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2009年8月31日

日本国民のキュートなHOPE OF THE CHANGE

昨日の日本の衆議院総選挙は世界で今年行なわれた大きな選挙では、インドアフガニスタンに続いて3番目である。まるでこのビデオの若い女性か秋葉原のアニメさながらのキュートHOPE OF THE CHANGEが国民全体に広く行きわたったおかげで、民主党は地滑り的な勝利を収めた。しかし事態はそれほど愛らしくも楽観的でもない。第一に、在京のアメリカのロビイスト達が懸念を示したように、新人議員の大量当選でこれまでのロビー人脈が崩壊してしまった第二に、中道左派で親アジアの鳩山由紀夫氏が政権を担うとあっては日米関係と日欧関係にも微妙な影響が及びかねない。第三に、民主党は国家統治の能力を証明しきっていない。市場は日本民主党を信頼しておらず、選挙後にほどなく株価が下落した。

昨日の総選挙報道でNHKのインタビューに応えた石破茂農林相は、有権者が自民党より民主党を選んだのは古い政治への閉塞感からで、民主党のマニフェストを全面的に信頼したわけではないと述べている。

率直に言えば、私は政権交代そのものには反対しない。議会制民主主義なら当然のことである。私が懸念するのは民主党が480議席の内で308議席を獲得したという圧勝についてである。議席配分のバランスが悪いと日本の政治は権威主義的で劣悪な統治に陥ってしまいかねない。新人議員の多くは政治とは無縁で、中には明らかに私より能力がない者もいる!このような国会に信頼を置くことができるだろうか?

日本の有権者が民主党に史上かつてない勝利を許した主な理由は小泉政権下での改革への反動である。郵政民営化に代表される経済の規制緩和によって、社会、経済、地域開発での格差が広がった。世界的な不況は自民党への怒りに追い討ちをかけた(“FACTBOX: Policy challenges facing Japan's next government”; Reuters; August 29, 2009)。

しかし新政権にはキュートな有権者が期待するような経済再建の青写真はないように見受けられる。市場は公共支出を増額する一方で減税と官僚機構の力を抑えるという民主党の経済政策を信用していない。選挙の直後に株価が下落した(“Yen Strengthens, Japanese Stocks Drop After DPJ Wins Election”; Bloomberg News; August 31, 2009)。

外交政策では日米同盟が最重要課題であることに変わりはないが、何らかの変化はあると思われる。鳩山氏はアメリカからの自立を模索する一方で、アジアとの関係強化を考えている。日本の「ボイス」という政治誌の9月号で鳩山氏は「世界の覇者としての地位を守ろうとするアメリカと大国としての地位を求める中国との間に挟まれた日本が政治経済的な自立を維持して国益を守るには、どうすればよいだろうか?」と問いかけている。これは日本外交の二大支柱である対米関係と対欧関係を損ないかねない(“Japan's Ruling Party Swept From Power in Historic Election”; ABC News; August 30, 2009)。民主党はさらにアメリカ海兵隊のグアム移転に対して日本が資金を拠出することにも批判的である (“Will Japanese Power Shift Change U.S. Relations?”; NPR; August 30, 2009)。

他方で右から左にいたるアメリカの政策形成者達は自民党と競合して政権を任せても安心できる政党が誕生したとして、この政権交代を受け入れている。自民党は長く安定した日米協調に貢献してきたが、市場開放に向けた改革の遅れと見返りもなくアメリカの核の傘に頼るだけの消極的な態度は数十年にわたってアメリカ側の不満となってきた(“U.S. Poised for Change as Tokyo Leadership Shifts”; Wall Street Journal; August 31, 2009)。

確かに自民党支配の下での日米関係の全てが好ましいとは言えない。強大な官僚機構はウォール・ストリート・ジャーナルの記事が述べるような世界の中での日本の積極的な役割には障害となってきた。一般国民に広がるキュートHOPE OF THE CHANGEが全面的に悪いわけではない。

