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2009年6月28日

イラン危機の試練:元サッチャー英首相顧問がプラハとカイロの反米自虐演説を疑問視

上にあるCスパンのビデオを観て欲しい。ジョン・マケイン上院議員がテヘランの路上で民主化運動に参加した際にイランの警察に無慈悲に射殺されたネダ・アガソルタン嬢への追悼演説を行なっている。アメリカ国内外からの圧力の高まりにもかかわらず、バラク・オバマ大統領は過去にモハマド・モサデグを放逐したCIAのクーデターにとらわれてイラン非難のリーダーシップにあまりに及び腰である。カント的だとされるフランスのニコラ・サルコジ大統領やドイツのアンジェラ・メルケル首相らヨーロッパの指導者の方がイランのレジスタンス支援に熱心なほどである。

大統領就任からそろそろ6ヶ月になる。私はジョセフ・バイデン副大統領の有名な発言をしっかり銘記しており、今回の危機はオバマ大統領に対して最も重要な試験となると見ている。全世界のメディアはオバマ大統領がプラハとカイロで行なったこれまでの大統領の傲慢な世界戦略への懺悔の演説を平伏して称賛した。現在の危機はそのような自虐史観による人気目当ての訴えでは対処もままならず、世界は我々の自由世界秩序への脅威を打ち負かすためにも強力な超大国を必要としている。北朝鮮では危機管理能力が試されるにすぎないが、イランはこれ以上の問題である。そこではバラク・オバマ氏が世界の場で道徳上のリーダーシップを発揮できるか、アメリカの価値観に忠実かどうかが試される。保守派はミシェル夫人の非常に有名な初めて自分の国に誇りが持てた演説からずっと、これらの点に疑問を抱き続けてきた。

ワシントン・ポストではイラン危機をめぐるオバマ氏の信頼性を議論し、専門家の賛否両論を取り上げている(“Iran Unrest Reveals Split in U.S. on Its Role Abroad”; Washington Post; June 23, 2009)。その中でも私はイギリスのマーガレット・サッチャー元首相の外交顧問を務めたナイル・ガーディナー氏の発言が印象に残る。ガーディナー氏は「大統領は自分の国に対する自信が持てないかのようだ。アメリカが自信をもって世界に影響力を及ぼそうという気はなく、そうすることが恥ずべきことだと考えているようだ」と述べている。これはまさに、プラハとカイロの演説から私が感じてきたことそのものである。

現在、ナイル・ガーディナー氏はヘリテージ財団のマーガレット・サッチャー自由センターで所長を務めている。ガーディナー氏はオバマ大統領の自虐史観を批判する寄稿を行なっている。そして「現在の世界はブッシュ政権期よりはるかに危険で、オバマ政権はそうした脅威に弱腰な態度で臨むだけの有様である。アメリカは敵からますます軟弱だと見られるようになっているという恐るべき現実がある」と述べている。しかしガーディナー氏はオバマ氏がカーター流の外交をチェンジするのはまだ遅くないと主張している(“Barack Obama should stop apologising for America”; Daily Telegraph; 3 June 2009)。 別の投稿でガーディナー氏は問題のある謝罪を列挙し「アメリカのリーダーシップは人気競争ではなく、自虐によって発揮されるものでもない。むしろ世界各地で敵意を剥き出しにする勢力に毅然と立ち向かうことでリーダーシップは発揮される。何よりも自信を持ってアメリカの力を世界に及ぼして、自国と同盟国を守らねばならない」と発言している(“Barack Obama's Top 10 Apologies: How the President Has Humiliated a Superpower”; Heritage Memo; June 2, 2009)。

シンクレア放送グループでコメンテーターを務めるマーク・ハイマン氏はさらに手厳しく、オバマ氏の外交政策は少年時代に指導を受けた悪名高き反白人扇動家のライト師からの精神的な影響によるものだと記している(“Jeremiah Wright Foreign Policy”; American Spectator; June 26, 2009)。

世界の世論はジョセフ・バイデン氏の発言に注目した。今はナイル・ガーディナー氏の発言に注目すべきである。メディアと全世界のリベラル派はオバマ大統領がアメリカの所業を謝罪し、自らの国を貶めることを好んで見たがっている。イラン危機はそうしたポピュリズムがいかに危険かを示している。大統領はバラク・カーター・オバマからバラク・トルーマン・オバマに変貌できるのだろうか?

