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2010年2月28日

グローバル・フォーラム・ジャパン会報に掲載

以前の記事に記した日本・黒海地域対話を主催したグローバル・フォーラム・ジャパンというシンクタンクより、同研究所の政策掲示板「議論百出」への私の寄稿を4月の会報に掲載するとのお知らせがありました。

日本を代表する政治家、官僚、学者、言論人などが寄稿する「議論百出」の中で、私の寄稿が取り上げられるのは非常に名誉なことです。

その寄稿文は、こちらのリンク(および)にある通り、日本は明治維新をモデルに近代化路線を歩んだトルコとイランとの歴史的関係を軸に、黒海・カスピ海・中東地域で欧米諸国との緊密な協調を通じて積極外交をせよという内容です。

今回の件を非常に喜ばしく思っています。

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2010年2月26日

オバマ=カーター?:FP誌カバー記事のレビュー

フォーリン・ポリシー誌1月/2月号のカバー記事は外交問題評議会でヘンリー・キッシンジャー記念フェローのウォルター・ラッセル・ミード氏が寄稿した第44代バラク・オバマ大統領と第39代ジミー・カーター大統領の相似点についての論文である(“The Carter Syndrome”; Foreign Policy; January/February. 2010)。保守派の市民団体は就任以来のオバマ氏をカーターⅡと揶揄し続けている。しかし今回はフォーリン・ポリシーのように権威のある専門誌までがオバマ氏とカーター氏の類似性を語りだした。以下の画像を参照して欲しい。

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1月のオバマ大統領就任1周年を機に、アメリカのメディアとシンクタンクは政権の実績について賛否を交えた議論をしている。当ブログで1月の掲載した記事で述べたように、国内の保守派からオバマ氏に対する批判の動きが出始めた。グラスルーツの保守派はティー・パーティー運動を展開し、国家管理の健康保険制度に反対の声を挙げている。国家安全保障に関してはディック・チェイニー前副大統領がジョセフ・バイデン現副大統領との討論で、オバマ氏の対テロ措置が弱すぎると批判した(“Cheney criticizes Obama on national security policy, and Biden fires back”; Washington Post; February 15, 2010)。

国内支持率の急落にもかかわらず、国外でのオバマ大統領の人気は非常に高い。かなり多くの国際市民達は、オバマ氏がただアメリカ史上初の黒人大統領だというだけで感極まって礼賛している(おやおや、大統領をアファーマティブ・アクションで選ぼうとでも?)。しかし、プリンストン大学のクリスティナ・レンフォという学生は大統領は自分の人気の維持を究極の目的とすることはやめて、果断な決断を下すべきである。それで国際社会の中に失望する者が出るとしても」と述べている(“A Paradoxical Burden: Obama’s Popularity Abroad”; American Foreign Policy: Princeton Student Editorial on Global Politics; February 15, 2010)。

ミード氏はフォーリン・ポリシーへの寄稿でアメリカ歴代大統領の外交を四つのパターンに分類している(党派は単に一般的な傾向である。)。

ハミルトン型:共和党穏健派

強い政府と強い軍;財界の権益を後押し;リアリスト

ウィルソン型:中道派

強い政府と強い軍;民主主義と人権の普及

ジェファソン型:民主党左派

孤立主義;小さな軍事力

ジャクソン型:共和党右派

グラスルーツ保守派;ハミルトン型の財界志向、ウィルソン型の道義主義、ジェファソン型の弱腰を嫌悪

ジェファソン型のバラク・オバマ氏は前任者ジョージ・W・ブッシュ氏のジャクソン型ナショナリズムとウィルソン型介入主義へのアンチテーゼとして登場した。オバマ氏はアメリカが悪党体制とも共存が可能で、海外への関与を控えてその余力を国内改革に向けるべきだと考えている。しかしミード氏は以下のように述べている。

ジョファソン型の国際関与消極主義がまかり通るためには多くの国々の協力が必要になるが、アメリカの存在感が薄れてしまうとむしろ諸外国はアメリカに協力する動機が低下してしまう。

