「若く素晴らしい」大統領が世界に試される
以前に当ブログでジョセフ・バイデン現副大統領の選挙中の発言を引用したことを思い出して欲しい。
これから言うことに注意して欲しい。バラク・オバマ氏が大統領に就任すればジョン・ケネディ大統領と同様に6ヶ月以内に世界から試されるだろう。世界は見ている。我々は47歳の素晴らしい上院議員を合衆国の大統領に選び出そうとしている。しっかり見て欲しい。この大統領を試そうと国際的な危機が作り出されるだろう。我々はそれに直面する。オバマ新大統領は難しい決断を迫られるが、どんな決断を下すかはわからない。ともかく危機が起こることは間違いない。歴史学者として、また7人の大統領の下で政治に関わった者として、危機が起こることは間違いないと断言する。
就任以来、オバマ大統領は国内経済に力を注いできた。しかし4月初めには国際政治に本格的なデビューを果たすことになる。若く素晴らしい大統領は人気の高さとは裏腹に外交での経験は乏しい。今回の外遊で数多くの課題に対処できなければ、世界はアメリカをなめてかかるようになるだろう。
オバマ氏はG20ロンドン・サミットとNATO60周年首脳会議に出席する。さらにNATO首脳会議を終えるとチェコのプラハで開催されるEU首脳会議にも出席する(“Obama Prepares for European Trip”; VOA News; 30 March 2009)。この長い訪欧の間にオバマ氏は4月4日から8日の間には北朝鮮ミサイル危機にも直面する。
ロンドンでオバマ大統領は先進国と途上国を相手に金融危機と経済刺激策について話し合う。ホワイトハウスのロバート・ギブス報道官は「ロンドンでは大統領とアメリカはリーダーシップを発揮するだけでなく聞き役にも徹する」と述べた(“A busy agenda fuels Obama's first trip to Europe”; AP; March 31, 2009)。しかしヨーロッパの首脳達は経済危機の悪化とインフレの懸念からオバマ政権の経済刺激策には批判的である(“Ahead of G20, Europe Rebuffs Stimulus Spending”; NPR; March 29, 2009)。ロンドン・サミットはグローバル経済の討議の場にとどまらない。オバマ大統領にとってはロシアと中国の首脳と初めて顔を合わせる場でもある。
ストラスブールとケールで開催されるNATO首脳会議は、フランスのNATO軍事機構復帰もあって大西洋同盟の発展を象徴する60周年を記念するものとなっている。先日、オバマ氏がアフガニスタンでの新戦略を公表したこともあって、これが首脳会議の最重要課題となり、同盟国はアメリカの作戦への貢献拡大を求められるだろう。さらにウクライナとグルジアも引き続き重要な議題となる。両問題はロシアの再軍事化と関連しており、プラハで話し合われるミサイル防衛問題とも絡み合っている。
ニューヨーク・タイムズのヘレン・クーパー記者はオバマ氏がアメリカ型資本主義への怒りと対決を余儀なくされ、派兵増加に消極的なヨーロッパ同盟諸国にアフガニスタンでの貢献を強めるよう説得しなければならない。そのように一筋縄ではゆかない世界に対処するうえでオバマ氏の人気は役に立たないとクーパー氏は言う(“Obama Will Face a Defiant World on Foreign Visit”; New York Times; March 28, 2009)。
オバマ大統領がヨーロッパでの外交に取り組んでいる最中に、北東アジアでも別の問題に直面することになる。北朝鮮のミサイル発射は何としても止めることが重要である。たとえキム・ジョンイルがミサイルを発射しても、アメリカは北朝鮮の膨張主義的な野望が国際社会に受け入れられないことをわからせてやらねばならない。また、中国とロシアの朝鮮半島への影響力拡大を防ぎながら、核不拡散の共通課題の解決を模索せねばならない。
ジョセフ・バイデン副大統領のあの発言に注目し、4月の動静を見守ろう。バラク・オバマ大統領は世界が突きつける最初の試験をパスするだろうか?結果がわかるのはすぐにではなく 数ヶ月後になるだろう。
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