ナイル・ガーディナー氏の以下のビデオ・コメントも参照。

Fox New 5; June 16, 2009

Fox Business; June 17, 2009

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2009年6月23日

エカテリンブルグ首脳会議と中露の取り込みに失敗したクリントン外交

ソ連崩壊後のロシアで新設されたテレビ局が放映した上のビデオを観て欲しい(Mega-deals and security to link China and Russia”; Russia Today; June 17, 2009)。 ロシア・トゥデーという名のこの会社は、アル・ジャジーラがアラブの視点を伝えているようにロシアの視点を英語で伝えている。

エカテリンブルグで開催されたBRIC首脳会議でロシアと中国は近年のかつてないほど良好な両国関係を称え合い、経済協力の拡大のための貿易協定に調印した。非常に重要なことに、両国はドルへの依存を減らして国際取引で各国の通貨の使用を進めるべきだと主張した。明らかにロシアと中国は経済の分野で欧米に挑戦状を突きつけたのである。

ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領と中国の胡耀邦主席の共同記者会見は、新しく資本主義の道を歩む両国を取り込もうというクリントン政権の取り組みが失敗に帰したことを示す。西側主導の自由主義国際政治経済体制の善良な市民であることを拒むロシアと中国は我々に対抗し、自分達の経済的勢力範囲で独自の秩序を作ろうと決意した。

ドル基軸体制はアメリカの政治力と軍事力への信頼に基盤を置いており、これは経済的な合理性を超越したものである。ロシアと中国は欧米に対抗して急速に軍事力を強化しており、近隣諸国への影響力を拡大している。それほど危険な対抗相手が我々に挑戦を突きつけているのである。次は何をしてくるのか?

現段階ではロシアと中国は自国通貨をドルにとって代わらせることはできない。アメリカ財務省によると、両大国ともアメリカのドル債権の財産に依存しているという “Alternatives to the Dollar? Not So Fast”; Reuters Blog Commentaries; June 15, 2009)。

また、BRIC諸国は経済から安全保障に至るまで互いに見解が一致しているわけではない(“BRIC plotters stage a farce”; Asia Times; June 20, 2009)。ブラジルとインドは明らかに我々の経済体制を否定する気などなく、ロシアや中国のように急速な軍拡に走っているわけでもない。

充分に強大か否かはともかく、ロシアと中国は英米主導で作られた自由主義経済秩序であるブレトン・ウッズ体制を解体し、国際経済を自分たちの権威主義的な国家主導イデオロギーに合うように変えてゆこうと明言したのである。経済の専門家は両国の台頭を市場経済の観点からのみ議論し、両国の野望が突きつける政治的な脅威に関心を払わないことが多い。しかしどのような経済政策も政治的に立案されたものである。よって両国が我々に対抗の意志をあらわにすることは世界の安全保障に深刻な課題である。

エケテリンブルグ首脳会議は、ロシアと中国を我々の国際経済に取り込もうとしたクリントン政権の努力が失敗に帰したことを象徴する出来事である。両国が世界で我々の優位を脅かそうという野心にどのように対処すべきであろうか?両国に宥和すれば何があるのだろうか?現段階では両国は充分に強大でないかも知れないが、我々の優位を転覆しようとする両国の意志こそが重要な課題を突きつけている。歴史は終焉せず、再び始まったのである。

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2009年6月21日

マケイン上院議員がイラン問題で「鉄のカーテン演説」

バラク・カーター・オバマ大統領がイランでの流血の混乱に行動を起こさないので、サー・ジョン・ウィンストン・マケイン上院議員は圧政的な神権政治に対して鉄のカーテン演説とも言える発言を行なった。EU首脳とアメリカ議会が最高指導者アリ・ハメネイ師とマフムード・アフマディネジャド大統領を批判したにもかかわらず。オバマ大統領はテヘランの悪名高き体制に圧力をかける気がないようである。