その通りである。どの挑戦国も敵対国もアメリカに対して融和的ではない。過去にジェファソン型外交政策が通用したのは、アメリカがイギリス覇権下の世界秩序でフリー・ライダーであることが許されたからである。またオバマ政権はアフガニスタンとパキスタンの政治改革の促進、ダライ・ラマへの支援などでウィルソン型のアプローチもとる必要に迫られる。カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのリリア・シェフツォワ上級研究員は、欧米がクレムリンに宥和姿勢をとるとロシアの改革派を落胆させてしまうと深刻な懸念を述べている(“The Kremlin Kowtow”; Foreign Policy; January5, 2009)。オバマ氏はメドベージェフ・プーチン政権への対応を再検討する必要がある。国内の反対派はオバマ氏の外交をあまりに臆病だと批判している。

ジェファソン型とウィルソン型の対応の組み合わせを間違ってしまうと、オバマ氏はカーター氏の轍を踏みかねない。ミード氏はオバマ氏が挑戦国や敵対国、対テロ戦争、アメリカの介入への反感に対処するうえで、微妙なバランスをとる必要があると結論づけている。ウォルター・ラッセル・ミード氏がフォーリン・ポリシーに投稿した論文は、バラク・オバマ氏の外交が歴史的にどのような意味を持つかを理解するためには是非とも推薦したいものである。

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2010年2月22日

LSEが中国に関するアンケート実施

ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスは今年の3月26日に北京で第5回LSEアジア・フォーラムを開催する。「中国と世界:注目すべき課題」と題されたこのフォーラムでは、LSEの学者達が政策形成者や財界人を交えて中国と世界が直面する重要な課題について討論を行なう。

イベントに先立ってLSEはアンケート調査を実施している。LSEの卒業生や教職員でなくても、こちらのリンクよりアンケートに協力を願いたい。

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2010年2月21日

普天間米軍基地問題で揺れる日本の防衛

先日、長尾秀美氏から普天間基地問題についてブログ記事を書いて欲しいと言う要望があった。長尾氏は日米関係の悪化と中国や北朝鮮に脅威の増大に重大な懸念を抱いている。以前に当ブログでは長尾氏の著書「日米永久同盟」を紹介したことがある。

私は日本の住民として、基地紛争が日本の外交と安全保障政策に与える影響の大きさを充分に認識してはいた。しかし当ブログの主要テーマはアメリカ外交と世界秩序である。そのため大西洋、ユーラシア、中東に目が向いていた私は日米基地問題に充分な注意を向けられなかった。非常に象徴的なことに、バラク・オバマ大統領がこの問題に殆ど関与していないのに対し、日本では政治家から一般国民まで国を挙げての議論になっている。

普天間問題の基本的理解のために、こちらのリンクを参照して欲しい。登場した頃の鳩山政権は基地問題の取り決めを覆し、アメリカ軍を日本国外のグアムとサイパンに移転させようとしていた。閣僚達はそれが難しいとわかったのだが、福島瑞穂氏をはじめとする閣内左派は依然として普天間の兵力を沖縄県外に移転しようとしている。

親米ナショナリストの論客である櫻井よしこ氏は日本の中産階級ビジネスマンの間で広く読まれている保守派のジャーナルで、基地問題の暗黒の側面について論評している。櫻井氏は1月24日の沖縄県名護市の市長選挙で左翼の稲嶺進氏が当選したことで、鳩山政権は難しい対応を迫られると警告している。稲嶺氏は普天間から名護へのアメリカ海兵隊基地の移設という現行計画は延期し、移設予定の米軍施設は沖縄県外に行くべきだと主張している。櫻井氏は稲嶺氏が大濱長照石垣市長と左翼同士で結びついて日米交渉を妨害すると懸念している。極左の政治家と活動家達は米軍艦船の沖縄寄港に対して大規模なデモを行なっている。他方で2004年11月10日に中国の潜水艦が日本の領海を侵犯した事件に見られるように、この地域での中国の脅威は増大している。櫻井氏は彼ら左翼が日本の国家安全保障に害を及ぼしていると批判している。さらに鳩山由紀夫首相は「友愛」のスローガンにとらわれて左翼の抵抗運動に宥和し、日米の沖縄基地合意の実施を遅らせているとまで非難している(「日本ルネサンスNo. 397」;週刊新潮;2010年2月4日)。ちなみに大濱市長は2月28日に選挙を控えている。

長尾秀美氏によると、宮古島市の下地空港は台湾に非常に近く、日米双方が名護を選定する前には普天間の米軍の移設先の候補地の一つであった。さらに日本の航空自衛隊も米軍とともに下地に基地を建設すべきだと長尾氏は言う。

