ブレア前首相、過激派への軍事介入を積極支持
イギリスのトニー・ブレア前首相は4月22日にシカゴ国際問題評議会で「思想信条とグローバル化」と題する講演を行なった。ブレア前首相は英米両国によるイラクとアフガニスタンへの介入に対する批判に反論し、軍事介入がこれまで以上に重要になっていると述べた(“Force must be an option – Blair”; BBC News; 23 April 2009)。
私がこのイベントについて語るのは、国際世論がイスラム過激派と圧政国家の脅威を理解していないからである。またオピニオン・リーダーの中にはこうした脅威から過去のヨーロッパ植民地主義やアメリカの覇権に注意を逸らしてしまう者もいる。トニー・ブレア氏はそうした考え方は全く誤っていると言う。この講演がアメリカの同盟国であるヨーロッパと日本にとって重要な政策的示唆に富んでいるのは、我々全てが共通の脅威に直面しているからである。
左翼メディアによるジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)の「カウボーイ外交」への批判の向こうを張って、ブレア前首相は国際的な尊敬と良心を代表する指導者としてイラクとアフガニスタンでの対テロ戦争に正当性を与えるうえで重要な役割を果たした。
トニー・ブレア氏は「私は国民を抑圧し自由を奪う体制は権力の座から引きずり降ろされるべきだと今も信じている」と明言する。ブレア氏はそうした圧政体制は主要民主主義諸国による軍事介入で取り除かれるべきだと信じている。
脅威が中東全土に広がり戦争が長引くのは「それにイデオロギーの基盤があり、その根は深く、そのために我々が勝利するための戦略はもっと広く包括的でありながら目的をしっかりと絞る必要があるからである」という。
さらにブレア氏は過去のイギリス植民地主義とイスラエルの建国が中東の不安定の元凶だという世界に広まっている誤解を否定している。逆にブレア氏は積極的な介入によって過激思想の根を弱体化しなければならないと指摘する。
軍事介入ばかりでなく、ブレア氏は欧米がイスラム社会のエンパワーメント(自立支援)を援助し、穏健派イスラム教徒を支援して過激思想の根を絶たねばならないと強調する。
このところ対テロ戦争への貢献が疑問視されているパキスタンについて、ブレア氏は軍事行動よりも社会変革を支援するほうが好ましいと述べている。
さらに詳しくはこちらのリンクある本文とオーディオを参照して欲しい。全世界のリベラル派はバラク・オバマ大統領の就任に狂喜したが、彼らは対テロ戦争の性質を理解しなければならない。それは大統領がブッシュ氏であろうとオバマ氏であろうと「チェンジ」しないのである。トニー・ブレア氏の講演はこの重要な点を理解するうえで非常に有益である。
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