サー・ウィンストン・チャーチルが第二次世界大戦後のソ連の膨張主義に強く立ち向かうことに乗り気でなかったアメリカ国民に鉄のカーテン演説で訴えかけたように、マケイン上院議員は大統領を現代史を通じてアメリカの現職大統領なら人権と自由の尊重を世界に訴えかけており、自由な選挙はその根幹を成すものである。今の大統領にはそうした理念を世界の先頭に立って訴える気もないようだと批判している(“John McCain: President Obama not showing 'leadership'”; Politico; June 17, 2009およびビデオ)。

直前の記事で述べたように、イランでの暴力の広がりに鈍い反応し示さないバラク・オバマ氏は1979年のジミー・カーター氏と重なって見えてしまう。私はこれまでに何度もイランの喪失がアメリカ外交に多大な損失を与えてきたと主張している。イランが西側にとって友好的で頼れる同盟国であったなら、9・11は起きなかったであろうしサダム・フセインもガマル・アブデル・ナセルになろうという馬鹿げた誇大妄想は抱かなかったであろう。アメリカとイギリスが第二次世界大戦終結後にイラン北部から赤軍を撤退させるようにスターリンに要求を突きつけて以来、イランはソ連のペルシア湾拡張への防壁であった。歴史的にも地政学的にもイランは中東情勢にこれほど重要な戦略上の要衝である。

私がジョン・マケイン氏が我々の自由の拡大とイランの友人達の支援のためにチャーチルを髣髴とさせる発言をしたことを重要と見なすのは、こうした理由からである。この件に関してはリベラルのアメリカも保守のアメリカもない。白人のアメリカも黒人のアメリカもない。あるのは一つにまとまったアメリカ合衆国だけであるとは正鵠を射ている。大統領閣下、おっしゃる通りですが、国民を前にした自らの発言に閣下は忠実でしょうか?

ポール・ウォルフォビッツ元国防次官は1986年のフィリピンと1991年のソ連で反政府運動が起きた際に、当時のロナルド・レーガン大統領もジョージ・H・W・ブッシュ大統領も介入に消極的であった。しかし両大統領とも最終的には市民による民主化運動を支援した(“'No Comment' Is Not an Option”; Washington Post; June 19, 2009)。ウォルフォビッツ氏がコラムで述べているように、介入をしたことがアメリカのソフト・パワーを強める結果となった。

ウィンストン・チャーチルの鉄のカーテン演説を受け入れて初めてハリー・トルーマンが真の国際政治家となれたことを重ねて訴えたい。バラク・カーター・オバマ氏はトルーマンにもレーガンにもブッシュ・シニアにもなる気はないようである。中東の友人達はアメリカの現大統領には多くを期待しない方が良さそうである。おそらくデービッド・ペトレイアス大将なら貴方達の救世主の一人に名を連ねられるだろう。チェンジへの希望は捨てないで欲しい。

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2009年6月17日

イランの解放に冷淡なオバマ政権:一体、カイロ演説のどこが賞賛に値するのか!

イランは6月12日の大統領選挙を経て混乱状態にある。これは革命からイランの政情が改善していないことを示す。イランはテロ支援と核兵器開発の誇大妄想から国際社会の問題児となっている。明らかに現在の神権政治の下でのイランはシャーの時代よりも酷い統治が行われている。こうした事態にもかかわらず、バラク・オバマ大統領はあの世界に名高いカイロ演説でCIAによるクーデターで当時のモハメド・モサデグ首相を政権から放逐したことを謝罪した。