元陸上自衛隊東北方面軍総監の森野安弘退役陸将は、米中紛争や中台紛争が起きれば日本の安全保障がどれほど損なわれるかを検証している。森野氏は現在、森野軍事研究所という自らのシンクタンクを運営している。同氏は沖縄南部をアメリカ、中国、台湾の抗争の最前線だと主張し、東京の政策形成者達は東シナ海地域での中国の脅威の増大にもっと深刻な注意を払うべきだと訴えている(「中台紛争で九州・沖縄が危機に!?:自衛隊幹部OBがシミュレーション」;サンデー毎日;2000年6月11日)。

中国だけが北東アジアの問題ではない。タフツ大学フレッチャー外交法律学院のスンユーン・リー準助教授は、病状悪化するキム・ジョンイルの死後には北朝鮮が混乱に陥ると警告している。リー氏はこうした事態に中国が軍事介入すれば極東一帯に緊張が広がるが、オバマ政権はこのきわめて起こる可能性が高い危機に対して準備ができていないとも述べている("Life After Kim"; Foreign Policy; February 2010)。

これら安全保障上の課題を考慮すれば、鳩山政権は左翼と地元の反対派にあまりに融和的である。沖縄県民は在日米軍の75%が沖縄に集中していることを負担と感じるかも知れない。しかし他の地域の住民も地域の特性に合わせた負担を背負っている。これは日本を安全で繁栄した国にするための役割分担である。東京都民はラッシュアワーの負担を受け入れ、福井県民は原子力発電所の負担を受け入れている。 

非常に興味深いことに、東京駐在のあるアメリカ外交官は、普天間であれ名護であれ、さらには下地であれアメリカ軍が沖縄に残れると考えているので普天間問題を重く受け止めていないようであった。私はアメリカ側がそこまで楽観的なのは現行の合意が長い交渉の末にたどり着いたものなので、日本の指導者が誰であれこれを覆すことはできないと考えているからだと見ている。日本では与野党の指導者達がこの問題で右往左往していながら、アメリカが送ってくるのは国務省の高官であってバラク・オバマ大統領もジョセフ・バイデン副大統領も普天間交渉には出てこないというのは、両国関係の非対称性を示している。

他方で私は先の日本・黒海地域対話でヨーロッパからの参加者達がこの問題に高い関心を寄せていることに印象づけられた。NATO諸国は日本と同じような米軍基地問題を抱えている。この件はアジア太平洋を超えてグローバルな問題なのである。

最後に、日本の政策形成者達と一般国民は、左翼と地元反対派への生温い宥和によってアジア太平洋地域での日本の安全保障は脅かされ、欧米先進民主主義国の間での日本の信頼も低下することを忘れないで欲しい。そうしたことから、アメリカ軍は沖縄に留まるべきなのである。

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2010年2月14日

ウクライナ大統領選挙後の混乱は予期されていた

ウクライナの大統領選挙を前に、カナダのモントリオールにあるグローバル化研究センターのセルゲイ・モルチャノフ氏が選挙の結果に関わらずウクライナが混乱に陥ると警告している(“Ukraine: Elections or Emergency Rule?”; Global Research; February 1, 2010)。 事態はその通りに動いている。

選挙から1週間が経つが、ユリア・ティモシェンコ首相は依然として対立候補ビクトル・ヤヌコビッチ氏の勝利を認めようとしていない。ティモシェンコ氏は100万以上の不正票によってヤヌコビッチ氏がこの選挙に勝利したと主張している。ティモシェンコ氏は支持者に対して街頭デモに繰り出さないように訴えているが、ヤヌコビッチ氏に対して再びオレンジ革命さながらの抵抗を行なおうとしている。OSCEの選挙監視員の中には法廷闘争を支持する者もいるとティモシェンコ氏は言う(”Premier Says Fraud Tainted Ukraine Vote”; New York Times; February 13, 2010

そのような動向をよそに、ヨーロッパからの選挙監視団体は選挙の公正さ賞賛し、バラク・オバマ米大統領、アナス・フォー・ラスムッセンNATO事務総長、ヘルマン・バン・ロンピュイEU大統領をはじめ、アメリカとヨーロッパの指導者達はヤヌコビッチ氏の当選を祝福している。ラスムッセン氏が言うように、欧米諸国の指導者達は東方への「過剰拡大」よりもロシアと旧ソ連諸国との戦略提携を模索している(“NATO, EU follow U.S., welcome Ukraine's Yanukovich”; Washington Post; February 12, 2010)。

