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2009年8月19日

米英識者によるアフガニスタンの戦争と選挙の論評

8月20日の大統領選挙を前に、ブルッキングス研究所はアフガニスタンに関する近況論評を出している。上のビデオではブルース・リーデル上級研究員が戦争と選挙の重要なポイントを挙げている。リーデル氏は現状ではタリバンの勢力が強いと言う。リーデル氏は多国籍軍がアフガニスタンの治安部隊の再建を支援し、タリバンの撲滅ではなく封じ込めによって戦争に勝つことができると主張する。きわめて重要なことに、リーデル氏は「今回の選挙は激しい競争が見込まれるので、その結果で選ばれた政府は前回の選挙で選ばれた政府より正当性のあるものになる」と指摘する。新しい政府の正当性はこの戦争でのHOPE OF THE CHANGEできわめて重要この上ないとリーデル氏は言う。最後に、リーデル氏はパキスタン領内を根城にするタリバンとアル・カイダの関するアフガニスタンとパキスタンの相互不信を仲介できるアクターはアメリカだけだと主張する。

上のビデオのコメントは簡潔で学ぶべきことが多い。イラクでは選挙の成功と正統性のある政府によってテロリストの気運が落ちた。この選挙はアフガニスタンでも転機となる。さらに二つの論文にも言及したい。

ブルッキングス研究所のジェレミー・シャピロ研究部長は選挙の成功がアメリカとヨーロッパの内政にも関わってくると述べている。アメリカとヨーロッパの政府は民主主義の価値観の普及のために派兵しており、良い成果を挙げれば派兵諸国の政府は国内政治でも国際政治でも立場を強められる(“The 2009 Afghan Elections and the Future of the International Community in Afghanistan”; Brookings Research and Commentary; August 13, 2009)。

ブルッキングス研究所のバンダ・デルバブブラウン研究員はアメリカとNATO諸国はアフガニスタン国民に介入主義の印象を与えぬように警告し、アフガニスタンの指導者と市民の自発的な動きを尊重するようにせよと述べている(“The 2009 Afghanistan Elections and the Future of Governance”; Brookings Research and Commentaries; August 13, 2009)。

選挙が近づくにつれタリバンの攻撃は強まっている。以前の記事で述べたように、最近の死傷者の急激な増加はイギリスでは激しい議論を呼んでいる。アフガニスタン政策に対する厳しい批判に対し、ボブ・エインスワース国防相は戦争での勝利は可能だと言う。エインスワース氏はイギリス軍がタリバン掃討とアフガニスタンの自主防衛能力の向上支援で成果を挙げていると強調した。

イギリス軍は今年の6月よりパンサーズ・クロー作戦を開始し、ヘルマンド州でタリバンへの攻勢を強めている。それを機に下の表にあるように死傷者の数が劇的に増加している。

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出典:BBC

近くアフガニスタンでの任務から離れるサー・リチャード・ダナット陸軍大将は、アフガニスタンとパキスタンの統治がうまくゆくようになれば最終的にイギリス国民も安全になり、現在の困難をよそにこの戦争の士気高揚につながる支援を訴えた(“Ainsworth defends Afghan mission”; BBC News; 17 August 2009)。

近々イギリス軍の最高指揮官に着任するサー・デービッド・リチャーズ陸軍大将はイギリス軍がアフガニスタンに40年も駐留するとの噂を否定し、戦争目的に関して国防相を擁護している(“General Sir David Richards backs Bob Ainsworth on Afghanistan time frame”; Times; August 17, 2009)。

選挙が終了してほどなく、アメリカのスタンレー・マクリスタル陸軍大将が多国籍軍司令官として戦略アセスメントを公表することになっている(“RPT-Obama to seek to rally support for Afghan war effort”; Reuters; August 17, 2009)。この選挙はアフガニスタンの将来への重要な一歩となる。選挙が成功したからといって、タリバンとアル・カイダがすぐに消滅することはない。選挙後にマクリスタル大将が公表するアセスメントは対テロ戦争の見通しを理解するうえで必読となる。

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コメント

いずれも傾聴すべき重要な論考ですが、結局「タリバンの撲滅ではなく封じ込めによって戦争に勝つことができる」という、極めて合理的な戦略に収斂しつつあるのは、さすがだという意を強くします。
もちろん、アフガンの大統領選の結果は全く予断を許しませんが、選出された大統領の正統性によりテロリストの気勢がそがれるという良いフィードバック効果の発現を強く期待したいところです。
そして、このような情勢で、我が国がアフガンへの関与をドラスティックに低下させるという選択肢はあり得ないというのが、我が国の政策に与える示唆と言えるでしょう。

投稿: 高峰康修 | 2009年8月22日 01:23

日本の対テロ戦争への関与と言えば、不思議なことにプラハ演説でオバマ賛歌一辺倒の共産党がこちらでは対米非協力の方針であることです。日本民主党の方は方針がぶれている、というより党内で外交・安全保障政策が一致していないようです。

この辺りも与野党で国の基本方針が一貫しているイギリスを見習えるのか?マニフェストだけでわからぬことも。

投稿: Shah亜歴 | 2009年8月23日 20:16

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