私が懸念するのはバランスである。実際に小泉政権下の郵政民営化選挙では自民党からおかしな候補者が群れをなして当選したことに不快感を覚えた。今回の選挙での民主党の勝利は小泉劇場のパクリである。これから政治の振り子が急激に振れるだけで充分に満足な結果を得られないなら、欧米先進諸国にとってもアジア太平洋諸国にとっても大きな損失である。東洋と西洋の間の巨人は岐路に立っている。

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2009年8月25日

日本衆議院総選挙と外交政策論争

日本では衆議院総選挙が8月30日に行なわれる。この選挙が注目を集めているのは、戦後のほとんどを通じて政権の座にあった自由民主党がその座を降りると見られているからである。経済の不況、社会経済的な格差の拡大、自民党と官僚の関係への国民の嫌悪感を背景に、民主党はチェンジの希望を高らかに訴えている。日本の民主党は55年体制による自民党一党支配を本当に終わらせるだろうか、それともかつての細川政権と同様の失敗をするのだろうか?

ともかく、選挙後の政権交代が語られる中で政策の選択がかつてないほど重要になってきている。メディアは今回の選挙をマニフェスト選挙と呼んでいる。選挙情報専門サイトには全ての政党のマニフェストが掲載され、主な争点は経済と社会福祉になっている。今回の選挙での外交政策の関する議論は充分に洗練されているとは言いがたい。

先の日曜日に私はNHKの「衆議院選挙特集」というテレビ番組を観た。この番組の最後に各党の代表達は日本外交の中核となる日米同盟について議論した。不幸なことに議論の内容はあまりにも二国間関係中心で地域の視点に片寄り過ぎた。アメリカとの関係についてグローバルで歴史的な大局的な視野から語ったパネリストは誰もいなかった。私がこのことを強調するのは、自由な諸国民よ、団結せよ!というスローガンを強く信じているからである。

テレビ討論を観たうえで、各党の代表からほとんど省みられることのなかった以下の点に言及したい。

1・現在の世界は親西欧リベラル国際主義と反西欧カルト・ナショナリズムに分かれている。ロシアと中国での権威主義的ナショナリズムの台頭は世界の安全保障に重大な脅威を与えている。これはクリントン政権期のネオ・リベラリズムの下で両国を欧米主導のグローバル経済に取り込むことに失敗した結果である。これはもはやネオコンだけが議論する政策課題ではなくなっている。中道左派のBBCさえも共産主義を脱却した両大国でのナショナリズムの再燃の危険性を報道している(“Russia and China 'approval down'”; BBC News; 6 February 2009)。過激イデオロギーの信奉者やならず者国家も反西欧カルト・ナショナリズムを掲げている。歴史は終焉せず、再び始まったのである!

2・基本的に日本は西側同盟の中心にあり、そのことによりこの国がアジアのどの国からも別格の存在となっている。アメリカのジョン・マケイン上院議員とジョセフ・リーバーマン上院議員はロシアのG8からの除名を主張したが、日本は設立時からこの最も善良で優秀な国々のクラブに欠くことのできないメンバーである。アメリカとヨーロッパの指導者でこのことに異議をはさむ者はまずいない。このことは日本の誇りと栄光である。

ヨーロッパ諸国にとって日本を自分達と同じ世界の重役に迎え入れることが重要な理由は、日本がアメリカの最も重要な同盟国の一つだからである。日米同盟の一層の強化が望まれるのはこうした理由からである。

あきれたことに各党の代表達はあまりに東洋志向で、中国との政治的競合関係に過剰にとらわれていた。しかし欧米の誰が中国を自分達の運営する世界管理の重役陣に迎え入れようと思うだろうか?この観点から、日本を西洋列強の一員と位置づけることは歴史的にも正しいのである。

3・北朝鮮に関しては全ての党がオバマ政権の宥和政策を批判する姿勢を見せなかった。ピョンヤンのならず者への制裁強化のために日本がサー・ウィンストン・チャーチルの役目を果たすべきだと主張する勇気のある者は誰もいなかった。ジョン・ボルトン氏はアメリカがキム・ジョンイルの悪行に見返りの利益を与えていると主張し続けている。

思い出すべきは、有名な鉄のカーテン演説の時にはアメリカ国民はヨシフ・スターリンの共産主義拡張政策の食い止めに乗り気ではなかったことである。しかし今ではアメリカの国民を挙げてチャーチルは偉大な英雄となっている。日本の民主党がそんなに日米同盟を対等なものにしたいというなら、チャーチルの役割を果たそうという気はないのだろうか?