にもかかわらず、ティモシェンコ氏はこの選挙の不正を訴え続けている。以前に当ブログで私はカーネギー国際平和財団のマーク・メディッシュ訪問研究員の論評を引用した。ウクライナは政治的な一体性を欠くつぎはぎだらけの国である。民族と地域の分裂は選挙後の混乱した紛争の原因の一つである。またウクライナは主権国家としての充分な歴史的な体験がない。

ここで選挙後の混乱を理解するためにモルチャノフ氏の論文を振り返ってみたい。ナショナリストのブロガーによる「私はティモシェンコ氏に投票して親露派の犯罪人が我々の大統領となるのを阻止するか、敗れるにしても大接戦となって法廷闘争に持ち込むことを期待している。そうなれば現大統領によって両候補とも大統領に就任する資格が停止され、緊急統治によって流血が回避されるだろう」という発言を引用し、モルチャノフ氏は二つのシナリオを想定している。第一はティモシェンコ氏がヤヌコビッチ氏の当選を受け入れないために緊急統治が行なわれるというものである。第二はウクライナ人のナショナリストとクリミア・タタール人のような少数民族が決起して退任するユーシェンコ大統領と選挙結果を認めないティモシェンコ氏の共闘を支持するというものである。私はウクライナの不安定化によってロシアと欧米の対決は激化し、オバマ・ラスムッセン対話路線は頓挫すると見ている。

ヤヌコビッチ氏は自分の政権ではロシア黒海艦隊にユーシェンコ政権が署名した2017年の撤退起源を延長してセバストポリ基地への駐留継続を認めると述べた(“Yanukovich says ready for Russian fleet, gas deals”; Reuters; February 13, 2010)。ウクライナ人のナショナリスト達はウクライナ領内へのロシア軍の駐留継続に激しく抵抗するであろう。またルーマニアとブルガリアにあるアメリカ軍基地とウクライナにあるロシア軍基地の間での緊張が高まると思われる。

たとえティモシェンコ氏が敗北を認めたとしても、キエフ周辺と北西部のウクライナ人ナショナリストを宥めることは難しい。そのため注意深い観測が必要である。

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2010年2月13日

NATOは挑戦国と新興国とどのように向き合うべきか?

アナス・フォー・ラスムッセンNATO事務総長は2月7日のミュンヘン安全保障会議(ドイツ語はこちら)でロシア、中国、インドそしてアフガニスタン近隣諸国との戦略提携関係を発展させるべきだと述べた。ラスムッセン事務総長はアフガニスタンのテロリストの打倒には多国間の強調が必要だと強調した。しかしロシア議会下院のコンスタンティン・コサチェフ外交委員長は、欧米に対する疑念を訴えた(“Nato calls for more global partners”; Financial Times; February 8, 2010)。

ミュンヘン会議は世界の主要国の指導者達が国際安全保障に関して話し合う非公式の会合に過ぎないが、NATO事務総長が国家対立の枠組を超えて戦略提携を訴えたことは注目に値する。デンマークの首相であった時期のラスムッセン氏はジョージ・W・ブッシュ大統領とドナルド・ラムズフェルド国防長官と親しい関係にあった。ラスムッセン氏は有力なイラク戦争支持者の一人であった。それほどの保守派が政治体制や価値観の違いを乗り越えて、ロシアと中国に安全保障のうえで共通の取り組みを訴えているのである。

アフガニスタン以外にもラスムッセン氏は「NATOをこれまでの加盟国以外も参加できるグローバルな議論の場とし、テロ、サイバー攻撃、核拡散、海賊、気候変動、天然資源争奪戦までも含めた安全保障問題を取り上げるべきである」と述べている。しかしクレムリンは2008年のグルジア紛争を契機に西側への疑念を強めている(“NATO should be global security forum: Rasmussen”; Washington Post; February 7, 2010)。

