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2009年1月28日

オバマ大統領の就任第一週:迅速と愚鈍と権威主義

バラク・オバマ大統領について評価を下すのは、1月20日の就任から1週間しかたっていない現時点では早過ぎる。だがオバマ氏の大統領職について言及してみたい。

新大統領は前任者ジョージ・W・ブッシュ前大統領の政策を迅速に見直している。しかしアメリカの関与が必要とされる危機に対してオバマ氏はあまりに愚鈍である。他方でオバマ大統領は自らが行なうチェンジのためには言論統制も辞さないようである。

以前の記事でも述べたように、バラク・オバマ氏の閣僚の任命は迅速であった。前任者の政策をこれほど早い時期に大胆に見直す大統領は、これまで殆どいなかった。オバマ氏はグアンタナモ基地テロ収容所の閉鎖(“McCain: Closing Guantanamo Bay is the easy part”; CNN; January 22. 2009)、妊娠中絶の容認(“Obama Ends Global Family Planning Restrictions”; NPR; January 23, 2009)、地球温暖化対策としての自動車排気ガス規制の強化(“Obama Issues Orders Toward More Fuel-Efficient Cars”; Washington Post; January 27, 2009及び“Obama counters Bush on auto standards”; Boston Globe; January 27, 2009)を矢継ぎ早に打ち出している。

そうした迅速な行動によってチェンジの実現が印象づけられ、新大統領が行政の最高責任者として有能なイメージを抱かされる。性急な改革も事が全てうまく行けば評価を上げることになる。しかしブッシュ政権の影響を何でも拭い去れば良いというものではない。オバマ氏と大統領選挙で争ったジョン・マケイン上院議員は去る1月22日にCNNとのインタビューに応じ、ブッシュ前政権時代の不都合を謝罪して収容所を閉鎖することは容易いと述べている。しかしマケイン氏は収容所がアメリカ国内に移転するようなら、現政権はNIMBYという問題に直面すると言う。自分が住む地域に「悪名高き」収容所を建てて欲しくないと考える人は多い。ビデオを参照して欲しい。

他方でウクライナ危機に対するオバマ氏の反応は鈍かった。このことについては前回の記事で述べた通りである。大統領に就任する直前の出来事は言え、バラク・オバマ氏にはロシアという獰猛な熊に恫喝されているウクライナと東欧諸国の国民を助けようという気概は殆どなかったようである。これらの国々がNATOとEUの加盟に熱心なのは欧米との関係を強化したいからである。誰が大統領であっても「アメリカは常にあなた達の味方である!」と見せつけておくことは絶対に必要不可欠である。東ヨーロッパと旧ソ連の親米諸国は、そうした強力な支援によって共産主義体制後の民主化とロシアの脅威への対処を成し遂げようとしている。

そのような危機的な時期に、バラク・オバマ氏は政府の誰からも助けを求める必要のない芸能界のスター達とドンチャン騒ぎをしていたのである。それは非常に残念なことであり、メディアもこうした行動を批判すべきであった。NATOとEUの東方拡大はアメリカ外交で重要案件の一つだからである。

迅速な行動と愚鈍な反応だけでなく、オバマ大統領の独裁的な言動にも触れるべきである。オバマ氏は共和党の上下両院議員に保守派の人気ラジオ・コメンテーターであるラッシュ・リンボー氏の番組を聴かぬようにと警告した(“Obama: Quit Listening to Rush Limbaugh if You Want to Get Things Done”; FOX News; January 23, 2009)。バラク・オバマ氏は経済刺激策の実施には超党派の協力が必要だと強調する。

オバマ大統領の一言は物議を醸し、ホワイトハウスのロバート・ギブス報道官は共和党を宥めようとしている(“PREZ ZINGS GOP FOE IN A $TIMULATING TALK”; New York Post; January 26, 2009)。リンボー氏の方はオバマ氏に対し「新大統領は党派を超えた偉大な指導者だ。国民なら誰彼問わず一つにまとめあげ、党派を超えた友情と愛の時代に導こうとしている」と痛烈な一言をみまっている(“Limbaugh Bristles at Obama Remark”; Washington Post; January 26, 2009)。

現時点では大統領への評価を下せない。迅速な行動は印象に残るが、問題のある発言や行動もある。メディアはそうしたものを批判的に述べるべきである。バラク・オバマ大統領がアメリカ国内でも海外でも人気があるからと言って、ただ礼賛しまくるような真似はしてはならない。

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コメント

グアンタナモ閉鎖の問題一つとってみても、収容者が解放後結局60人余りも戦場に戻っていったということには全く目をつぶっていますね。
“Obama: Quit Listening to Rush Limbaugh if You Want to Get Things Done”に至っては論外。自由の国アメリカがバラク・フセインという独裁者を大統領に選んでしまったとは…。

投稿: 高峰康修 | 2009年1月28日 10:21

バラク・フセイン大統領ですが、その政策への疑問は当然問いかけるべきです。しかし「ポストに敬礼」だけはしておくのが日本の立場でしょう。太郎ちゃんばかりか野党の政治家もオカマちゃんの人気にあやかろうとするのは情けないです。

投稿: Shah亜歴 | 2009年1月31日 00:12

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