致命的な誤りである」というセオドア・ローズベルトの発言を引用したことを喜ばしく思う。この講演は世界規模の核不拡散に関して党派を超えたアメリカの課題を理解するのに役立つ。ロバート・ゲーツ氏が国防長官に任命されるか否かにかかわらず、全世界の左翼の偶像となっているバラク・オバマ次期大統領がこの引用をよく理解してくれることを私は望んでいる。

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