不思議なことに、オバマ大統領は正当な反共クーデターを非難しながら、マフムード・アフマディネジャド氏に反対する民主化運動には冷淡な態度を示すだけである。

ここでイランの歴史を振り返りたい。1952年から1953年にかけてのアングロ・イラニアン石油紛争で、モサデグはソ連への接近をはかった。冷戦の政治力学からすればこうした行動は受け入れられない。イランが共産主義勢力の手に落ちてしまえば、ペルシア湾周辺の全地域の安全保障が脆弱になってしまう。アメリカがイギリスを支援して共産主義勢力の拡大を阻止したことは正しい。アメリカが当時は二度目の首相の座にあったサー・ウィンストン・チャーチルと手を組んだ時は、常に世界の良心を代表したことを忘れてはならない。中西部出身の田舎弁護士だったハリー・トルーマンが世界を代表する本物の政治家になったのは、チャーチルの「鉄カーテン演説」を受け入れてからである(救世主オバマにこのような素晴らしい演説ができるだろうか?)。また中東でのナショナリズムの高揚も抑えておく必要があった。サダム・フセインはスエズ危機でのガマル・アブデル・ナセルに触発された。クウェートに侵攻したサダムは自らをイギリス支配下にあったスエズ運河を国有化したナセルに重ね合わせていた。モサデグはナセルのように危険なナショナリズムを触発しかねなかった。

1970年代末の経済危機まで、イランはシャーの下での近代化を謳歌していた。クーデターによってイランが反欧米化したというのは完全に誤っている。パーレビ時代には多くのイラン人が喜び勇んでアメリカの大学に留学した。アメリカと他の西側諸国に留学したイラン人達が政府、軍、財界のトップを占めた。オバマ氏がカイロ演説で述べたこととは逆に、これは当時のイランで親米気運が広まっていた証拠である。

世界中に賞賛されているカイロ演説でのオバマ氏の発言に関して、ワシントン・ポストでコラムニストを務めるチャールズ・クローサマー氏は大統領がアメリカ側を不当に非難していると批判している(“Obama Hovers From on High”; Washington Post; June 12, 2009)。ロバート・ケーガン氏が述べるようにバラク・オバマ氏はウィルソン的な理想主義者かも知れない(“Woodrow Wilson's Heir”; Washington Post; June 7, 2009)が、こうした理想主義もアメリカならではの正義に自信を持てなければ外交にマイナスである。クローサマー氏はアメリカがクーデターによって民主的に選ばれたモサデグを放逐したことによって1979年のアメリカ大使館占拠事件とテロ支援が正当化されるわけではないと主張する。私はこの主張に同意する。クローサマー氏はその投稿でオバマ大統領のカイロ演説はイスラムと欧米の衝突に関しては極端にイスラム過激派に寛容だと指摘する。これはメディアがひれ伏して礼賛するその演説を理解するうえで重要な点である。

大統領選挙を前にフォーリン・ポリシー誌はウェブ上で特集を組み、選挙に絡んだ腐敗と混乱を予測していた。カーネギー国際平和財団のカリム・サドジャプール研究員は、この選挙がテヘラン対地方の争いだと記した。信頼できる出口調査もない状況では結果の予測は難しく、国際メディアは地方の声を見落としがちである。最終的には選挙を経ていな聖職者達が勝者を決定するので、事態は2000年のアメリカ大統領選挙でのフロリダの票のように結果をめぐって議論を呼ぶようになる(“Why Iran '09 Could Be Like Florida '00”; Foreign Policy, June 2009)。ドイツのディ・ツァイトとシュピーゲル・インターナショナルに寄稿しているキャメロン・アバディ記者は現在の選挙を1979年にシャーを追放した革命になぞらえている。マフムード・アハマディネジャド氏でもミール・ホサイン・ムサビ氏でも、大統領に選出されれば保守派と改革派の対決を反映した反対勢力からの激しい抵抗を覚悟しなければならない"Iran's New Revolution"; Foreign Policy; June 2009)。

これがイランで次の革命が起きる前兆なら、アメリカは介入すべきなのだろうか?1979年の革命の際には当時のジミー・カーター大統領は過激派聖職者を食い止めるための手段を何一つ講じなかったので、アメリカはイランを失ってしまった。ウィリアム・クリストル氏はオバマ大統領が本当に民主主義の理念に忠実であるなら、どうしてアメリカのソフト・パワーを行使しないのかと疑問を投げかけている(“Kristol: Where's the Soft Power?”; Weekly Standard Blog; June 14, 2009)。ジミー・カーター氏は教育水準の高い親西欧派の将軍達が狂信的で反西欧的な聖職者達に対して立ち上がることを支援しなかった。その結果はあまりによく知られている。バラク・カーター・オバマ氏は民主化を求めるイラン人を支援せず、狂信的な聖職者達がこの国を支配し続けることを認めるのだろうか?

