「スターリン=プーチン」に熱狂するロシア国民
ロシアでナショナリズムが高まるにつれ、国民は強力な指導者を待望するようになっている。以下のビデオではアル・ジャジーラが2008年12月13日にロシアの歴史で最も偉大な人物の投票結果について報道している。その投票によると、1位は13世紀にノブゴロド大公とウラジーミル大公であったアレクサンドル・ネフスキーであった。ネフスキーはローマ・カトリックのスウェーデンとドイツ騎士団の侵入を撃退した功績でロシア正教の聖人に列せられている。第2位はピョートル大帝である。第3位は賛否両論を引き起こす指導者、ヨセフ・スターリンである。
何がスターリンの人気をこれほどまで高めているのか?モスクワの街頭でインタビューに応じた女性は、暴虐ではあったもののロシアがナチスを打倒して超大国にのし上がるためにはスターリンが必要だったと穏やかに微笑みながら述べた。しかしカーネギー財団モスクワ・センターが刊行するプロ・エ・コントラ誌のマーシャ・リップマン編集長は一般市民がスターリンが大量虐殺を行い数百万人が強制労働収容所に送られたことを見落としていると主張する。
スターリンへのそうした熱狂的支持は現在の強権指導者ウラジーミル・プーチン氏に対するものと表裏一体である。アル・ジャジーラが2007年11月30日に放送した以下のビデオでは、士官学校の生徒がプーチン氏を自分達の時代のスターリンだと称賛している。プーチン氏はボルゴグラードをスターリングラードという名に戻している。
イギリスのジャーニーマン・ピクチャーズというニュースとドキュメンタリー配給会社は、現在のロシア政治での文脈からスターリンをめぐる論争を取り上げている。ロシアの人権活動家グリゴリー・シュベードフ氏はプーチン氏とクレムリンの同志達はスターリンへの郷愁を利用して「ナロード」を統治していると指摘する。ジャーニーマン・ピクチャーズが2007年11月7日に放映したこちらのビデオを参照して欲しい。
マネーと資本主義が社会を支配するロシアに蔓延する政治的な無秩序の中で、高齢者層と若年層はますますヨセフ・スターリンの伝説にとり憑かれるようになっている。
非常に興味深いことに、スターリンがレーニン時代の社会主義インターナショナルに代わって新しいソ連国歌を採用し、その国歌はプーチン氏がボリス・エリツィン氏から大統領職を引き継いだ際に復活した。この歌は元来、大祖国戦争でナチス・ドイツと戦うソ連兵を勇気づけるために作曲された。インターナショナルと比べてみれば、この歌はあまりにロシア的で万国の労働者よ、団結せよといったコスモポリタンな労働組合の歌ではない。ロシアが社会主義国であれ資本主義国であれ、これほどまでに祖国、祖国、祖国と繰り返すナショナリズム丸出しの国歌は他にない。以前にロシア国歌についての記事を投稿したので、以下のインターナショナルのビデオを観て欲しい。両者を聴き比べてみれば、どれだけ違うかよくわかるだろう。
独裁者は以下のビデオに見られるようにして「ナロード」の気持ちをつかんでいる。スターリンとプーチン氏のビデオのどちらも赤軍が歌っているのはスターリン時代の歌詞である(よく知られているソ連国歌はブレジネフ時代の歌詞で、1977年から連邦崩壊まで歌われた)。"Stalin, a Great Leader"のビデオを観ていると、私はロシア正教会で聖ヨセフ・スターリンに祈りを捧げているような錯覚に陥る。以下のビデオが「プーチン=スターリン」の理解に多いに役立てばと願っている。
また、以下の画像も見て欲しい。ここで狂歌を一首。あ、プーチン。髪とヒゲありゃスターリン!
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