インド国民会議派の勝利と米英印メディアの論調
今回の選挙の結果、マンモハン・シン氏は首相に留任する。ジョン・マケイン上院議員の政策顧問を歴任したダニエル・トワイニング氏はインドでは党派を超えてアメリカとの関係強化が必要だとの合意があると述べたものの、国民会議派の勝利は南アジアでの対テロ戦争と海外からのインドへの投資には朗報である。アメリカ、イギリス、そしてインドのメディアの報道と論評を見てみたい。
選挙の結果はインド政治についていくつかのことを物語っている。地方政党と左翼は大幅に議席を減らした。デリー大学のマケシュ・ランガラジャン教授は1991年以来の小党依存からの反動で国民会議派が議席を伸ばしたと指摘する(“Indian Election Sidelines Regional Parties, Strengthens Congress Party”; VOA News, 20 May 2009)。国民会議派の成功は将来の首相と目されるラウル・ガンジー氏の母親でイタリア人のソニア・ガンジー氏とマンモハン・シン首相の二頭体制によるものである(“India's 'odd couple' take up reins of power”; AFP; May 22, 2009)。さらに有権者は国民会議派への最大の対抗勢力であるヒンズー教ナショナリストのBJPに懸念を抱いている。インド国民はヒンズー対イスラムの敵対関係を望んでいないのである(“Congress comes back”; Economist; May 16, 2009)。
図表と地図:(“Singh when you're winning”; Economist; May 21, 2009)
国内の安定は対外関係にも好影響を与える。オバマ政権は国民会議派が引き続き政権を握るインドをアフガニスタンとパキスタンでの対テロ戦争、核不拡散、気候変動、自由貿易といった課題で重要な同盟国と見なしている(“US can't expect too much, too soon from India: US media”; Indian Express; May 21, 2009)。
対テロ戦争に関して、第二次シン政権はムンバイ・テロ攻撃事件後の安全保障とヒンズー・イスラムの和解を優先課題とするであろう(“Indian government pledges security focus”; Guardian; 20 May 2009)。シン首相は独特のターバンと姓が示す通りのシーク教徒である。それは両教徒の和解を促すうえで非常に有利であり、その和解はパキスタンとの関係改善にも重要となる。
インドの外国人投資家は選挙の結果に満足している。彼らが懸念しているのはヒンズー・ナショナリストのBJPが台頭することではないのも、国民会議派とBJPの経済政策に本質的な違いはないからである。投資家が最も恐れていることはどの政党も選挙で決定的な勝利を収められないことである。出口調査では国民会議派とBJPの接戦が予想された。両党の勢力が拮抗すれば経済の自由化に後ろ向きな第三前線や共産党に主導された新しいグループが台頭しかねないからである(“India's election delivers investors much needed stability”; Daily Telegraph; 18 May 2009)。国民会議派の長老カマル・ナス氏は新政権が金融、小売、不動産、労働基準で経済の規制緩和を推し進めるだろうと語っている(“Election Results Fuel Optimism for Economic Reforms in India”; Washington Post, May 21, 2009)。
専門家の多くはインドの有権者がマンモハン・シン氏の経済自由化を支持していると解釈している。首相には米印核協定を実行に移す見返りにエネルギーの安定供給を得るという政策を阻む者がいない。しかし第二次シン政権は国内需要の刺激と貧困層への救済のよって世界経済危機を乗り切りながら、市場経済化も推進してゆかねばならない(“Success puts India's new ruling class under pressure”; Independent; 18 May 2009)。
インドの有権者がマンモハン・シン首相に信頼を託したとあっては、オバマ政権はブッシュ政権の正の遺産を無駄にしてはならない。当ブログでは今後もパキスタンとアフガニスタンとの関係からインドには注目してゆきたい。
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