バラク・オバマ大統領は昨年7月のモスクワ訪問の際にロシアに対して融和的な態度を示したが、ロシア側のドミトリー・ドベージェフ大統領は新軍事ドクトリンを承認し、NATOの拡大を脅威と見なして核兵器の一方的な利用の権利を肯定した(“Russia names NATO expansion as national threat”; Reuters; February 5, 2010)。クレムリンの指導者達はウクライナとグルジアを自分達の勢力範囲と見ているが、ラスムッセンNATO事務総長はそうした国家間の敵対関係はないとしている(“Russian doctrine does not reflect real world: NATO”; Reuters; February 6, 2010)。ロシアと欧米の立場の違いを埋めるのは難しい。ついったーではラスムッセン氏がNATOはロシアの敵ではないと言っているが(“AndersFoghR”; Twitter; February 6, 2010)、ロシアのドミトリー・ロゴジン駐NATO大使は「アメリカとその同盟国はロシア熊の巣を包囲する気だろうか?」“Rogozin”; Twitter; February 10, 2010)と問いただしている。

イランの核の脅威に対抗してルーマニアに配備されるアメリカの迎撃ミサイルをめぐる対立は、ロシアと欧米の関係に大きな影を投げかけている(“Russia condemns US move to put missiles in Romania”; Daily Telegraph; 7 February, 2010)。オバマ政権がポーランドとチェコへのミサイル配備計画を取りやめた際に、アメリカはイランのミサイル迎撃にはより近い南に代替地を求めていた。クレムリンは全世界の核不拡散よりも地政学上のゼロ・サム・ゲームの方に目が向いている。

急速にグローバル化が進む世界では、安全保障の概念も変わるであろうし、国家の枠組を超えた取り組みが必要となる。しかし西側民主主義とロシア・中国の権威主義の溝は深まる一方で、これこそロバート・ケーガン氏が“The Return of History”で国家間の対立の激化を述べる理由である。

アフガニスタンでの作戦に見られるように、NATOはグローバル化しており新しいパートナーを必要としている。NATOがインドとパキスタンをはじめとするアフガニスタン近隣諸国との戦略提携を模索することは正しい。当ブログの以前の記事で述べたように、NATOは日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国といったアジア太平洋の民主主義諸国との関係を発展させている。これらの国々とNATOが協力してテロ、サイバー攻撃、核拡散、海賊、気候変動、天然資源争奪戦までも含めた国家の枠組を超える脅威でヨーロッパ大西洋地域の異議外でも対処できることには疑いの余地はない。

問題は、NATOが過激ナショナリズムの勢いづくロシアと中国との間で信頼の置ける関係を築けるのだろうか?主権国家の対立競合は本当に終焉したのだろうか?ラスムッセンNATO事務総長が提唱し、マデレーン・オルブライト元国務長官とカナダのピーター・マケイ国防相が支持するこの案は、あまりにもカント的に思える。ミュンヘン会議は世界政治の現実が力の論理の支配するホッブス的なものであることを見せつけている。

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さらに理解を深めるための参照リンク:

NATO’s New Strategic Concept

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2010年2月 3日

第3回日本・黒海地域対話にて

以前に述べたように、私は国際文化会館で開催された第3回日本・黒海地域対話に参加した。このイベントはグローバル・フォーラム・ジャパンが日本外務省、駐日トルコ大使館、駐日ブルガリア大使館、静岡県立大学広域ヨーロッパ研究センターの後援で開催したものである。

イベントの開催に当たってグローバル・フォーラム・ジャパンの伊藤憲一執行世話人が日本と黒海諸国の共通問題として世界金融危機と欧米対ロシアの抗争に言及した。黒海経済協力機構(BSEC)レオニダス・クリサンソポロス事務総長と日本外務省の谷崎泰明欧州局長が世界の安全保障と経済での黒海地域の重要性を総括した。黒海地域はヨーロッパ、中央アジア、中東が交差する十字路に位置している。ここはスキタイ、トラキア、アナトリア、そしてギリシア植民地という古代文明の揺籃の地である。

この地域での日本の役割に関しては経済開発協力が議論の中心になりがちである。トルコ外務省のミシャト・レンデ経済局長は1月3日から4日にかけて日本の岡田克也外相がトルコを訪問して「2010年トルコにおける日本年」への祝辞を述べたことは日土関係の発展に大いに寄与すると語った。

