オバマ政権100日を語るブログ
就任100日は新大統領がメディアと国民との間のハネムーン期間が終える節目である。バラク・オバマ氏以上にこの節目が注目された大統領はいない。それは若く素晴らしい大統領に対するかつてない期待の高さの一方で、経験不足と政治的スタンスへの不安が表裏一体となっているからである。また、アメリカは経済でも安全保障でも岐路にある。
以下の二つのブログでオバマ大統領の就任100日間の仕事ぶりが語られている。
クリスチャン・サイエンス・モニターではオバマ政権とブッシュ政権の就任100日目の支持率を11種類に分類した地域社会ごとに比較している(“Obama vs. Bush at 100 days”; Patchwork Nation; April 27, 2009)。このブログによると、バラク・オバマ氏はジョージ・W・ブッシュ氏よりも国論を二分する大統領である。全米での就任100日目のオバマ氏の支持率はブッシュ視よりも高いが、「移民社会」、「軍事基地周辺」、「キリスト教福音派社会」のといった保守的な地域社会は新大統領に批判的である。他方でオバマ氏はリベラルの基盤である工業大都市地域の支持をしっかりと固めている。
きわめて重要なことに、オバマ氏の最大の強みは中道派の浮動票層である「富裕な郊外」と「経済活性化著しい都市」といった地域社会の支持を得ており、どちらも人口が多く経済力のある地域である。
フォーリン・ポリシーのブログではオバマ大統領の就任以来の成果についてアメリカを代表する専門家のコメントを引用している(“Questions for Obama at 100 days”; Shadow Government; April 28, 2009)。多くの専門家がイランに関して懸念を述べたのは、国務省が発行したThe Country Reports on Terrorism 2008で「イランは依然として最もテロ支援に熱心な国家である。イランが中東、ヨーロッパ、中央アジアでのテロ攻撃の計画立案と資金の援助に関わっているので、国際的な平和構築の取り組みに直接の悪影響を及ぼしている。また湾岸地域での経済安定を脅かし、民主化の進展も阻んでいる」と記されていることからすれば妥当である(Chapter 3; Country Reports on Terrorism 2008)。
BBCでアメリカ国務省担当のキム・ガッタス記者はアメリカの新政権はテヘランとの話し合いを始めようとはしているが、前政権と同様にイランを最も熱心なテロ支援国家だと述べている(“Iran 'leading terrorism sponsor'”; BBC News; 1 May 2009)。
先に挙げたShadow Cabinetのブログ記事で、ドイツ・マーシャル基金のダン・トワイニング上級フェローはきわめて重要な点に言及している。トワイニング氏はオバマ大統領がアメリカは特別な国であるという建国の父達の理念を善と悪のどちらと考えているかを問うている。これは内政でも重要な問題である。保守派がオバマ大統領に異議を差し挟むのは、大統領の政策が社会主義的で個人の自由を脅かすのではと懸念しているからである。選挙期間中はアメリカ国外のメディアがブラッドレー効果に目を奪われてしまったが、人種は選挙の重要争点ではなかった。
オバマ大統領の人気にもかかわらず、グラスルーツの保守派からの反発は強烈である。過激な多文化主義、社会主義、移民の大流入に反対する学生運動の高まりは、Patchwork Nationでも述べられているようにオバマ政権が国論を二分する性質があることを白日の下にさらしている。そうした団体の中でもYouth for Western CivilizationとLeadership Instituteの影響力が強まってきている(“Right-Wing College Group Riles Students on Campuses Nationwide”; FOX News; April 29, 2009)。
統計上はオバマ大統領の支持率は高く、海外での大統領の人気の高さはアメリカ外交に何らかのプラスとなるかも知れない。しかし建国の父の理念に最も忠実な保守層はバラク・オバマ氏に批判的である。アメリカがアメリカである限り、大統領は内政でも外交でもこうした挑戦を突きつけられる。
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