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2010年1月26日

ウクライナ大統領選挙をめぐるロシアと欧米の攻防

1月17日に開催されたウクライナの大統領選挙はヨーロッパ大西洋地域の安全保障に重大な試練を与えている。予想された通り、過半数の票を得た候補者はなく、2月7日にユリア・ティモシェンコ首相と野党のビクトル・ヤヌーコビッチ氏の間で第二次選挙が開催される。国民は5年前のオレンジ革命に幻滅しており、国民全体の気持ちをつかめる候補者がいないことを理解することはきわめて重要である。さらに当ブログで私が繰り返し述べているように、ロシアと欧米の攻防は見逃せない問題である。オレンジ革命はブッシュ政権の外交政策の輝かしい勝利である。またジョン・マケイン上院議員も民主化を求めるウクライナ市民への支援で多大な役割を果たした。ウクライナへの対応を誤れば、現在下降中のオバマ政権の支持率はさらに低下しかねない。

この選挙について述べる前に、ウクライナ政治と欧米対ロシアの力の駆け引きに言及したい。選挙前にカーネギー国際平和財団のマーク・メデッシュ訪問研究員はウクライナ政治での民族と地域利害の複雑な絡み合いについて語っている。ウラジーミル・プーチン氏からジョージ・W・ブッシュ氏への一言を引用しながら、メディッシュ氏はウクライナが国としての統一性を欠く人造国家であると指摘している。西部にはハプスブルグ家の領土だった地域もある一方で、クリミアを含めた南東部はソ連時代にロシア共和国から移譲された(“The Difficulty of Being Ukraine”; International Herald Tribune; December 22, 2009)。そうした民族・地域的な相克は以下の地図に反映されている。

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英国エコノミスト誌はソ連崩壊後のウクライナ史の全体像を語りながら、オレンジ革命以降のこの国の統治が進まずに失敗を重ねてきた理由を模索している。ウクライナ国民はレオニード・クチュマ氏がビクトル・ヤヌーコビッチ氏に不透明な権力移譲を行なったことに憤慨して革命を起こした。怒りの矛先はヤヌーコビッチ氏自身に直接向けられたものではない。ユーシェンコ政権は国民の期待に応えられなかった。ロシアやポーランドと違ってウクライナでは自由主義経済学者が指導力を発揮することなく、経済は腐敗した新興財閥に支配された。ユーシェンコ氏は官僚機構に蔓延する腐敗も撲滅できなかった。ウクライナ語の普及と歴史修正といったナショナリスト政策は東部のロシア系住民に反感を抱かれた(“Five years on in Kiev”; Economist; January 21, 2010)。オレンジ革命政府はウクライナ国民の高い期待に沿えなかった。

上記の問題はウクライナ国内だけが原因ではない。ヨーロッパ改革センターのトマス・バラセク外交防衛部長は、ウクライナの政治家達がブリュッセルとの関係強化に消極的になった理由はEU加盟国の中にウクライナの加盟を望まない国があるからだと述べている。バラセク氏はEUにウクライナの統治の不手際を責め立てるより改革を支援すべきだと主張する。バラセク氏は今回の選挙はEUとウクライナの関係を考え直す良い機会だと言っている(“Ukraine and the EU: A vicious circle?”; CER Bulletin; December 2009/January 2010)。

カナダのアルバータ大学のデービッド・マープルズ教授はウクライナ国民がユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相の内部抗争に嫌気がさしていると言う。またオレンジ革命以後も続く腐敗で現政権の支持率は下がっている(“Ukrainians Disillusioned with President Yushchenko”; VOA News; 13 January 2010)。

ユーシェンコ大統領は言語と文化のウクライナ化によってロシアとソビエト時代の影響を払拭しようとしたが、ロシア系住民の抵抗に遭った。アメリカはユーシェンコ氏の指導力がないとして政権支持に消極的であった(“Where did Ukraine's Yushchenko go wrong?”; Reuters; January 11, 2010)。オバマ大統領は昨年のガス紛争の際にクレムリンの膨張主義を阻止しようともせずに、ショー・ビジネスのスター達とドンチャン騒ぎを楽しんでいた

ロシアとの関係は選挙後のウクライナ政治の主要課題である。関係改善にかけるロシアの期待は高い。王立国際問題研究所でロシア・ユーラシア部長のジェームズ・シャー氏は、ロシアの歴史がキエフへのルスの入植に始まるのでロシアにとってウクライナは自国の歴史的アイデンティティーの一部だと指摘する。これはNATOとの地政学的な競合にも劣らず重要だとシャー氏は言う(“Will Moscow-Kiyv Ties Improve After Ukrainian Election?”; VOA News; 15 January 2010)。ロシアに媚びるかのように、ヤヌーコビッチ氏は1932年から1933年にかけてのホロドモール飢饉に関してロシアを非難するウクライナのナショナリストを批判した(“Ukraine must not blame neighbors for famine – Yanukovych”; RIA Novosti; 16 January 2010)。

他方で大統領候補達はアメリカから選挙顧問を雇って対米関係の維持に努めている。親露派のヤヌーコビッチ氏さえジョン・マケイン氏の下で働いた選挙参謀を雇っている (“Ukraine candidates relying on US advisers”; Washington Post; January 15, 2010)。

どちらが勝ってもウクライナには内政と外交の課題が山積みである。ロンドン在住のフリー・ジャーナリストのグウィン・ダイアー氏はウクライナのメディアに選挙後のウクライナ政治の動向を議論する投稿を行なっている。ダイアー氏はNATOもEUもロシアとの対決には及び腰であると指摘する。さらにウクライナの製鉄、化学、航空産業はロシアの石油と天然ガスを必要としている。IMFの融資に依存しているウクライナには自国の経済政策に関する重要な決定を行なうことができない(“Whether Yanukovych or Tymoshenko, next president left with little room to maneuver”; Kyiv Post; January 21, 2010)。

確かに仮にティモシェンコ氏が勝っても次期政権のロシア政策は軟化するであろう。だからと言って欧米がウクライナへの影響力行使を控えるべきだということにはならない。この記事でも述べたように、親露派のヤヌーコビッチ氏でさえアメリカとの関係維持を望んでいる。トマス・バラセク氏が述べるように、ヨーロッパ連合もウクライナの国家建設にもっと手を差し伸べるべきである。オバマ政権はロシアに対してあまりに宥和的で、これもウクライナ国民がオレンジ革命と欧米に幻滅した原因の一つである。2月7日の第二次投票の行方を見守ろう。この選挙の結果は自由諸国とロシアや中国に代表される権威主義国家の抗争に重大な影響を及ぼす。事態はヨーロッパ大西洋地域を超えてグローバルな性質を持つ。

ウクライナを基本から理解するための参照リンク:

“TIMELINE-Ukrainian politics since the 2004 Orange Revolution”; Reuters; January 17, 2010

“Q&A: Ukraine presidential election”; BBC News; 15 January 2010

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