4・しかしみんなの党の江田憲司氏が日本政府はジャパン・ロビーよりも現政権の中枢部への接近をもっと模索すべきだと述べたことには、私も賛成である。

さらに私は日本が党利党略を超えてワシントン政界の権力の中枢に接近すべきと主張したい。軍とネオコンはそうしたアクターで、彼らこそアメリカの中のアメリカである。ハドソン研究所の日高義樹氏によると、日本がアメリカの重要な同盟国という単純明快な理由から軍は常に親日だったということである(まさにアメリカの敵か、味方か!である)。 

歴史は再び始まり、このことは他の何にもまして重要である。選挙で誰が勝とうとも、狭い二国間主義と東洋志向では用を成さない。 

自由な諸国民よ、団結せよ!

残念なことに、各党の代表は日米同盟と日本の安全保障についてこの観点から語ってくれなかった。

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2009年8月19日

米英識者によるアフガニスタンの戦争と選挙の論評

8月20日の大統領選挙を前に、ブルッキングス研究所はアフガニスタンに関する近況論評を出している。上のビデオではブルース・リーデル上級研究員が戦争と選挙の重要なポイントを挙げている。リーデル氏は現状ではタリバンの勢力が強いと言う。リーデル氏は多国籍軍がアフガニスタンの治安部隊の再建を支援し、タリバンの撲滅ではなく封じ込めによって戦争に勝つことができると主張する。きわめて重要なことに、リーデル氏は「今回の選挙は激しい競争が見込まれるので、その結果で選ばれた政府は前回の選挙で選ばれた政府より正当性のあるものになる」と指摘する。新しい政府の正当性はこの戦争でのHOPE OF THE CHANGEできわめて重要この上ないとリーデル氏は言う。最後に、リーデル氏はパキスタン領内を根城にするタリバンとアル・カイダの関するアフガニスタンとパキスタンの相互不信を仲介できるアクターはアメリカだけだと主張する。

上のビデオのコメントは簡潔で学ぶべきことが多い。イラクでは選挙の成功と正統性のある政府によってテロリストの気運が落ちた。この選挙はアフガニスタンでも転機となる。さらに二つの論文にも言及したい。

ブルッキングス研究所のジェレミー・シャピロ研究部長は選挙の成功がアメリカとヨーロッパの内政にも関わってくると述べている。アメリカとヨーロッパの政府は民主主義の価値観の普及のために派兵しており、良い成果を挙げれば派兵諸国の政府は国内政治でも国際政治でも立場を強められる(“The 2009 Afghan Elections and the Future of the International Community in Afghanistan”; Brookings Research and Commentary; August 13, 2009)。

ブルッキングス研究所のバンダ・デルバブブラウン研究員はアメリカとNATO諸国はアフガニスタン国民に介入主義の印象を与えぬように警告し、アフガニスタンの指導者と市民の自発的な動きを尊重するようにせよと述べている(“The 2009 Afghanistan Elections and the Future of Governance”; Brookings Research and Commentaries; August 13, 2009)。

選挙が近づくにつれタリバンの攻撃は強まっている。以前の記事で述べたように、最近の死傷者の急激な増加はイギリスでは激しい議論を呼んでいる。アフガニスタン政策に対する厳しい批判に対し、ボブ・エインスワース国防相は戦争での勝利は可能だと言う。エインスワース氏はイギリス軍がタリバン掃討とアフガニスタンの自主防衛能力の向上支援で成果を挙げていると強調した。