ジョン・マケイン上院議員はオバマ大統領に選挙の腐敗と不正を問い質すように要求を突きつけている(“Obama refuses to 'meddle' in Iran”; BBC News; 17 June 2009)。その通り、これぞアメリカのソフト・パワーの使い方である。

カイロ演説での救世主によるご神託を聴いて感動した人達は考え直すべきで、イラン危機は若く素晴らしい大統領を判断する本物の機会である。大統領は今や試されている。バラク・カーター・オバマ氏はジェームズ・アール・カーター氏と同じ過ちを犯すのだろうか?

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2009年6月12日

不幸を選択したアメリカ:日高氏が新刊でオバマ政権をメッタ切り

Isbn9784569704913_2 日本のジャーナリストで全米商工会議所会長の主席顧問とハドソン研究所の上級フェローを務める日高義樹氏がオバマ政権の暗黒の側面を記した著書を発行した。この著書は日本語で書かれているが、私は全世界に紹介する価値があると信ずる。

日高氏はワシントン政界で究極のインサイダーである。東京大学をアメリカ文学専攻の学士号で卒業すると、NHKに入局してアメリカの政府、軍、財界の報道にたずさわってきた。同氏は共和党のリチャード・ニクソン、ヘンリー・キッシンジャー両氏から民主党のジミー・カーター氏に至るまでアメリカ政界の重鎮達と親しい関係にある。

他方で日高氏はアメリカ人ではないのでアウトサイダーでもある。しかしこれはアメリカ政治を客観的で大胆に語るうえで有利な点である。イギリス人のジョン・ミクルスウェイト氏とエイドリアン・ウールドリッジ氏が著した”The Right Nation”(邦訳なし)は大変な好評であった。実際に日高氏はオバマ氏がウォール街叩きを続けていると暗殺される危険があるとまで懸念している。金融、工業、軍のエリート達の結びつきは強いので、オバマ氏のポピュリズムは彼らの怒りをかうという。日高氏は極右の人種差別主義者達がエリート達と結びついてバラク・オバマ氏を暗殺する危険性を指摘する。この著書は日本の読者を相手に日本語で書かれているので、そうしたタブーを大胆に語れる。

この著書の冒頭で日高氏はオバマ大統領がフランクリン・ローズベルトになれるかどうかを問いかけている。氏の結論は「ノー」である。国家安全保障から経済、その他に至るまでオバマ氏には大局的な戦略構想がないと日高氏は批判する。さらにオバマ氏には指導者としての訓練を積んだ経験がないので、自分より経験のある有能な閣僚を使いこなせないとも言う。

オバマ氏を支持するアメリカ人は彼の「天才」を信頼している。確かにバラク・オバマ氏は核兵器に関するプラハ演説や中東に関するカイロ演説で見られたように、無数の人々の心をつかむことにかけては飛びぬけて天才である。しかし日高氏が述べるように、世界唯一の超大国の大統領職は天才だけでは務まらない。メディアの好意的な受け止めとは裏腹に、私はオバマ氏が自由世界秩序の守護者というアメリカの覇権国家としての役割をプラハとカイロでの耳あたりの良い演説で自己否定していることは重大な懸念材料と見ている。確固としたビジョンもなくそうした危険なポピュリズムに走ればアメリカ外交にも世界の安全保障にも良いことはない。