黒海地域はロシアと欧米の抗争の最前線であるとともにエネルギー資源の通り道でもあるので、この地域での日本外交を述べるには多国間のやりとりを見過ごすわけにはゆかない。BSEC諸国は石油と天然ガスの埋蔵量で中東に次いでいる。特にロシアとアゼルバイジャンの産出量が多い。石油と天然ガスの貿易と地政学的な競合では中国がアフリカの場合と同様に重要な影響力を及ぼすと思われているが。しかしエネルギー紛争と地政学的な駆け引きに中国がどのように関わるかはよくわかってはいない。

非常に興味深いことにEUとASEANの地域統合の比較が議論され、BSECの統合のあり方が模索された。EUは共通の政治理念に基づく統合を目指すのに対し、ASEANは域内の経済協力に重点を置いている。BSECの場合は旧ソ連諸国でのロシアと欧米の綱引きが事態を複雑にしている。

安全保障ではヨーロッパと日本は民主的なアメリカの同盟国として多くの課題を共有している。普天間基地をめぐる沖縄住民とアメリカ軍の間の対立に見られるような米軍基地問題もそうした問題の一つである。ルーマニアとブルガリアがNATOに加盟したために、アメリカはロシアの目と鼻の先に軍事施設を持つことになった。しかし現在は欧州議会で外交副委員長の職にあるユアン・パシュク元ルーマニア国防相は、それらの施設はルーマニアやブルガリアと共同使用され、米軍が独占的に使用しているわけではないと指摘した。よって日本の普天間とは事態が完全に異なると述べた。

この地域への多国間のアプローチを考えると、日本外務省の海部篤欧州局中・東欧課長の発言は印象的であった。海部氏は橋本龍太郎首相(当時)の「新シルクロード演説」麻生太郎外相(当時)の「自由と繁栄の弧演説」は日本が世界の安全保障と生活支援に積極的に関与するうえで画期的なものだと述べた。後者はジョージ・W・ブッシュ氏の外交政策と共鳴するもののように思われる。スウェーデンの中央アジア及びカフカス研究所とアゼルバイジャンのカフカス戦略研究所が共同で発行する専門誌では駐日アゼルバイジャン大使館のグルセル・イスマイルザダ参事官が麻生演説について綿密な分析を行なっている(“A New Pillar of Japanese Foreign Policy: The Arc of Freedom and Prosperity—Japanese Policy toward the GUAM Organization”; CENTRAL ASIA AND THE CAUCASUS Journal of Social and Political Studies; No. 3-4 (51-52), 2008)。

私は麻生氏の演説を鳩山由紀夫現首相が掲げる物騒な東アジア構想よりもはるかに高く評価しているのは、日本はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと共に欧米先進自由諸国同盟の中心であるべきだと固く信じているからである。日本は最先進民主主義国から成る世界の平和と繁栄の礎の一員たるべきである。この「最善の政治と知力を持った国々」のクラブを通じて、日本は国際舞台での政治的存在を強められるのである。

海部氏は近隣諸国を超えた日本の積極外交を主張したのだが、さらに強い国際関与を打ち出せなかったのかとも思わずにいられなかった。一般に日本と黒海地域は互いに遠い存在で、新しい関係が現在になって築かれている最中だと思われている。しかしそうした見方には私は強く異を唱える。私の目には政策形成者達が日本には「スカンジナビア型」の経済開発援助での役割を果たすべきという考えに囚われているように見える。私は日本も対テロ戦争やレジーム・チェンジといった「英米型」の自由帝国主義的な役割を追求すべきだと主張する。

私は日本には黒海・中東・カスピ海地域で歴史的な役割があると固く信じている。中でもケマル・アタチュルクのトルコとレザ・シャー1世のイランは日本の明治維新での近代化を規範としてきた。日本はトルコの脱イスラム化とEU加盟を支援できるのである。これは対テロ戦争でイスラム過激派を打倒するうえで多大な貢献となるであろう。さらに最先進民主義国の一員として、東ヨーロッパと旧ソ連諸国の統治状況の改革に積極関与して自由諸国の同盟の東方拡大を支援できる。

日本・黒海地域対話は日本外交と同地域での大国間の政治的攻防を理解するうえで非常に素晴らしい機会となった。グローバル・フォーラム・ジャパンには心底からの感謝の意を述べたい。パネリストの諸先生方から数多くの価値ある見解や洞察を当記事で全て記すことができないのは残念である。

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