イギリス軍は今年の6月よりパンサーズ・クロー作戦を開始し、ヘルマンド州でタリバンへの攻勢を強めている。それを機に下の表にあるように死傷者の数が劇的に増加している。

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出典:BBC

近くアフガニスタンでの任務から離れるサー・リチャード・ダナット陸軍大将は、アフガニスタンとパキスタンの統治がうまくゆくようになれば最終的にイギリス国民も安全になり、現在の困難をよそにこの戦争の士気高揚につながる支援を訴えた(“Ainsworth defends Afghan mission”; BBC News; 17 August 2009)。

近々イギリス軍の最高指揮官に着任するサー・デービッド・リチャーズ陸軍大将はイギリス軍がアフガニスタンに40年も駐留するとの噂を否定し、戦争目的に関して国防相を擁護している(“General Sir David Richards backs Bob Ainsworth on Afghanistan time frame”; Times; August 17, 2009)。

選挙が終了してほどなく、アメリカのスタンレー・マクリスタル陸軍大将が多国籍軍司令官として戦略アセスメントを公表することになっている(“RPT-Obama to seek to rally support for Afghan war effort”; Reuters; August 17, 2009)。この選挙はアフガニスタンの将来への重要な一歩となる。選挙が成功したからといって、タリバンとアル・カイダがすぐに消滅することはない。選挙後にマクリスタル大将が公表するアセスメントは対テロ戦争の見通しを理解するうえで必読となる。

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2009年8月17日

ウクライナをめぐるロシアと欧米のせめぎ合い

ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領はキエフ駐在の新任ロシア大使の赴任を延期し、ウクライナのビクトル・ユシュチェンコ大統領がロシアと戦火を交えるグルジアへの武器供与やNATOへの加盟の模索といった反露政策をとっていると非難した。これは2010年1月に行なわれるウクライナの大統領選挙に向けての圧力行使である。カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのリリア・シェフツォワ上級研究員によると「我々の要求を受け入れなければ、誰が選ばれても相手にしないというメッセージである」とのことである(Medvedev issues ultimatum to Ukraine leadership”; Financial Times; August 12, 2009)。

ロシア・トゥデーが8月10日に放映したテレビ演説で、メドベージェフ大統領はウクライナにこれほど厳しいメッセージを送りつけた理由を語った。メドベージェフ氏はロシアとウクライナの間の共通の文化的伝統や歴史を強調した。しかしウクライナの国防政策については、南オセチアをめぐる戦争でのグルジアへの武器供与を非難した。文化教育政策ではウクライナ政府が学校や公共機関でのロシア語を排除していると非難した。経済ではメドベージェフ氏はウクライナがロシア企業の事業に制約を課していると非難した。歴史ではウクライナが大祖国戦争を独裁者同士の戦いだとしたことにメドベージェフ氏は異議を唱えた。現在のロシアでのスターリンへの熱烈な敬慕からすれば、ユシュチェンコ政権はロシアの逆鱗に触れてしまった。以下のビデオを観て欲しい。

実際にロシア側は7月6から8日にかけてモスクワで開催されたバラク・オバマ大統領とドミトリー・メドベージェフ大統領の首脳会談からほどなくして、アメリカのジョセフ・バイデン副大統領がウクライナとグルジアを訪問したことに神経を尖らせている。ロシア・トゥデーは7月20日に独立研究所のイワン・エランド研究員にインタビューを行なった。エランド氏はアメリカのメッセージには相反する政治目的があると言う。オバマ氏が述べたようにアメリカはロシアとの関係改善を求めているが、NATOの拡大も支援している。インタビューの中でエランド氏はロシア国民がアメリカの二重行動に抱く不安を宥め、ロシアには大統領が来たがウクライナとグルジアに来たのはせいぜい副大統領に過ぎないと強調している。よってアメリカがウクライナとグルジアのためにロシアとの関係を犠牲にすることはないと述べている。以下のビデオを観て欲しい。

