« 中国の「平和的な台頭」に異論 | トップページ | ウォルフォビッツ氏、アメリカの帝国主義的使命を主張 »

2009年9月12日

マクリスタル大将のアフガニスタン第一次報告と識者の見解

アフガニスタンで多国籍軍司令官の座にあるアメリカのスタンレー・マクリスタル陸軍大将は、8月31日に第一次戦略アセスメントを提出した。イギリス陸軍のポール・スミス少佐のブログによると、そのアセスメントはアメリカ国防長官とNATO事務局長の指導の下に行なわれる。アセスメントでは軍事作戦ばかりでなく社会経済開発と統治の改善にも言及している(“ISAF Commander Submits Assessment”; Helmand Blog-Afghanistan; August 31, 2009)。

上のビデオで述べられているようにアフガニスタンの事態は厳しく、タリバンは依然として強力である。

アセスメントにおいてマクリスタル大将は地上の戦争は深刻だが、勝利は可能だと自信を込めて語った。報告書では多国籍軍に東部のカンダハル州と南部のコスト州への兵員を増加するよう提言している。兵員の増派については今月中にも行なわれる次のアセスメントで述べられる。数人の国防総省高官によると4万人の増派が要求されるという(“General Seeks Shift in Afghan Strategy”; Wall Street Journal; September 1. 2009)。

問題は、ワシントン・ポストとABC放送が最近行なった世論調査ではアフガン戦争の支持率は急落し、回答者の51%が戦争の価値に疑問を抱き、戦争を支持しているのは47%である。皮肉なことにバラク・オバマ大統領の兵員増派に批判的なのはリベラル派である (“Public Opinion in U.S. Turns against Afghan War”; Washington Post; August 20, 2009)。

8月20日の選挙結果の正当性もアフガン戦争の成功を左右する。野党のアブドラ・アブドラ元外相は、ハミド・カルザイ現大統領に有利な不正があったと非難している。選挙異議申立委員会がこうした異議に対処する。カルザイ氏が当選すると見られてはいるが、アフガニスタンのかなりの地域に政府の支配が及んでいない。マクリスタル大将は政治的合意は戦術上の成功にも劣らず重要なことを理解している(“McChrystal ball”; Economist; September 1, 2009)。

にもかかわらず、スタンレー・マクリスタル氏は勝利への希望的側面を見出している。アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン常任研究員はアフガン戦争の勝利が可能な理由を述べている。

広く信じられていることとは違い、現在のアフガニスタンはソ連が侵攻した1979年当時とは全く違う。政治的にはアフガニスタンはソ連の侵攻がなくても内戦に陥ろうとしていた。さらに赤軍はNATO軍に対する重装備であったので、反乱分子の鎮圧には向いていなかった(“We're Not the Soviets in Afghanistan”; Daily Standard; August 21, 2009)。ケーガン氏はスタンレー・マクリスタル氏以上に反乱分子鎮圧作戦を理解している戦略家はいないとも述べている(“Ask the Man Who Knows”; Daily Standard; September 8, 2009)。

勝利の鍵はマクリスタル大将の次期アセスメントに世論がどのように反応するかである。オバマ政権は厭戦気運に傾きがちなリベラル派を基盤としている。マクリスタル大将が増派を提言して戦争そのものへの批判が高まるようなら、事態は暗礁に乗り上げてしまう。オバマ大統領はブッシュ前大統領がイラクで見せたようにリベラル派の反対を押し切れるだろうか?

|

« 中国の「平和的な台頭」に異論 | トップページ | ウォルフォビッツ氏、アメリカの帝国主義的使命を主張 »

中東&インド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/109615/46190700

この記事へのトラックバック一覧です: マクリスタル大将のアフガニスタン第一次報告と識者の見解:

» 現代大戦略 一触即発 [現代大戦略 一触即発]
現代大戦略 一触即発の最新動画や評価レビュー、攻略情報なら「現代大戦略 一触即発」へ! [続きを読む]

受信: 2009年9月13日 03:35

« 中国の「平和的な台頭」に異論 | トップページ | ウォルフォビッツ氏、アメリカの帝国主義的使命を主張 »