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2009年4月 9日

北朝鮮問題:ミサイル危機、中露枢軸への対処、後継者

イラク・ギャップは北朝鮮危機でも解決されなかった。中国とロシアはこのならず者体制に拘束力のある宣言を行なうことに消極的である。イラク戦争の最中、国際メディアはブッシュ政権の一国中心主義を厳しく批判し、国連による平和強制を強く求めた。オバマ政権は西側に対して挑戦的な相手に融和的な態度を示した。ロンドンで開催されたG20サミットを前に、バラク・オバマ大統領はロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領と核兵器の削減について会談し、両首脳はアメリカとロシアの間に冷戦の再来はないという共通の認識にいたった。

イラクとは異なり、北朝鮮でアメリカは中国とロシアの関与を必要としている。ピョンヤンとの二国間協議はどのようなものであれ、アメリカが北朝鮮を新たな核保有国と認めたと解釈されてしまう。さらに中国とロシアは冷戦初期から北朝鮮に強い影響力を持ち続けている。ヘンリー・キッシンジャー氏の国家安全保障政策スタッフも歴任したK・T・マクファーランド元国防次官補はFOXニュースとのインタビューに応じ、食料とエネルギーの供給国である中国だけが北朝鮮を説得できると述べている。きわめて重要なことに。マクファーランド氏は軍拡競争が激化する中東でイラン、サウジアラビア、シリア、エジプトへの核拡散に非常に危機感を抱いている。北朝鮮によるアラスカへの核攻撃についてあまり懸念はしていない(”China Key to North Korean Missile Test?”; FOX News; April 3, 2009)。

日米韓の反北朝鮮同盟は重大なジレンマに直面している。ピョンヤンの独裁者が危険な冒険主義に走ることを防ぐには中国とロシアの関与は必要ではあるが、両国の介在は北朝鮮への効果的な圧力への障害でもある。北朝鮮危機に関する限り、オバマ大統領は以下の課題で試されている。それは核不拡散、世界規模と地政学での中国とロシアという非民主的な大国との対抗関係、そして対テロ戦争への影響である。

関係諸国の政府はこの危機のエスカレーションを避けたがっているが、アメリカ国民の57%は北朝鮮のミサイル施設に対して軍事攻撃すべきだと考えている(“57% Want Military Response to North Korea Missile Launch”; Rasmussen Report; April 5, 2009)。実際に、イスラエルがイラン・イラク戦争の最中にイラクでフランスによって建設されていた原子力発電所を爆撃し、サダム・フセインの危険な野望を挫いた。危機に直面したアメリカ国民はバラク・オバマ氏とジミー・カーター氏のアプローチよりも一期目のジョージ・W・ブッシュ氏とジョン・マケイン氏のアプローチが望ましいと考えるようになっている。もちろん、危機のエスカレーションは避けられた方が好ましいと私は思う。しかし国連はイラク・ギャップを克服できていない。また、中国もピョンヤンの独裁者を管理できなかった。そのため、この世論調査結果は理解できる。

最後にアメリカン・エンタープライズ研究所のニコラス・エバースタッド常任研究員の論文にも言及したい。エバースタッド氏はこのミサイル実験が全体主義体制の弱体化と重なるというタイミングに注目すべきだと指摘する。ロケットが発射されたのは病弱なキム・ジョンイル氏の後継者が決定される最高人民会議の直前である。結論としてエバースタッド氏は「老い先短い君主が治める一党独裁体制は今や音を立てて崩れようとしている。この問題の方が日曜日のミサイル発射よりも北朝鮮の行く末に大きな影を投げかけている」と述べている(“Kim's Crumbling Dynasty”; Wall Street Journal; April 6, 2009)。

この危機は核不拡散を超えたものである。日米韓三国の同盟は朝鮮半島での中国とロシアを相手にした地政学的な競合にも準備を怠ってはならない。これはオバマ大統領に対して長い時間をかけて科される試験である。

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