両方のビデオはロシアの政策形成者達が旧ソ連諸国への自由なヨーロッパの拡大をどのように見ているかをよく示している。言い換えれば、ロシアの指導者達はソビエト型の地政学観を抱き続けている。

リリア・シェフツォワ氏がファイナンシャル・タイムズに語ったように、メドベージェフ大統領は新しい指導者が現在のユシュチェンコ大統領にとって代らない限りウクライナとの関係正常化はないと述べた(“Medvedev: No Normal Ties with Ukraine Under Current Leaders”; VOA News; 14 August 2009)。

ヨーロッパ改革センターのトマス・バラセク外交防衛部長は2008年12月に“Why Ukraine matters to Europe”というレポートを出し、ロシアと欧米のせめぎ合いを理解するうえで有意義な分析を行なっている。バラセク氏はウクライナがEUとロシアの間で人口でも面積でも最大の国なので、その動向は非常に大きな意味を持つと指摘する。東ヨーロッパのEU加盟国はロシアに対して強く安定した防壁となる国を求めている。ウクライナがEUに加盟すれば、EUに近いベラルーシやモルダビアからカフカス諸国にまで大きな影響が及ぶ。

非常に重要なことに、バラセク氏はウクライナが政治的に透明で信用のできる市場経済を発達させてしまえば、プーチン氏が推し進める国家資本主義の魅力は一気に弱まってしまうと指摘する。そのため、ロシアが旧ソ連諸国のヨーロッパ化を遅らせたいのは地政学的な観点からだけではない。

最も重要なことに、バラセク氏はウクライナが腐敗した新興資本家に支配される劣悪な統治に置かれていることが、EUとNATOへの加盟の障害だと主張する。また、こうした状況がウラジーミル・プーチン氏がジョージ・W・ブッシュ氏に「ジョージ、ウクライナは国家の体なしていないんだ」と言ったようなロシアの介入を招きかねない。

欧米でもロシアでもメディアは地政学的な競合に注目しがちだが、ウクライナの改革も重要である。トマス・バラセク氏はウクライナがEUとNATOに加盟するうえで重要な点を指摘しているので、詳細はレポートを参照して欲しい。欧米はウクライナの統治の改善を支援して、大西洋社会へ加入する資格を充足させてとソ連の過去から脱却させる必要がある。ウクライナのヨーロッパ化が成功すれば、西側と中露枢軸の間の新冷戦は我々に有利になるであろう。

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2009年8月13日

ペトレイアス大将、イラクとアフガニスタンを語る

デービッド・ペトレイアス陸軍大将は6月11日に新アメリカ安全保障センターで開催された「アメリカの新しい安全保障のバランスを考える」というイベントで主賓講演を行なった。ペトレイアス大将はイラクでの成功であまりにも有名で、現在はアメリカ中央軍の司令官としてカザフスタンからケニア、エジプトからパキスタンまでを担当している。昨年の大統領選挙では共和党のジョン・マケイン候補がペトレイアス氏を最も耳を傾けるべき人物と評していた。

上の1時間を少し超えるビデオを観て欲しい。ペトレイアス氏は多国籍軍がどのようにイラクで成功を収めたか、そしてアフガニスタンでこの成功をどのように適用するかを語った。また、多国間での政策のやりとりがどのように進められるかについても語った(テキストはこちら)。

きわめて重要なことに、ペトレイアス大将は「反乱分子鎮圧のための軍隊の任務は住民の安全と国民生活の保護である」と規定している。反戦、反米、あるいは反西欧の左翼達はこの発言を噛み締めて、血生臭いテロリストと独裁者に味方するような怪しげな政治工作から手を引くべきである。

イラクでは連合軍はグリーン・ゾーンから出てイラク国民の近くに住むことに決定し、兵士と現地住民の協調が進んだ。アフガニスタンでは多国籍軍の兵士が住民の中に住もうにも小さな村や非都市部では空き家を探すのは難しい。しかしペトレイアス氏は欧米軍が村の近くに駐屯することで良き協力者にも良き隣人にもなれる。同時に妥協の余地のない悪党は捕らえて殺害せねばならない。

