聖オバマは11月の訪日で日本の辛辣なる者を癒せるだろうか?
ロバート・ゲーツ国防長官は東京で日本民主党新政権の辛辣なる者と沖縄米軍基地、北朝鮮の脅威、アフガン戦争での日本の貢献について会談した。
今年の夏に日本の有権者が民主党のバラク・オバマ大統領が掲げるHope of the Change に触発されて自国の民主党を勝利させて50年にわたる保守的な自民党支配を終わらせたことからすると、それは皮肉である。しかしオバマ政権は太平洋の向こう側の同じ民主党が突きつける「辛辣な」発言に直面している。鳩山政権は「対等な日米関係」の名のもとにアフガニスタンとパキスタンで戦う多国籍軍への積極的な協力をしない旨を表明した。新内閣はインド洋での多国籍軍への給油継続を拒否した。日本民主党政権はブッシュ政権が自民党内閣との間で合意に達した沖縄基地協定さえ白紙に戻すと宣言した。鳩山由紀夫首相が東アジア共同体の設立を主張している現状では、アメリカ側は上記の拒絶を問題視している。
日本のリベラル派と左翼は超大国としてのアメリカの役割と自由諸国民の同盟に批判的だが、プラハとカイロでの有名な自虐演説は大歓迎している。8月6日の原爆投下の日の式典で社民党出身の秋葉忠利広島市長は「オバマジョリティー」という造語でバラク・オバマ氏の非核化演説への全面的な支持を表明した。現在、社民党は日本民主党主導の連立内閣の一員である。極左で最も反米的な政治家である志位和夫共産党委員長までもがオバマ氏のプラハ演説を絶賛したが、その彼もアフガン戦争のための給油には強く反対している。これは非核化でのオバマ氏への礼賛と矛盾する。
ワシントン・ポストは2009年10月22日の“U.S. pressures Japan on military package”という記事で深刻な懸念を述べている。
アメリカ政府がパキスタン、アフガにスタン、イラク、イラン、北朝鮮、中国といった問題を抱えている中で、アジアで最も緊密な同盟国とまで問題を抱えてしまえば事態はこれまで以上に複雑になってしまう。
ある国務省高官はアメリカのアジア外交で日本が揺るぎない同盟国だと考えることに慣れきっていたと語っている。もはやそれは当てはまらないとその高官は述べ。「今や最大の問題は中国ではなく日本だ」とまで言っている。
ゲーツ長官は日本の北澤俊美防衛相に自民党政権との間で達した合意を遵守するようにと要求した。アメリカと日本民主党政権との緊張は高まっている。オバマ大統領は11月の訪日で日本との関係を癒すことができるのだろうか?ジョセフ・バイデン氏の訪欧に見られるように、オバマ政権には役割分担があるのかも知れない。バイデン副大統領は7月のウクライナとグルジアへの訪問と今月のポーランドとチェコへの訪問でロシアに対する宥和への懸念を宥めている。日本に対してはゲーツ長官がアメリカの国益を強く押し、オバマ大統領が自らに人気を利用して太平洋の両側での緊張を癒すのかも知れない。
しかし私はロンドン・スクール・オブ・エコノミックスでフェローのアルテミー・カリノフスキー氏による「最終的にオバマ政権は内政でもそうであったように誰とでもうまくやれることは不可能だと悟ったのではなかろうか」という発言を引用したい(”The Man For The Job In 'New Europe'?”; National Journal Blog; October 20, 2009)。
大統領選挙からというもの、All Hail the Messiah (保守派論客のグレン・ベック氏によるオバマ人気への風刺歌)現象は欧米のみならず日本でも広まっていた。しかしオバマ氏も超大国の指導者に相応しい行動をすべき時期である。合衆国大統領は映画スターではない。好かれようとも嫌われようとも、自由諸国民の重要な利益を押し通さねばならない。大統領は今年の6月にロシアで見せたような宥和姿勢を日本民主党に対して見せてはならない。オバマ大統領は日本民主党政権に厳しい警告メッセージを送って日本での危険なアジア主義に歯止めをかけるべきである。さもないと日本は第二次世界大戦中の大東亜共栄圏の過ちを繰り返しかねない。絶対に反対である!日本は西欧先進民主主義同盟の中核であるべきである。日本国民は明治維新以来の進歩的な精神を決して忘れてはならない。
バラク・オバマ大統領は大胆に振る舞うべきで、日米関係の離間を謀る日本のリベラル派や左翼の機嫌などとらずともよい。全ての者を癒そうなどと考えずに、「我々の味方か敵か」の観点から自由諸国民の団結を強めて欲しい。
注:この記事の表題及び本文中の「辛辣なる者」とはAll Hail the Messiahの歌詞にあるbitter onesのこと。なお、英語版では聖オバマをこの歌詞にあるLord Barryとしている。
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