この著書を以下の点から見てみたい。それはオバマ政権の背景、外交安全保障政策、経済政策、そして日米関係と東アジアの安全保障である。

日高氏はオバマ氏が選挙に勝利した重要な理由は有権者の間に広まった国家への不信感だと主張する。アメリカ国民はブッシュ政権下で電話盗聴のような対テロ監視に嫌気がさしてしまった。そうした雰囲気の中、オバマ氏は消え財危機への恐怖感を煽りたてて有権者の関心を安全保障から逸らした。そうした巧みな選挙戦術によって Hope of the Changeのバラク・オバマ氏がCountry First ジョン・マケイン氏を破ったのである。しかし日高氏はオバマ氏が極左活動家や地元シカゴの地方マフィアといった後ろ暗い人物達と自分との関係について国民の注意を向けさせないようにしていると指摘する。日高氏はアメリカのメディアがオバマ氏の指導者としての資質に重要な問題となるような汚い人脈について追及しないことに疑問を投げかけている。

外交安全保障政策でオバマ大統領はどのような相手でも話し合えば世界中が平和になると信ずるほどナイーブである。日高氏はオバマ氏のような法に基づくアプローチでは国際政治のホッブス的なサバンナには通用しないと批判する。さらにオバマ政権の閣僚の多くは外交に関してはアマチュアで、戦争の何たるかをわかっていないとまで述べている。ブッシュ政権はアメリカ国内へのテロリストの侵入を防いできたが、日高氏はオバマ政権になってテロリストへの監視が弱まるとアメリカの安全が脅かされると警告する。

経済ではオバマ氏の政策の基本的な骨組みはケインズ的な公共投資だけだという。しかしそれは中国からの資金の流入に多いに依存しているという。中国でナショナリズムが高まって国内需要主導の経済になってくると、アメリカへの資金の還流は減少するので、財政支出の拡大には致命的な障害になりかねないという。

日高氏は中国に対するオバマ氏の生ぬるい態度にも大きな懸念を抱いている。ブッシュ政権は中国との経済関係は強化したが世界と地域の安全保障では中国の拡張主義に歯止めをかけた。オバマ大統領には確固とした対中政策ビジョンがない。日高氏はオバマ政権のアジア太平洋政策が貧弱なために日米関係に多大な悪影響がもたらされると懸念している。

不思議なことに世界とアメリカの世論はどちらも救世主バラク・オバマの空疎だが心地好いお言葉に魅了されている。オバマ氏の真の姿を見るためにこうした世論を目覚めさせる必要がある。日本語がわからなくてこの著書が読めなくても、日本のド・トックビルがオバマ政権をこれほど厳しく批判的で雄弁な分析していることを知って欲しい。だからこそ、バラク・カーター・オバマ氏の理解にこの著書を紹介する。

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2009年6月 1日

北朝鮮核実験でオバマ大統領+日韓が試される

ジョセフ・バイデン副大統領がバラク・オバマ氏は6ヶ月以内に世界から試されるだろう」と言ったことを思い出して欲しい。キム・ジョンイルがそれをやってのけた。北朝鮮の核実験によってオバマ政権の能力に深刻な懸念が生ずる。国際社会による多国間の制裁が必要だとの理解が広く行き渡っているが、専門家の間では中国が北朝鮮の封じ込めにどこまで積極的か疑問視する向きもある。安全保障の専門家を代表する見解と分析を見てみたい。

アメリカン・エンタープライズ研究所のダン・ブルメンソール常任フェローとカーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員はブッシュ政権がウィリアム・ペリー元国防長官とアシュトン・カーター現国防次官補による北朝鮮の核施設への攻撃の提言(“If Necessary, Strike and Destroy”; Washington Post; June 22, 2006)を受け入れなかったと指摘する。両氏の考えが妥当だと思えるのは、イラン・イラク戦争の最中にイスラエルがイラクで建設中の原子炉を爆撃したからである。しかしブルメンソール氏とケーガン氏が述べているようにオバマ政権がこの方法をとる見込みはない。また、中国は表向きの激しい非難とは裏腹に北朝鮮との関係を維持したいと望んでいる。現行の六ヶ国協議に代わって、アメリカは日本と韓国との連携を強めながら北朝鮮と交渉すべきだと主張する。現行の交渉プロセスでは中国が政治的な課題を設定しながら静かに北朝鮮への影響力を強めてゆくだけになると両者は主張する。ケーガン氏とブルメンソール氏がミサイル防衛の充実を第一の選択肢に挙げていることからすると、オバマ大統領がミサイル防衛の縮小に向かっていることは憂慮すべきことである(“What to Do About North Korea”; Washington Post; May 26, 2009)。考えてみれば、ロナルド・レーガンが悪のソビエト帝国を破ったのはSDI計画によってであった。北朝鮮はアメリカの大統領が誰であっても核実験を行なう。しかしミサイル防衛によって核ミサイルを発射しても撃墜される恐れがあれば北朝鮮も発射を思いとどまるようになろう。ジョン・マケイン上院議員が大統領に選出されていれば、レーガン外交によってこの危機に対処できたであろう。実際にはバラク・カーター・オバマ氏が大統領職にあるのは不幸なことである。