対テロ戦略の図表をスライドで展示しながら、デービッド・ペトレイアス大将は連合軍は「現地住民からのテロリストへの支援を断つには、彼らの動向の捕捉、イデオロギーへの攻撃、指揮命令系統の妨害、テロリストと幹部との連絡の遮断、資金流入の阻止、兵器と現金と爆発物の没収、外国人志願兵の流入阻止」が必要だと述べている。イラクではこのようにして多国籍軍はシリアにある根拠地からのテロリストへの支援を断った。アフガニスタンではパキスタンのトライバル・エリアとバルチスタンからの支援を断つために似たような方策がとられる。

ペトレイアス大将は穏やかで知的で明快な口調で語り、時折ユーモアも交えている。このビデオはイラクとアフガニスタンの戦略ばかりでなく氏のパーソナリティーに理解にも役立つであろう。日高義樹氏によるとデービッド・ペトレイアス氏は2012年に共和党が大統領候補に担ぎ出す可能性があるという。私には共和党にも民主党にもペトレイアス氏以上に優れた資格を備えた候補はいないと思える。尊敬される人格は政治的な価値観に劣らず重要である。

2012年について語るのは、誰が大統領に立候補するかわからない現時点では早過ぎる。いずれにせよ、このビデオを観て世界を動かす指導者の一人の冷静な頭脳と暖かい心と本物のアクション・ヒーローの精神を備えたパーソナリティーを感じて欲しい。

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2009年8月 9日

アフガニスタンでの英軍の任務に関する議論

イギリスはアフガニスタンでのタリバンとアル・カイダのゲリラを打倒するために増派を考慮している。戦後を通じてイギリスは「自らの体重以上のパンチを繰り出す」という政策によって影響力のある大国の地位を維持しながら、軍事予算と人員の不足を克服しようとしてきた。アフガニスタンではイギリスの地上軍は空からの支援が不充分なため、対テロ作戦の遂行でアメリカ軍よりはるかに不利な立場にある。ゴードン・ブラウン首相はイラクから撤退した兵力をアフガニスタンに振り向けて反乱分子を打倒することを決断した。この戦略はブレア政権期から考慮されており、現在はイラクの治安が改善したのに対してアフガニスタンの事態は深刻化している。

イギリス兵の死傷者の増加を踏まえて、サー・リチャード・ダナット陸軍大将はアフガニスタンへの兵員と装備の増加を要請した(“Troops need more, says Army head”; BBC News; 17 July 2009)。ウェストミンスター議会ではデービッド・キャメロン保守党党首がゴードン・ブラウン首相に対して、アフガニスタンでの戦争目的を明確に示して国民の戦争への理解を維持すべきだと訴えた。またキャメロン氏はヘリコプター不足に深刻な懸念を表明し、ブラウン内閣の国防政策を批判した(“PM challenged over Afghanistan”; BBC News; 16 July 2009)。

アフガニスタンでの任務に関する論争は国民の間でも激しくなっている。保守党はアフガニスタンの軍と警察の訓練を迅速に進めるためにもイギリス軍の派兵を増加すべきだと訴えた(“Conservatives to increase British troop levels in Afghanistan, David Cameron hints”; Daily Telegraph; 3 August 2009)。デービッド・ミリバンド外相とヒラリー・ロッダム・クリントン国務長官の会談を受けて、アメリカのスタンレー・マクリスタル陸軍大将はイギリスが2,000人の兵力を追加派遣するであろうと語った(“Britain to send 2,000 extra troops to help train Afghans”; Times; 2 August 2009)。

イギリスは装備と人員の問題の解決を迫られる一方で世界規模での軍事作戦行動能力を維持しなければならない。以下の表に示された通り、イギリスはアフガニスタンの任務で他の国々とは比較にならないほどの負担を背負っている。

