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2009年6月 1日

北朝鮮核実験でオバマ大統領+日韓が試される

ジョセフ・バイデン副大統領がバラク・オバマ氏は6ヶ月以内に世界から試されるだろう」と言ったことを思い出して欲しい。キム・ジョンイルがそれをやってのけた。北朝鮮の核実験によってオバマ政権の能力に深刻な懸念が生ずる。国際社会による多国間の制裁が必要だとの理解が広く行き渡っているが、専門家の間では中国が北朝鮮の封じ込めにどこまで積極的か疑問視する向きもある。安全保障の専門家を代表する見解と分析を見てみたい。

アメリカン・エンタープライズ研究所のダン・ブルメンソール常任フェローとカーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員はブッシュ政権がウィリアム・ペリー元国防長官とアシュトン・カーター現国防次官補による北朝鮮の核施設への攻撃の提言(“If Necessary, Strike and Destroy”; Washington Post; June 22, 2006)を受け入れなかったと指摘する。両氏の考えが妥当だと思えるのは、イラン・イラク戦争の最中にイスラエルがイラクで建設中の原子炉を爆撃したからである。しかしブルメンソール氏とケーガン氏が述べているようにオバマ政権がこの方法をとる見込みはない。また、中国は表向きの激しい非難とは裏腹に北朝鮮との関係を維持したいと望んでいる。現行の六ヶ国協議に代わって、アメリカは日本と韓国との連携を強めながら北朝鮮と交渉すべきだと主張する。現行の交渉プロセスでは中国が政治的な課題を設定しながら静かに北朝鮮への影響力を強めてゆくだけになると両者は主張する。ケーガン氏とブルメンソール氏がミサイル防衛の充実を第一の選択肢に挙げていることからすると、オバマ大統領がミサイル防衛の縮小に向かっていることは憂慮すべきことである(“What to Do About North Korea”; Washington Post; May 26, 2009)。考えてみれば、ロナルド・レーガンが悪のソビエト帝国を破ったのはSDI計画によってであった。北朝鮮はアメリカの大統領が誰であっても核実験を行なう。しかしミサイル防衛によって核ミサイルを発射しても撃墜される恐れがあれば北朝鮮も発射を思いとどまるようになろう。ジョン・マケイン上院議員が大統領に選出されていれば、レーガン外交によってこの危機に対処できたであろう。実際にはバラク・カーター・オバマ氏が大統領職にあるのは不幸なことである。

こうした事情からウィリアム・クリストル氏は共和党員と保守主義者達に対してオバマ政権の大きな政府にばかり目を奪われず、ディック・チェイニー前副大統領がバラク・オバマ大統領を厳しく批判して注目を集めたように安全保障問題での反論を積極的に行なうように訴えている(“Who Will Confront Obama? Cheney, Gingrich and...?”; Washington Post; May 25, 2009)。私はクリストル氏に同意する。今、試されているのはバラク・オバマという個人ではなくアメリカだからである。このため、FOXニュースとのインタビューで北朝鮮の脅威を軽視する発言をしたK・T・マクファーランド氏には強く反対する。

外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ氏は海上封鎖に中国の圧力が加われば北朝鮮との非合法貿易ができなくなり、キム・ジョンイルにも強いメッセージを送ることができると主張する(“Making Pyongyang Pay”; Weekly Standard Blog; May 28, 2009)。1962年のキューバ危機ではこの方法がとられた。問題は中国が圧力の行使に乗り気でないことである。フライ氏がブログで述べているように、議会はオバマ政権に強い行動に出るよう圧力をかける必要がある。

レーガン政権とブッシュ・シニア政権で国家安全保障審議会の一員であったカーネギー国際平和財団のダグラス・パール副所長は、現政権に対して性急な交渉に入ればならず者体制国家は不良な行動に見返りの利益を与えたものと解釈しかねないと提言している(“North Korea's Move Tests International Will on Nuclear Issues”; PBS Jim Lehrer News Hour; May 25, 2009)。

日本では保守派のジャーナリストで国家基本問題研究所の設立者である櫻井よしこ氏が、5月29日に北朝鮮核実験に関する緊急提言を表明している。櫻井氏と賛同者達が掲げた4点の提言はアメリカの専門家達とも基本的な考え方は共通している。以下の提言が掲げられた。

1.日米韓三ヶ国の連携強化。アメリカ国務省は北朝鮮をテロ支援国家に再指定。

2.中国による北朝鮮への援助と貿易の停止。北朝鮮との不法取引を続ける中国の銀行への制裁。

3.海上封鎖によりイランとシリアへの技術移転を阻止し、北朝鮮の収入源を絶つ。

4.日本の自衛隊に必要時の適地攻撃を許可。日本は戦後の平和主義を脱却した防衛政策の枠組を作る。

この提案には私も賛成である

他方、軍事ジャーナリストで日本軍事情報センター所長の神浦元彰氏は、以前に私のブログ記事が掲載された百花斉放というオンライン・ジャーナルで興味深い分析を披露している。神浦氏はキム・ジョンイルが軍部の過激派将軍達の動向を制御できなくなった可能性があると言う(「(連載)北核実験に「新たな制裁」をめざす国連安保理」;百花斉放;2009年5月29日

もはや現行の交渉では立ち行かないことを理解すべきである。制裁と封鎖の強化では不充分である。私はジェイミー・フライ氏が言うようにキム・ジョンイルに対する民主化の反乱も支援すべきだと思う。レーガン大統領が東ヨーロッパとソ連の諸国民を解放したという輝かしい教訓に学ぶべきである。暴虎はバラク・オバマ氏+日韓を試す。しかし素行不良の独裁者はあらゆる手段で打ち負かされねばならない。

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