今こそアメリカは世界に関与せよ:新シンクタンクの設立
イラク戦争への世界的な批判によってアメリカの世論は孤立主義の方向に向かった。左派はチェンバレン的な小アメリカ主義に陥り、右派はアメリカ・ファーストに後退した。過激イデオロギーの世界的ネットワーク、ならず者国家、ロシアと中国の再台頭がつきつける挑戦という現状から、アメリカは我々の自由世界秩序を守るために強く世界に関わってゆかねばならない。
そうした国際政治情勢の中で、アメリカの積極介入を呼びかける新しいイニシアティブが発足した。フォーリン・ポリシー誌が運営するthe Cableというブログは、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員、ウィークリー・スタンダードのウィリアム・クリストル編集長、そしてダン・セナー元イラク暫定政府報道官によるこの運動を取り上げている(“PNAC 2.0?”; The Cable; March 26, 2009)。この団体は外交政策イニシアティブ(FPI)という名で、3月31日に開催される初のイベントでアフガニスタンでの戦略を議論する。トップクラスの政策形成者達がゲスト・スピーカーとして招かれている。その顔ぶれはジョン・マケイン上院議員、新アメリカ安全保障センターのジョン・ネーグル所長、民主党のジェーン・ハーマン下院議員、共和党のジョン・マクヒュー下院議員、カーネギー国際平和財団のアシュリー・テリス上級研究員、そして元アフガニスタン駐留軍司令官のデービッド・バーノ陸軍中将である。
ネオコンの動静を見守ることでよく知られているLobelogというブログが最近の記事でFPIを今はなきPNAC(新世紀アメリカのプロジェクト)になぞらえている(“Neo-Con Ideologues Launch New Foreign Policy Group”; Lobelog; March 25, 2009)が、これは党利党略とも反オバマ政権の政策提言を行なうものでもない。初のイベントでは民主党の政策形成者もゲストとして講演を行なうほどである。
オバマ政権がブッシュ政権より孤立主義の傾向を強めるかどうかは予断を許さない。オバマ大統領の外交政策はこれから続くG20ロンドン・サミット、ストラスブールとケールで開催されるNATO首脳会議、そして北朝鮮のミサイル発射によって試される。しかしオバマ大統領の就任はアメリカが世界への介入を弱める傾向の象徴だと見る向きもある。権威主義的な敵対勢力や挑戦者達がアメリカをなめてかかるようなら、これは我々の自由世界秩序を脅かすことになる。よって、「問題によってどのような政治的な立場をとろうとも、そうした違いを超えて手を携えて孤立主義に異を唱える」ことは死活的に重要なのである。
私はFPIの設立趣旨に記された以下の文に強く同意する。
(9・11以後の国際安全保障環境では)、アメリカは国際関与と同盟諸国に背を向けることはできない。同盟国には20世紀にファシズムと共産主義の打倒で共に戦った国々もあれば、最近になってイラクとアフガニスタンなどで自由を得た市民達のように新しくアメリカと手を結ぶ者もある。国際的な関与から退いて我々の経済的な課題が解決されることはない。逆に事態が悪化するだけである。
これは世界金融危機に目を奪われているオバマ大統領と主要先進諸国の指導者達に対して死命を要する重要な提言である。我々は再び歴史からの休暇を過ごすわけにはゆかない。
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