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出典:Economist

現在、イギリス国民がアフガニスタンの任務に理解を示しているのも軍事的な成功がイギリスの誇りとなっているからである。しかしタカ派の保守党もハト派の自由民主党も現政権の戦略上の困難には批判的である。特にヘリコプター不足は深刻な問題で、近く退任するダナット英国陸軍大将はアメリカのヘリコプターを使っているほどである。新たに着任するサー・デービッド・リチャーズ陸軍大将はイギリスの国防政策で相反する見解があることに言及している。イギリス陸軍の将官達はホワイトホールの政策形成者達が戦略核兵器や戦闘艦艇のような大型兵器ばかりを優遇し、反乱分子に対する地上戦に充分な考慮を払っていないという不満を述べている (“British forces in Afghanistan: And the soldier home from the hill”; Economist; 16 July 2009)。労働党のマイク・ゲープス下院議員は外交個別問題員会の報告書をとりまとめ、イギリス軍の死傷率の高さと国防省、外務英連邦省、国際開発局といった省庁間のセクショナリズムを批判した。さらに影の内閣のウィリアム・ヘイグ外相は現内閣の誰が戦争を取り仕切っているのか疑問を投げかけた(“Tell us why we're in Afghanistan, MPs say”; Times; 3 August 2009)。

サー・マイク・ジャクソン陸軍大将はゲープス氏がまとめた下院の報告書に従って戦略目標を絞り込むためには国防省の構造改革が必要だと述べた。現在の作戦には反乱分子との戦闘ばかりでなく麻薬撲滅運動も含まれている(“UK troops 'given too many tasks'”; BBC News; 2 August 2009)。多国籍軍が目標を絞り込むには、アフガニスタンの治安部隊の訓練を早く進める必要がある。

アフガニスタンの問題は全世界でのイギリスの外交安全保障政策と強く関わってくる。フォークランド戦争の前にイギリス海軍の提督たちはトライデントSLBMのために空母が犠牲にされることに反対した。戦争を経て、当時のマーガレット・サッチャー首相は空母機動部隊の維持を決定した。今回もイギリスは人員や装備の問題に対処しながら世界規模での軍事行動を維持してゆくというジレンマに直面している。

王立国際問題研究所のポール・コーニッシュ国際安全保障部長とアンドリュー・ドーマン準研究員はイギリスの国防政策のあり方を模索している。1998年に政府が発行した「戦略国防概略」(SDR)ではイギリスの国防政策の目的を定めている。それはヨーロッパへの関与、アメリカとの協調関係、イギリスの経済的権益の防衛、そしてイギリスの自由の守護である。そうした目的を満たすためには、「結局、戦略の審査を注意深く行なえばイギリスにとって空母も超音速攻撃用の航空機も地上の戦闘要員も必要になる」のである。コーニッシュ氏とドーマン氏はドイツからの兵員撤退と戦闘機種の絞り込みによる最大効率化によって、人員と装備をもっと効果的で費用効果の高いものに改変できると提言している(”National Defence in the Age of Austerity”; International Affairs; April 2009)。

最後に英国学士院院長でオックスフォード大学教授のサー・アダム・ロバーツがアフガニスタンに関して述べた論文に言及したい。国際戦略研究所の定期ジャーナルで、サー・アダムはイギリスとアメリカには過去の対テロ作戦から学ぶべき教訓が多くあり、外国軍は永続的な占領者として振る舞うべきではないと述べている(“Doctrine and Reality in Afghanistan”; Survival; February 2009)。

イギリスのアフガニスタン関与をめぐる政策議論は、他のアメリカの同盟諸国にも大いに参考になる。限られた人員と装備の中で、自由な国々はグローバルな安全保障に最大限の貢献を行い、自国の権益を守り通す必要がある。同盟国の中でも日本のように国際政治での存在感を増しながらアメリカとの同盟関係を強化しようという国にとってイギリスの経験から学ぶべきことは多い。

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2009年8月 3日

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