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2009年1月 3日

ブッシュ大統領をアメリカと世界はどう評価すべきか

ジョージ・W・ブッシュ大統領は1月20日で2期の任期を終える。ブッシュ大統領に靴を投げたイラクのジャーナリストを称賛する者も中にはいる。「そのような輩を伏して拝む(bow down and praise)」ことは全く馬鹿げている。ジョージ・W・ブッシュ氏は前任者のビル・クリントン氏が手を付けられなかったイラクやアル・カイダのような重要課題の解決に取り組んだ。また、世界経済危機についてもブッシュ氏だけでなくクリントン氏にも責任の一端はある。ブッシュ大統領の業績を正しく評価できないとバラク・フセイン・オバマ次期大統領の評価も誤ったものとなる。オバマ氏を盲目的にメシアと崇め、「我らの救世主、我らの救世主」と礼賛することを望まないなら、ブッシュ時代のアメリカをしっかり理解すべきである。

アメリカン・エンタープライズ研究所のデービッド・フラム常任研究員はブッシュ氏の8つの功績を挙げている(“Eight Facts That Burnish Bush’s Record”; On the Issue; December 2008)。

1)インドとの新しい戦略提携:

これによってアメリカは対テロ戦争、そしてロシアと中国に代表される非民主的な資本主義国との競合で地政学的に有利な立場になる。

2)米・イラク駐留兵力地位協定:

イラク国会でこの協定が承認され、1960年代から西側にとって長年にわたる敵であったイラクが中東でアメリカの主要同盟国になった。

3)中東の民主化に着手:

リビアは欧米との対決をやめた。サウジアラビアと湾岸諸国はテロリストのマネー・ロンダリングへの規制を強化した。

4)911以後のテロ攻撃の防止:

2001年の911以後はアメリカでイスラム・テロの攻撃はない。また、ヨーロッパでも2005年以降はイスラム過激派の攻撃はない。

5)ラテン・アメリカの安定:

アメリカはコロンビアの反乱分子の掃討とメキシコで史上2度目の多党制による大統領選挙を支援した。

6)国家による薬事処方計画:

これによって高齢者が必要な医療処置を受けられるようになった。

7)原子力産業:

ブッシュ氏は1970年以来となる原子炉の建設を支持し、石油消費量を2005年から10%削減した。

8)イスラム教徒の権利:

911後の2ヶ月間で侮辱的な言葉の被害を受けたイスラム教徒は全米で6%だけである。さらにブッシュ氏はイスラム教徒のザラミー・カリザド氏を国連大使に登用した。

殆どはイスラム・テロと中東の民主化に関係がある。7番の功績は誰も見過ごせない。全世界のリベラル派と反米主義者はイラク戦争を批判しているのは、ブッシュ政権が石油業界のためにイラクを攻撃したと考えているからである。こうした原子力産業の発展によって石油消費量が縮小しているので、こうした見解は的外れである。

12月にブッシュ大統領は非公式にAEIを訪れ、自らが務めた大統領職について語った。当時のクリストファー・ドミュース氏が大統領にインタビューを行ない、AEIが記事にしている(“A Conversation with President Bush”; AEI Online; December 18, 2008)。

大統領は減税や健康保険のような内政問題を中心に語った。任期の最後に起きた経済危機によって共和党の支持率は急速に下降したが、ブッシュ大統領は自らの減税政策によって52ヶ月もの雇用増加がもたらされたことを誇らしく語った。健康保険に関しては、ジョージ・W・ブッシュ氏は市場主導の政策によって個々人に選択の余地が与えられるようになったとの自負を述べた。ブッシュ氏は市場経済が自由な社会を作るという強い信念を語った。

外交政策では、ブッシュ大統領はイラクとアフガニスタンでの対テロ戦争について語った。ブッシュ氏はこの戦争が自由と憎しみというイデオロギーの戦いだと明言した。これは我々がイスラム過激派を打倒しなければならない理由を理解するうえできわめて重要な点である。

また、ブッシュ氏はロシアについても多くを語った。グルジアをめぐって対立はあるものの、大統領はアメリカとロシアは共通の課題を追求しており、特に核不拡散で両国の協調が不可欠だと述べた。ブッシュ氏はならず者体制国家やテロリストによる核兵器製造のための原材料の入手を防ぐためにもアメリカはロシアとの協力を続けると強調した。

ジョージ・W・ブッシュ氏はホワイトハウスを去った日には全世界で自由の普及と地域社会開発の支援を目指す運動を立ち上げると述べている。ブッシュ氏はアメリカが孤立主義に陥っているとの懸念を示した。この意見には私も賛成である。先の大統領選挙ではメディアも有権者も内政問題にばかり気をとられていたが、今はアメリカ主導の世界秩序は転機を迎えている。バラク・フセイン・オバマ氏がジョン・シドニー・マケイン氏に対して優位に立ったのは、そうした孤立主義が背景にある。

この記事はメディアのバイアスが一切かからないブッシュ氏自身の言葉で書かれているので、ブッシュ政権とは何かを理解するためには必読である。ジョージ・W・ブッシュ氏を伏して拝む(bow down and praise )必要は全くない。読んでから自分で考えるだけである。

一般に流布している見方とは逆に、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員はブッシュ氏をリアリストだと見なしている(“The September 12 Paradigm”; Foreign Affairs; September/October, 2008)。ケーガン氏はブッシュ政権がクリントン政権のルール重視の政策に批判的だったと指摘する。それは京都議定書、包括的核実験禁止協約、弾道弾迎撃ミサイル禁止条約といった国際的な合意がうまく機能しなかったからである。ケーガン氏はブッシュ政権が覇権国家の役割より自国の国益を追求したと言う。

911以降、ブッシュ氏は積極介入主義に転向した。ケーガン氏はイラク戦争開戦時には本土防衛がより拡大志向で攻撃的なものに変わったと述べている。あいにくヨーロッパの同盟諸国はアメリカが抱くイスラム過激派への懸念もサダム・フセイン放逐の差し迫った必要性も感じていなかった。

イラクでの食い違いはあったが、ケーガン氏が述べるようにアメリカとヨーロッパ、太平洋、中東の同盟国との関係は依然として強固である。

バラク・オバマ氏を強力に支援したメディアは現大統領が世界の中でのアメリカの地位を悪化させたかのように報道しがちである。これはあまりにも単純な見方である。ブッシュ政権期の政策の多くはクリントン政権で効果を挙げなかった政策を解決しようとしたものである。中にはコロンビアと韓国との自由貿易協定のようにクリントン政権の政策の継続もある。私はジョージ・W・ブッシュ大統領を伏して礼賛(bow down and praise)せよとは間違っても言わない。しかしブッシュ氏への公正な評価はバラク・オバマ次期大統領の観測では必要不可欠である。オバマ氏をメシアと崇めるような真似はやめよう。

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