こうした事情からウィリアム・クリストル氏は共和党員と保守主義者達に対してオバマ政権の大きな政府にばかり目を奪われず、ディック・チェイニー前副大統領がバラク・オバマ大統領を厳しく批判して注目を集めたように安全保障問題での反論を積極的に行なうように訴えている(“Who Will Confront Obama? Cheney, Gingrich and...?”; Washington Post; May 25, 2009)。私はクリストル氏に同意する。今、試されているのはバラク・オバマという個人ではなくアメリカだからである。このため、FOXニュースとのインタビューで北朝鮮の脅威を軽視する発言をしたK・T・マクファーランド氏には強く反対する。

外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ氏は海上封鎖に中国の圧力が加われば北朝鮮との非合法貿易ができなくなり、キム・ジョンイルにも強いメッセージを送ることができると主張する(“Making Pyongyang Pay”; Weekly Standard Blog; May 28, 2009)。1962年のキューバ危機ではこの方法がとられた。問題は中国が圧力の行使に乗り気でないことである。フライ氏がブログで述べているように、議会はオバマ政権に強い行動に出るよう圧力をかける必要がある。

レーガン政権とブッシュ・シニア政権で国家安全保障審議会の一員であったカーネギー国際平和財団のダグラス・パール副所長は、現政権に対して性急な交渉に入ればならず者体制国家は不良な行動に見返りの利益を与えたものと解釈しかねないと提言している(“North Korea's Move Tests International Will on Nuclear Issues”; PBS Jim Lehrer News Hour; May 25, 2009)。

日本では保守派のジャーナリストで国家基本問題研究所の設立者である櫻井よしこ氏が、5月29日に北朝鮮核実験に関する緊急提言を表明している。櫻井氏と賛同者達が掲げた4点の提言はアメリカの専門家達とも基本的な考え方は共通している。以下の提言が掲げられた。

1.日米韓三ヶ国の連携強化。アメリカ国務省は北朝鮮をテロ支援国家に再指定。

2.中国による北朝鮮への援助と貿易の停止。北朝鮮との不法取引を続ける中国の銀行への制裁。

3.海上封鎖によりイランとシリアへの技術移転を阻止し、北朝鮮の収入源を絶つ。

4.日本の自衛隊に必要時の適地攻撃を許可。日本は戦後の平和主義を脱却した防衛政策の枠組を作る。

この提案には私も賛成である

他方、軍事ジャーナリストで日本軍事情報センター所長の神浦元彰氏は、以前に私のブログ記事が掲載された百花斉放というオンライン・ジャーナルで興味深い分析を披露している。神浦氏はキム・ジョンイルが軍部の過激派将軍達の動向を制御できなくなった可能性があると言う(「(連載)北核実験に「新たな制裁」をめざす国連安保理」;百花斉放;2009年5月29日

もはや現行の交渉では立ち行かないことを理解すべきである。制裁と封鎖の強化では不充分である。私はジェイミー・フライ氏が言うようにキム・ジョンイルに対する民主化の反乱も支援すべきだと思う。レーガン大統領が東ヨーロッパとソ連の諸国民を解放したという輝かしい教訓に学ぶべきである。暴虎はバラク・オバマ氏+日韓を試す。しかし素行不良の独裁者はあらゆる手段で打ち負かされねばならない。

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