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2009年7月31日

ACCJにて日本の総選挙に関する会合

麻生太郎首相が721日に議会を解散したのを受けて、在日アメリカ商工会議所の政府関係委員会では8月30日に行われる衆議院総選挙に関するフォーラムを開催した。その会合が開催されたのは7月22日で、選挙がロビー活動に及ぼす影響が議論された。

最も重要な論点は、長年の努力で築き上げたロビー活動の人脈をどのように維持してゆくかである。ACCJとアメリカ企業は日本の議会、官僚機構、財界を相手に政策形成ネットワークの拡大を模索し続けてきた。ロビー活動では政策課題によって適切な相手を見つけることが重要である。日本の指導者で適切な相手を見つけたアメリカのロビー団体は政策形成のための「教育」をおこなうことになる。

参加者の殆どは民主党の勝利によってこれまでのロビー人脈が崩壊し、アメリカ企業は適正な相手を見つけて「教育」をおこなうために膨大な時間を割かれるのではないかとの懸念を示した。参加者の一人が民主党は充分に現実主義で日米同盟を損なわないと主張したが、アメリカのロビイスト達はこの選挙で国政に進出する多くの新人達が重要な政策課題について充分な知識もないという事実に対処しなければならないと憂慮している。非常に興味深いことに参加者はカレル・バン・ウォルフレン氏のように日本のエスタブリッシュメントとシステムに対する強い反感にとらわれていなかった。ウォルフレン氏とは反対に、参加者達は日本の官僚を説明責任が不明確で傲慢なエリート至上主義者と見なすよりも信頼できるパートナーと見なしている。言わば、在京のロビイスト達は日本の既存の政治プロセスを利用するほど現実主義者なのである。東京にいるアメリカのロビイスト達は良い意味でも悪い意味でもワシントンで中には見かけるような理想主義者とは全く違うのである。

討論の最中に過去の似たような変化が私の頭をよぎった。1993年には細川護熙氏が首相に選出され、1955年以来続いた自民党単独支配に終止符を打った。私は日本政界と緊密な関係を持つある弁護士に、アメリカのロビイストは細川政権から何らかの教訓を学んだかどうかを尋ねた。そうすると、民主党が送り込む新参者達は無能なので、自民党の復権を待つだけだとの答えが返ってきた。

細川政権期にアメリカで大統領職にあったビル・クリントン氏とは違い、バラク・オバマ現大統領はアメリカの理想を日本の官僚に押し付けようとはしたがらない。オバマ氏はアメリカの敵との対話にさえ乗り気である。イラン、ホンジュラス、そしてロシアに対する態度からすれば、オバマ氏がクリントン氏のように「悪名高き」日本の官僚機構に一撃を見舞おうとして介入することはあり得ない。さらに、オバマ氏はアメリカあるいは欧米の理念を外交に反映させることを非常にためらっている。そのため、ワシントンの政策形成者も東京のロビイストも細川改革の教訓を得ているか否かにかかわらず、総選挙後の日本の政権に対してはクリントン政権期のものとは大きく違った対応をとるであろう。

政府関係委員会の会合は日米間の政治のやりとりを理解するうえで貴重な機会である。委員会のメンバーは自分達のビジネスのために日本の政治に直接関わっている。議論されるテーマによってはワシントンのシンクタンクで取り上げられるものよりもっと生々しいものもある。ワシントンの政策専門家達は日々の利潤を気にする必要がない。私はかつてカーネギー国際平和財団とウッドロー・ウィルソン・センターの会議に参加するという良い機会があった。非営利でアカデミックな目線とビジネス志向の目線を組み合わせれば、アメリカ外交と日米関係の理解に大いに役立つだろう。

謝辞:

ACCJ政府関係委員会

注)この記事の内容はACCJ政府関係委員会の見解を全面的に反映するものではなく、内容についての責任は全て投稿者に属する。

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コメント

TB頂き、有難うございました。

視点論点が集約され、素晴らしいブログですね。

これを契機に、また、お邪魔させて頂きます。

ありがとうございました~☆

reikoさん

どうもありがとうございます。ACCJの政府関係員会では自民党色が強かったものの、適正な相手を見つけてのロビー活動なので民主党との関係も重視しているようです。ただ、わけのわからぬ刺客なるものが歓迎されないのはわかります。

講演者との信頼関係を守るために全ては口外できないのですが、東京から眺めるアメリカの国益は非常に知的刺激を受けます。

舎さん、コメント・TBありがとうございます。

民主党(DPJ)というのは、政治家・政党も含めて、アメリカの政治家やシンクタンク研究員、その他とのネットワークが極めて薄いんですよね。

もちろん、そうでない議員もいるのですがあくまでも個人技です。

それも党の方針と異なるんですよ。

はっきり言えば、人的交流のなさが大問題です。

グローバル化、日本の置かれている戦略環境などを考えてみても、特に同盟国であるアメリカを知らない、重視しないというのは、単に、外交・安全保障にかかわらず、経済分野においても日本の利益になりません。

いまさら、日本がアジアのリーダーだと言うだけの国力はもうないでしょう。

常に相手のいる政策領域ですので、相手の意向をよく考える必要がありますね。

その上でどこまで妥協できるかが、国際政治です。

アジアのリーダー云々というより、中国との東アジア共同体などロシアをEUやNATOに入れるのと同じです。全く水と油の国々との共同体など不可です。

もちろん、彼らとのビジネスまでやめろとは言いいません。

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» 拝啓 外交の麻生太郎様 [木霊の宿る町]
nbsp; 麻生太郎様 nbsp; ★「外交の麻生」というご自身が作ったレッテルに多少は期待したこともあったのですがそれは昔。今や偽装表示でしかなかったと思っているシロート・斧魔ですが、次の記事を読んだら改めて威儀を正して問うてみたくなりました。 nbsp; 麻生首相は8月2日、名古屋市内での街頭演説で「守るべきものは家族、郷土、日本語、皇室、国旗だ」とぶち上げた。(西日本新聞) nbsp; ★麻生さん、大胆ですねえ。自民党のできなかったことが... [続きを読む]

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