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2009年2月14日

クリントン国務長官の「カミング・トゥ・アジア」

ヒラリー・ロッダム・クリントン国務長官は日本、中国、韓国、インドネシアに向けて2月15日に出発する。クリントン長官がヨーロッパと中東に先駆けてアジア訪問を決断したことはワシントン・ウォッチャーに強い印象を与えた。確かにジョセフ・バイデン副大統領がドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議に出席し、ジョージ・ミッチェル特使がイスラエルとパレスチナに派遣されている。さらにイギリスのデービッド・ミリバンド外相とドイツのウォルター・シュタインマイアー外相が2月3日にクリントン長官を訪問している。そうした状況では慣例を破ることは問題ないと言える。(“Bucking tradition, Clinton to head for Asia”; CNN News; February 3, 2009 ビデオはこちら

しかし、これはスケジュールと手続の問題以上のものである。クリントン国務長官はアジアに強い関心を寄せ続けてきた。大統領選挙の最中、ヒラリー・クリントン氏はフォリン・アフェアーズへの投稿で「我が国と中国の関係は世界で最も重要な二国間関係になるであろう」と述べている。(“Security and Opportunity for the Twenty-first Century”; Foreign Affairs; November/December 2007)クリントン長官と関係の深いCNAS(Center for a New American Security)というリベラル派の新設シンクタンクには、アジア太平洋地域に重点を置いたアジア・イニシアチブ09というプロジェクトがある。このプロジェクトの趣旨には「大西洋から太平洋への力の移動を考慮すれば、アメリカの戦略家にとってアジア太平洋地域の複雑な課題に対して明確な戦略を打ち出すことが至上命題となっている」と記されている。

クリントン国務長官は明らかに歴代のどの国務長官よりも太平洋志向である。長官には選挙運動中に中国からの寄付金をめぐるスキャンダルさえあったほどである。BBCとのインタビューに応じたクリントン氏は「アジア歴訪によってアメリカが大西洋国家であると同時に太平洋国家であるという強いメッセージを送ることができる」と語っている。(“US 'keen to strengthen Asia ties'”; BBC News; 13 February 2009

重要な議題には北朝鮮、米中安全保障問題、バイ・アメリカン条項による貿易問題が挙げられる。ホノルルにある国際戦略研究所太平洋フォーラムのラルフ・A・コッサ所長とブラッド・グロッサーマン上級部長は、共同の論文で手短な分析を行なっている。(“Secretary Clinton's No. 1 mission is to reassure allies”; Japan Times; February 12, 2009

両氏とも東京とソウルを訪問したばかりで、日韓の政府首脳がオバマ政権の外交政策について東アジア戦略がどのようにチェンジするのかつかみきれていないことを不安に思っているとの感触を得ている。

日韓両国はアメリカの北朝鮮政策が軟化するのではと懸念している。ブッシュ政権は完全な非核化よりも北朝鮮の悪魔との妥協を優先した。日本も韓国もピョンヤンのならず者体制にこれ以上チェンバレン的な外交が行なわれることを望んでいない。

中国の脅威も死活的な問題である。日本と韓国はラムズフェルド的な対中強硬路線を望んではないが、アメリカが日米同盟や日韓同盟より中国との関係を優先するのではとの懸念を抱いている。

貿易に関しては日韓両国とも「オバマ政権が市場開放と自由貿易を守り抜くという保証」を求めている。

クリントン国務長官はBBCとのインタビューでこうした懸念に答えている。クリントン氏は北朝鮮に挑発行動を慎むように警告するとともに、核開発の廃棄への交換条件を提供している。クリントン長官は日本と韓国の高官の間に広がる不安を払拭する必要があると私は言いたい。また、拉致問題は見過ごせない。

クリントン国務長官の対中政策も懸念材料である。アメリカが中国との協力を拡大して気候変動、エネルギー、疫病予防、核拡散などのグローバルな課題に取り組むべきだという長官の主張には同意する。しかしクリントン氏は中国の脅威を軽く見すぎている。クリントン政権期の長い歴史からの休暇を経て、中国とロシアは自由主義世界秩序への新たな脅威として再登場した。ロバート・ケーガン氏が主張するように、我々の自由な資本主義と彼らの権威主義的な資本主義の衝突は、今世紀の世界の安全保障の重要課題である。

クリントン国務長官はオバマ政権の世界に対する見方を理解するうえで重要なメッセージを発するであろう。この記事で私が述べているように、中国と北朝鮮に対する新政権のアプローチには不安が残る。クリントン国務長官が太平洋の重要な同盟国との信頼を築き上げ、アメリカの強力な関与を印象づけることは必要である。アメリカがなめられぬよう注意して欲しい!

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