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2009年12月 8日

アフガニスタン向け兵員増派の最終決断

バラク・オバマ大統領はアフガニスタンでのタリバンとアル・カイダの打倒のための兵員増派という決断をついに下した。以前の記事で私はバラク・オバマ大統領がスタンレー・マクリスタル陸軍大将による戦略アセスメントの受け入れに慎重であると述べた。統合参謀本部長のマイケル・ミューレン海軍大将、中央軍司令官のデービッド・ペトレイアス陸軍大将、NATO軍最高司令官のジェームズ・スタブリデス海軍大将ら軍部の首脳達はマクリスタル大将と会談し、オバマ大統領に戦略アセスメントの受諾を要求した。オバマ氏は同盟国からも圧力を受けた。イギリスのボブ・エインスワース国防相はオバマ氏が増派を渋っているためにイギリス兵の死傷者が増えると批判した。イギリスの閣僚がアメリカの大統領を公然と批判するのは例のないことである(Daily Telegraph; “Bob Ainsworth criticises Barack Obama over Afghanistan”; 25 November 2009)。また、ジョン・マケイン上院議員を中心とする共和党陣営は大統領にアフガニスタンの治安改善に重要な行動をとるように要求し続けていた(The decider”; Economist; November 26, 2009)。

オバマ大統領はついにアフガニスタンへの追加派兵を決断した。他方でオバマ氏はこの長引く戦争への厭戦気運にある国内世論とのバランスもとっている。ウエスト・ポイントで12月1日に行なった演説でオバマ氏はアメリカ軍が18ヶ月以内に撤退を始めると述べた。きわめて興味深いことに、これはオバマ氏の大統領再選挙より前になる。国内のハト派を宥める一方で、オバマ氏はアメリカ国民に9・11テロ攻撃とパキスタンの核兵器がテロの手に渡る恐怖を忘れぬようにと訴えた(“Obama’s War”; Economist; December 2, 2009)。

ホワイトハウスのホームページ上のビデオで、オバマ大統領は反乱分子を掃討して彼らにアメリカと同盟国を攻撃するための根拠地を建設させないようにするために三つの点を明確にしている。それはアフガニスタンの治安部隊の強化、市民生活への支援、そしてパキスタンとの連携である。大統領はアメリカ主導の多国籍軍が「18ヶ月」以内にタリバンとアル・カイダ掃討の任務を成功させてアフガニスタン政府と治安部隊に権限を移譲すると明言した(“President Obama’s Afghanistan Plan in 4 Minutes”; December 1, 2009)。

大統領選挙とは逆にオバマ氏はアフガン戦争に関してはハト派よりタカ派の支持を受けている。外交政策イニシアチブのウィリアム・クリストル所長とアメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン常任研究員はアフガニスタンへの増派の決断を称賛している。オバマ大統領による3万人の増派は4万人というマクリスタル大将の要請には満たないうえに撤退期限の設定は不適切であっても、マクリスタル大将が反乱分子を相当するには充分な兵力になったと両人は主張する。ヘルマンドとカンダハルのイギリス軍とカナダ軍にとっても増派は歓迎である。また、経済援助は貧困を対象としており反乱分子の掃討を対象としていないとも述べている。よってウィリアム・クリストル氏とフレデリック・ケーガン氏はアフガニスタンでの任務への国民的な支援を呼びかけ、イラン、ロシア、中国、国防予算をめぐるオバマ政権との見解の不一致を乗り越えるべきだと主張している “Support the President”; Weekly Standard; December 14, 2009)。

NATO同盟諸国は増派を歓迎し、ヒラリー・ロッダム・クリントン国務長官はブリュッセルでの外相会議でヨーロッパ諸国も7千人の増派を行なうということで勇気づけられた(“NATO allies pledge 7,000 more troops for Afghanistan mission”; Washington Post; December 5, 2009)。イギリス、イタリア、ポーランド、グルジアが追加派兵を行う一方で、フランスとドイツは増派を拒否した(“Allies Help McChrystal Reach Troop Goal”; Wall Street Journal; December 7, 2009)。

オバマ大統領の決断は歓迎すべきだが、問題点もある。ウエスト・ポイント演説でオバマ氏は撤退の予定に関して口にした。しかしアフガニスタンでのマクリスタル大将はインドでのマウントバッテン卿とは違う。多国籍軍はまだ強力な敵と向かい合っている。以前の記事ではAEIで行なわれたフレデリック・ケーガン氏とジャック・キーン氏のパネル・デレイスカッションをとりあげた。キーン大将はイラクの増派が成功したのはアメリカ軍が留まるという確固たる意志を明確にしたためだと述べた。さらにアメリカでは孤立主義が高まっている(“U.S. isolationism at a 40-year high”; FP Passport; December 3, 2009)。

こうした問題はアフガニスタンの戦争に制約を与えかねない。

イラクの増派は成功した。ハーバード大学のニール・ファーガソン教授がしばしば述べるように、鍵を握るのは心理的なスタミナである。アメリカ国民は9・11のテロリスト達がアフガニスタンの根拠地からやって来たことを忘れてはならない。これは勝たねばならない必要な戦争である。

ホワイトハウスのFact Sheet: The Way Forward in Afghanistan”も参照

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